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|コロンビア|不法麻薬対策(アヘン対策)開始から100年

【ボゴタIPS=コンスタンツァ・ビエイラ】

不法アヘンの監視を目的に中国の上海で初めて『国際アヘン委員会(International Opium Commission)』が開催されて100年を迎える。そんな中、皮肉にも南米コロンビアのナリノ(Narino)県で今月、極左武装ゲリラ組織コロンビア革命軍(FARC)が先住民のアワ族を殺害する事件が起きた。 

FARC幹部は軍の密告者であるとして8名を殺害したことを認めた。ナリノ地域一帯は現在も麻薬の栽培や麻薬取引の盛んな場所で、同地域に暮らすアワ族はこれまでにも頻繁に被害を受けてきた。

 ナリノ県に近いプテュマヨ(Putumayo)やカケタ(Caqueta)では、米国のイニシアチブで始められた麻薬撲滅支援対策『プラン・コロンビア(Plan Colombia)』により麻薬栽培が撲滅された。 

しかし、「ある地域で麻薬栽培を撲滅しても、栽培は別の場所へ移るだけ。まさに『いたちごっこ』である」と、同政策への効果に疑問を呈する専門家も多い。現在、ナリノ県のコカ栽培地は2万ヘクタールにも及ぶ。 

国際麻薬統制委員会(INCB)が19日発表した年次報告書によると、国際アヘン委員会の設立された1909年の麻薬乱用者の数は80万人だったが、現在は2億4,000万人で世界人口の4%にあたると言う。 

INCBのカミロ・ウリベ博士は最新の報告書で「世界有数の麻薬供給地コロンビアではコカ栽培が27%も増加。違法栽培を続けるため武装ゲリラは銃や対人地雷などを使用しており、政府の麻薬撲滅への取り組みを阻んでいる」と論じた。 

ラテンアメリカでは違法薬物取引に絡む暴力や犯罪が横行している。しかし、麻薬撲滅政策の『プラン・コロンビア』では、ゲリラ撲滅・麻薬対策強化・コカ栽培の根絶・国家経済の活性化・コカに代わる代替作物の提供など多くの目的を未だ達成していない。コロンビアの麻薬撲滅戦争について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

|米国-キューバ|禁輸反対の機運をもたらすルーガー・レポート

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【ワシントンIPS=ジム・ローブ

23日にR.ルーガー上院議員がキューバ政策の見直しを訴えたことで、米・キューバ関係がオバマ大統領の選挙戦での約束以上に変化する兆しが出てきた。元上院外交委員会議長のルーガー氏は外交政策に経験豊かな共和党議員で、キューバへの禁輸は「米国の国益にならない」と報告した。 

The Cuba Wars(キューバ戦争)」の著者でシンクタンク米州対話フォーラムのキューバ専門家であるD.エリクソン氏は、「ルーガー議員の発言はキューバ政策の変更に好意的な環境を作り上げた」といい、人権団体ラテン・アメリカ・ワシントン事務所(WOLA)のキューバ専門家G.テイル氏も「変化の機運をもたらした」とエリクソン氏に同意した。

  ルーガー氏は23日に提出した報告書の冒頭で、「米政府は現在の政策を効果がないと認め、米国の国益を強化するようにキューバに対応すべき」と述べた。 

『Changing Cuba Policy – In the United States National Interestキューバ政策の転換―米国の国益のために』と題された報告書は、47年を経て一方的な禁輸はキューバの人々に民主主義をもたらしていないと指摘している。 

フィデル・カストロから弟のラウルに政権が移って一周年に発表されたこの報告書は、先月の代表団のキューバ訪問に基づき、麻薬阻止と移住に関する二国間の対話の再開、代替エネルギー開発の協力強化、旅行と貿易の規制緩和を求めている。さらにキューバ政府が世界銀行や米州開発銀行等の国際機関に復帰すれば米国との関係改善に役立つとした。 

キューバ専門家の間では新政権の方針について憶測が高まっていた。オバマ氏は選挙戦では旅行や送金の規制解除を約束したが、民主的な改革を求めて禁輸は継続すると示唆していた。クリントン国務長官はキューバ政策を見直すと述べたが、その担当官が決まっていない。 

ルーガー氏を含む議員団は米国人のキューバ旅行に関する規制をすべて解除する法案を提出している。可決されれば禁輸解除への大きな一歩となり、その成否はオバマ大統領の思惑にかかっている。米国貿易振興会(NFTC)のJ.コルヴィン副会長は、産業界は大統領に転換を促すだろうと語った。 

報告書はキューバを孤立させる政策は民主化を妨げるだけでなく世界との不調和となり米国の利益にならないと主張し、中南米やEUとともに新たな多国間戦略を作る超党派委員会の設立を奨励した。 

見直しの機運が高まる米国のキューバ政策について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 
 
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|ガーナ|届きそうで届かない米農家の市場参入

【アクラIPS=フランシス・コクツェ】

去年ガーナの首都アクラで米農家たちは外国からの米の輸入を許可し国内農家の生計を壊している政府に抗議のデモを行った。デモに積極的に参加している1人であるガーナ労働組合会議のGeneral Agricultural Worker’s Union(GAWU)副書記長Edward Kareweh氏は、米の規制緩和政策をガーナ政府に取らせた結果、国内米農家への補助金を廃止につながったとして世界銀行と国際通貨基金を非難している。 

1980年代までは米農家だったKareweh氏はIPSのインタビューに応じ、政府が輸入米を許可した結果、米で生計を立ててきた北部地域の経済を圧迫している、と言う。

 農務省のデータによるとガーナ国内の米の消費量は1990年前半以降増加しており、2005年の米消費量は450,000トンから500,000トンの間にまで上った。 

日本の国際協力機構(JICA)の調査によると、ガーナ国内の米生産は2006年まで約290,000トンであったことから、米の供給不足は明らかである。 

米の輸入が増えた原因は国内供給不足を補うためであるという意見があるが、Kareweh氏は異議を唱える。「農家の生産量増加を支援する政策枠組みが存在しないことが供給不足の原因だ。国内の米の生産が伸びないのは、市場が海外からの安い輸入米で独占されており、ガーナ米農家が市場にアクセスできないためである」 

一方、主要な輸入業者であるFinetradeのJohn Awumi氏は「ガーナの場合、国内の米の生産量が人口に対して十分ではないから輸入米を使っているので、輸入することで国内農家をつぶすことにはならない」と反論する。Awumi氏は政府が今米の輸入を止めたところで解決にはならないと言う。社会基盤が整っていないガーナで米の生産方法を改善して継続的に十分な供給ができるようになるまでに10年はかかると見ているからである。 

ガーナの農家を元気づけるようなニュースもある。北部地域農務ディレクターであるSylvester Adongoは昨年のクリスマス直前に、米農家813人に農地と認定されたイネ種子と10,000ヘクタールを耕作するのに必要な肥料を供給し支援することを発表した。 

Adongo氏によると、1年に200,000トンの米を生産できる土地が低地の3地域に400,000ヘクタールある。これに加え政府はガーナ東部のAveyimeで放棄されていた灌漑設備を復活させようとしており、成功すれば米の生産量を上げることができる。 

ガーナの米生産の現状について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

│女性│女性農民を想う

【ローマIPS=サビーナ・ザッカロ】

世界中で増加している女性農民の発言権を確保するという使命を背負って、新しい国際農業開発基金(IFAD)の代表が就任した。IFADには世界165ヶ国が加盟している。 

代表に就いたのはナイジェリアのカナヨ・ヌワンゼ。パキスタン、ドイツ、イスラエル、ニジェール、インド出身の候補者を破って当選した。任期は4年。 

IFADの専門家によると、世界的な統計は不十分だが、この10年間で女性農業労働者は3分の1増えたという。また、アフリカでは、小規模農家の3割ほどが女性によって運営され、食料全体の6~8割が女性によって産出されている。

 にもかかわらず、女性たちにはまだ十分な権利が与えられていない。女性たちは、資金不足や市場開拓の困難といった男性と共通の問題を抱えているが、その上に、家事との両立を強いられたり、資産への権利を与えられなかったりという女性特有の問題が加わるのだ。 

「持続可能な農村開発のためのアジア農民連合」のエストレラ・ペヌニア事務局長は、職業訓練や意思決定において女性に少なくとも30%の席が与えられていなくてはならない、と話す。 

フィリピンや韓国では、女性が一般的な農業団体とは別に女性だけの団体を結成している。また、フィリピンでは、開発予算の5%がジェンダー関連に割り当てられる。同国では、農民に土地の権利が与えられるときに権利書に男性の名前のみが記載されるという差別的な慣行があったが、女性団体からの要求によって、女性の名も記されるようになってきたという。 

農業における女性差別の問題について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan 

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アフガニスタンは米国の次の窮地になるか

【国連IPS=タリフ・ディーン】

「帝国の墓場」といわれているアフガニスタンに、1万7,000人の米兵増派を計画している米国は、英国、ソビエトに続くのだろうか。「バラク・オバマ大統領はマーティン・ルーサー・キング牧師のいう『軍国主義の狂乱』に道を譲ってしまった」と公共の正確性を求める研究所のN.ソロモン代表はIPSの取材に応じて語った。 

その増派によりNATO軍と合わせた兵力は今年末までに10万に達すると思われる。オバマ大統領が軍事力だけでは問題は解決しないとしながら増派を決定したことについて、「その不確かさはベトナム戦争を思い出させる」とニューヨーク大学のM.B.ヤング教授はいう。 

17日に国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMAが発表した報告書によると、2008年のアフガニスタンの民間人の犠牲者は2,118人で前年を40%上回った。55%はタリバンを含む反政府勢力によるが、39%は政府軍と国際治安部隊によるもので、報告書は民間人の死亡を避けるあらゆる手段が求められるとしている。

 大統領選挙戦ではイラクを誤った戦争とし、イラクから撤退して、イスラム原理主義の復活を抑えるためにアフガニスタンへの兵力増強が必要だとオバマ氏はいった。だが多くの専門家はアフガニスタンがさらに米軍を窮地に追い込むのではないかと指摘している。 

前出のソロモン氏は、オバマ大統領のアフガニスタン増派について、中期的には支持されなくなると予想している。UNAMAの元政務官でランド研究所のC.フェア博士は増派による治安回復に懐疑的で、「アフガニスタンをアルカイダの聖域にしないためにより必要とされているのは、和解のための国際社会からの支援だ」という。 

アフガニスタンの治安問題は多様な勢力が混在するため非常に複雑である。ソロモン氏は米国大統領がアフガニスタンでもっとも険しい道に足を踏みいれたという。「軍事力で解決できないと主張しながら軍事力で解決しようとする矛盾は長期的な理性を欠いている」 

「オバマ大統領はテロとの戦争という側面を論じながら、自身の政治的資本に投資し、国防省の使命を支持し始めたが、その代償となるのはおそらく失敗を運命づけられている戦争である。強大な米軍の最高司令官にとって武力への依存は恒常的な誘惑だが、そのもたらすものは苦しみだ」と同氏は語った。 

オバマ大統領のアフガニスタン増派について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

|コソボ|独立1周年目の不安

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【プリシュティナIPS=アポストリス・フォティアディス】

コソボ独立1周年となる2月17日前夜、首都プリシュティナの道路はお祭り気分の若者で湧きかえった。 

1999年、NATO軍爆撃によりセルビア治安部隊が退去して以来、国連コソボ暫定統治機構(UNMIK)およびNATOコソボ軍(KFOR)が同地の治安維持に当たってきた。しかし、EU文民支援隊(EULEX)に交代するため、12月にUNMIKの撤退が始まると共に混乱が始まった。

 米国およびEU主要国の独立承認により、コソボの国際社会参加への期待が高まったが、独立承認国は54カ国に留まっている。 

ハシム・サチ首相は、独立1年目の成功を讃えているが、国民の苦難は増すばかりである。 

数10億ドルが注入されたものの効果は見えず、失業率は40パーセントを超えており、数千の家族が海外の親類からの援助で生活している有様だ。政府統計によると、毎年3万人強の若いアルバニア人が労働市場に送り込まれて来るが、就職できるのは僅か1/5という。 

サチ首相が約束した大規模な海外投資もなく、大型インフラ・プロジェクトも宙に浮いたままだ。経済活性化努力にも拘わらず、プリシュティナ政府は海外財政支援におんぶに抱っこの状態だ。 

コソボの外交、社会状態は依然にもまして厄介な状態にある。飛び領土内の数千人のセルビア人がコソボの西部、南部に散り、北部では2百万人のセルビア人がアルバニア住民から孤立して暮らしている。セルビア人たちはベオグラードからの援助で生活しているのだ。 

 市民組織「自己決定」のアルビン・クルティ氏は、「北部コソボは実質的な分離地区であり、セルビアと同じ構造で運営されているが、UNMIK、KFOR、EULEXはそれを見逃している。状況は深刻化しており、新たな動乱へ向かっている」と語る。 

クルティ氏の心配を裏付けるかの様に、2月17日セルビアの党代表がプリシュティナから車で1時間のズヴェカン市を訪れ、コソボ・セルビア人協会のメンバーと会い、地域におけるセルビアの主権宣言を採択している。 

あるKFOR兵士は、「北部に住むセルビア人はプリシュティナの権限を受け入れようとしない。今のところ問題は起こっていないが、彼らが一端道を踏み外すと収拾不能な状態に陥る危険性がある」と語っている。 

緊張高まるコソボについて報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

|Q&A|真実は和解をもたらす

【ベオグラードIPS=ヴェスナ・ペリッチ・ジモニッチ

セルビアは、2000年のミロシェビッチ体制崩壊後、同胞が犯した戦争犯罪の調査に大きな努力を払ってきた。しかし、セルビア人に対する戦争犯罪も明らかにされるべき時が来た。 

これら調査の先頭に立つウラジミール・ヴクチェヴィッチ特別検察官は、1999年コソボ在住のセルビア人数百人が誘拐され、臓器獲得のためアルバニアへ送られたとされる事件の調査に当たっている。以下はヴクチェヴィッチ検察官に対するインタビューの概要である。

 IPS:旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷(ICTY)のカーラ・デル・ポンテ主任検事が、昨年4月に出版した回想録の中で1999年のセルビア人誘拐事件について書いていますが、検察局の調査はどうなりましたか。 

VV:欧州評議会のディック・マーティ特使に調査報告書を提出しました。同報告書は、国連コソボ暫定統治機構拉致被害者・科学捜査室のジョゼ・パブロ・バライバー室長が2004年6月に作成した基本報告で、アルバニア北部のブレル村で発見された証拠を上げています。8人の証言から忌まわしい犯罪が行われた場所として同村が特定されたのです。 

IPS:この証拠はどうなったのですか。 

VV: ICTY調査の対象とならなかった証拠の大量破棄が行われる中でそれらは失われてしまいましたが、写真は残っていました。人間のDNAが残っていたかもしれないプラスチック容器が検査されなかったのは残念です。 

IPS:同調査の結果で、被害者の家族に安らぎがもたらされると思いますか。 

VV:はい。行方不明になった人々に何が起こったのかを解明することが我々の第1任務です。アルバニアには3か所の共同墓地があるとの確たる証拠が上がっています。ここには遺体が埋められており、我々はアルバニア人ではないと見ています。 

IPS:他の犯罪も明らかになりましたか。 

VV:捜査の拡大と共に、麻薬、武器、人身取引などが組織犯罪の形で行われていたことが明らかになりました。我々は首謀者が誰であるかに興味を抱いています。 

IPS:セルビアの国家主義者はあなた方の調査を批判していますが、海外、特に米国からの脅迫などありませんか。 

 VV:FBIが私を脅迫した男を突き止めました。戦争に関係した旧ユーゴスラビア人が難民申請により多数海外へ逃亡しました。米国との協力は非常にうまく行っていますが、今後は米国だけでなくカナダとも直接協力して行きたいと思っています。 

我々が行ってきたことは、人々に「戦争に参加した者は愛国者ではない。犯罪者は犯罪者だ」と気付かせることになったと思います。真実究明は同地域の融和に貢献できると信じています。 

旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷の調査を行うウラジミール・ヴクチェヴィッチ検察官に対するヴェスナ・ペリッチ・ジモニッチのインタビューを報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

│印パ│共通の敵としてのタリバン


【カラチIPS=ビーナ・サルワール】

パキスタンのザルダリ大統領は、5ヶ月前に就任して以来、パキスタンにとっての最大の問題は「宗教的」過激派に起因していると繰り返し述べてきた。1980年代のアフガン戦争の中で育ってきたタリバンやアルカイダ、「聖戦士」などが念頭にある。 

これまでのパキスタン指導部は、インドを最大の敵だとみなしてきた。「インドは我々の敵ではない」と語るザルダリ大統領はこれまでの考え方を大きく転換させた。 

パキスタンのマリク内相は、昨年11月にインドのムンバイで発生し180人が死亡したテロ事件の一部がパキスタン国内で計画されたと発表して、周囲を驚かせた。内相は8人に対する刑事手続が開始されていることも明らかにした。

 インドのジャーナリスト、シッダルトゥ・バラダラジャンは「インドで起こったテロにパキスタン領内にいる特定の個人や集団が積極的に関わっているとパキスタン政府が認めたのは史上初めてのことだ」と書いている(『ヒンドゥー』紙、09年2月13日)。 

パキスタンの決断の背景には、米国からの圧力があったといわれている。米国にしてみれば、印パ対立のせいで「テロとの戦い」が遅らされることになってはたまらないからだ。 

米国のパキスタン・アフガニスタン特別大使であるリチャード・ホルブルックは、最近インドを訪問した際、「60年間で初めて、インドとパキスタン、米国が共通の敵(つまりタリバン)に直面することになった」と述べている。 

他方で、平和活動家は、また別の思惑から、パキスタン政府がムンバイ・テロへの自国民関与を認めたことを歓迎している。「パキスタン人権委員会」の北西辺境州支部長であるムサラット・ヒラリは「パキスタン政府はもっと早くこのことを認めるべきだった」と話す。 

ヒラリさんらパキスタンの24人は、「人権を求める南アジアの会」の支援を得て、先ほどインドを訪問した。逆にパキスタン側が今後インドからの訪問団を受け入れる予定もあるという。 

印パの安全保障環境について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリ=IPS Japan 

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│パキスタン│米国の越境無人攻撃が激化 

|本|ブッシュ・ドクトリンは単なる歴史の反復か

【ニューヨークIPS=ダニエル・ルーバン】

ブッシュ前大統領の外交政策は、普遍的優位性と民主主義を目指す米国の原則からの逸脱だったのだろうか。それとも常に存在していた衝動の現れだったのか。イラク戦争は伝統の進歩的国際主義(ウィルソン主義)の発現だったのか背信だったのか。オバマ新大統領が進歩的国際主義に回帰すれば、ブッシュの生み出した混迷を修復できるのだろうか。 

新刊書「The Crisis of American Foreign Policy: Wilsonianism in the Twenty-First Century (米国の外交政策の危機:21世紀のウィルソン主義)」(プリンストン、2009年)の中で、4人の米国の政治学者、G.ジョン・アイケンベリー、トマス・ノック、トニー・スミス、アンマリー・スローターがこの問題を論じている。

 しかしながらこの本では、ブッシュおよびウィルソンの主張に関してほとんど一致がみられず、過去8年の過ちを繰り返さないための施策についても十分な結論は出ていない。論点は、ウィルソン国際主義のビジョンの根底にあるのは多国籍機関の重視か、あるいは民主主義促進かで、前者であればイラク戦争は否定され、後者なら肯定される。 

ウィルソンビジョンが20世紀にどのような意味をもったかについて、アイケンベリーとノックは、冷戦に阻まれ平和な地球社会は実現しなかったことを指摘する。そもそも進歩的国際主義は平等な地球社会を目指しながら、米国の言いなりになる国際機関を頼みの綱としてきた。だがブッシュが国際協調をより重視していればイラク戦争は正当化されたのだろうか。 

国務省のスタッフに任命されたばかりのスローターは、進歩的国際主義の枠組みではイラク戦争を正当化できないと主張し、民主主義は武力で押し付けるものではないとしながら、国際社会は支配者の残虐行為から武力で人々を守る責任があるとしている。 

一方、スミスはウィルソン主義がイラク戦争の正当化に利用されていると批判する。スローターがブッシュ政権の本質は一国主義とするのに対し、スミスは民主主義の促進と考える。けれどもイラク戦争は当初、理想より威嚇への対応であり、人権より大量破壊兵器、民主主義より国益が問題だった。 

おそらく次の戦争の動因は、人道主義ではなく外的脅威への対策として正当化される。必要とされるのは進歩的国際主義の断念だけではなく、米国の国益と米国への脅威の現実的評価となる。イラク戦争の否定が広まる中で、過去の過ちを繰り返さない方法はいまだ不明である。 

イラク戦争とウィルソン主義を論じた本について報告する。 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

|米国|情報開示訴訟によりテロ容疑者虐待の実態がより明確に

【ニューヨークIPS=ウィリアム・フィッシャー】

アムネスティ・インターナショナル米国(AIUSA)、憲法権利センター(CCR)およびニューヨーク大学ロースクール人権センター(CHRGJ)の人権擁護3組織は、米国防省とCIAがテロ容疑者の秘密収容所への移送、身元隠ぺい、釈放遅延で協力関係にあったことを証明する資料を公開した。これら組織は、2004年に政府を相手取り情報公開法に基づく訴訟を起こしていたもの。 

CHRGJのマーガレット・サッタースウェイト所長は、「開示された資料で、CIAの権力乱用行為に手をかすため、国防担当官が法の捻じ曲げを行っていたことが、徐々に明らかになってきた」と語る 

公開された資料の殆どは新聞記事であるが、国防省資料の一部により重大な事実が明かされた。

 国防省輸送司令部メンバー宛ての2006年2月付eメールは、収容所施設に対する批判報道を如何にかわすか論じている。同メールは、グアンタナモ収容所に関する国連報告官のレポートとアブグレイブ刑務所の写真で、米国の人権侵害が批判の的になっているとした上で、状況沈静化のためグアンタナモ収容者の釈放を遅らせるよう指示している。人の噂も45日という訳だ。更に同メールは、これら囚人の輸送にはT型尾翼の大型機の代わりに小型機を使用する方が良いと述べている。 

CCRのジタンジャリ・グェティレス弁護士は、「政府が批判報道をかわすためにグアンタナモ収容者の釈放を遅らせたとは驚きだ。オバマ政権は、この違法行為を繰り返すことなく無実の人々を直ちに釈放すべきだ」と主張する。 

塗りつぶし箇所の多い第2の資料は、バグラムの秘密収容所施設について言及している。 

第3の資料は、CIAと国防省が如何にして国際赤十字委員会(ICRC)の視察を回避しようとしたかを示している。「イラク拘束者の身元隠ぺいのためのジュネーブ協定解釈」と題された資料により、国防省がジュネーブ協定の「セキュリティー抑留者」条項に基づき拘束者の身元隠ぺいは可能と考え、ICRCへの拘束者身元届け出を14日間、最高30日間行わず、その間に情報収集の徹底を図ったことが明らかになった。 

AIUSAの人権・テロ対策政策担当のトム・パーカー部長は、「今回提出された数千ページの資料は、量からすれば透明性が確保されたかに見えるが、それは氷山の1角に過ぎず、政府機関はオバマ大統領の情報開示命令の精神に従っていない。我々はエリック・ホルダー司法長官およびオバマ政権に情報開示法の徹底を要求する」と語っている。 

人権擁護団体に提出されたテロ容疑者拘束に関する政府資料について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 



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