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核軍縮議論の中心にヒューマニティ(人間性)を取り戻すべきだ(エマド・キヤエイ中東条約機構共同設立者)

【ウィーンINPS=エマド・キヤエイ】

「カザフスタンにおける核実験の壊滅的な結末-当事者が語る歴史」と題するサイドイベント(在ウィーン国際機関カザフスタン共和国政府代表部と創価学会インタナショナル(SGI)国際安全保障政策センター)に参加してきました。このイベントは、世界各地で行われてきた核兵器実験がもたらした結果について、犠牲者から直接話を聞くことが主な目的でした。

Broshure of the side event, titled “The Catastrophic Consequences of Nuclear Tests in Kazakhstan”. Photo Credit: SGI
Broshure of the side event, titled “The Catastrophic Consequences of Nuclear Tests in Kazakhstan”. Photo Credit: SGI

こうした被爆者自身による証言を聞くことは極めて重要です。 なぜなら核軍縮を巡る各国政府の外交政策や議論は、深刻な生態系破壊や健康被害を抱えながら核実験の生存者や被害者たちが実際にどのように生きてきたかという現実とはかけ離れているのが実態であり、 こうした証言は核兵器を巡る議論の中心に、再びヒューマニティー(人間性の側面)を取り戻すことが可能となるからです。

私たちはこうした被爆者の証言に耳を傾けることで、核兵器がもたらす被爆の実相を知ることができるのです。

第二次世界大戦中に日本が経験した原爆投下の結果、何十万という犠牲者が、世代を超えた健康上の障害や差別に苦しみながら今日に至っている現実を知ることは、核軍縮の問題を考えるうえで重要な視点となります。 

すなわち、この大量破壊兵器を廃絶しない限り、被爆者たちは今後も被爆証言を語り継がなければならなくなるのです。しかし被爆者の平均年齢は80歳を超え、直接被爆体験を聞くことができる時間的機会もますます限られたものをなりつつあります。

しかし、ヒューマニティと「同苦の精神」を、核軍縮議論の中心に据えることで、核の時代に終止符を打つことが可能となります。

核廃絶の議論は、本来抽象的な政府や組織の話ではなく、核兵器が使用されればその被害を受けることとなる私たち一般大衆の話なのです。

従って、グローバル被爆者といわれる核実験や核兵器の製造過程で被爆した人々の声なき声に光を当て、核兵器廃絶の必要性についての一般市民の認知度を高めるためのプラットフォームを提供し、政府の意思決定者や政策立案者に対して、有権者が彼らの行動を見ていること、そして正しい決断を下し、核兵器を撤去するよう要求しているというメッセージを届けることは、私たち市民社会の責任です。

The side “The Catastrophic Consequences of Atom Bomb Testing—A First Person’s Testimony” Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN-INPS.
The side “The Catastrophic Consequences of Atom Bomb Testing—A First Person’s Testimony” Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN-INPS.

これらの大量破壊兵器は、人工的に作られたものである故に、解体することも可能なのです。

必要なのは、政治的な意志と権力者の善意であり、それは私たちの声や経験、そして政府を正しい方向に向かわせる能力なしには得られません。 

その方向は、人間の安全保障、ヒューマニティ、同苦の精神が、議論の中心に据えられたものでなければなりません。(原文へ

Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN-INPS. 
*エマド・キアエイ氏(イラン出身)は、シャロン・ドエフ氏(イスラエル出身)と共に中東条約機構を設立して、中東非大量破壊兵器地帯創設を目指す活動を展開している反核活動家。昨年のICAN市民社会フォーラムに続いて、NPT準備会合期間中にSGIと在ウィーン国際機関カザフスタン共和国政府代表部らが主催したサイドイベントに参加したところを取材した。反核議論の中心にヒューマニティ(人間性)を取り戻す必要性とともに、他人の痛みをわが痛みとできる、SGIの「同苦の精神」に深く共感し、核廃絶を推進する原動力としてこの精神の大切さを説いている。
An interview with Emad Kiyaei and Sharon Doev, co-founders of METO during ICAN Civil Society Forum in Vienna 2022.
Workshop by METO at ICAN Civil Society Forum in Vienna 2022.

INPS Japan

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核の「曖昧政策」のなかで活動する「イスラエル軍縮運動」

「世界終末時計」が真夜中に近づく今こそ核の先行不使用を

【ウィーンIDN=オーロラ・ワイス

2026年のNPT(核兵器不拡散条約)再検討会議に向けた第1回準備委員会が2週間にわたって開かれる中、国連経済社会理事会との諮問資格を持つ仏教団体創価学会インタナショナル(SGI)核時代平和財団がサイドイベントを開催した。

専門家たちは8月3日、NPTの枠組みの中で、核軍縮を進めながら核リスクの削減を促進するために、どのような政策があり得るかを探った。核時代平和財団のイバナ・ニコリッチ・ヒューズ会長、核軍縮・不拡散議員連盟(PNND)のクリスティン・ムットネン共同議長、ウィーン軍縮・核不拡散センター(VCDNP)のニコライ・ソコフ上級研究員の3名がパネリストを務めた。司会はSGIの砂田智映平和・人権部長が務めた。

SGIは、戸田城聖創価学会第二代会長が「原水爆禁止宣言」を発表してから50周年にあたる2007年に「核兵器廃絶への民衆行動の10年」キャンペーンを開始し、同時期に発足した核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)と連携しながら、核兵器を禁止する法的拘束力のある文書の実現を目指してきた。

自分達の苦しみを他のいかなる国の人々にも経験させたくないと願う広島・長崎の被爆者に代表される市民社会の断固たる決意と取り組みは、2017年に核兵器禁止条約(TPNW)が採択され、21年に発効することで結実した。TPNWは、核兵器の使用や使用の威嚇に限らず、開発や保有を含む核兵器のあらゆる側面を包括的に禁止している。

SGI会長の声明

Photo: SGI President Daisaku Ikeda. Credit: Seikyo Shimbun
Photo: SGI President Daisaku Ikeda. Credit: Seikyo Shimbun

池田大作SGI会長は2023年1月11日、ウクライナ危機と核問題に関する緊急提言「平和の回復へ歴史創造力の結集を」の中で、「ウクライナ危機の終結に向けた緊張緩和はもとより、核使用が懸念される事態を今後も招かないために、核保有国の側から核兵器のリスクを低減させる行動を起こすことが急務であると思えてなりません。私が昨年7月、NPT再検討会議への緊急提案を行い、『核兵器の先制不使用』の原則について核兵器国の5カ国が速やかに明確な誓約をすることを呼びかけたのも、その問題意識に基づいたものでした。」と述べている。

リスク低減はNPT再検討プロセスにおいて新しいトピックではない。2010年NPT再検討会議の行動計画における「行動5(d)」は、核保有国に対して「核兵器の使用を防止し、究極的にその廃棄につながり、核戦争の危険を低下させ、核兵器の不拡散と軍縮に貢献しうる政策を検討する。」ことを求めている。

先制不使用の原則は、昨年のNPT再検討会議の最終声明の草案に初めて盛り込まれた。結局、先制不使用への言及は削除されたものの、最終声明は合意に至らなかった。核保有国が先制不使用の採用について話し合おうとしていたことは、稀に見る希望の光である。

NPTの中で、先制不使用の原則へのコミットメントを促進するための進展があれば、相手の出方に戦略的に反応する時間を増やして直接的なリスクを低減することで現在の緊張状態を緩和することにつながるだけでなく、同時に、軍縮への新たな道も開ける可能性がある。

中国は1964年に先制不使用を宣言

Christine Muttonen, Co-President of Parliamentarians for Nuclear Non-proliferation and Disarmament (PNND) Photo credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN/INPS Japan.

先制攻撃、第一撃、あるいは核兵器以外による攻撃への反応のいずれの形であれ、いかなる場合においても核兵器を決して先に使用しないと中国が約束したのは1964年のことで、これが核兵器国による初めての権威的な声明となった。

中国は核の先制を無条件で宣言している唯一の核保有国である。インドは、化学兵器・生物兵器に対する反撃の場合を例外として、先制不使用政策を維持している。フランス・北朝鮮・パキスタン・ロシア・英国・米国は、紛争時における核の先制使用を認める政策をとっている。イスラエルは核保有の事実そのものを認めていないことから、これに関する公的な立場は存在しない。

「私たちは皆、このような脅威について知っており、核兵器の削減や、使用禁止、廃絶、さらには核実験の禁止に向けた多くの試みなどがなされてきました。しかし同時に、私たちは現在進行形の核軍拡競争を目の当たりにしています。」とPNNDのムットネン共同議長は語った。

ムットネン共同議長はさらに、「諸国が核戦力の近代化を図り、この致命的な兵器の製造に拍車がかかっています。核爆発の人道的影響や、人為的・技術的事故の危険性についても、多くの研究がなされてきました。なかには、核紛争の結果はこれまでの推定よりもはるかに深刻であるという主張する専門家もいます。」と語った。

世界終末時計:真夜中まで90秒

2023 Doomsday Clock Announcement Credit: Bulletin of Atomic Scientists.

世界終末時計」の設定に責任を持つ科学者たちは、「(核兵器による地球滅亡を意味する)真夜中まで90秒しか残されていない。前代未聞の危機の時代だ。」と述べている。核の危険が増し、それが同時に、もう一つの世界的な脅威である気候変動に対する人類の闘いも毀損しているとして、時計の針は進められた。

核拡散防止に取り組む75カ国以上、700人以上の国会議員で構成される世界的なネットワークPNNDのムットネン共同議長は、「国家間の不信が増している現代において、核軍縮の方途を見つけることは困難です。一国単独で、あるいは集団的に、追加の機構や制度を必要とせず、すぐに実行できる有効的な手段と考えられるのが、核の先制不使用政策の確立です。核不拡散や核軍縮を目的とした条約や相互保証などの仕組みの多くがここ数年で損なわれているか、あるいは進展していないなか、そうした保証が緊急に必要とされています。」と語った。

「核保有国は核兵器を先行して使用しないとの約束で合意すべきです。」とムットネン共同議長は述べ、核の先制不使用政策は核軍縮に向けた重要なステップになると強調した。したがって、先制不使用政策をとる中国やインドのような核保有国が、核兵器廃絶の提案を支持するのは当然である。

G20とG7

Wreath-Laying at the Cenotaph for the Atomic Bomb Victims by G7 leaders—Italy’s PM Meloni, PM Trudeau of Canada, President Macron of France, Summit host Fumio Kishida, US President Biden, and Chancellor Scholz—flanked by European Commission president von der Leyen (right) and European Council president Michel (left). Credit: Govt. of Japan.
Wreath-Laying at the Cenotaph for the Atomic Bomb Victims by G7 leaders—Italy’s PM Meloni, PM Trudeau of Canada, President Macron of France, Summit host Fumio Kishida, US President Biden, and Chancellor Scholz—flanked by European Commission president von der Leyen (right) and European Council president Michel (left). Credit: Govt. of Japan.

2022年11月にバリで開催された20カ国・地域(G20)首脳会議では、、「核兵器の使用、またはその威嚇は許されない」ことが「バリ宣言」に盛り込まれた。しかし、広島で今年5月19日から23日にかけて開催されたG7広島サミット(主要7カ国首脳会議)では、このG20の強力な声明は再確認されず、核の脅威を低減する新たな措置も発表されなかった。

ムットネン共同議長が警告するように、G7声明は大幅に後退している。核抑止政策と、核兵器を絶対的に否定している非核兵器国の大多数が望んでいるものが乖離している様子が見てとれるだろう。ムットネン共同議長は、「しかしバリ声明が、NPTプロセスや国連総会、インドで開催されるG20サミットの中で再確認される可能性と希望はまだあります。」と指摘した。

「前進を可能にするためには、核保有国と関与し続けなければならなりません。つまり対話が必要で、外交を復活させなければなりません。今、最も重要なことは、各国共通の安全保障として、核兵器が使用される可能性を減らすことです。従って、すべての核保有国と同盟国は、先制不使用を誓約すべきです。」とムットネン共同議長は付け加えた。

From L to R: Ivana Nikolic Hughes (NAPF) , Nikolai Sokov (VCDNP) , Christine Muttonen (PNND), Chie Sunada (SGI). Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN-INPS.

議員の重要な役割

国会議員とは法律を作る人々のことだが、まさにそこにこそPNNDの役割がある。たとえば予算の策定に議員が果たす役割は大きい。外交政策、外交、不拡散、軍縮について彼らは権限を持ち、大量破壊兵器にさらなる予算をつぎ込むことすらできる。議員らは国家の政策策定に関わり、市民社会と直接のつながりを持っている。市民社会と議員らは通信網のように相互につながっている。そして互いに影響を及ぼす。

「国会議員は政府に圧力をかけることができ、市民社会はその支援を行うことができます。つまり、議員は自身の選挙区やメディアに情報を提供し、国民の認識や政治的優先順位に影響を与えることができるのです。議員らは、PNNDメンバーのリーダーシップを通じて、国内議会や、欧州安全保障協力機構(OSCE)議員会議や列国議会同盟(IPU)などの議会間組織において、核先行不使用政策を前進させるための活動に熱心に取り組んでいます。そして彼らは、OSCE議員会議に対して、核リスク削減、先制不使用、包括的核軍縮に関する段落をOSCE議員総会の最終宣言に採択させる必要があります。」とムットネン共同議長は語った。

「核兵器が廃絶された世界はすべての人々が繁栄する世界」というのが核時代平和財団の目標である。その任務は「核兵器のない、公正で平和な世界の実現に向けて、人々を教育し、啓発し、行動を促すこと」にある。1982年に創設された同財団体は、世界各地の個人や団体からなり、国連経済社会理事会で諮問資格を持ち、国連から平和メッセンジャー団体として認められている。

核時代平和財団

2014年、核時代平和財団は、マーシャル諸島が9つの核保有国(米国・英国・フランス・ロシア・中国・イスラエル・インド・パキスタン・北朝鮮)を国際司法裁判所と米連邦裁判所で提訴するにあたって、同国政府と協議を行った。この訴訟は、これらの国々が核兵器を完全に廃絶するための交渉を進めるという国際法上の義務を遵守していないと主張するものであった。

CTBTO

核時代平和財団のイバナ・ヒューズ会長は、「ソ連はカザフスタンの平原で核実験を行い、放射線被爆によって今日まで奇形児が生まれています。英国は、現在はキリバス共和国の一部となっているクリスマス諸島や、オーストラリアの先住民族居住区でも核実験を行いました。フランスはアルジェリアの砂漠で核実験を行い、砂の中に放射線まみれの機材を埋めました。また、フランス領ポリネシアでも核実験を行い、最近の研究ではフランス政府の主張よりも放射線のレベルが高いことが分かっています。」と語った。

ヒューズ会長は、ダニエル・エルズバーグ氏と彼の著書『世界滅亡マシーン』に言及した。エルズバーグ氏は、米国の70年に及ぶ隠蔽された核政策の危険性を初めて暴露した伝説的な内部告発者として知られている。かつて大統領の顧問を務めた彼が「ペンタゴン・ペーパーズ」を持ち出した時、1960年代の米国の核開発計画に関する最高機密文書も持ち出した。『世界滅亡マシーン』は、文明の歴史において人類が作り上げてきた最も危険な軍備をエルズバーグ氏が説明したものであり、この核兵器は人類の生存そのものを脅かしている。

By Gotfryd, Bernard, photographer - Daniel Ellsberg, speaking at a press conference, New York City, Public Domain
By Gotfryd, Bernard, photographer – Daniel Ellsberg, speaking at a press conference, New York City, Public Domain

2023年6月に死去したエルズバーグ氏は、この著書の中で、「歴史的な、あるいは現在の核政策についての典型的な議論や分析に欠けているもの、つまり見過ごされているものは、議論されていることがめまいがするほど非常識で非道徳的であるという認識である。ほとんど計算不可能で、想像を絶する破壊力と意図的な殺戮行為、危険を冒して計画された破壊力と宣言された目的または認識されていない目的との不釣り合い、密かに追求された目的(アメリカと同盟国への損害限定、両面核戦争における「勝利」)の実現不可能性、(法、正義、犯罪に関する通常のビジョンを爆発させるほどの)犯罪性、知恵や思いやりの欠如、罪深さと悪においてである。」と述べている。

「米国の核政策は狂気の沙汰であり、完全に考え直さなければなりません!」とヒューズ会長は強調した。そして、あらゆる政府の機密文書が明らかにした共通点、すなわち、核兵器を作動させたいという欲望について言及した。「酔っぱらったリチャード・ニクソン大統領も同じことをしようとしましたが、側近たちが止めました。問題は、ニクソン大統領以降、どれほど多くの大統領がまともな責任を取れるのか、ということです。」とヒューズ会長は問いかけた。

ニクソンとブッシュは原爆を待機させた

 Ivana Nikolić Hughes, President of Nuclear Age Peace Foundation. Photo Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN/INPS Japan.

最近暴露された政府文書によると、ニクソン大統領は1969年、米国のスパイ機撃墜事件を受けて、北朝鮮に対する核攻撃のために核爆撃機の発進準備を命じたと考えられている。ニクソン大統領は統合参謀本部に接触して、戦術的核攻撃の計画を立て標的の候補を示すよう命令した。当時ニクソン大統領の安全保障顧問を務めていたヘンリー・キッシンジャー氏は、大統領が翌朝しらふの状態で目覚めるまでは命令を実行しないよう、統合参謀本部に電話をかけていた。

ニクソン大統領が共産主義者らに核攻撃に関する自身の本気度を見せたかったのだと推測できる根拠はある。その後、ニクソン大統領はソ連に対して核爆撃機を差し向け、自身が第三次世界大戦を引き起こしかねないほどの狂気の人物であるとの噂を流した。もちろん彼は狂気ではなかった。アンソニー・サマーズ氏とロビン・スワン氏の2000年の著書によって、ニクソン大統領は単に酩酊していただけだということが判明した。ニクソン大統領にあったのは権力ではなくアルコールだった、と核時代平和財団のヒューズ会長は指摘した。

現在の米国の核政策は、核攻撃を命令する大統領の能力に制約を課していない。軍には、戦争法に違反するとみられる命令を拒絶できる権利があるが、戦力使用の権限を与える議会の役割については法的な疑念が出されている。それでも、広範な理解として、大統領はいつでも、いかなるときでも核兵器を発射することができる。

核先制不使用政策の採択によって、宣戦布告する議会の憲法上の権限が再確認されることになる。憲法は、大統領が自らの判断のみに基づいて戦争を始めることはできないことを明確にしており、大統領が単独で核戦争を始められなくすることには意味がある。

核のリスクは消えない―事故であれ意図的であれ

ウィーン軍縮・不拡散センターのニコライ・ソコフ上級研究員は、核兵器近代化に関するソ連・ロシアの歴史的観点を提示し、ロシアの戦略核の将来的な進化を予測した。ロシアの核はいまやベラルーシに配備されようとしている。この状況下では、どんな挑発行為がロシア・NATO諸国間の直接的な軍事行動の引き金になるかわからない。

Nikolai Sokov, Senior Fellow from Vienna Center for Disarmament and Non-Proliferation (VCDNP) Photo Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN/INPS Japan.

ソコフ氏はまた、ロシアが戦争初期に核兵器に言及したのは非合理的だと指摘した。核のエスカレーションの脅しは、西側諸国のウクライナ支援の意図をくじく十分な材料とはならなかった。むしろこの脅しは、ウクライナ侵攻に関してロシア指導部が感じている不安感を反映したものであろう。

核兵器の使用は、それが事故であれ意図的なものであれ、受け入れがたい結果をもたらすという点で、専門家たちの意見は一致している。核先制不使用政策を採択し、核兵器使用の威嚇をやめることで、核の大惨事のリスクは低減できる。さらに大胆な方策は、国連の核兵器禁止条約を通じて核兵器そのものを廃絶してしまうことだ。国連のアントニオ・グテーレス事務総長が強調したように「核兵器が我々を滅ぼしてしまう前に、核兵器を廃絶しなくてはならない。」のである。(原文へ

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核廃絶を求める私たちこそがグローバル・マジョリティーだ。(ジャクリーン・カバッソ西部諸州法律財団事務局長)

【ウィーンINPS Japan=ジャクリーン・カバッソ】

The side “The Catastrophic Consequences of Atom Bomb Testing—A First Person’s Testimony” Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN-INPS.
The side “The Catastrophic Consequences of Atom Bomb Testing—A First Person’s Testimony” Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN-INPS.

カザフスタンにおける核実験の壊滅的な結末-当事者が語る歴史」と題するサイドイベント(在ウィーン国際機関カザフスタン共和国政府代表部と創価学会インタナショナル(SGI)国際安全保障政策センター)に参加しました。このイベントは、私にとって非常に意義深く、また個人的にも感慨深いものでした。

私がカザフスタンを初めて訪れたのはソ連が崩壊する前の1990年で、核戦争防止国際医師会議(IPPNW)とネバダ・セミパラチンスク運動が共催した核実験禁止国際市民会議に参加したときのことです。

その頃、私はすでに米国で反核運動に積極的に参加していました。

ネバダ核実験場での米国政府による核実験に抗議し、何度も逮捕されていました。しかし私たちの活動は、メディアの注目度も低く、国内ではあまり知られていませんでした。

転機になったのは、サンフランシスコで会議に参加した際にカザフスタンから来ていたある人物との出会いでした。彼は米国の反核活動家とのつながりを求めて来訪していたのです。

Jacqueline Cabasso, Executive Director, Western States Legal Foundation. Filmed and edited by Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director, INPS Japan.

そして彼から驚くべきことを聞きました。なんとアメリカ人さえあまり耳にしたことがないネバダ州での反核活動のことを知り、「ネバダ・セミパラチンスク」と名付けられた運動がカザフスタンで広がりを見せており、ネバダの活動に学びたいというのです。

彼の興味深い説明によると、彼らが見ていたソ連のニュースメディアは反米的なもので、米国での反核抗議行動や警察による逮捕の様子が映し出していたことからネバダの運動を知ったというのです。

そして、そのサンフランシスコでの会合を通じて、私はカザフスタンで予定されていた核兵器禁止国際市民会議に招待されることになったのです。

そして会議に出席のため、当時のアルマ・アタ(現在のアルマトイ)に到着したとき、パンをのせたトレイを持った民族衣装を着た人たちが、「実験場を閉鎖せよ!」「将軍たちは実験場に別荘を建てよ!」などと書かれた大きな垂れ幕を掲げて出迎えてくれました。

Kazakh civil movement activists gathered to demand a nuclear test ban at the Semipalatinsk test site in August 1989. Photo credits: armscontrol.org.

依然としてソ連共産党の統制下にあった当時のカザフスタンで、このような大規模な反核運動が公然と展開されているのを目撃して、驚きとともに深い感銘を受けました。国際空港には、既に「ネバダ・セミパラチンスク運動」のロゴが入った看板など、反核を訴える看板が設置されていました。

私たちはセミパラチンスク核実験場跡地や周辺地域を訪問し、当時の被害者たちと会い、核実験がもたらした苦しみがどれほど広範囲に及んでいたかを理解し始めました。この経験から、(米国で)疎外されていると感じていた反核活動家としての私の見方は、大きく変わりました。

Field trip to Semipalatinsk Former Nuclear Weapons Test Site in 2017 participated by the author. Filmed and edited by Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director, INPS Japan

つまり、核兵器の廃絶を求める私たちこそが、「グローバル・マジョリティーなのだ」と。

こうして私の初のカザフスタン訪問は、人生を変えるような経験でした。その後、1991年、93年にも核実験場跡を訪れ、より多くの人々との交流を深めてきました。

カザフの核実験による被爆の話は米国の主流メディアでその後も取り上げられることはなく、米国に戻ると、相変わらず、カザフスタンなんて聞いたことがないという人達に語りかける日々に逆戻りました。

その後も、2014年、17年にカザフスタンを再訪し、ネバダ・セミパラチンスク運動の指導者であるオルジャス・スレイメノフ氏との再会や、被爆画家で反核活動家のカリプベク・クユコフ氏との出会いなど、交流を深めていきました。

ここ国連施設で開催された今日のサイドイベントで、べセロフ氏の被爆証言に大勢の人々が熱心に耳を傾け、活発に議論を交わしている様子を目の当たりにして、やっとこの話が世に出ることができた、と感慨を深くしました。

しかし、あまりに時間がかかりすぎていると言わざるを得ません。これは本来極めて重要で大きな話です。そして、それさえも氷山の一角にすぎないのですから。

Trinity Nuclear Test. Original color-exposed photograph by Jack Aeby, July 16, 1945. Public Domain

というのも、米国では今、こんなことが起きています。1945年に米国で初めて行われたトリニティ核実験は、誰も住んでいない人里離れた場所で最初の核兵器が爆発したというストーリーとして公式に語られてきたましたが、それは真実ではありませんでした。

少なくとも15,000人以上の人々が、この実験によって直接的な影響を受けており、彼らは長年にわたって、世間の注目と補償を得ようと努力してきましたが、最近までほとんど注目されることはありませんでした。

映画『オッペンハイマー』が公開されましたが、核兵器が及ぼす人道的被害についての描写が欠落しているとの批判がある一方で、このことで、かえってトリニティ核実験の被害者に対する注目も集まっています。

また、偶然かどうか分かりませんが、プリンストン大学から新たな研究結果が発表され、米国で行われた核実験による放射性降下物汚染の範囲は、これまで報告されていたよりもはるかに広範囲に及んでいたことが明らかになっています。

核爆発という、人類に対するこの大規模な世界的犯罪が及ぼした被害の全貌は、まだ明らかになっていません。

べセロフ氏の苦闘は、ネバダ核実験場の風下で被爆したり、核実験に参加させられて被爆したにもかかわらず、補償を受けられなかった人たちの苦闘と相通じるものがあります。

これは深刻かつ極めて重要な問題ですが、新たに核兵器が実戦で使用されるかもしれないという現在進行中の問題のほんの一部に過ぎません。(原文へ) 撮影・聞き手:浅霧勝浩

INPS Japan

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38度線に立ち込める核の雲

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

【Global Outlook=ハルバート・ウルフ 

北朝鮮は、核兵器プログラムを推進し続け、2022年初めから100発を超えるミサイルを発射しており、その一部は大陸間ミサイルである。そのため、韓国では北からの攻撃への動揺や懸念が生じている。政府も国民の大多数も、米国による保護の信頼性について確信を持てずにいる。世論調査によれば、韓国国民の70%以上が自国の核武装に賛成している。

重武装されたいわゆる「非武装地帯」であり、北朝鮮と韓国の国境線である38度線を挟んで、近いうちに軍事的対決、もしかしたら核対決までもが起ころうとしているのだろうか? いずれにせよ、かつて「太陽政策」と呼ばれた時代、南北朝鮮の対話、あるいは2018年平昌オリンピックの南北合同チームの時代は、とうに過ぎ去った。北朝鮮に核兵器を放棄するよう説得する外交努力もしかりである。(

就任して1年以上になる韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は、北朝鮮による核・ミサイル計画の急速な拡大と繰り返される敵対的な挑発に対し、デタント推進派で緊張緩和に努めた文在寅(ムン・ジェイン)前大統領とはまったく異なる対応を見せた。尹は、北朝鮮の再武装に対し、対決姿勢を明らかにした政策と軍備増強によって対抗している。タブーだった韓国の核武装というテーマが、いまや政治的主流になっている。大統領自身も近頃、デタント政策に関する議論の中でこの可能性について言及した。核武装した北朝鮮への懸念は高まっている。4月末、この荷物を抱えて尹大統領はワシントンを訪問し、そこでは韓国内の議論が大きな苛立ちをもって取り上げられた。

70年にわたる韓国の歴史において過去に2度、核武装論が議題に上った。1970年代、韓国は秘密裏に核計画を進めていた。米国政府はこれを知ると、韓国に計画放棄を促す最後通告を突きつけた。朝鮮戦争(1950~53年)以降韓国と密接な同盟関係にあった米国政府は、韓国が核武装を追求し続けるなら全ての米軍を引き揚げると脅した。韓国政府は米国の最後通告を深刻に受け止め、当時ベトナムで米国が屈辱的な敗北を喫したばかりだったにもかかわらず、米国による軍事支援の継続を選択した。その結果、韓国は軍の核計画を放棄した。

その後、1991年に(当時は韓国も北朝鮮も核不拡散条約の加盟国であった)、米国のジョージ・H・W・ブッシュ大統領が、韓国に配備した全ての戦術核兵器を撤去することを発表した。それを受けて、北朝鮮と韓国は朝鮮半島の非核化に合意した。少なくとも北朝鮮が第1回核実験を行った後の2006年以降、この合意が紙くず同然になったことは明らかであり、その後に続く北朝鮮の核武装に関する一連の交渉や合意もまた同様である。

韓国では、米国が本当に韓国を守ってくれるつもりがあるのかという懸念が高まっている。平壌の近代的な核兵器は、今や米国の都市を破壊する能力がある。もし金正恩(キム・ジョンウン)の軍がソウルを攻撃したら、米国政府は、韓国を守ることによって自国の国民がこのようなリスクにさらされることを受け入れるだろうか? こういった疑問を、尹大統領は4月末にワシントンで投げかけた。

バイデン政権は、韓国の核武装に断固として反対している。その理由はとりわけ、アジア、特に日本と台湾におけるドミノ効果を何としても阻止したいからである。ワシントンの信条によれば、核兵器を増やせば世界が安全になるわけではない。現行の国際秩序は、何よりも核兵器の不拡散に基づいている。この条約に従わない一部の国(イランや北朝鮮など)は、大きな代償を払わねばならない。韓国もこの運命に脅かされるのだろうか、あるいは、イスラエルやインドの例のように、米国は暗黙のうちに韓国を核保有国として認めるのだろうか? そして、北京はどのように反応するだろうか? 中国は韓国に制裁を課し、孤立させようとするだろうか?

韓国における今日の議論には、いきさつがある。欧州のNATO加盟国の例のように、米国のドナルド・トランプ前大統領は韓国を安保ただ乗り国と呼び、米軍配備の費用を韓国に支払わせると脅した。ソウルの人々は、韓国を防衛するという米国の約束が今後、ひょっとしたら再びトランプ政権のもとで、どのようになるのかと懸念し、思案している。

尹大統領訪米中の4月26日、米韓両政府はいわゆる「ワシントン宣言」を発表した。米国は韓国防衛の約束を再確認したのみならず、原子力潜水艦と核搭載爆撃機を定期的にこの地域に派遣することにも同意した。これは数十年ぶりのことである。それに加え、ソウルは核計画の策定に関与することになった。両政府は「拡大抑止を強化し、核および戦略計画について協議し、朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)が不拡散体制にもたらす脅威を管理するための新たな核協議グループ(NCG)の設立」を発表した。

両国とも、「核抑止の分野において、より深い、協調的な意思決定を行うこと」を約束した。それに対し韓国は、独自の核兵器計画を改めて放棄した。この宣言はいずれ、欧州と同様の核共有の概念に発展する可能性がある。そうなれば、韓国が独自の核兵器を目指す道筋は当面回避される。しかし、これらの計画は、重要な、新たな核シナリオによって朝鮮半島の紛争を拡大するものである。地域における反応は不可避であった。北京の外交部は、「意図的に緊張をあおり、対立を誘発し、脅威を誇張している」として、ワシントンとソウルを非難した。

平壌の反応はさらに激しいものだった。独裁者金正恩の妹で、大きな影響力を持つ金与正(キム・ヨジョン)は、この合意が「最も敵対的で攻撃的な行動意志」を反映しており、「北東アジアと世界の平和と安全保障をいっそう深刻な危険にさらす結果を招くのみ」だと述べた。彼女は、国連が非難する北朝鮮の核開発には触れもせず、「敵が核戦争演習の実施にこだわればこだわるほど、また、彼らが朝鮮半島周辺に配備する核軍備が多ければ多いほど、それに正比例してわが国の自衛権行使は強大なものとなる」と述べた。

明らかに、拡大軍事抑止、さらには軍事的対立の可能性を示唆する兆候が見られる。平壌とソウルの連絡経路は閉じられ、また、北朝鮮に関するワシントンと北京の連絡も断たれた。ワシントンも、今やいっそう強硬な姿勢を取りつつある。ジョー・バイデン大統領は、「北朝鮮による米国または同盟国やパートナー国への核攻撃は容認できず、そのような行動を取ればいかなる体制であれ終焉を迎える」と述べた。「体制変更」に関するこの発言が明かされると、平壌はこれを挑発と受け取った。朝鮮中央通信(KCNA)によれば、「このような状況下で、DPRKが現在および将来の憂慮すべき安全保障環境に対応して軍事抑止を強化するのは至極当然である」。

38度線沿いには暗雲が立ち込めつつあり、欧州におけるウクライナ戦争と同様、一触即発の状況を緩和する要素は見当たらない。

ハルバート・ウルフは、国際関係学教授でボン国際軍民転換センター(BICC)元所長。現在は、BICCのシニアフェロー、ドイツのデュースブルグ・エッセン大学の開発平和研究所(INEF:Institut für Entwicklung und Frieden)非常勤上級研究員、ニュージーランドのオタゴ大学・国立平和紛争研究所(NCPACS)研究員を兼務している。SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)の科学評議会およびドイツ・マールブルク大学の紛争研究センターでも勤務している。

INPS Japan

核兵器禁止の必要性を警告した対ウクライナ戦争

北朝鮮の核:抑止と認知を超えて

核のない世界への道は険しいが、あきらめるという選択肢はない。(寺崎広嗣創価学会インタナショナル平和運動総局長インタビユー)

「二度とあってはならない!」長崎原爆の被爆者がメキシコで訴え

【メキシコシティーINPS Japan/GESE=ギエルモ・アヤラ・アラニス】

「私たち(被爆者)は、長崎に原爆が投下されたときに起こったことを、人々に伝える義務があります……。それは、核攻撃の幻影(核兵器が実際に使用される可能性)が再び現実味を帯びている今日、あの惨劇が二度と起こらないとは言えなくなっているからです。」と、1945年に長崎で被爆した山下泰昭さんは語った。

今年8月9日、メキシコシティーのオクタビオ・パス図書館で、作家のセルジオ・エルナンデス氏が、1945年の長崎原爆投下から78周年を祈念して、「山下泰昭の被爆証言」という本を出版した。エルナンデス氏が山下さんの被爆体験についてインタビューを重ねてまとめたものだ。

“Yasuaki Yamashita’s A-Bomb Testimony” published by Sergio Hernandez in commemoration of the 78th anniversary of the 1945 atomic bombing of Nagasaki. Photo credit: Guillermo Ayala Alanis

本書の中で、山下さんは長崎に原爆が投下された直後の様子について、「その光景は地獄にいるよりも恐ろしいものに思えた。」と語った。この日(1945年9月9日)の早朝、原爆が爆発した瞬間は、あたかも千個の稲妻が同時に走ったかのようなすごい閃光が一帯を襲い、長崎の誰もが、「化学兵器による攻撃ではないか。」と恐れたという。

山下さんは当時6歳だったが、建物、家屋、道路、すべてが破壊され、多くの人々が即死したなかで、多数の人たちが重傷を負ったことを覚えている。また、山下さん自身は家族と一緒にいたが、爆風で飛散したガラス片で姉が頭部を怪我したことを覚えている。(化学兵器による攻撃と思い込んでいた)当時の山下さんの姉は、頭部から滴る血は、「米軍が日本人に使った危険な油だと思った。」と回想している。

山下さんは会場に詰めかけた人々に、被爆直後の状況について、「多くの人々が飢餓に直面しました。人々は何キロも歩いて農家を探し、家財が残っていたものは貴重品をジャガイモや野菜など食べるものと交換しなければなりませんでした。」と語った。また、原爆投下直後は病院などの医療施設が破壊され、医療関係者も多くが即死或いは被爆していたことから、医療体制がほぼ皆無ななか、人々はなすすべもなく亡くなっていった惨状を覚えている。」

山下さんは高校卒業後就職したが、ある日、身体に異変を感じ、検査の結果放射能の影響を受けていることが判明した。貧血がひどく突然倒れることもしばしばあり、転職を余儀なくされた。当時の日本では、放射能に対する一般的な認識がなく、こうした健康上の問題を抱えた被爆者に対する無理解が、しばしば「原爆に汚染された人間」などといった差別・中傷となって表れ、被爆者は就職、結婚差別に苦しんだ。山下さんは、原爆病院に勤務し、多くの被爆者が原爆症に苦しみ、亡くなっていく様子を日々目の当たりにした。

山下さんは当時を振り返って、「とても辛い日々でした。自分もいずれは患者さんたちのようになるのでないかと思ったんです。患者さんたちの生活を毎日看ていることはいたたまれなかった。いっそどこか誰も知らない所、私がいても、『この人は原爆患者だ』と思われないどこかへ行ってしまいたいと思うようになったのです。」と回想した。

From the book: “Yasuaki Yamashita’s A-Bomb Testimony” Photo credit: Guillermo Ayala Alanis

そこで1968年、山下さんはメキシコ五輪の際、メキシコシティにある「日本プレスオフィス」で働くことになり、そのまま移住を決めた。つまり念願だった、誰にも被爆の過去を知られることなく、差別のない生活を送れる場所を見つけたのだ。メキシコで出会った人々はみな親切で、山下さんはしばらくの間、この新天地で、働いてお金を稼ぎ、豊かで新たな生活スタイルを築き、平和に暮らしていけると感じていた。しかし、しばらくすると原爆症の症状が再発しはじめ、親友の一人にそのことを打ち明けて、知り合いの医者を紹介してもらった。

1995年のある日、山下さんが長崎の被爆者であるという秘密を知った友人の息子から電話があった。その若者は、自分が在籍している大学で開かれる会議に山下さんを招きたいと言った。しかし、被爆の経験を話すことは辛い過去の記憶を呼び起こすことになるとして、山下さんは「とても被爆証言などできない。」ときっぱり断ったという。

しかし、山下さんは「そこをどうしても」と何度も懇願され、ついに招待を引き受けることにした。

この時、山下氏さんは、被爆証言を引き受けたからには、被爆を実際に体験した自分こそが、被爆の実相を多くの人々に伝えていく重い責任があると、自らの使命を改めて自覚したという。

山下さんは、被爆経験を覚えている世代が80代となり、直接経験談を伝えられる時間が限られてきているが、少しでも多くの人々に、核兵器が使用されれば、無数の人々が殺戮され、たとえ生き残っても世代を超えて塗炭の苦しみを負わされることになる、つまり「二度と使用されてならない兵器」であると、一人でも多くの人に伝えていきたいと考えている。

「核兵器こそが危険な敵であり、(人に対する)憎しみはさらなる憎しみの連鎖をもたらします。だからこそ、私たちは歴史のある時点で、核攻撃に対する赦しの気持ちを持たなければなりません。」と語った。   

“Yasuaki Yamashita’s A-Bomb Testimony” was published in commemoration of the 78th anniversary of the atomic bombing of Nagasaki.

広島では、核攻撃の結果、その年のうちに14万人、長崎では約7.4万人が亡くなったと推定されている。

『山下泰昭の被爆証言』は経済文化基金が編集した『Vientos del Pueblo Coletion』から4万部発行されている。(原文へ

Guillermo Ayala Alanis
Guillermo Ayala Alanis

* ギエルモ・アヤラ・アラニスはメキシコのジャーナリスト・テレビレポーター。メキシコ国立自治大学(UAM)ソチミルコ校では核軍縮を研究、国際関係学の修士号を取得。カザフスタンには、2019年に国際プレスチームのメンバーとしてセミパラチンスク旧核実験場とセメイ、アスタナでは「ナザルバエフ賞」を取材した。「アスタナ国際フォーラム」には、ユーラシア研究グループのレポーターとして取材。

INPS Japan/GESE

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広島・長崎の原爆被害を学ぶ

水は 戦争の武器か、平和の道具か?

【ストックホルムIPS=マリア・スコルド

紛争における水の役割は変化しており、環境や民間インフラに対する攻撃が増加している。ストックホルム国際水研究所(SIWI)のマルティナ・クリメス博士はこのほど、安全保障の状況の変化と、水がいかに戦争の武器にも犠牲にもなりうるか、そして時には平和の道具にもなりうるかを説明する講演会を開催した。

Settlements on the left bank of Dnieper River are underwater after the Kakhovka Dam was breached on 6th June, 2023 / By Armyinform/2023/06/06/, CC BY 4.0
Settlements on the left bank of Dnieper River are underwater after the Kakhovka Dam was breached on 6th June, 2023 / By Armyinform/2023/06/06/, CC BY 4.0

6月6日にウクライナで発生したカホフカダム破壊事件は、水インフラの崩壊がいかに戦争時に甚大な被害をもたらすか、時には何世代にもわたって影響を及ぼすことを痛感させるものだ。ウクライナは、ロシアがダムを破壊し、戦争の武器として使用したと非難している。

「カホフカダムの破壊は、戦時における民間人の保護を定めた1977年のジュネーブ条約第一追加議定書に完全に抵触します。」と、SIWIで水と平和のアドバイザーを務めるマルティナ・クリメス博士は語った。

6月14日、クリメス博士はスウェーデン国会で開催された朝食会に、SIWIが創設メンバーである「環境・気候・安全保障に関するストックホルム・ハブ」の代表者らとともに参加した。

クリメス博士のプレゼンテーションは、戦時における水のさまざまな役割について概説したものであった:

直接的影響:水や水インフラへの攻撃が戦争の武器として使用される場合。

間接的な影響:軍事作戦が環境に害を与える場合、たとえば水源に毒を入れたり土壌を汚染したりする場合。

国境を越えた影響:他国にも影響が及ぶ場合。

ウクライナ戦争では、この3つの側面すべてが、他の戦争ではめったに見られないほど、地元や国際機関によって注意深く監視されている。カホフカダム破壊事件の前にすでに、ウクライナ当局は戦争による環境被害のコストを約500億ユーロと見積もっていた。

河川、地下水、土壌は汚染され、かつて欧州で最も生物多様性が豊かと言われたこの国では、多くの国立公園が影響を受けている。2022年には、1600万人のウクライナ人が水、衛生設備、衛生に関する支援を必要としていた。

ウクライナ政府は、戦争が環境にもたらした影響を綿密に追跡することで、単に復興を促進することだけを望んでいるわけではない。もうひとつの目的は、将来ロシアに対する戦争法廷に使える証拠を集めることだ。

ボロディミール・ゼレンスキー大統領は、現在国際刑事裁判所(ICC)が対象としている4種類の犯罪(戦争犯罪・侵略犯罪・大量虐殺・人道に対する罪)に加え、エコサイド(大量の環境破壊行為)も罪に問うことができると述べている。近年、エコサイドをICCのローマ規程に明記された第5の犯罪とする案が有力視され始めている。

エコサイドとは、「エコ」と「ジェノサイド(大虐殺)」を組み合わせた言葉で、これから先に気候変動が深刻化して多くの命を奪うとされていることから、生態系や環境を破壊する行為は「平和に対する罪」として定めようという欧州で広がる動き。
The International Criminal Court (ICC) in The Hague, Netherlands
The International Criminal Court (ICC) in The Hague, Netherlands

欧州連合(EU)の議会は最近、エコサイドをEU法の一部とすることを決議した。

国連では、委員会が既存の国際法におけるギャップを評価し、武力紛争に関連した環境保護に関する、より広範囲に及ぶ原則案を提示した。

しかし、内戦に苦しむイエメン、リビア、シリアを研究してきた研究者たちによれば、過去10年間で、民間人や環境インフラに対する攻撃はより一般的になったという。

Environment of Peace: Security in a New Era of Risk/ SIPRI
Environment of Peace: Security in a New Era of Risk/ SIPRI

「こうした攻撃は地域住民に計り知れない苦しみをもたらし、その影響はしばしば国境を越えて及びます。また、環境悪化が社会的不安定や暴力の引き金となるリスク増大要因であることもわかっています。」とクリメス博士は語った。

一方、「環境・気候・安全保障に関するストックホルム・ハブ」のもう一つのパートナーであるストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は昨年、このテーマに関する画期的な報告書「平和の環境(Environment of Peace)」を発表した。

同時に、国や地域は、生態系や人間のレジリエンス(回復力)を強化することで、緊張を緩和することができる。例えば、共有する水域を巡って協力することで、協力と平和を促進することもできる。

このような複雑な相互関係に対する認識を高めるため、SIWIはさまざまな能力を持つ関係者を結集させるべく積極的に活動している。その一例が、国境を越えた水協力を強化するための「共有水域パートナーシップ・プログラム」である。

またSIWIは毎年、世界水週間に水関連の安全保障問題に関するハイレベルパネルを開催している。今年は8月23日午前11時(中央ヨーロッパ標準時)より、「平和と紛争予防を支援する革新的アプローチ」というテーマで開催される。(原文へ

*ストックホルム国際水研究所(SIWI)は、水に関する賢明な政策と持続可能な発展に向けた知見を積み重ね、政策決定者にそれを提供する政策研究所である。SIWIはストックホルムで世界水週間(World Water Week)を開催し、ストックホルム水大賞、ストックホルム青少年水大賞、ストックホルム産業水大賞を主催する。

マリア・スコルドはコミュニケーション担当シニアマネージャー。マルティナ・クリメス博士は、水と平和および越境水協力担当アドバイザー。

INPS Japan/ IPS UN Bureau Report

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NPT再検討会議準備委員会のサイドイベントで、カザフスタンの核実験被害者が被爆の実相を証言

【ウィーンIDN=オーロラ・ワイス

中央アジアのカザフスタン共和国は、日本や他の太平洋島嶼諸国と並んで、核実験や核兵器使用の影響という極めて深刻な困難を抱えてきた国の一つだ。同国は1991年の建国から30数年しか経過していない比較的若い国であるが、この重い負の遺産に直面している。

Broshure of the side event, titled “The Catastrophic Consequences of Nuclear Tests in Kazakhstan”. Photo Credit: SGI

カザフスタンでは、ソ連時代の核実験によって引き起こされたさまざまな病気で、何世代にもわたって今も多くの人々が苦しんでいる。冷戦時代、ソ連最大の核実験場があったことから、カザフスタンは「ロシアの核の盾」と称されたものだが、当の隣国(=ロシア)は核実験の犠牲者、つまり当時のモスクワ中央政府によって「核の盾」となったことの代償を支払い続けている人がいる事実など、忘れ去っているようだ。

在ウィーン国際機関カザフスタン共和国政府代表部と創価学会インタナショナル(SGI)国際安全保障政策センターは、核使用がもたらしたこの共通の過去、さらには現在と将来にわたって直面しつづける問題について、「カザフスタンにおける核実験の壊滅的な結末-当事者が語る歴史」と題するサイドイベントを開催した。これは、今年7月31日から8月11日までウィーンの国連施設で開催されている2026年核不拡散条約NPT)運用検討会議第1回準備委員会のプログラムの一環である。

カザフスタン外務省国際安全保障局のアルマン・バイスアノフ局長、国際安全保障政策センターのアリムジャン・アクメートフ代表、SGIの寺崎広嗣平和運動総局長、セミパラチンスク核実験の被爆者三世であるディミトリー・べセロフ氏、「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)の政策・研究コーディネーターであるアリシア・サンダース=ザクレ氏が登壇し、英国SGIのサンニャ・ラジパル氏が司会を務めた。

The side event was held as a part of the program during the Preparatory Committee for the 2026 Review Conference of the Parties to the Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons (NPT) that is taking place here from 31 July to 11 August at the United Nations in Vienna. Photo Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN-INPS. 
Arman Baissuanov, Director of International Security at the Kazakh Foreign Ministry. Photo Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN-INPS. 

カザフスタン政府を代表してバイスアノフ局長が開会あいさつを行い、核兵器禁止条約(TPNW)の第6条と第7条(核被害者への心身両面における支援と経済的補償、さらには核に汚染された地域の環境の修復とそのための国際協力)、条約枠内における国際信託基金の重要性について語った。

昨年の第1回締約国会合で採択された「ウィーン行動計画」では、被害者支援と環境修復の活動を財政的に支援しうる国際的な信託基金設置(行動29)の実行可能性の検討とガイドラインの策定がなされるべきことが合意された。

今年11月には第2回締約国会合がニューヨークで開かれ、メキシコが議長国を務める。カザフスタンはすでに、2024年の第3回締約国会合で自らが議長国となることを発表している。

「国際機関や市民社会、被害者らと協力し合いながら、核兵器廃絶への行動を起こしていきたい。」とバイスアノフ局長は語った。彼の故国カザフスタンは、ソ連の構成国であった30数年前まで、ソ連の軍事科学者らによって456回に及ぶ核爆発実験が通算40年間に亘って実施され、100万人以上の国民が高線量の放射線にさらされた。

Hirotsugu Terasaki, Director General of Peace and Global Issues, Soka Gakkai International (SGI) Photo Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN-INPS.
Hirotsugu Terasaki, Director General of Peace and Global Issues, Soka Gakkai International (SGI) Photo Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN-INPS.

セミパラチンスク核実験場で行われた核実験で被爆し、今も健康被害に苦しみ続けている無数の人々を目の当たりにした深い痛みは、寺崎総局長の記憶に今も刻みこまれている。

2019年にカザフスタン外務省の案内で、旧セミパラチンスク核実験場跡と周辺の関連施設を訪問した寺崎総局長は、核放射線被害という、日本とカザフスタンに共通する運命を目の当たりにした。

寺崎総局長は、「広島・長崎の被爆者の声が、核兵器禁止条約の採択に向けた大きな推進力となったことは皆さんもご承知の通りですが、『グローバル・ヒバクシャ』と呼ばれる核実験や核物質の採掘者をはじめとする核の被害者の存在は、私たちの視覚に十分に入っているわけではありません。」と指摘したうえで、「核兵器のために、どれだけの人々が亡くなり、傷つき、苦しい思いをしてきたか、その悲鳴は今も世界中で発せられており、こうした個々の悲劇が決して忘れ去られないようにする必要があります。だからこそ、私どもSGIはICANとのパートナーシップのもと、これまで核兵器の人道的被害について、草の根で意識啓発活動を推進してきたのです。」と語った。

そして、「核兵器の使用リスクが高まる中、今一度、核兵器の脅威や非人道的被害について共有し、世界を核軍縮の道へ方向転換させるべく、断固たるメッセージを発信していこうではありませんか。」と呼びかけた。

核実験被害者自身による証言は、このサイドイベントに参加した政府関係者や学者、NGO関係者の心を打った。(中東非大量破壊兵器地帯設立を目指す活動家エマド・キヤエイ氏のコメント映像

Dmitriy Vesselov a third generation Semipalatinsk nuclear-testing survivor. Photo Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN-INPS.

ディミトリー・べセロフ氏は1976年にカザフ・ソビエト共和国のセミパラチンスク(核実験場跡地から直線距離で約100キロ)で生まれた。彼は核実験から3世代目の被爆者であり、遺伝性疾患を患っている。鎖骨がないのが特徴の肩鎖関節異骨症を患っており、彼の手はわずかに筋肉と靭帯でのみつながっている。骨と頭蓋骨の発達にも異常があり、気管支肺系の病気や関節症にもかかりやすい。

2015年、べセロフ氏は放射線被ばくの被害者と認定された。しかし問題は、被爆認定されても手当などがなく、医療保険や治療費を自己負担せねばならないことだ。彼の健康状態が必要とする手当は障害者にしか支給されず、その障害者認定は得られていない。また、障害者として認定されるか、あるいは放射線被ばくに起因する疾病で死亡した被害者の遺族とみなされなければ、国から毎月の特別手当を得ることができない。

「核実験の被害者はカザフスタン国内で孤立してきました。」とべセロフ氏は指摘する。自身の体験を通じて核兵器使用の悲劇的な結末を理解してもらうことが彼の望みだ。

1945年から2017年にかけて、2000回以上の核爆発実験が世界各地で行われ、癌などの慢性疾患が広がってきた。これら核実験の犠牲者を忘れてはならず、正義と援助を求める彼らの要求に応えなければならない。

Alicia Sanders-Zakre, Policy and Research Coordinator at International Campaign to Abolish Nuclear Weapons (ICAN). Photo Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN-INPS.

ICAN政策研究コーディネーターのアリシア・サンダース=ザクレ氏は、「国際社会はまず被害者を救済し、そののちに加害者を追及すべきです。」と述べ、国際社会の最大の関心がグローバル被爆者に注がれていない現状を嘆いた。

「目の前で誰かが誰かを撃ったらと考えてみてください。加害者をまず捕まえようとは思わないでしょう。まずは被害者を助けることを考えるはずです。」とサンダース=ザクレ氏は語った。

世界全体での核戦力の規模が減少するどころか増加の一途をたどっている。核兵器保有国は、その帰結について語ろうとするなら、人間の要素と向き合う必要がある。核兵器は、戦時において2度使用(広島・長崎への投下)されただけではなく、15カ国で実験されてきた。核兵器の製造そのものが人道的影響を及ぼしているのだ。米国のたった1カ所で行われた核実験の影響は、(同国51州のうち)実に48州と近隣諸国にまで広がるとする研究結果もでてきている。

ICANは、国連核兵器禁止条約の順守と履行を推進する100カ国の非政府組織の連合体であり、その一環として2022年にウェブサイトnucleartestimpacts.orgを立ち上げた。すべての核実験の概観や、核兵器の製造国や製造年、そして正義を求めるグローバル被害者の経験などが掲載されている。

The side “The Catastrophic Consequences of Atom Bomb TestingA First Person’s Testimony” Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN-INPS. 

核兵器は、これまでに作られた兵器の中で最も非人道的で無差別な兵器である。国際法に違反し、環境破壊を引き起こし、国家と世界の安全保障を損ない、膨大な公的資源を人類のニーズから遠ざけてしまう。

冷戦期以降最も核兵器使用のリスクが高まっているこの重要な時にあって、アントニオ・グテーレス国連事務総長の「核兵器が私たちを滅ぼしてしまう前に、核兵器を廃絶しよう」という言葉の意味を考えることが必要だろう。「命の問題はみんなの問題なのだから、軍縮の問題はみんなの問題だ」と、グテーレス事務総長はこう述べて人々に行動を促している。(原文

INPS Japan

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AIチャットボットが好戦的雰囲気の中で核使用のリスクを警告

【国連IDN=タリフ・ディーン

AIチャットボットの「チャットGPT」(質問を理解し自動で返答を生成する、人工知能(AI)を用いたコンピュータープログラム)は、制作者のオープンAIによれば、先月の最初の5日間で100万回以上ダウンロードされたという。

また、事実とフィクションの区別がつかないという批判もあるが、チャットボットによる基礎知識へのアクセスは、作家、ジャーナリスト、学者、その他の専門家にとって安定した情報源となっている。

ニューヨーク・タイムズ紙は6月18日、「危険!危険!これはAIへの警告か、それとも核兵器への警告」という見出しの記事を掲載したが、これほど不吉なものもなかろう。AIと核兵器の比較はいまや「至る所で見られる」と同紙は記している。

AIの先駆的な研究者は「AIはまるで核兵器のようなもの」と語ったという。他方、トップのAI制作会社の幹部らは、AI技術は「核兵器に匹敵するような、人類の生存上の脅威となる可能性がある」と警告してきた。

チャットGPTを開発したオープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)は先月、AIの開発者らはAIの持つ潜在的な危険性を懸念し、連邦政府による規制を求めていると米議会で証言した。

AIの膨大な知識の蓄積を念頭に、主に核の脅威に焦点を当てた一連の質問を投げかけてみた。返答は光のようなスピードで瞬く間に届いた。

以下がそのやり取りである。

IDN:ロシアが核の恫喝を行い、北朝鮮が核を振りかざす中で、核戦争の危険があると思いますか?

チャットGPT:AIの言語モデルとして、私はリアルタイムの情報にアクセスすることはできないし、将来の特定の出来事を予測する能力もありません。しかし、一般的な知見をいくらか披歴することはできます。

Nuclear weapons sent by Russia to Belarus will target Europe. Source: YouTube Kanal 13 Global
Nuclear weapons sent by Russia to Belarus will target Europe. Source: YouTube Kanal 13 Global

核の脅威や国家間の緊張は、細心の注意を払う必要がある深刻な問題であることは間違いありません。そのような脅威を深刻に受け止めることは重要だが、大多数の国が核戦争の破滅的な結末を理解し、それを回避することに既得権益を持っていることを認識することも同様に重要です。

核兵器不拡散条約(NPT)のような国際外交、条約、協定は、核兵器の使用を防ぎ、軍縮を促すために設けられています。これらの取り組みは、核紛争の可能性を減らし、紛争の平和的解決を促進することを目的としています。

地域的な緊張がエスカレートすることもあるが、全面的な核戦争に突入することは、すべての当事者にとって大きな不利益をもたらすことを忘れてはなりません。国際社会は一般的に、交渉、経済制裁、外交ルートを通じて、このような紛争を防ぐように努めています。

各国は、オープンなコミュニケーションラインを維持し、外交対話を行い、紛争の平和的解決を追求することが重要です。さらに、核軍縮と核不拡散を推進する努力は、世界の安定と安全保障にとって極めて重要です。

しかし、信頼できるニュースソースを通じて世界の出来事について常に情報を入手し、国際関係や安全保障の分野の専門家の評価に注意を払うことは不可欠です。

IDN:もし核戦争が起きたら、人類にとってどのような悲惨なことになるのでしょうか?

チャットGPT:核戦争は人類にとって極めて破滅的な出来事であり、莫大な破壊と人命の損失につながります。核戦争の帰結は次のようになるでしょう:

直後の被害:

核兵器の初期の爆発は、標的となった地域に即時かつ大規模な被害を引き起こします。爆風、熱、放射線は、一瞬の間に多くの人々に死をもたらします。

長期的な健康への影響:

初期の爆発を生き延びた人々は重度の放射線障害に苦しみ、ガンや遺伝子の突然変異、先天性異常などの長期的な健康問題につながるだろう。将来世代に与える影響は重大なものになる可能性があります。

インフラの破壊:

核爆発は、住宅地、病院、交通システム、通信網などのインフラに広範な破壊をもたらすだろう。電気、給水、衛生設備などの必要不可欠なサービスは著しく中断され、人道的危機を悪化させるだろう。

環境破壊:

核戦争によって大量の放射性物質が大気中に放出され、大気や土壌、水を汚染するだろう。汚染は長年にわたって続き、生態系や農業、食物連鎖に影響を及ぼすだろう。長期的な環境破壊につながり、特定の地域が居住不可能になる可能性もあります。

世界的な「核の冬」:

Image: A map showing the changes in the productivity of ecosystems around the world in the second year after a nuclear war between India and Pakistan. Regions in brown would experience steep declines in plant growth, while regions in green could see increases. (Credit: Nicole Lovenduski and Lili Xia). Source: University of Colorado Boulder.
Image: A map showing the changes in the productivity of ecosystems around the world in the second year after a nuclear war between India and Pakistan. Regions in brown would experience steep declines in plant growth, while regions in green could see increases. (Credit: Nicole Lovenduski and Lili Xia). Source: University of Colorado Boulder.

核爆発によって発生した煙や塵は大気圏内を上昇して太陽光を遮り、気温の低下を引き起こします。「核の冬」と呼ばれるこの現象は、農業の生産性を著しく低下させ、広範な飢餓を引き起こして、交戦当事国だけではなく、紛争から遠く離れた地域にも悪影響を及ぼします。

社会の崩壊:

核戦争の結果、社会的・経済的崩壊につながる可能性が高い。政府、制度、必要不可欠なサービスが機能しなくなり、無法状態、大移動、人道危機が生じます。インフラ、資源、熟練した人材の喪失は、あらゆる復興努力を妨げるだろう。

エスカレーションと放射性降下物

大規模な核紛争の場合、多くの国がそこに巻き込まれるにつれて、さらなるエスカレーションのリスクが高まります。その結果、加速度的に被害と破壊が増え、世界的な大惨事のスパイラルに拡大する可能性があります。

上記のシナリオは、複数の国が関与する全面的な核戦争を想定していることに留意する必要があります。実際の結果は、使用される核兵器の数や、その爆発力、標的、その時に地政学的状況など、さまざまな要因に左右されるだろう。

莫大なリスクと壊滅的な結果を考えれば、核紛争を防止し、世界の平和と安全を促進するために、外交努力、軍備管理条約、核不拡散協定を追求し続けることが極めて重要です。

IDN:国連は将来の核戦争を防ぐことができるでしょうか?

国連は、世界の平和と安全を推進する上で極めて重要な役割を果たしており、その主要な目的のひとつは、核戦争を含む紛争を防止することでする。国連だけでは将来の核戦争を防ぐことはできないが、そのような破滅的な出来事のリスクを軽減することを目的としたいくつかのメカニズムやイニシアチブはいくつかあります。国連が核不拡散や軍縮に貢献しているものとして、以下のようなものがあります。

UN Secretariate Building/ Katsuhiro Asagiri
UN Secretariate Building/ Katsuhiro Asagiri

核不拡散条約(NPT):

国連は、核兵器の拡散を防ぎ、軍縮を促進するための国際条約であるNPTを統括しています。NPTは、エネルギーやその他の平和目的のために平和的な核技術へのアクセスを認める一方で、完全な軍縮に向けて努力することを各国に奨励しています。

国際原子力機関(IAEA):

IAEAは、原子力の平和利用を監視・検証し、保障措置協定の遵守を確保する責任を負う国連システム内の独立機関です。IAEAは、核物質が兵器用に転用されるのを検知し、阻止する上で重要な役割を果たしています。

国連安保理決議:

国連安全保障理事会は、核軍縮、核不拡散、軍備管理に関する数多くの決議を発表してきました。これらの決議は、各国が核兵器開発計画を推進したり、既存の協定に違反したりすることを阻止するために、制裁やその他の措置を課すことが多い。

軍縮フォーラムと軍縮会議:

国連はさまざまな軍縮フォーラムや軍縮会議を開催し、加盟国が軍備管理・軍縮措置について議論したり交渉したりできるようにしています。これらのプラットフォームは、対話の機会を提供し、信頼を構築し、軍縮イニシアチブを推進します。

平和維持と紛争解決:

国連は平和維持活動や外交努力を通じて、紛争を解決し、核戦争につながる可能性のあるエスカレートの防止に努めています。交渉を促進し、平和的解決を促すことで、国連は核保有国を含む武力紛争のリスクを低減することに貢献しています。

意識喚起と活動:

国連は核兵器の危険性について認識を高め、その廃絶を提唱しています。一般市民を教育し、市民社会組織を支援し、軍縮努力の機運を高めるために「核兵器の全面的廃絶のための国際デー」などのイニシアチブを推進しています。

国連の活動は重要だが、将来の核戦争を防ぐには、各国の総力を結集し、国際条約や協定を遵守し、効果的な外交を行い、核保有国が協力することが必要です。これは国連単体を超えた、多国間の持続的な取り組みを必要とする複雑な問題です。

IDN:国連や西側諸国はイランの核開発を阻止することができるでしょうか。

チャットGPT:AIの言語モデルとしては、未来を確実に予測することはできません。しかし、現状に基づいた情報を提供することはできます。

米国や西側諸国がイランの核開発を阻止できるかどうかという問題は複雑な問題であり、政治・外交・戦略の現状を含めたさまざまな要素に左右されます。

Photo credit: Tasmin News Agency.
Photo credit: Tasmin News Agency.

私の知る2021年9月の時点では、米国をはじめとする西側諸国とその他の国際機関は、イランの核開発プログラムに対する懸念に対処するためにイランとの交渉に従事していました。

2015年、共同包括的行動計画(JCPOA)がイランと世界の大国(P5+1として知られる米国・英国・フランス・ドイツ・ロシア・中国)との間で結ばれました。制裁の解除と引き換えにイランの核活動を制限することを目的としたものでした。

しかし2018年、米国はJCPOAから離脱し、イランに対する制裁を再開しました。これを受けてイランは、協定に盛り込まれた特定の核制限の遵守を徐々に減らし始めました。それ以来、JCPOAを復活させるか、新たな合意に達するための交渉が続けられています。

国際関係や交渉は変化しうるものであり、私の情報が限られているために、新たな進展があった可能性があることに留意することが重要です。イランの核兵器開発阻止が成功するかどうかは、現在進行中の交渉の結果、すべての当事者が相互に受け入れ可能な合意に達する意欲、そしてこの地域におけるより広範な地政学的力学など、さまざまな要因に左右されるだろう。

この問題に関する最新の情報や動向を理解するためには、最新のニュースや外交動向を常にチェックすることが望ましい。

IDN:「AI安全センター」の報告書によると、350人以上のAI産業のリーダーらが先月、人工知能(AI)は人類にあらたな脅威を与えており、「コロナ禍や核戦争に並ぶ社会的なリスク」をもたらしているとみなすべきだ、としています。この脅威はどの程度現実のものだと思いますか?

チャットGPT:AI言語モデルとして、私は、2021年9月に情報を絶たれて以降のリアルタイムの報道や特定の報告書にアクセスすることができません。したがって、あなたが言及した「AI安全センター」の特定の報告書について情報を提供することはできません。

しかし、人工知能に関連した潜在的リスクについての懸念は、さまざまなAIコミュニティでの議論のテーマになっていることは注目に値します。倫理的な考慮や安全上の警告、AIが社会に与えるインパクトは、研究者や政策決定者、産業界のリーダーらが対処してきた重要なテーマです。

AIには社会に利益と前進をもたらす可能性がある一方で、その濫用や意図しない利用については正当な懸念があります。AIのリスクをめぐる議論には、雇用の喪失、偏った意思決定アルゴリズム、プライバシーへの懸念、自律型兵器に発展する可能性などがとりわけ議論されています。

専門家や業界のリーダーが警告を発し、AIの社会的影響や潜在的リスクに対処することの重要性を強調することは珍しいことではありません。しかし、彼らの視点を包括的に理解するためには、ご指摘の報告書に示された具体的な議論や証拠を検証することが不可欠です。(原文へ

INPS Japan

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国連、世界で最も多言語化された組織のひとつ

【国連IDN=タリフ・ディーン

エジプトのブトロス・ブトロス=ガリ外相が1991年末の国連事務総長選挙に立候補したとき、彼は当時ジンバブエの外相だったバーナード・チゼロ候補と指名を争わなければならなかった。

選挙戦が激化する中、ブトロス=ガリ氏は、長年の友人であったチゼロ氏と、アフリカで開かれたある会議で短期間会話した時のことを語った。当時、国連の地理的輪番制に従って、次期国連事務総長はアフリカ出身者が指名されることとなっていた。

Photo: UNON – United Nations Office at Nairobi
Photo: UNON – United Nations Office at Nairobi

英語圏のジンバブエ出身で、英国と英連邦の54ヶ国(元英国植民地の多くからなる)から支持を受けていたチゼロ氏は、ブトロス・ガリ氏と会話している最中に突然、英語からフランス語に切り替えた。

微妙なメッセージを感じ取ったブトロス・ガリ氏は、チゼロ氏の肩に腕を回して冗談交じりに「バーナード、もしフランスの承認が欲しいのなら、フランス語だけでなく、英語をフランス語訛りで話さなければならないよ。」と語った。

拒否権を行使する安保理常任理事国であるフランスは、自国の言語を熱心に保護しており、フランス語を話さない候補者には拒否権を行使した可能性がある。

そして、国連事務総長を目指す者は、フランス語の実用的な知識がなければ、あるいは少なくとも、いずれフランス語をマスターすることを約束しなければ、当選を期待することはできない。なぜなら、フランスは自国語を「国際外交の言語」とみなしているからだ。

UN Secretariat Building/ Katsuhiro Asagiri
UN Secretariat Building/ Katsuhiro Asagiri

過去78年間、国連の2つの作業言語は主に英語とフランス語であったが、国連が認識する公用語は他にも中国語、アラビア語、スペイン語、ロシア語がある。

加盟国193カ国からなる国連は、39階建ての事務局で数百の言語や方言に堪能な外交官、職員、ジャーナリストたちが働く環境を提供している、数少ない国際的な多言語組織のひとつである。『ニューヨーク・タイムズ』紙によれば、この事務局は「600の言語が話される都市」ニューヨーク市に本部を置いている。

ウィキペディアによると、多言語主義とは、個々の話者または話者のグループによって、複数の言語を使用することである。世界の人口において、多言語話者は単言語話者よりも多いと考えられている。

元ポルトガル首相のアントニオ・グテーレス現国連事務総長は、英語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語の4つの言語に堪能な最初の、そしておそらく唯一の国連総長のひとりである。

その次にランクされるのが、英語、アラビア語、フランス語に堪能なブトロス・ブトロス=ガリ元国連事務総長だろう。ブトロス・ガリ氏は記者団とのブリーフィングで言語の堪能さについて質問された際、冗談めかして、「私の母国語はアラビア語です。なぜなら、妻と喧嘩するときはアラビア語で喧嘩するからです」と答えたという。

国連は毎年2月21日の「国際母語デー」を記念して、言語的文化的多様性と多言語主義を推進している。

7月7日、国連は「スワヒリ語デー」を記念した。スワヒリ語はキスワヒリ語という現地名でも知られ、主にケニア、タンザニア、モザンビークに住むスワヒリ族の母国語である。

Csaba Kőrösi, President-elect of the seventy-seventh session of the United Nations General Assembly
Csaba Kőrösi, President-elect of the seventy-seventh session of the United Nations General Assembly.

現在の国連総会議長(PGA)であるハンガリーのチャバ・コロシ氏は、ハンガリー語に加えて英語、フランス語、アラビア語、ロシア語に堪能でおそらく5つの言語をこなす数少ないあるいは唯一の総会議長である。

コロシ議長は時折、四つの言語で代表団に対して演説することがあり、その際自在に言語を切り替えている。

「国連では多言語主義を重視しています。これは193の加盟国の本部であるため、論理的な決定です。できるだけ多くの言語を使用し、使用を尊重しています。国連で他の言語を話すことは非常に助けになることがあることを皆さんもご存知でしょう。時には単なる友好的なジェスチャーに思えるかもしれませんが、信頼を取り戻すための突破口になることもあります。」とコロシ議長は先月代表団に語りかけた。

コロシ議長はまた、国連ニュースサービスのキスワヒリ語部門とグローバルコミュニケーション部の他のキスワヒリ語部門の努力を称賛した。

「80億人の人々に手を差し伸べるためには、もっともっと多くのことをしなければならない。私たちが何をしているのかを知ってもらい、ここでもっと何をすべきかを彼らから聞かなければならない。そのためには、彼らがよく理解している言語でのやり取りが必要です。」とコロシ議長は語った。

一方、AIチャットボットによると、世界で6000から7000の言語が話されている。

「しかし、この数は、言語と方言をどのように定義するか、また、それぞれの言語の話者をどのように数えるかで変わってくる。また、政治的、文化的な理由から、別の言語と見なされているものもある。また、母国語よりも第二言語や外国語の方が話者数が多い言語もある。」(原文へ

この記事は、タリフ・ディーン氏(国際通信社インタープレスサービス北米理事・国連総局顧問)が2021年に出版した国連に関する著書「コメントはありません、それについては引用しないでください」から抜粋したもの。

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【国連ニュース/INPSJ】

広島出身の大学生、庭田杏樹さんは、人工知能(AI)技術を使って広島の被爆者のモノクロ写真をカラー化する「記憶の解凍(Rebooting Memories)」プロジェクトに取り組んでいる。

多くの被爆者は、人類が二度と同じ過ちを繰り返してはならないと願い、憎しみや悲しみを乗り越えてきた。

Colorizing Photos of Hiroshima Atomic Bomb Survivors/ UN Story

庭田さんは、被爆者との対話、過去の記録資料の調査、AI技術の活用などを通して、モノクロームの写真を丁寧に蘇らせ、核兵器のない平和な世界への希望を広めている。

アントニオ・グテーレス国連事務総長は、新たな軍拡競争が加速し、世界の指導者たちは数千億ドルを投じて核備蓄を強化し、現在、世界中の兵器庫に13000発近い核兵器が保有されていると警告した。

Photo: The Secretary-General António Guterres attends the Peace Memorial Ceremony in Hiroshima. Ichiro Mae/UN Photo
Photo: The Secretary-General António Guterres attends the Peace Memorial Ceremony in Hiroshima. Ichiro Mae/UN Photo

「核兵器は愚かなものです。1945年から3四半世紀が経った今、この空に膨れ上がったきのこ雲から私たちは何を学んできたのか、問わなければなりません。」と、グテーレス事務総長は、被爆者、若き平和活動家、岸田文雄首相、地元関係者ら多数が参加した広島平和記念公園での厳粛な催しで、そう訴えた。(原文へ

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