SDGsGoal16(平和と公正を全ての人に)|ウクライナ| 国連高官、安保理に民間人死者数の徹底調査を要請

|ウクライナ| 国連高官、安保理に民間人死者数の徹底調査を要請

【国連IDN/ UN News】

「ウクライナにおける民間人の犠牲と民間インフラの破壊の規模は決して否めません。」3月17日に開かれた国連安全保障理事会の緊急会合において、国連政治局長がこのように指摘したうえで、徹底的な調査と説明責任を果たすよう要求した。

政治・平和構築担当のローズマリー・ディカルロ事務次長は、安保理でウクライナの諸都市が毎日のように攻撃されている実態について詳述し、その多くが無差別に行われたと報告した。さらに、「民間人は軍事作戦に伴う危険から保護される権利があります。国際人道法は極めて明確です。」と主張した。

UN Security Council adopting historic resolution on youth, peace and security. Credit: UN
UN Security Council adopting historic resolution on youth, peace and security. Credit: UN

2月24日から3月15日の間に、人権高等弁務官事務所(OHCHR)は1900人の民間人の犠牲者を記録し、52人の子どもを含む726人が死亡したと報告した。

ドネツクのOHCHRスタッフは、クラスター爆弾を含む可能性のあるソ連時代のトーチカ戦術弾道ミサイルによって20人の民間人が死亡したとされる3月14日の事件に関する進展を追っている。

マリウポリ: 路上の死体

ディカルロ事務次長は「一方、ウクライナ南東部の港町マリウポリでは、避難できない多くの住民(街は既に2週間に亘ってロシア軍に封鎖されていて、約3万人が脱出したものの、35万人以上の住民が地下室等に隠れて生活を続けている)の食料、水、電気、医療が不足している。また、街の通りには回収されない死体が転がっている。」と警告した。

3月16日にロシア軍の攻撃を受けたマリウポリ劇場は、避難民のための防空壕として機能していたとされ、攻撃を受けた民間の建造物リストに追加された。

Photo: Thousands of Ukrainians seek safety in neighbouring Poland. © WFP/Marco Frattini
Photo: Thousands of Ukrainians seek safety in neighbouring Poland. © WFP/Marco Frattini

国連の優先事項は、ウクライナ東部を含む、砲撃によって街に閉じ込められた人々に手を差し伸べることだという。

ディカルロ事務次長は、ロシア軍に包囲された地域から民間人が安全に退避できる通路の確保と、包囲された地域へ人道物資を搬入できるよう求めるとともに、難民を寛大に受け入れている近隣諸国への感謝を表明した。

「この無意味な紛争に勝者はいません。」とディカルロ事務次長は語った。

「驚異的な」難民のレジリエンス

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のラオフ・マズー運営担当高等弁務官補は、ロシア軍の軍事侵攻が開始されて3週間足らずでウクライナから近隣諸国へ逃れた人の数が52万人から310万人以上になったと指摘したうえで、「第2次世界大戦以降、欧州で最も急速に拡大している難民危機を目の当たりにしている。」と語った。

マズー高等弁務官補は、「私たちは、多くがビニール袋しか持たずに家を後にした難民のレジリエンスと、受け入れ当局やホストコミュニティの並外れたもてなしに、身の引き締まる思いです」と語った。

一方、ウクライナからの難民が200万人に迫るポーランドは、瞬く間に世界最大の難民受入国のひとつとなった。

さらに49万人がルーマニアに、35万人がモルドバに、28万人がハンガリーに、22万8千人がスロバキアに逃れており、その他にもロシアやベラルーシに移動している人々もいる。

Image credit: Royal United Services Institute (RUSI)
Image credit: Royal United Services Institute (RUSI)

マズー高等弁務官補は、「現在の難民の流出ペースでは、近隣諸国の能力の限界が試されています。」と述べ、国際社会にさらなる支援を呼びかけた。

戦争が健康にもたらした悪影響は今後何年も続くだろう

世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイエス事務局長は、戦争による健康への壊滅的な影響は、今後数年から数十年にわたり波及するだろうと語った。

ウクライナの保健サービスは、ロシア軍が水と衛生設備、保健施設を広範に破壊していることから、深刻な混乱に陥っている。

WHOはこれまでに43件の医療機関への攻撃を確認し、12人が死亡、34人が負傷したことを指摘し、「医療機関への攻撃は、いつであれどこであれ、国際人道法違反である」ことを強調した。

医療サービスの途絶は極度の健康リスクをもたらす

テドロス事務局長は、医療サービスや物資の途絶が、ウクライナの主要な死亡原因である心血管疾患、がん、糖尿病、HIVの患者に「極度の」リスクを与えていると語った。同時に、移住、劣悪なシェルター、過密な生活環境は、はしか、肺炎、ポリオのリスクを高めるとみられている。

Tedros Adhanom Ghebreyesus, Director General, World Health Organization at the AI for Good Global Summit 2018/ By ITU Pictures from Geneva, Switzerland, CC BY 2.0
Tedros Adhanom Ghebreyesus, Director General, World Health Organization at the AI for Good Global Summit 2018/ By ITU Pictures from Geneva, Switzerland, CC BY 2.0

また、戦争は新型コロナウィルス感染症の影響を悪化させており、検査の減少が「重大な未検出感染」につながっていると思わる。

WHOは、ウクライナ西部のリヴィウにある倉庫から国内各地の都市に供給ラインを確立しているが、課題もある。

医療物資が必要な人々の手に届かない

テドロス事務局長は、「私たちは、国連の合同輸送隊が困難な地域に入るための重要な物資を準備していますが、今のところ成功していません」と述べ、医療物資を積んだWHOトラックを含むウクライナ北東部のスームイへの輸送隊が街に入れなかったことを指摘した。また、「マリウポリに送る荷物が準備区域に置かれたままであり、輸送を進めることができない。」と語った。

テドロス事務局長はまた、「これらの地域や他の地域へのアクセスは、現在、非常に重要です」と強調し、安保理理事会に対し、即時停戦と政治的解決のために努力するよう促した。

隣国ポーランド

これに先立つ17日、ロシア政府は、国連の最高司法機関である国際司法裁判所からの攻撃停止勧告を拒否した。

ポーランドのクシシュトフ・マリア・シュチェルスキー国連大使は、「ロシアの残忍な行動は100%自ら選んだ戦争である。』と指摘したうえで、「我が国は、戦争がもたらした悲惨な人道的結果を目の当たりにしており、国籍、人種、宗教信条に関係なく、連帯の精神で難民を受け入れていく。」と語った。

シュチェルスキ大使は、ロシアに対し、軍事的な手法を改めるよう強く促すとともに、即時停戦と民間人への人道的アクセスを求めた。(原文へ)

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