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2026年NPT再検討会議に向けた準備が続く

【ニューヨークIDN=セルジオ・ドゥアルテ】

核不拡散条約(NPT)再検討会議の準備サイクルは、同条約の無期限延長を決めた要素の一つとして、再検討・延長会議において決められたものだ。

プロセスは、再検討会議に先立つ3年間に毎年開かれる準備委員会会合で成り立っており、続く再検討会議における合意形成を促進することを目的として、組織的な手続き及び実質的な議論を進めることが想定されている。

残念ながらこれまでの再検討会議の結果は芳しいものではなかった。2005年、2015年、2022年には最終文書に合意できず、2000年と2010年に達成された実際の進展のほとんどは否定され、事実上忘れ去られている。

The Preparatory Committee for the 2026 Review Conference of the Parties to the Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons (NPT) took place from 31 July to 11 August at the United Nations in Vienna. Photo Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN-INPS.
The Preparatory Committee for the 2026 Review Conference of the Parties to the Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons (NPT) took place from 31 July to 11 August at the United Nations in Vienna. Photo Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN-INPS.

第11回再検討会議第1回準備委員会会合(2023年)が今年8月にウィーンで開催されたが、この重要な条約の権威と意義に疑問が付されるような残念な結果に終わった。

すでに2022年の再検討会議で見られていた対立する立場が、激しい応酬の中で再現された。核軍縮の進展具合に関する核兵器国と非核兵器国との間の見解の相違が依然として主要な対立点ではあるが、核兵器国自身を直接に巻き込んだ新たな緊張関係が前面に表れてきた。

現在の準備サイクルは、ロシアとウクライナの戦争がNATOの関与のもとで進行している最中に行われている。これは、1962年のキューバ・ミサイル危機以来、最大の核兵器を保有する国同士の最も危険な危機であり、実際に核兵器が使用される危険性をはらんでいる。

現在の安全保障環境における別の重大な問題は、すべての核保有国による、より殺傷力の高い新兵器の開発、米ロ間の有意義な意思疎通の欠如、インド太平洋地域における安全保障枠組みの構築、戦闘における核兵器使用の可能性などである。

同時に、その他2つのカテゴリーの大量破壊兵器の規制と廃絶をめぐる既存の国際枠組みも困難に直面している。生物兵器禁止条約の最近の再検討会議は最終文書の実質的部分を採択できずに終わった。同時に、この5月に終わった化学兵器禁止条約第5回再検討会議も同様に残念な結果に終わった。

最終的に、国連安全保障理事会が、国際の平和と安全の維持に向けた主たる責任を持つ国際機関としての役割を果たす上できわめて重要になる。

核兵器拡散への懸念

核兵器拡散の懸念は、1945年に核爆発装置の爆発実験に初成功した78年前に始まっている。6か月後、国連総会は、原子兵器とその他すべての大量破壊兵器の廃絶に向けた提案を行う委員会を創設した。しかし、委員会は目標を達成しないまま1948年に解散された。生物兵器と化学兵器は国際法で禁止されているが、核兵器の脅威は依然として人類を悩ませている。

1965年、総会決議2028(XX)は、合意された5点の主要原則に則って、核兵器の拡散を予防する条約を交渉するよう「18カ国軍縮委員会」(ENDC)に呼びかけた。そのうち最初の2つの原則は、条約は「核兵器国や非核兵器国が、どのような形態であっても、核兵器を直接あるいは間接に拡散することを許すような抜け穴があってはならないこと」、次に、条約は核兵器国と非核兵器国との間で相互に合意された権利義務のバランスを保っていなければならない、というものだった。

1965年から68年にかけてENDCの条約草案の議論は妥結しなかったが、国連総会が1968年にNPTを採択し、同条約は核不拡散・軍縮体制の礎石とみなされている。その中心的な合意点は、核軍縮に向けた早期かつ効果的な措置を採ることと引き換えに、核兵器を持たない国々が核の取得を放棄するという形式だった。NPTはまた、条約第1条・第2条にしたがって、すべての加盟国による核エネルギーの平和的な開発・研究・生産・使用の不可侵の権利を謳っている。

これまでに開催された10回の再検討会議を悩ませてきた不和と意見の不一致の多くは、条約を最終的に採択した当事国の多くが、それぞれ別個の、かつ慎重にバランスが取られた義務に文面上も精神の上でも誠実に従っていない、という認識から生じている。時が経つにつれ、NPTは実際、権利と義務のバランスが大きく崩れ、締約国を2つのはっきりと分かれたグループに分断してきてしまった。

たとえば、非核兵器国の条約履行状況を検証する詳細かつ強制的な手続きが定められているのに対して、核兵器国には同様の条項が存在しない。条約上の核軍縮義務を果たそうとすらしない核兵器国側の政治的意思の欠如は、NPT再検討プロセスが直面している困難の主な原因だとみなされてきた。核兵器国は核軍縮義務そのものは否定していないが、自国の核兵器は安全確保のために肝要なものであり、現在の安全保障環境は、核兵器を最終的にゼロに導くような法的拘束力があり時限を定めた措置の採択を許すものではないと主張している。

他方、圧倒的大多数の国々は、核軍縮は核兵器国やその市民も含めた国際社会の安全を全体として向上させ、核兵器に付随した人間と環境に与えられるリスクは、核兵器が持っているとされるメリットを上回るものだと考えている。

NPT発効から53年

条約発効から53年、NPTははたして核兵器廃絶という目標を前進させたのだろうかという疑問は消えない。核兵器の数自体は冷戦最盛期の7万発から劇的に減少したが、今日の核兵器は、数の上でも、あるいはその秘匿性や破壊力の上でも急速に拡散している。核兵器使用の影響が及ぶ範囲は交戦当事者に限られないから、人類全体を脅威にさらしている。地球上の人間の生命が核交戦によって絶滅しかねない。

NPT再検討会議準備委員会会合の最初の2回の任務は、条約の原則及び目的、それに、条約の完全履行及び普遍性の促進を念頭に置いた特定の課題について検討するものであり、第3回会合の目的は、前2回の会合の結果を考慮に入れて、再検討会議そのものに対する全会一致の勧告案を形成することにある。

2022年の第10回再検討会議は、条約再検討プロセスのさらなる強化に関する作業部会を設置した。部会は第1回準備委員会会合に向けて会合を持ったが、報告書に合意することができなった。同様に、第1回準備会合そのものも、実質的な全会一致報告書を採択できずに終了した。

NPT再検討会議の準備段階はこれまでも常に対立含みではあったが、近年、さまざまな国やグループがとる立場は、以前と比べて著しく柔軟性を欠いているように感じる。

2010年再検討会議で合意された行動計画の「行動20」「行動21」の下で核兵器国が認めた公約を効果的かつ検証可能にするという目標をもって、上述の作業部会の議長は、自らの権限において、準備委員会に向けた26の勧告を含む作業文書案を提示した。核軍縮に向けた行動に関する締約国の各国報告の透明化などが勧告として盛り込まれている。

批判的検討

このような報告書を批判的に検討するとともに、核兵器の近代化計画に関する説明責任を向上させるための標準モデルの採用が提案された。この標準モデルには、核弾頭の数、種類、状態(配備されているか、配備されていないか)、偶発的または非自発的な使用のリスクを低減するために採用された措置、安全保障政策とドクトリンにおける核兵器の役割、兵器システムの運用上の警戒を低減するために採用された措置、解体された兵器の数と種類、そして最後に兵器目的で利用可能な核分裂性物質の量が含まれている。

The planary session of The Preparatory Committee for the 2026 Review Conference of the Parties to the Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons (NPT) held from 31 July to 11 August at the United Nations in Vienna. Photo Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN-INPS.

最終的に、準備委員会会合の閉幕にあたって、議長がその責任において「事実概要案」を提示した。しかし、それを作業文書に含めることにすら反対する意見が出て、議長はそれを単なる「勧告」に格下げせざるを得なかった。今回手続き的議論にあたって建設的態度を欠いていたことは、過去の準備委員会会合の悲惨な状況を考えても、異例のことだった。

核抑止が人間に与える影響やリスクの問題が初めて取り上げられたことは銘記すべきだ。核共有がNPT第1条と矛盾しないかについても、ロシアがベラルーシに核配備したことやNATOが一部諸国に核兵器を配備していることを念頭に取り上げる一部締約国があった。また、人間や環境に危険があるとして、原子力発電を段階的に廃止することに言及する国もあった。

Photo: Sergio Duarte speaks at the August 2017 Pugwash Conference on Science and World Affairs held in Astana, Kazakhstan. Credit: Pugwash.
Photo: Sergio Duarte speaks at the August 2017 Pugwash Conference on Science and World Affairs held in Astana, Kazakhstan. Credit: Pugwash.

2024年と25年にはさらなる準備委員会会合があり、2026年が第11回再検討会議である。終わったばかりの今回の準備委員会会合で唯一よかった点は、条約の目標に関して―その相対的な意味合いについては異論があるにしても―すべての締約国がコミットし続ける意思を示したことだ。再検討会議が2回連続で残念な結果に終わったことで、各締約国は、いつまでも対立しているのではなく、条約の強化につながる意義ある意見交換が可能になるように現在の再検討サイクルを継続させるべく、自らの態度や立場を見直すだろう。大量破壊兵器に関する現在の国際協定の構造が、下手をすると意義を失い、あるいは時代遅れになってしまう真のリスクがあるからだ。

NPTは、その履行に関する欠陥が指摘され様々な見解があるにも関わらず、国際社会の圧倒的多数の支持を依然として受けており、核軍拡競争の停止と核軍縮という目標に締約国を法的に縛り続ける唯一の取り決めであり続けている。来たる再検討会議に向けた準備段階での現在の混乱は、NPTが今後も意義を持ち続ける上で重大な悪影響を及ぼす。NPTの権威と意義をこれ以上損なわないようにすることが急務だ。(原文へ

※著者は国連軍縮局元上級代表で、現在は「科学と世界問題に関するパグウォッシュ会議」議長。

INPS Japan

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ヒマラヤ山脈の氷河、融解速まる

【カトマンズNepali Times】

科学者らが、ヒマラヤ山脈の氷河の喪失を憂慮する報告書を発表した4年前より、この問題ははるかに深刻であると警告する新たな報告書を発表した。

この新しい研究は、ヒマラヤ山脈の雪、氷、永久凍土について、これまでで最も正確な評価を行ったものである。これによると、 ヒマラヤ山脈の氷河は、今世紀末までにその氷塊の80%を失う可能性があるとしている。また、ヒマラヤ山脈だけでなく、世界最高峰の山々から流れる水に依存する下流の国々(アフガニスタン、バングラデシュ、ブータン、中国、インド、ミャンマー、ネパール、パキスタン)に住む20億人近い人々にも深刻な影響を及ぼす可能性があるとしている。

Water, ice, society, and ecosystems in the Hindu Kush Himalaya /Credit: ICIMOD
Water, ice, society, and ecosystems in the Hindu Kush Himalaya /Credit: ICIMOD

インドや中国などヒマラヤ山脈周辺国8か国が参加する政府間組織「国際山岳総合開発センター(ICIMOD)(事務局:カトマンズ)」は、2019年に報告書「ヒンドゥークシュ・ヒマラヤ・アセスメント」を発表していた。しかし今回発表された新報告書によると、「2011~20年の10年で、その前の10年よりも65%速く氷河が融解しており、このままでは、今後数十年で融解が加速するだろう。」と予測している。

新報告書『ヒンドゥークシュ山脈とヒマラヤ山脈の水、氷、社会、生態系(HI-WISE)』は、山々の雪、氷、永久凍土の融解が、ヒマラヤ流域の水、生態系、社会にどのような影響を及ぼすかについて、最近の科学的進歩をもとに描き出したものである。

報告書では、今世紀半ばまでに「水のピーク」が訪れ、その後は灌漑、家庭用水、工業用水、水力発電に利用できるヒマラヤ山脈を源流とする河川(揚子江、メコン川、インダス川、ガンジス川)の水がますます少なくなると予測している。同時に、気候変動による異常気象は、この地質学的にも生態学的にも脆弱な山岳地帯において、地滑りや洪水のリスクを増大させるとしている。

The south face of Saipal Himal in western Nepal, showing shrinking ice over the past 15 years. Image via Nepali Times. Used with permission.
The south face of Saipal Himal in western Nepal, showing shrinking ice over the past 15 years. Image via Nepali Times. Used with permission. (ネパール西部にあるサイパル・ヒマールの南面。過去15年間で氷河が縮小しているのがわかる。)

気候変動と開発のための国際センター(バングラデシュ)のサリーム・ウル・フック氏は、「この報告書は、ヒンドゥークシュ・ヒマラヤ地域が気候変動の影響に対して特に脆弱であることを示している。この地域と人々を守るために、私たちは今すぐ行動を起こさなければなりません。」と語った。

報告書によると、氷河の融解が脆弱な山岳地帯の生息地に与える影響は特に深刻で、生態系や生物多様性に連鎖的な影響を及ぼすという。

ヒンドゥークシュ・ヒマラヤ地域の生態域(エコリージョン)の67%と、この地域の4つの世界的生物多様性ホットスポットの39%が保護地域外であるため、この地域の非常に豊かな生物多様性は気候の影響に対して特に脆弱である。」と報告書は警告している。

ヒマラヤ山脈の氷河は、山岳地域の住民約2億4000万人に加え、河川流域16カ国の約16億5000万人にとって重要な水源となっており、氷河の融解により水不足の影響を受けるだろう。ヒマラヤ地域の農民はすでに、異常気象による作物の損失、飼料不足、家畜の死に直面している。

Nepali Times

12カ国の35人の科学者によって作成されたこの報告書は、「災害はより複雑で壊滅的なものになっている。」と指摘している。

報告書は、この流域の人々(=世界人口の約4分の1)に影響を及ぼしている気候変動がもたらす連鎖的な影響に備えるよう、政策立案者に求めている。また、避けられない近い将来の損失と被害に対して緊急の国際的な支援と地域間の協力を求め、地域社会が適応するのを支援するよう呼びかけている。(原文へ

INPS Japan/Nepali Times

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アフリカのクーデターと資源の権利

【ワシントンIPS=ソランジュ・バンディアキー=バジ

今年の9月、国連総会で全加盟国の首脳が演説を行った際、いくつかのアフリカの指導者は軍事クーデターで失脚しており、出席できなかった。

表面的には、これらの国々は地理と植民地支配の歴史以外にはあまり共通点がない。最近「政権交代」を経験したガボンとニジェールのケースを考えてみよう。ガボンは生物多様性に富んだ小さな国で、軟禁されている大統領とその前の父親が1967年から権力を握っていた。ニジェールはガボンよりはるかに大きく、ほとんどが砂漠の国である。軟禁中の大統領は2021年に選出された。

西アフリカと中央アフリカで起きているこの不安定な情勢は、地域的にも国際的にも注目を集めている。しかし、それぞれのクーデターの背後にどの国際勢力があるのか、あるいはクーデターを容認すべきかどうかという議論には、資源に関するはるかに基本的な問題が欠けている。

フランス、米国、ロシア、中国は、相次ぐクーデターを非難したり憂慮したりはしているが、「憲法秩序」と民主主義を回復する必要性に焦点を当てている。アフリカにおけるクーデターや紛争の根本的な原因は、貧困と人権侵害を引き起こす資源の採取に関連している。

現在、軍隊がクーデターで政権を排除したアフリカ諸国は7カ国あり、その経済はすべて資源採掘に大きく依存している。マリブルキナファソは世界有数の金産出国である。チャドスーダンは石油採掘に依存している。ニジェールは世界第4位のウラン生産国である。ギニアはアルミニウムの主原料であるボーキサイトの埋蔵量で世界の4分の1から半分を占める。ガボンはアフリカ第2位のマンガン生産国で、その経済も石油とガスの採掘に依存している。政府は、国土の90%近くを占める熱帯林の炭素クレジット市場を開拓する方法を模索していた。

African countries that have had successful coups between 2020 and 2023. Photo credit: Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0

資源採掘に必要な土地、鉱山や掘削作業、精製に必要な労働力、こうした経済活動にはコストがかかる。農業や林業で生計を立てている家族は、より大きな利害関係者が現地に進出して、彼らの土地や資源を奪ってしまった場合、ほとんど手段を講じることができない。

これらの国々では、農村コミュニティーは何世代にもわたってその土地に住み、手入れをしてきた。土地と財産の所有権は、グローバルノースでは個人の富の基盤である。しかし、グローバルサウスコミュニティーーに含まれる資源を理由に、農村コミュニティの権利を奪う法制度が容認されている。

資源採掘セクターは、土地を奪われたコミュニティーの住民が失う生計の代わりとなる適切な手段を提供しない。例えば、鉱山労働者が適切に補償され、職場の危険から保護されている例はまだ見られない。

サヘル地域では、ニジェールが慣習的な土地所有権を認めていることがしばしば評価されている。ニジェールには1993年に採択された先進的な農村法があり、革新的な土地管理システム、法律、制度が定められている。

2021年には、権利の承認と土地紛争の防止を定めた農村土地政策が採択された。ニジェールには2010年に採択されたサヘル地域で最も先進的な牧畜法もあり、家畜に依存する遊牧民コミュニティの権利を認めている。ブルキナファソとマリにも、コミュニティーの権利を強力に保護する法律があるが、その施行は3カ国とも不十分だった。

外国人投資家は、これらの国の資源を開発することに常に関心を示しており、コミュニティーの権利の行使が優先されることはない。採掘セクターからの利益の公平な共有、地元の若者に有益な雇用や土地所有権を提供し、農村土地所有の取り決めを尊重することはほとんど議論されない。

私が生まれ育ったセネガルを見れば、この国がクーデターの連鎖に加わるための材料はすべて揃っている。政府の収入は資源採掘に依存しており、リン鉱山が経済の大部分を占めている。

沖合では天然ガスと石油が発見されており、政府の野心はセネガルを石油、ガス、炭化水素の資源大国にすることだ。セネガルはサヘル地域で最も安定した国であったが、野党の政治指導者や市民が逮捕され、大規模な街頭抗議行動が引き起こされるなど、民主主義の後退が見られる。

また、セネガルの法制度は農村コミュニティーの土地の権利を保護しておらず、農民らは富の基盤が保証されないまま放置されている。セネガルは、現在の政治的・経コミュニティーし、コミュニティーに所有権を与える新しい土地政策と法律を打ち出すのに苦労している。現在施行されている土地法は、1964年にフランスから独立した直後に採択された「国有地法」である。

結局のところ、これは誰が権力を握っているかという問題ではなく、旧フランス植民地に限ったことでもない。これは、資源採掘がどのように優先されるかということなのだ。アフリカに必要なのは、土地統治における抜本的な組織的変革である。コミュニティーは自分たちの土地の処分について決定権をもつ必要がある。住民が経済的不安定から抜け出せなければ、平和は決して実現しない。

「アフリカは金鉱の上に座っている乞食だ。」と、20世紀のセネガルの詩人であり語り部であったビラゴ・ディオップは述べている。自然が豊かであるにもかかわらず、この7カ国のうちマリ、ニジェール、スーダン、チャドの4カ国は、世界の「繁栄度指数」で下位10%、残りの3カ国は下位40%にランクされている。

西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)アフリカ連合(AU)のようなアフリカの地域機関、そして国連のようなグローバル機関にとって、私たち全員が直面している課題は、このような時代遅れの経済モデルから脱却するかということである。今世紀に入り20年が経過したが、自然資源に対するより公平なアプローチの必要性を受け入れる必要がある。それを行わない限り、どの政府も安全ではない。(原文へ

ソランジュ・バンディアキー=バジ博士は、Rights and Resources Initiative(権利と資源イニシアティブ:RRI)のコーディネーター。マサチューセッツ州クラーク大学で女性学とジェンダー研究の博士号を、セネガルのチェイク・アンタ・ディオプ大学で環境科学と哲学の修士号を取得。

INPS Japan/ IPS UN Bureau Report

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米国と中国はウクライナ和平のパートナーとなり得るか?

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

【Global Outlook=ジョン・マークス 

アントニー・ブリンケン国務長官は5月3日、ウクライナの平和を回復するために米国が中国と肩を並べて取り組むことに「何の問題もない」と述べ、称賛すべき一歩を踏み出した。彼は、「原則として、国家、特に中国のような大きな影響力を持った国が平和をもたらすために積極的な役割を果たすことに意欲的であるなら、それは良いことだ」と付け加えた。

国際問題に関するひときわ鋭いコメンテーターであるハーバード大学のスティーブン・ウォルト教授は、さらに踏み込んで、米国と中国が何らかの形で協力して紛争の調停に当たることがもしできれば、ウクライナに平和への道筋ができるかもしれないとForeign Policy 誌に書いた。(

米中協力は、どちらの政府にとっても遠すぎる橋のように思えるかもしれない。どちらも、それぞれの思惑でこの戦争に関与しているが、互いに相手と直接的に関与することは紛れもなく好まないだろう。しかし、両国が国家のエゴを脇に置いて、パワーポリティクスをやめるなら、何万人もの命を救い、ウクライナのさらなる破壊を防ぐために、大きな一歩をともに踏み出すことができるだろう。

米国にとっては、中国と外交レベルで協力するためにウクライナへの武器や情報の供与をやめる必要はないだろう。戦争の道と平和の道は、必ずしも相互に排他的であるとは限らない。二面政策を採用することによって、バイデン政権は、ロシアの侵攻に引き続き立ち向かうと同時に、人命を救うことも優先度の高い事項であることをはっきり示すことができる。また、ウクライナは、米国が参加するのであれば外部調停者の支援を受ける可能性が高くなることはほぼ間違いない。

米国の政策立案者の第一希望はウクライナがロシアの侵攻軍を国から駆逐することであり、それを認識しないのはナイーブというものだ。しかし、Discord漏洩事件で明らかになったように、ペンタゴンの情報分析官らはウクライナが今後1年間に優勢になる見込みはないと結論付けている。このことから、いつであれ近い将来の完全勝利はまずあり得えないという印象を受ける。したがって、米国の選択肢は、武器供給を続けて血みどろの膠着状態を長引かせるか、ウクライナが戦闘停止をもたらす妥協に合意する余地を作るかどちらかのようである。

紛れもなく、妥協をするということはウクライナ人にとって、またロシア人にとって、極めて難しいことであろう。しかし、両国が戦闘を続けて引き分けになるよりは、交渉による和解の方が望ましい結果であることはほぼ間違いない。米国政府が武器提供者と調停者という二つの役割を果たすのであれば、ウクライナは、注意深く耳を傾ける以外の選択肢はほとんどないだろう。

ウクライナ紛争に関する独自の和平計画をすでに提案している中国は3月、サウジアラビアとイランの和解を仲介し、調停者としての有用性を証明した。中国がウクライナにおいても同様の成果を達成できるのであれば、たとえ米国と手を組んだ結果であっても、調停者としての評判は決定的に高まるだろう。そして、中国が成功を収める確率は、米国と協力すればはるかに高くなると思われる。

ロシアは、主たる敵国と目する米国による和平の働きかけを受け入れる可能性はまずないだろう。だからこそ、中国の関与が非常に重要なのである。ロシアが経済面でも政治面でも中国の支援への依存を深め、ウラジーミル・プーチンと習近平が「限界のない友情」に合意したことを考えると、ロシア側は中国の働きかけを真剣に受け止める必要があるだろう。

大国が、たとえ敵国同士であっても、共通の利害があるときには平和を促進するために力を合わせて行動するという冷戦時代の前例があると、ウォルトは述べている。例えば、イスラエルと周辺国との戦争を終結させるため、かつて米国とソ連が共同で努力した例を彼は挙げる。こういった事例では、「二つの超大国の両方が戦闘の停止を望み、それぞれの従属国に圧力をかけて同意させた」と彼は書いている。

戦争が1年以上続いている今、明らかに新たなアプローチが求められている。世界は間違いなく、無駄な紛争を許すような余地も回復能力も使い果たしつつある。ウクライナに平和をもたらすこと、米国と中国にとってはそれを達成するために最善を尽くすことが、実際的にも倫理的にも必須の責務である。

ジョン・マークスは、平和構築に関する国際的NGO団体Search for Common Groundの創設者であり、長年、会長を務めた。現在は、アムステルダムに拠点を置く平和構築グループConfluence Internationalの責任者である。

INPS Japan

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【アスタナINPS Japan/月刊「公明」=カシム-ジョマルト・トカエフ】

世界が国際的な緊張の高まりを目の当たりにし、国連設立以来の世界秩序が棄損しつつあることは周知の事実です。冷戦時代以来の分裂構造が、急速に復活しつつあります。その結果、私たちの地球は、新たな世界的軍拡競争、核兵器使用の脅威、熱い(=武力に訴える)戦争、ハイブリッド戦争、サイバー戦争、貿易戦争などあらゆる形態の戦争の拡散など、深刻な脅威に直面しています。

このような緊張と地政学的動揺が高まる中で、文明間の対話と信頼を強化するための新たなアプローチを打ち出すことは極めて重要です。

外交が国際協力を促進する鍵であることは間違いありません。カザフスタンは、国連憲章に基づく交渉の場においてのみ紛争を解決することを常に支持してきました。わが国は一貫して、世界全体で恒久的な平和、安全、持続可能な進歩を達成することを目的とした原則を推進してきました。

最善の努力にもかかわらず、紛争は世界の多くの地域で依然として多発しています。

新たな国際安全保障システムを構築するために、国際社会は平和のための新たな世界的運動を必要としています。ここで宗教指導者の役割が不可欠になると私は確信しています。世界の人口の約85%が宗教を信仰しており、宗教は私たちの生活に大きな影響を与えています。したがって、宗教指導者は世界情勢に大きな影響力を持っています。さらに、人命の神聖な価値、相互扶助、破壊的な対立や敵意の否定は、すべての宗教に共通する原則です。私はこれらの原則が新しい世界システムの基礎を形成することができると確信しています。

宗教指導者はどのようにして世界平和の推進に貢献できるだろうか。また、実際にどのように機能するだろうか。

まず第一に、宗教指導者は永続的な紛争後の憎しみの傷を癒すことに貢献できます。シリアがまさにその例で、カザフスタンは、同国で敵対行為がほぼ終結したことを歓迎しています。2017年以来、シリア政府、反体制派、トルコ、イラン、ロシアの代表者間の交渉を促進したアスタナプロセス和平交渉を通じて、これに貢献できたことをうれしく思っています。

しかし、紛争における戦闘局面が終わったとはいえ、国内の分裂は依然として残っています。スピリチュアル・リーダーたちは、宗教の力によってシリア社会を癒す重要な役割を果たすことができるのです。

第二に、人間の本性は矛盾に満ちており、挑発や憎悪は常に存在します。最近の北欧諸国で発生した聖典コーランを焼却する行為は、寛容、相互尊重、平和共存の文化を損なう否定的な傾向です。この点で、このような状況や傾向を防ぐための宗教指導者による、的を絞ったコミュニケーションは極めて重要です。

第三に、新しいテクノロジーは人間生活のあらゆる領域を根本的に変えつつあります。これらの変化は、ヘルスケアの向上、ネット上の無制限の情報、コミュニケーションや旅行のしやすさなど、ほとんどが良い方向に向かっています。同時に、デジタル技術の影響下で、社会がいかに分断され、二極化しているかを私たちは目の当たりにしています。

新たなデジタル世界の現実において、精神的な価値観や道徳的な指針を培うことも必要です。宗教はここでも重要な役割を担っています。なぜなら、すべての信仰は、人間主義的な理想、人間の生命の至高価値の認識、平和と創造への願望に基づいているからです。

これらの基本原則は、精神的な領域だけでなく、各国の社会経済的発展や国際政治においても体現されるべきです。

急速な科学技術革命は、人間主義的な理想と倫理に依拠したものでないならば、人類を迷走させかねません。私たちはすでに、一般的な人工知能の出現によって、そのような議論を目の当たりにしています。

結局のところ、道徳的権威と精神的指導者の言葉が、今日極めて重要です。

だからこそ私は、カザフスタンが20年もの間、3年に一度の世界伝統宗教指導者会議を主催してきたことを誇りに思っています。米国の同時多発テロ事件後、宗教間の対立や 過激主義が高まったことに対応して2003年に設立されたこの会議は、宗教指導者が一堂に会することで、宗教間の対話を強化してきました。

Photo: The 7th Congress of Leaders of World and Traditional Religions was held in Astana on 14–15 September 2022 Credit: Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan
Photo: The 7th Congress of Leaders of World and Traditional Religions was held in Astana on 14–15 September 2022 Credit: Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan

異なる文化や宗教共同体の代表者たちがよりよい理解を促進するための努力を結集する方法について、有意義な対話を可能にしてきました。

2019年にカザフスタンの大統領に就任する前、私はこの議会の事務局長を務める栄誉に浴しました。

私は、会議が憎悪と過激主義とは対照的に、寛容と相互尊重をどのように促進するかをつぶさに見てきました。

昨年、わが国は第7回世界伝統宗教指導者会議を開催しました。イスラム教、キリスト教、ユダヤ教、神道、仏教、ゾロアスター教、ヒンドゥー教、その他の宗教の代表を含む50カ国からの代表団が参加しました。2001年のローマ法王ヨハネ・パウロ二世の訪問に続き、カトリック教会のトップがカザフスタンを訪問するのは2度目であり、私はローマ法王フランシスコを歓迎できたことを光栄に思っています。

この20年間で、会議は世界レベルでの文明間対話のプラットフォームへと発展してきました。私は、このイニシアチブが、100を超える民族と18の教派から構成されるカザフスタン国民が安定した調和のとれた社会を形成し、今日平和に暮らしていることに大きく貢献したと確信しています。

宗教的寛容と人権へのコミットメントを通じて、カザフスタンは世界に模範を示し、より平和で調和のとれたグローバル社会を構築するための宗教間対話の重要性を提示しています。

The 7th Congress of Leaders of World and Traditional Religions Group Photo. Photo by Secretariate of the 7th Congress.
The 7th Congress of Leaders of World and Traditional Religions Group Photo. Photo by Secretariate of the 7th Congress.

世界が政治的な不確実性に晒され続ける中、文化や文明間の和解の架け橋がこれまで以上に求められています。私は、カザフスタンが世界伝統宗教指導者会議の活動を含め、宗教と国家間の世界的な対話を促進し、社会の相互理解と尊重に貢献することを確信しています。(原文へ

INPS Japan/月刊「公明」

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「核兵器なき世界」を求める高らかな呼び声

【ベルリンIDN=ラメシュ・ジャウラ】

マーク(仮名)は28歳。彼と同じように20代の若者たちは、米国が日本の広島と長崎に投下した原爆は遠い過去のものだと考えがちだ。しかし、ロシアのプーチン大統領がウクライナ戦争に核兵器を使うと脅して以来、彼らは1989年のベルリンの壁崩壊後に統一したドイツが、なぜ 「核兵器を作ってはいけないのか」を考えるようになった。

マークは自身の考えを、大学外の人文学研究所としては最大であり300年以上の歴史を持つ「ベルリン=ブランデンブルク科学人文学アカデミー」で伝えた。アカデミーの講堂の壁には第二次世界大戦時の銃弾の跡が残っている。

核兵器を持つことで(それが抑止力となり)核の攻撃を受けずにすむという、明らかに一般に広がっている誤解に基づく、質疑応答の場でのマークの発言は、「核兵器なき世界は可能である」をテーマとした分科会でパネル討論に臨んでいた4人の懸念でもあった。パネリストらは、ウクライナ戦争は核兵器不拡散に明らかに悪影響を及ぼし、核戦力の近代化による危険が拡がっていると感じていた。

ローマに本部を置くカトリック系の聖エジディオ共同体が全世界に1200万人の会員を擁する仏教団体である創価学会(本部は東京)などと共催して9月11日に開催したこの分科会は、9月10~12日にベルリンで開かれた国際会議「平和への勇気の声をー宗教と文化の対話」における20の関連行事の一つであった。

寺崎広嗣副会長は創価学会派遣団を率いてこの国際会議に参加し、聖エジディオ共同体のマルコ・インパグリアッツォ会長やイタリア司教協議会会長のマッテオ・マリア・ズッピ枢機卿など様々な要人と交流した。

分科会「核兵器なき世界は可能である」のモデレーターを務めたアンドレア・バルトリ氏は、創価学会とその国際機構である創価学会インタナショナル(SGI)との協力の重要性について語った。彼は現在、平和と対話のための聖エディジオ財団の会長や大量破壊犯罪に反対するグローバルアクション(GAAMAC)の運営委員、アメリカ創価大学のグローバル問題研究所(SIGS)の顧問を務めている。

ベルリンの壁が崩壊しソ連が解体して、1991年に冷戦が終了して以降に生まれた20代の若者たちの懸念に対して、欧州SGIのロバート・ハラップ共同議長は、「課題は多いものの、市民社会組織の支援を受けた国連の努力により、核兵器に関連する2つ目の国際条約が発効している。」と語った

核不拡散条約と核兵器禁止条約

The Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons, signed 20 September 2017 by 50 United Nations member states. Credit: UN Photo / Paulo Filgueiras
The Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons, signed 20 September 2017 by 50 United Nations member states. Credit: UN Photo / Paulo Filgueiras

そのうちの一つが核不拡散条約(NPT)で、核軍縮・核不拡散体制の礎石として、国際の平和と安全保障の推進に不可欠なものである。もう一つが核兵器禁止条約(TPNW)で、2021年1月の発効以来、NPTを補強・補完・強化している。

世界教会協議会(WCC)国際局長のピーター・プローブ氏もこれに同意し、同協議会は「当然ながら、『人道イニシアチブ』と、最終的に核兵器禁止条約の起草と採択につながったアドボカシーの強力な支持組織でした。」と付け加えた。

プローブ氏はまた、「もちろん、核保有国が核禁条約に参加しない限り、そして参加するまでは、条約は事実上無意味だと言う人も多いだろう。しかし、私はそうは思いません。核禁条約は、核保有国が核兵器を保有し続けることを『当たり前』のものとしてとらえる傾向、これまで私たちが黙認してきてしまった傾向に挑戦し、国際法に新たな規範的原則を持ち込むことに成功しています。この新たな規範的原則の重要性は、条約の署名国・批准国が増えるごとに強化されます。とりわけ、国連加盟国の過半数というハードルに近づくにつれてそうなってくるでしょう。」との見通しを語った。

核兵器なき世界へのコミットメント

ハラップ共同議長は、「核兵器なき世界」に対するSGIのコミットメントを振り返って、66年前の1957年9月に創価学会の戸田城聖第2代会長がそれ以降の学会の活動を方向付けることになる「原水爆禁止宣言」を発表していることを指摘した。当時、ICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射実験が成功し、核軍拡競争が激化していた。

Opening ceremony of the exhibition ‘Everything You Treasure – For a World Free from Nuclear Weapons’ in Astana, Kazakhstan. Filmed and edited by Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of INPS Japan.

近年、SGIはその国際キャンペーンとして、ノーベル平和賞受賞団体である核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)と共同で企画した展示会「核兵器なき世界への連帯―勇気と希望の選択」をはじめ、国内外を問わず、核兵器問題の啓発に取り組んできた。

創価学会は、生命の尊厳を尊重するという仏教の原則に基づいて活動している。その目的は、草の根の活動、啓蒙・教育活動、国連をはじめとする様々なレベルでのアドボカシー活動を通じて、平和の文化を涵養することにある。

池田大作SGI会長は、40年以上にわたり毎年、国連と核兵器廃絶などに一貫して焦点を当てた「平和提言」を執筆・発表してきた。

プルーブ局長は、核兵器なき世界は、単に実現可能であるというだけではなく、「もし私たちが、(この地球で神の唯一無二の生命創造物である)人類や環境に対する最大の人為的脅威の一つを回避するためには、必要なことでもあります。」と語った。

「核兵器が望ましくないものであることは間違いありません。しかし、国際社会は現在、核兵器の拡散という脅威と潜在的な核戦争の恐怖に直面しています。」と、タンザニアの国会議員でありベテラン外交官のリベラタ・ムラムラ氏は語った。

彼女は、タンザニアが建国の父であるムワリム・ジュリウス・カンバラゲ・ニエレレ初代大統領の指導の下、核兵器のない世界を提唱する非同盟運動で重要な役割を果たしたことを指摘した。

タンザニアは「6カ国・5大陸平和軍縮イニシアチブ」に参加し、非核世界という火急の必要性を支持してきた。ギリシャ・スウェーデン・アルゼンチン・メキシコ・インド・タンザニアの6カ国は、1984年5月22日の共同アピールで、「核兵器の予防は超大国だけの問題ではない。あらゆる生命を脅かす核兵器は、私たち全てに直接関わってくる問題だ。」と述べている。

こうしたことを背景に、「ペリンダバ条約」として知られる「アフリカ非核兵器地帯条約」が結ばれ、アフリカは非核兵器地帯となった。1996年4月12日にエジプトのカイロで署名開放され、2009年7月15日に発効した。

「多国間主義は、世界の平和と繁栄を脅かす脅威を抑える中心的な役割を担ってきた。今こそ私たちは、集団的解決のための古来からのメカニズムである多国間主義を復活させ、信頼する必要があります。」と、ムラムラ氏は語った。

The picture shows eminent participants in the International Interfaith Meeting in Germany, with Mr Hirotsugu Terasaki, second from left in the first row. Credit: Seikyo Shimbun
The picture shows eminent participants in the International Interfaith Meeting in Germany, with Mr Hirotsugu Terasaki, second from left in the first row. Credit: Seikyo Shimbun

アジア平和宗教者会議の篠原祥哲事務総長は、核兵器なき世界への呼びかけに加わって、同会議の創設の理由の一つが核兵器廃絶にあると説明した。「1960年代から70年代にかけての米ソ間の異常な核軍拡競争によって、人類滅亡の危機が迫っていることを危惧した世界の宗教指導者たらが、核戦争の予防と核兵器廃絶のために立ち上がり、人間愛と兄弟愛を訴えてきました。」

それから55年が経ったが、地球上にはいまだに核兵器が存在し、核戦争の脅威は近年高まっている。「米国の科学学術雑誌(原子科学者紀要)の『世界終末時計』は今年が最悪の時期であることを示し、私たちが大きな危機の中で生きていることを暗示しています。その主な理由のひとつは、ウクライナにおける核使用のリスクの高まりです。」と、篠原氏は語った。(原文へ

INPS Japan

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G20をリードするインド、グローバルサウスのSDGs実現に邁進

【シンガポールIDN=カリンガ・セネビラトネ】

ロシアと米国が、ロシアによるウクライナ侵攻を非難しなかった9月10日のG20ニューデリー首脳宣言を歓迎した。米ロと西側諸国の見解がこのように一致することは珍しいが、これら国々が注目したのは、国際社会が直面している開発の問題であった。

ロシアを代表してG20に参加したセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、政治的な声明に終始するよりも、グローバルな開発の果たす中心的な役割についてコンセンサスを導いたインドを称賛した。

G 20 India Logo

昨年、インドネシアのバリで開催されたG20サミットは、ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領を招いて演説をさせた欧米諸国にハイジャックされた格好になった。G20バリ首脳宣言は、戦争を開始し世界を経済危機に陥れたロシアを明確に非難していた。しかし、今年はインドがゼレンスキー大統領の招待を拒み、西側諸国がウクライナ問題をサミットの主要議題にしてしまわないように説得した。

30ページ、83条にわたるニューデリー首脳宣言には、ウクライナに関するわずか3つの短い節が含まれているに過ぎない。また、その部分にしても、人間の苦しみを止め、戦争がもたらす負の経済的影響を緩和することの重要性を謳ったものだ。

9月10日にニューデリーで行われた記者会見でラブロフ外相は、西側諸国によるウクライナ問題のゴリ押しを止めるべくインドが「グローバル・サウス(世界の南側に偏っている途上国)」の国々を「覚醒」させたことを称賛した。「インドはG20内のグローバル・サウスの国々の結束を固めることに成功した。」と述べ、開発目標に向けたアジェンダの舵取りにおいて、ブラジル、中国、南アフリカが果たした役割を認めた。

Canada's Prime Minister Justin Trudeau./ Photo: European Parliament from EU, CC BY 2.0,
Canada’s Prime Minister Justin Trudeau./ Photo: European Parliament from EU, CC BY 2.0,

しかし、カナダのジャスティン・トルドー首相は、G20の「コンセンサス」を優先させたとも言われる首脳宣言対する失望を表明した。「今回の首脳宣言は、とりわけウクライナ問題に関してもっと強い言葉を盛り込むことができたはずだと思う。」とニューデリーでの記者会見でトルドー首相は語った。

一方、マクロン大統領はサミット終了後の記者会見で、「G20は国際的な経済問題を解決するために創設されたものであり、ウクライナ戦争に関する外交的進展を期待する場では必ずしもない。」と語った。しかし同時に、ロシアがインドで外交的勝利を収めたことは認めなかった。

インドのナレンドラ・モディ首相は、サミット前に「プレス・トラスト・オブ・インディア」とのインタビューで、「人間中心の開発モデル」に導く決意を語った。モディ首相は、このビジョンをG20が将来のロードマップとして採用する必要があると主張した。

「人間中心のアプローチへの転換は世界的に始まっており、われわれはその触媒の役割を果たしています。」とモディ首相は述べ、特にパンデミック中とポストパンデミック期にインドが達成した開発成果のいくつかを指摘した。

「グローバル・サウス、特にアフリカの世界情勢への参加拡大に向けた取り組みは勢いを増しています。インドのG20議長国就任は、いわゆる 『第三世界』の国々にも自信の種をまきました。これらの国々は、気候変動や世界的な制度改革など多くの問題に関して、今後数年間で世界の方向性を形作る自信を深めています。」

SDGs達成への道は、宣言のB項とC項において13ページにわたって詳述されている。モディ首相は、「SDGsに関する世界的な進展は、まだ目標の12%を達成したに過ぎない。」と述べてまだ道半ばであることを強調し、SDGsに向けた前進を加速するようG20諸国に呼びかけた。

そのための施策として、DX(デジタルトランスフォーメーション)や人工知能(AI)、データの進歩、デジタルデバイドへの対応の必要性を認識することが挙げられる。また、2030SDGsアジェンダの実施に向けたボトルネックに対処する途上国の国内努力を支援するため、あらゆる資金源から、手頃な価格で適切かつ利用しやすい資金を動員することへのコミットメントも呼びかけた。

首脳宣言はまた、持続可能な社会経済開発と経済繁栄の手段としての観光と文化の重要な役割を強調した。また、SDGs刺激策を通じてSDGsの資金ギャップに対処しようとするアントニオ・グテーレス事務総長の努力に留意し、9月末に開催される国連のSDGsサミットを全面的に支援することを約束した。

G20開幕に先立つ9月8日にニューデリーで会見した国連のグテーレス事務総長は、「グローバル社会は機能不全に陥っている。」と述べ、G20を通じて「我々の世界が必死に求めている変革」を加速するようインドに呼びかけた。

Antonio Gutierrez, Director General of UN/ Public Domain
Antonio Gutierrez, Director General of UN/ Public Domain

グテーレス事務総長は、戦争や紛争が激化し、グローバルな金融システムが時代遅れで不公正であり、「抜本的な構造改革が必要」であるため、無駄にしている時間はないと警告した。貧困、飢餓、不平等が拡大する中、グテーレス事務総長は「このような世界の分断は、最良の時であれば深く憂慮すべきことだが、現在においては破局を意味します。」と述べ、G20の指導者たちに連帯を築くよう訴えた。

ニューデリー首脳宣言は、食料安全保障と飢餓撲滅の分野において、G20持続可能な金融ロードマップに沿って、持続可能な金融の規模を拡大するための行動をとるというG20の公約を再確認する一方で、雑穀や、キヌア、ソルガムのような気候変動に強く栄養価の高い穀物や、米や小麦、トウモロコシのような伝統的な作物に関して研究協力を強化する取り組みを促進することで、世界的な食料安全保障を強化することを約束している。

G20の首脳宣言は初めてグローバル・サウスの懸念を反映したものだったが、サミット後の行動は世界に変化をもたらし、グテーレス事務総長が警告したような惨事を避けることができるだろう。

サミット閉会にあたってモディ首相は、「各国からの提案を検討し、実施に向けてどう加速できるかを検討するのは我々の責任です。」と述べ、11月にG20サミットをオンラインで開催することを各国に提案した。

G20の議長国は、2024年がブラジル、2025年が南アフリカとなる。

インドの外交官を30年以上務めたM・K・バドゥラクマール氏は、「RTチャンネル」のコラムで、G20声明は「ウクライナ問題に焦点を当てることを避けた」欧米諸国の冷静な判断によって可能になったものだとの見解を述べた。

「デリーサミットへの準備中やサミット期間中に、ロシアバッシングや、西側諸国の首脳がその件で感情を爆発させるようなこともなかった。ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長も米国政府の態度と足並みをそろえて自制を保った。」とバドゥラクマール氏は指摘した。

「バイデン政権は、グローバル・サウスを動かす望ましい指導者としてのモディ首相の立場を強化する『大きな成功』をこのサミットでもたらしたいと考えていました。米国は、グローバル・サウス、とりわけアフリカに対するアプローチにおいて大胆な軌道修正を図ったのです。というのも、地政学的な空間を独占しようとする中国とロシアからの挑戦が強まっており、そのような地政学的な現実が米政権の念頭にあったからです。」とバドゥラクマール氏は論じた。

サミットが開催された週末の2、3日の間に、(中国の一帯一路構想に似た)鉄道を建設してインド・中東・欧州回廊を造ろうとする構想をバイデン大統領が発表し、ハノイにおける米越首脳会談の翌日に持続可能な開発を目指した米・ベトナム包括的戦略パートナーシップが発表され、アフリカ連合をG20に加入させるモディ首相の試みが支持され、世界銀行による融資構造を強化するG20の新たな構想が発表された。バドゥラクマール氏は、「グローバル・サウスとの関与を強めたい西側の『危機感』がこの背景にあった。」と指摘している。

「これ以上強いメッセージもないだろう。米国はグローバル・サウスとの関与をリードしようと努めている。このパラダイムシフトの中で、バイデン大統領はモディ首相を主要な同盟相手とみなしている。もちろん、グローバルな同盟国としての米国との戦略的パートナーシップを加速し強化する意思を最近インドが明確に示していることが背景にあります。」とバドゥラクマール氏は語った。

G-20 India

シンガポールの元外交官で、「責任ある国家経営のためのクインジー研究所」のオンライン刊行物である『責任ある国家経営』の取材に応じたキショア・ムブバニ氏は、「米国はインドの取り込みに躍起です。逆説的だが、これと最もよく比較できるのは、ソ連に対抗して中国を取り込もうとした米国の1970年代の試みです。今日、中国と対抗するために米国はインドを取り込もうとしている。バイデン大統領がインドのG20に出席し、インドネシアで開催された東アジア首脳会議に欠席したのはそのためです。」と語った。

「インドは、G20議長国としてニューデリー首脳宣言に結実した巧みな外交と戦略によって、新しい世界秩序と意思決定の中心に自らをしっかりと位置づけました。」とNDTVの国際問題コラムニスト、バルティ・ミシュラ・ナス氏は主張した。

「交渉を通じて、インドは分断よりも結束を強調しました。今回のG20議長職就任はインドにとって歴史的な瞬間であり、新たなグローバル秩序におけるインドの存在感を高めるものでした。今日、世界はインドを信頼に足る強固な大国であり、恵まれない国々や疎外された国々の擁護者であると見ています。」(原文へ

INPS Japan

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アフリカ救済に関与するBRICS

【ハラレ(ジンバブエ)IDN=ジェフリー・モヨ】

南アフリカ共和国(南ア)で8月22日から24日にかけて3日間の日程で開催されたBRICSサミットは、対アフリカ開発支援の新たな取決めがより公正かつ平等なものになるとの希望をアフリカ大陸で高めた。アフリカは数十年にわたって、開発融資のためにかえって西側により多くの支払いをしてきたとの批判もある。

ブラジル・ロシア・インド・中国・南アから構成されるBRICSは、2009年の結成当初にはその意義に疑念も持たれていたが、世界的な機構を支配する西側諸国に対する対抗勢力だと今やみなされている。ロシアのウクライナ侵攻と西側諸国の対ロ金融制裁が、BRICSが代表すると見られる「グローバル・サウス」と呼ばれる地域に悪影響を及ぼしたことから、BRICSの重要性はさらに増している。

サミットに出席しなかったロシアのウラジミール・プーチン大統領はビデオメッセージで、「われわれの経済関係の中で、脱ドル化の客観的で不可逆的なプロセスは勢いを増している。」と述べた。

しかし、BRICS共通通貨に関する議論はサミットの議題とはならなかった。セルゲイ・ラブロフ・ロシア外相は、ブラジルのルーラ・ダ・シルヴァ大統領の後押しを受け、BRICS諸国間の共通通貨を支持する発言をしていた。

南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領は、「アフリカの課題を前進させることは、わが国がBRICSの議長国を務める間の戦略的な優先事項であった。」と8月23日の開会の挨拶で語った。

BRICSが立ち上げた「新開発銀行(NBD)」の総裁を務めるブラジル出身のジルマ・ルセフ氏によると、BRICS諸国はアフリカにとって「良きパートナー」だという。ルセフ総裁はBRICSサミットのスピーチでこのように述べ、NDBはアフリカの物理的面・デジタル面でのインフラ建設を金融支援し、持続可能な開発目標(SDGs)の達成を後押しすると語った。

今回のBRICSサミットでは、エジプトとエチオピアのアフリカ2カ国が、アルゼンチン・イラン・サウジアラビア・アラブ首長国連邦とともに来年1月からこの枠組みに参加することが認められた。

基軸メンバー(濃い青)、2024年1月以降の新規メンバー(薄い青)、正式に加盟を申請している国(橙色)、加盟に興味を示している国(黄色)、招待を辞退した国(緑色)Credit: By Dmitry Averin, - Own work, CC BY-SA 3.0
基軸メンバー(濃い青)、2024年1月以降の新規メンバー(薄い青)、正式に加盟を申請している国(橙色)、加盟に興味を示している国(黄色)、招待を辞退した国(緑色)Credit: By Dmitry Averin, – Own work, CC BY-SA 3.0

人権問題への批判から欧米諸国と敵対してきたジンバブエは、BRICSへの加盟も目指している。コンスタンティーノ・チウェンガ副大統領が同国を代表して今回のサミットに参加した。

「ジンバブエは、BRICSが多極的で包括的な世界秩序を促進する強力な同盟であると認識している。この同盟に参加することで、ジンバブエは志を同じくする国々と協力し、集団の力を活用するまたとない機会を得ることができる。」とチウェンガ副大統領はサミットで語った。

同氏はさらに、「BRICSの新開発銀行(NDB)設立と、BRICS加盟国と他の南側諸国との間で地域通貨を使用するという提案を称賛する。」と述べるとともに、「ジンバブエは、南の他の国々と同様に、開発プロジェクトのための代替資金源としてNBDの恩恵を受けることを望んでいる。」と語った。

ザンビアのハカインデ・ヒチレマ大統領は、BRICSがアフリカ諸国、特に自国にとってゲームチェンジャーとなることに期待を表明した。

「ザンビアとしては、多くの機会にたびたび発言してきた問題に対応するための真の機会をBRICSが提供してくれるものと期待している。資本のような開発にとって不可欠の要素に伴った不平等の問題に対処するために、グローバルな世界秩序を改革する必要がある。」と、ヒチレマ大統領は語った。

サミットの参加者らは、アフリカに有利な状況をもたらすために、BRICSの新開発銀行による融資の利率は比較的低く抑えるべきだと議論した。

2000年までのアフリカの債務を帳消しにするキャンペーンを展開していた「ジュビリー2000」の前身である「債務の正義」は、昨年のG7サミットの前にG7メンバーに対し、アフリカの借金の35%を占める中国などからの二国間融資よりも、欧米の民間銀行の方がはるかに高い金利を課していることを指摘していた。

アフリカ諸国は、新開発銀行から有利な利率で融資を受けたいとの意向を表明している。ボツワナのスランバー・ツォグワネ副大統領は、BRICSサミット出席後、同国の『デイリー・ニュース』紙の取材に応えて、「従来の国際機関の構成から我々は教訓を学んでおり、より民主的なあり方を望んでいる。」と述べた。同氏はモクウィツィ・マシシ大統領の代理でサミットに出席していた。

ただし、ナミビアのように、サミットに参加しつつも、BRICS入りそのものには慎重なアフリカ諸国もある。

隣国の南アでBRICSサミットが開かれるのを前に、ナミビアのネトゥンボ・ナンディ=ヌダイトワ国際関係相は、「BRICSは新たなメンバー国に門戸を開いたと聞いているが、加入宣言の前にその手続きについてまずは知る必要がある。我々の経済に利益をもたらすかどうか考えてみる余地はある。」と記者団に語った。

しかし、ジンバブエの隣国モザンビークのように、BRICS入りに熱意を示している国もある。同国のフィリッペ・ニュシ大統領は今回のサミットに出席した。

「この対話に参加することによって、BRICSが具体的な行動を通じて利益及び取り組みを共有するもう一つの明確な道筋を示し、我々の国々の構造的な利益を巡る様々な問題においてグローバル・サウスを特徴づける相補性と連帯という環境の下で相互利益をもたらすものだとの確信をモザンビークは得た。」とニュシ大統領はBRICSサミットで発言した。

国連食糧農業機構(FAO)中国オフィスの代表を務めるカルロス・ワトソン氏は新華社通信の取材に答えて、「BRICS諸国と他の国々との協力は2030年までのSDGsの達成において『よい成果』をもたらすうえでカギを握る。」との見方を示すとともに、「農業部門では、グローバル・サウスの国々の間での協力が、農業開発、食料、栄養安全保障、農村開発、貧困削減の触媒として重要な結節点となることができる。」と語った。

中国もまた、開発途上国が国連の持続可能な開発目標に沿った開発目標を達成できるよう支援している。

南アフリカ・ツワネ大学の著名な講師であるリッキー・ムニャラジ・ムコンザ博士は、アフリカ諸国を取り込もうとするBRICSの取り組みを高く評価した。

「BRICSはアフリカにとって良いニュースだ。南と南の関係に貢献する組織として、アフリカ大陸の経済的利益に目を向けると、これは特にそうです」とムコンザ博士はIDNの取材に対して語った。

マラウィ大学政治行政学部の研究者ギフト・サンボ氏は、BRICSに加わることでアフリカ諸国の希望は高まっていると述べた。

(from left) President of Brazil Lula da Silva, President of China Xi Jinping, President of South Africa Cyril Ramaphosa, Prime Minister of India Narendra Modi and Foreign Minister of Russia Sergey Lavrov, in a family photograph during the BRICS Leaders Retreat Meeting, at Johannesburg, in South Africa on August 22, 2023. Photo Credit: By Prime Ministers Office - Press Information Bureau, GODL-India.
(from left) President of Brazil Lula da Silva, President of China Xi Jinping, President of South Africa Cyril Ramaphosa, Prime Minister of India Narendra Modi and Foreign Minister of Russia Sergey Lavrov, in a family photograph during the BRICS Leaders Retreat Meeting, at Johannesburg, in South Africa on August 22, 2023. Photo Credit: By Prime Ministers Office – Press Information Bureau, GODL-India.

「アフリカ諸国がBRICSに寄せる期待の大きさは理解できる。この地域には、ワシントン・コンセンサスよりもBRICSの方が公正な貿易取引を行える可能性が高いという強い認識がある。アフリカにおける経済大国である南アがBRICSの主要メンバーであることも、この認識を強めている。BRICSへの強い親近感は、グローバルな政治経済におけるアフリカの交渉力を高めることだろう。」とサンボ氏はIDNの取材に対して語った。

ジンバブエの政治学者ギブソン・ニカジーノ氏もまたこの議論に加わった。

ニカジーノ氏は、「世界政治システムは、西側の支配的な政治的、社会的、経済的秩序に対抗し、従来疎外されてきた国々が経済的正義と平等を目標に合併できるよう、形を変え、再編成されつつあります。」と指摘したうえで、「BRICSは、世界的な問題に対処する支配力を持つG7や西側の一方的なアプローチに対抗するため、南南協力や経済的可能性に存在するポテンシャリティーについて、アフリカに代替案を提示しています。BRICSは公正なウィンウィンの協力を提唱していることから、経済活動、生産高、協力に関する実績はアフリカにとって好ましいものです。」と語った。(原文へ

INPS Japan

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映画『オッペンハイマー』を観た日本人ジャーナリストが、本編に描かれなかった核兵器が長期にわたって人体に及ぼす人道的な影響について考察した。

【アスタナNepali Times/INPS Japan=浅霧勝浩(Katsuhiro Asagiri)】

 「核実験に反対する国際デー」を記念する中央アジア地域会議の取材で訪れたカザフスタン共和国の首都アスタナで、映画『オッペンハイマー』を観た。この映画はデリケートな内容であるため、被爆国日本ではまだ公開されていない。

Time-lapse detonation of Gadget, Trinity nuclear weapons test, July 16 1945. Public Domain.

日本やカザフスタンのように、原爆投下や核実験による深刻な健康被害がいまだに残っている国々の人々にとって、この映画は、一抹を不安を掻き立てるものになるだろう。なぜなら、この映画の本編では、原爆がもたらす大量死や放射能による病気をわずかに仄めかしているだけで、原爆被害の実相を描くことを避けていたからだ。

クリストファー・ノーラン監督は、史上初の原子爆弾の製造と核爆発の背後にある政治と、物理学者J・ロバート・オッペンハイマーが直面した道徳的ジレンマを赤裸々に描き、ハリウッド映画として素晴らしい作品に仕上げている。ただ、1945年7月のトリニティー核実験以来、核兵器が人類に及ぼした人道的な側面や、映画で登場した核爆弾が実際に使用された広島と長崎の壊滅的な破壊、そして今日まで続く想像を絶する核爆発が人々にもたらした危険性についても描いてほしかった。

この映画は、トリニティー核実験後、ネバダ砂漠のロスアラモスから風下に住んでいた約15,000人のアメリカ人が被った放射性降下物による健康被害や長期にわたった苦しみについてさえ触れていない。米国政府の公式説明では、実験場は人里離れた場所にあったということになっているが、この映画ではこの歴史的事実について掘り下げていない。

Semipalatinsk former nuclear weapon test site/ photo by Katsuhiro Asagiri
Semipalatinsk former nuclear weapon test site/ photo by Katsuhiro Asagiri

驚くべきことに、モスクワのソ連中央政府も同じような正当化を行い、当時ソ連領であった中央アジアのカザフの大草原にあるセミパラチンスク核実験場(ベルギーまたは日本の四国の大きさ)を「人里離れたところ」として、実に456回にも及ぶ核実験を繰り返した。

興味深いことに、1961年に北極圏で実施されたソ連最大の大気圏水爆実験「ツァーリ・ボンバ」に参画した主任科学者アンドレイ・サハロフも実験後に良心の呵責から、核実験禁止を訴えるようになり、国家から迫害される道を歩んでいる。

今日、カザフスタン北東部のセミパラチンスク核実験場周辺では、今日も核実験による悲劇的な後遺症が続いている。ガンや奇形などの健康問題を抱えた子どもたちが生まれ続け、核兵器の非人道的な結果を痛ましい形で証明している。ここでは1949年から89年まで、150万人以上のカザフ人が核実験によって降り注いだ放射性降下物により被曝した。

Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of INPS Japan
Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of INPS Japan

1991年8月29日、セミパラチンスク核実験場は、まだソ連の一部であったにもかかわらず、カザフスタンによって永久に閉鎖された。その後、カザフスタンは独立し、当時世界第4位だった核兵器を廃絶することで、核兵器保有国から非核兵器保有国へと自主的に転じた世界初の国となった。

2009年、カザフスタンの提唱により、国連総会は8月29日を「核実験に反対する国際デー」とする決議を採択し、この歴史的な閉鎖の意義を強調した。

核実験は、今日に至るまでカザフスタンの人々の生活に深刻な影響を与えている。著名な画家であるカリプベク・クユコフは、母親の胎内で放射線を浴び、両手がない状態で生まれた。クユコフは、セミパラチンスク核実験場の閉鎖に重要な役割を果たした民衆による反核運動(ネバダ・セミパラチンスク運動)に初期から参加し、今日に至るまで彼の作品を通して核実験が人々に及ぼした実相を伝えている。

Karipbek Kuyukov(2nd from left) and Dmitriy Vesselov(2nd from right)/ Photo by Katsuhiro Asagiri
Karipbek Kuyukov(2nd from left) and Dmitriy Vesselov(2nd from right)/ Photo by Katsuhiro Asagiri、Multimedia Director of INPS Japan.

地域会議で被爆証言をしたディミトリー・ヴェセロフは、セミパラチンスク出身の被爆3世だ。彼は鎖骨がないのが特徴の肩鎖関節異骨症を患っており、彼の手はわずかに筋肉と靭帯でのみつながっている状態で、本格的な作業ができない。核実験が世代を超えて人々を苦しめている実相について語った彼の痛切な言葉は、小型戦術核兵器の使用や限定的な核戦争を擁護する人々に対する厳しい警告であり、被爆者の切実な願いを代弁したものだ。

40年に亘ってセミパラチンスク核実験場で爆発した核兵器の威力は、広島・長崎に投下された原爆の2500倍と推定されている。ウクライナ紛争と中米の緊張を背景に、終末時計の不吉な音は真夜中に近づいている。人類は、核兵器の使用と核実験がもたらす重大な結果を記憶しておく必要がある。

地球規模での全面的な核対立がもたらす脅威は、地球上の生命にとって、予測される気候危機の影響よりもはるかに深刻なものであることを再認識する必要がある。

The “Humanitarian Impact of Nuclear Weapons and the Central Asian Nuclear-Weapon-Free Zone” regional conference held in Astana on Aug 29, 2023. Photo credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of INPS Japan.
The “Humanitarian Impact of Nuclear Weapons and the Central Asian Nuclear-Weapon-Free Zone” regional conference held in Astana on Aug 29, 2023. Photo credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of INPS Japan.

カザフスタン外務省が国際的なパートナーと協力してアスタナで開催した地域会議では、参加者が核兵器の人道的影響ついて掘り下げた議論を行った。この核兵器の人道的影響こそが、先にウィーンで開催された核兵器不拡散条約(NPT)2026年再検討会議準備委員会における核保有国間の軍縮議論や、映画「オッペンハイマー」で顕著に欠けていた側面であった。

Mr. Hirotsugu Terasaki, Director General of Peace and Global Issues of SGI Photo Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of INPS Japan.
Mr. Hirotsugu Terasaki, Director General of Peace and Global Issues of SGI Photo Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of INPS Japan.

この地域会議の共同主催者である創価学会インタナショナル(SGI)の寺崎広博嗣平和運動総局長は、核兵器禁止条約(TPNW)の第6条と第7条をめぐる国際社会で進行中の議論を強調した。これらの条文は、締約国に対し、核被害者への援助、被害地域の修復、国際協力の促進を求めている。カザフスタンはキリバスとともに、この重要な議論の中心となる作業部会の共同議長に任命された。

核兵器を保有する9カ国がTPNWを無視し続け、核抑止力の必要性を国民に納得させようとしている一方で、次に誰が核兵器を使用しようとも、この非人道的な兵器の被害を受けるのは、私たちのような一般市民であり、その後遺症は世代を超えて残るものであると認識する必要がある。

私たちは、アメリカ、ロシア、カザフスタン、オーストラリア、アルジェリア、南太平洋諸島、中国、北朝鮮、コンゴ民主共和国など、核兵器の使用や実験、製造の犠牲となった「グローバルヒバクシャ」に対する核兵器の影響という人間的側面に注意を払わなければならない。

第2回TPNW締約国会議が11月27日から12月1日にかけてニューヨークの国連本部で開催され、世界は核兵器使用の脅威に直面している。締約国は、NGOや世界のヒバクシャ代表とともに、TPNWを支持し批准することによって、核兵器のない世界の実現を訴える構えだ。(原文へ

浅霧勝浩は、INPSジャパンの日本人ジャーナリストであり、「Towards a World without Nuclear Weapons(核兵器のない世界へ)」と「SDGs for All(すべての人のためのSDGs)」のプロジェクトディレクター。

INPS Japan

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デカップリングではなくデリスキング: 言葉の巧妙な言い換え以上のものか?

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

【Global Outlook=ハルバート・ウルフ 

中国にどのように対処するべきか? 西側先進国はここしばらく説得力のある対中戦略を見いだそうと試みている。広島で行われたG7サミットの一つの成果は、そのような共同の対中戦略を、少なくとも机上では策定したことである。最終コミュニケによれば、G7を構成する主要7カ国は、問題は中国から経済的にデカップリングすることではなく、リスクを低減し、依存を軽減することだという点で合意している。この戦略は、キャッチーでアングロサクソン的な「デリスキング」という言葉で呼ばれている。理屈はもう結構だ。実際にこの政策をいかに実現するかは、今後の課題である。G7各国政府の一致した合意にもかかわらず、それぞれの国は、利害関係に応じて「デリスキング」が意味することについて独自の理解をしている。(

グローバル規模の二つの事象、新型コロナパンデミックとウクライナに対するロシアの戦争により、G7の中でも外でも、中国との関係を見直す動きが出ている。パンデミックは、経済的サプライチェーンの脆弱性を浮き彫りにし、特に欧州では、緊急に必要な医療物資が十分に供給されないことが明らかになった。これを受け、当初のショック反応の中で、経済的自給自足の可能性に関する議論が起こった。しかし、この議論はすぐに下火になった。なぜなら、経済学者、特にグローバリゼーションの支持者が、今日のグローバル経済における緊密な相互依存関係を考えれば自給自足は現実的な選択肢でないことを明確にしたからである。

そのような中、ウクライナに対するロシアの戦争は、ロシア産のエネルギーや原材料の供給への依存を突如として浮き彫りにした。全ての先進国は中国との経済関係をいっそう深めており、それは危機が生じた際に大きな問題になる恐れがあるため、サプライチェーンの多様化という考え方が広まっているのだ。中国依存という状況に陥らないために、さらには中国に脅迫されないために、今や国家安全保障と経済的利益のバランスを見いだすことに議論の重点が置かれている。要するに、中国の技術が特にハイテク分野で支配的になったら、そして中国が世界中で多額の投資を続けたら、国家安全保障は脅かされるのか、重要インフラが中国にコントロールされるのかということである。しかし、自国の強靭性を高めるために、世界第2位の経済大国である中国との協力を意図的に制限した場合、経済的ダメージはどれほど深刻になるだろうか?

米国では近年、「デカップリング」が中国との競争における超党派の強硬策となっている。当初この政策は、ドナルド・トランプ前大統領によって導入された。特に基幹技術については、米国は断固としたデカップリング政策を打ち出しており、この世界的政敵から重要先端技術を剥奪するために大幅な輸出規制を導入している。EUも日本も、そこまでの強硬路線は取っていない。EUは、「中国はパートナーであり、競争相手であると同時に、体制的ライバルである」というここ数年広められてきた定式を固く守っていた。欧州全体でこの概念を掲げたうえで、各国は三つの側面のうちどれを優先すべきかについては独自の解釈をすることができた。そのため、G7グループもEU加盟27カ国も、説得力のある共通の対中戦略と言える政策を打ち出せなかった。

どうやら今では、G7の残り6カ国が米国を説得し、強硬な「デカップリング」政策を放棄させることができたようだ。少なくとも書面上では。広島でのG7会合の最終コミュニケには、文字通り、G7は「デカップリングではなく、パートナーシップの多様化と深化、そしてデリスキングに基づく経済的強靭性と経済安全保障へのわれわれのアプローチを調和させるため、具体的な措置」を講じると記されている。目的はリスク低減であり、デカップリングではない。コミュニケにはさらに、いっそう明白な文言がある。「われわれの政策アプローチは、中国に害を及ぼすことを目的としておらず、また、中国の経済的進歩と発展を阻止しようともしていない。中国が成長を遂げつつ国際ルールに従って行動することは、世界的な利益となるだろう。われわれはデカップリングせず、内向きにもならない。同時に、経済的強靭性にはデリスキングと多様化が必要であることをわれわれは認識している。われわれは個別に、そして集団的に、われわれ自身の経済的活力に投資するための措置を講じる。重要なサプライチェーンにおける過度な依存を削減する」。

「デリスキング」という言葉はもともと国際金融の分野で使われていたが、欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長が、北京訪問に先立って2023年3月に行った基調講演で「デリスキング」という言葉を数回にわたって口にしたことから大人気となった。「中国からのデカップリングは、実行可能ではなく、欧州の利益にもならないと考える。われわれの関係は白か黒かではなく、われわれの対応も白か黒ではない。だからこそ、デカップリングではなくデリスキングに焦点を当てる必要がある」。

G7の「デリスキング」アプローチは、中国に対処するための実質的に新しい戦略だろうか? 3月の演説でフォン・デア・ライエンは、重要分野、特にマイクロエレクトロニクス、量子コンピューター、ロボット工学、人工知能、バイオテクノロジーなどのハイテク分野において「新たな防衛手段を開発する」必要があるとはっきり述べた。英国と日本の政府はこの方針を採用し、米国も今や「デリスキング」を口にしている。かくして、米国と欧州の立ち位置は一致しつつある。これが、輸出、輸入、投資政策に具体的な変化をもたらすかどうかは、今後を見守る必要がある。

中国政府は即座に反応した。中国を中傷し、内政に干渉するものだとして、G7各国、とりわけ米国の経済圧力を非難した。北京は、英国のリシ・スナク首相の「中国は、グローバルな安全保障と繁栄の時代における最大の課題だ」という発言に言及し、「英国側は他人の言葉をおうむ返しにしているに過ぎず、それは事実を無視した悪意ある中傷だ」と言い返した。その一方で、中国政府は、なおも経済協力に前向きであるとほのめかしている。G7サミットの直後、中国政府は、中国で半導体を製造する米国企業マイクロン・テクノロジーにサイバーセキュリティ審査を実施した。この措置の目的は「情報インフラ・サプライチェーンの安全を確保する」ことである。言い換えれば報復であり、「目には目を、歯には歯を」ということだ。

G7のデリスキング政策の何が新しいのか? デリスキングから連想されるネガティブなイメージは、デカップリングよりも少ないかもしれない。リスク低減のほうが、強硬なデカップリングよりも少しうまいやり方に聞こえるだろう。「リスク低減を嫌がる人などいるだろうか?」と、中国専門家で元SIPRI所長のベイツ・ギルは述べた。「要は、やらなければならないことに対する、レトリック的にはるかに巧妙な考え方だ」。しかし、安全保障上の課題や中国とG7各国の将来的な経済関係の構造は、このリスク低減戦略があったからといって変化することはほとんどないだろう。相反する立場に変わりはない。

ハルバート・ウルフは、国際関係学教授でボン国際軍民転換センター(BICC)元所長。現在は、BICCのシニアフェロー、ドイツのデュースブルグ・エッセン大学の開発平和研究所(INEF:Institut für Entwicklung und Frieden)非常勤上級研究員、ニュージーランドのオタゴ大学・国立平和紛争研究所(NCPACS)研究員を兼務している。SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)の科学評議会およびドイツ・マールブルク大学の紛争研究センターでも勤務している。

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