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|インド|核兵器禁止条約加入への要求強まる

【ベルリン/ニューデリーIDN=ラメシュ・ジャウラ】

インドのナレンドラ・モディ首相に対して、核兵器禁止条約に加入するよう求める声が強まっている。同条約は国連総会にて2021年1月に122カ国という明確な賛成多数をもって採択され、50カ国以上の批准を経て発効した。以降、署名国の数は91に増えている。核禁条約は、核兵器の使用・保有・実験・移転を国際法によって禁じている。

モディ首相に対する呼びかけの重要性は、インドが世界の核保有9カ国の一つであるという事実による。現在、世界全体で推定1万3000発程度の核兵器が存在しており、そのほとんどが広島に77年前に投下された原子爆弾よりもはるかに強力である。

国連安全保障理事会の五大国であるロシア・米国・中国・フランス・英国がこの核兵器の大部分を保有している。だからと言って、パキスタン・インド・イスラエル・北朝鮮の核兵器もそれに劣らず危険である。

Global Nuclear Warhead Inventories 2021/ SIPRI
Global Nuclear Warhead Inventories 2021/ SIPRI

ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の2021年の年鑑によると、165発の核兵器を保有するパキスタンに、156発のインドが続く。さらに、イスラエル90発、北朝鮮40~50発と続く。これら9カ国の核兵器保有国はいずれも核禁条約には加入していない。

The Union Minister for Panchayati Raj and Development of North Eastern Region, Shri Mani Shankar Aiyar addressing the Press Conference on 4th NE Business Summit to be held in Guwahati on 15th & 16th September 2008, in New Delhi on September 11, 2008./ By Ministry for Development of North-East Region (GODL-India), GODL-India
Shri Mani Shankar Aiyar addressing the Press Conference on 4th NE Business Summit to be held in Guwahati on 15th & 16th September 2008, in New Delhi on September 11, 2008./ By Ministry for Development of North-East Region (GODL-India), GODL-India

元外交官として高く評価されているマニ・シャンカール・アイヤール氏は、「インドが、この恐ろしい兵器を世界からなくすという問題で、従来の先駆的な役割を再開するならば、事実上の核保有国として初めて、この非常に危険な兵器の廃絶を主張する国になるだろう。」と語った。

インディアン・エキスプレス紙への投稿で、インドの学者、ジャーナリストであり、外交政策の専門家であるC・ラジャ・モハン氏は、インドの戦略は「信頼性のある最小限抑止」という考え方を前提にしていると論じている。いったい何が「信頼」に足るものであり、何が「最小限」なのかを考える時が来た、とモハン氏は言う。

「インドは、新たな次元に入りつつある世界的な核の言説により大きな関心を払い、自らの民生用・軍事用核計画について再考すべきだ。」

ムンバイの「アジア協会インドセンター」の下部組織である「アジア協会政策研究所」の上級研究員も務めるモハン氏は、1998年の核実験後、インドの関心は世界的な経済制裁も含め、核実験遂行の決定がインドに及ぼす影響への対処に移っていった、と指摘する。

Dr. C. Raja Mohan (Director, Carnegie India, Neu Delhi)/ By Heinrich-Böll-Stiftung from Berlin, Deutschland - C. Raja Mohan, CC BY-SA 2.0
Dr. C. Raja Mohan (Director, Carnegie India, Neu Delhi)/ By Heinrich-Böll-Stiftung from Berlin, Deutschland – C. Raja Mohan, CC BY-SA 2.0

2005年7月の歴史的な米印原子力合意は、インドが署名していない核不拡散条約(NPT)体制との長年の対立にようやく終止符を打つ枠組みを生み出した。

合意の要旨は、インドの民生用核利用と軍事利用を分離することにある。米印核協定が数年後に締結されたことで、インドは、核戦力を充実させ、1974年5月の同国初の核実験以来停止してきた世界の他の国々との民生用核協力を再開する自由を得た。

インド政府内では、米国との核協定の条件を巡って、しばしば激しい政治論争があった、とモハン氏は言う。

「政府中では、インドの核開発と外交政策の自立性を犠牲にするものではないかとの意見が根強かった…。インドは米国から原子炉を一基も購入したことがないし、米国の『ジュニアパートナー』となったこともない。インドの独立した外交政策は、うまくいっているように見える。しかし皮肉なことに、インドの核の孤立が2008年に解けると、核を巡るインド国内の議論は緊急性を失っていった。」

「2022年8月の第10回NPT再検討会議が失敗に終わったことは、今日の世界の核秩序が直面している新たな課題とそのインドへの影響を明らかにしている。」と、モハン氏は付け加えた。

Mahatoma Gandhi/ Wikimedia Commons
Mahatoma Gandhi/ Wikimedia Commons

アイヤール氏は、インドは核禁条約を支持しなかっただけではなく、この8年間、「インドは普遍的な核軍縮を謳うことも止めてしまっていた。」と指摘する。

このことは、マハトマ・ガンジーやジャワハルラル・ネルー首相、インディラ・ガンジー首相が、核兵器の保有や使用に対して明確に反対していたのとは好対照だ。つづけて、ラジブ・ガンジー首相は1988年、22年以内、すなわち2010年までに核兵器に依存しない非暴力的な世界秩序を段階的に建設するための詳細な行動計画を国連に対して提示した。

この提案された行動計画を履行する試みがまったくなされないまま2010年の期限を迎えようとする中、2006年、インドのプラナブ・ムカルジー外相(当時)は、この行動計画の主要な目的をまとめた作業文書を国連に提出した。

「しかし、(モディ首相が率いる)インド人民党(BJP)主導の政権が2014年に成立すると、インドはこの行動計画も作業計画も捨て去ってしまったようだ。ムカルジー元外相の作業文書は、インドがその10年前に事実上の核兵器国になった後に発表されたものであり、それに先立つものではなかったことは重要だ。」とアイヤール氏は断言している。

The Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons, signed 20 September 2017 by 50 United Nations member states. Credit: UN Photo / Paulo Filgueiras
The Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons, signed 20 September 2017 by 50 United Nations member states. Credit: UN Photo / Paulo Filgueiras

1988年のラジブ・ガンジー首相が提唱した行動計画と作業文書に対する支持者は少なかったが、今では大量破壊兵器のない世界を追求する多数の非核保有国が登場してきている。

アイヤール氏は、「化学兵器の使用、あるいは使用の威嚇を違法化する国連条約という先例が存在する。核禁条約は化学兵器禁止条約の主要な条項の多くを取り込んでいる。もし化学兵器が国連の決定によって禁止されたのならば、核兵器に関してそうしてはいけない理由はない。」と強調する。

モディ首相がそこに向けて必要な措置を採るかどうかは未知数である。(原文へ

INPS Japan

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「咢堂香風・日米交流の軌跡」

【東京IDN-INPS=尾崎行雄記念財団】

12月3日は 憲政記念館で尾崎行雄記念財団主催「米国桜寄贈110周年記念の集い・記念講演会」が開催されました。

土井孝子・NPO法人咢堂香風(がくどうこうふう)理事長による記念講演「桜とハナミズキ・日米交流の軌跡」では、長年にわたる米国との交流の歩みを披露いただき、日米両国の友好にも多大な貢献を果たされてきたことが改めて実感できました。

Ozaki Yukio Memorial Foundation
Ozaki Yukio Memorial Foundation

激動の国際情勢において、もしも相手国が困ったとき、両国政府は良好な関係であり続けられるか。

その時に強力な後押しとなるのは、それぞれの国民感情です。国民感情が良好であれば、危機的状況に陥ることなく頼もしい味方となります。逆に国民感情が冷え切って、さらには敵意につながると最悪の事態にも繋がります。

そうした歴史を鑑みると、咢堂香風が担ってきた民間外交は間違いなく意義深いものであります。

全米桜まつりは同国でも春の風物詩となっていますが、桜の由来が尾崎行雄市長による東京からの友好の印であることは意外と知られていません。

咢堂香風の活動は、桜とハナミズキを通じての咢堂精神普及にも大きな役割を果たしています。(尾崎財団ウェブサイト

INPS Japan

Filmed and Edited by Katsuhiro Asagiri/ INPS Japan

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いまだ幻想にとどまる中東非核兵器地帯化構想

【国連IDN=タリフ・ディーン

政治的にも軍事的にも不安定な中東に非核兵器地帯(NWFZ)を設けるという長年の提案が、1960年代から国連の廊下や委員会の部屋で議論されてきた。

1974年にエジプトとイランが行った共同宣言は国連総会決議につながった。しかし、それが政治的現実の領域に達したことはない。

Photo: António Guterres, United Nations Secretary-General, at the Security Council meeting on Non-proliferation/Democratic People's Republic of Korea on December 15, 2017. Credit: UN Photo/Manuel Elias.
Photo: António Guterres, United Nations Secretary-General, at the Security Council meeting on Non-proliferation/Democratic People’s Republic of Korea on December 15, 2017. Credit: UN Photo/Manuel Elias.

ニューヨークの国連本部で11月14日から18日にかけて開催された第3回「中東非核兵器地帯創設に関する国際会議」に出席したアントニオ・グテーレス国連事務総長は、会議が「成功裏に終了したこと」を歓迎し、提案の明るい面に着目した。

グテーレス事務総長は、レバノンを議長国とするこの会議に参加した国々に対して、「将来的な条約確立に向けた建設的な関与」を歓迎した。

会期間にも作業を継続することを会議参加者らに求め、「核兵器やその他の大量破壊兵器がない地帯を中東に創設することをオープンかつ包摂的な形で追求する努力」を支援すると語った。

現在、5つの国連安保理常任理事国である米国・英国・フランス・中国・ロシアに加え、インド・パキスタン・イスラエル・北朝鮮という9つの核兵器国が存在する。

イスラエルは中東における唯一の核保有国であり、それにイランが続いている。サウジアラビアとエジプトも核保有への関心を度々示している。

『パレスチナ・クロニクル』の編集者で作家のラムジー・バロウド博士は「核兵器のない中東地域を確立するための国連のいかなるイニシアチブも歓迎するが、歴史が教えてくれるのは、そうしたジェスチャーはせいぜい象徴的なものでしかないということだ。」とIDNの取材に対して語った。

Dr. Ramzy Baroud speaking in Seattle. (Photo: Waleed Hishmeh/ The Palestine Chronicle
Dr. Ramzy Baroud speaking in Seattle. (Photo: Waleed Hishmeh/ The Palestine Chronicle

「さらに悪いことに、米国を中心とした国際社会は核不拡散の問題を政治的に扱ってきた。たとえばイランのような国々は、核能力の開発を目指そうとしているだけであらかじめ制裁の対象になるのに対して、イスラエルのように90発から140発ほどの核兵器を保有しているとみられる国には何のお咎めもない。」とバロウド博士は指摘した。

10月31日の国連総会では、イスラエルに核兵器の放棄と核施設を国際原子力機関(IAEA)の監視下に置くことを求める決議案が採択されたが、イスラエル自身も含めわずか5カ国だけの反対があった中に米国とカナダの姿もあった。

「残念ながら、米国や西側の国々がイスラエルを支持している限り、中東非核兵器地帯はすぐには実現しないことは分かっている。」

「だから、この地域に非核兵器地帯を求めることは、米国がイスラエルの敵とみなされる国々の核開発を抑制することにしか関心がないことを考えると、空虚な呼びかけにすぎない。これでは、大量破壊兵器に関する倫理的な話し合いの出発点にはなり得ないし、成功するはずもない。」とバロウズ博士は断言した。

ニューヨーク大学グローバル問題センター国際関係学の元教授であるアロン・ベン=ミーア博士は、中東に非核兵器地帯を設立しようとの国連総会の取り組みは、いくつかの理由により何度も失敗に終わっていると指摘した。

Dr. Ben-Meir in Jerusalem, Israel. The Temple Mount sits in the background./ By MikeAbdullah - Own work, CC0
Dr. Ben-Meir in Jerusalem, Israel. The Temple Mount sits in the background./ By MikeAbdullah – Own work, CC0

そもそも、中東で唯一核兵器を保有するとされながら、核拡散防止条約(NPT)に加盟していないイスラエルに常に焦点が当たってきた。

20年以上にわたり、国際交渉と中東研究の講座を担当しているベン=ミーア博士は、「イスラエルの視点からは、ミハエル・マーヤン国連副大使が言ったように、NPTは遵守の度合いによってのみ意味を持ち、中東の「固有の安全保障上の課題」に対する解決策を提供するものではない。」と語った。

イスラエルの考える限りでのこれらの「固有の安全保障上の課題とは、第一に、イスラエルが中東の大部分の国家から承認されておらず、そのうちいくつかの国家がイスラエルを敵と宣言していることにある。」とベン=ミーア博士は指摘した。

第二に、皮肉にも、NPT加盟国であるイランが核兵器を追求し高濃縮ウランを大量に保有しているという点だ。イスラエルの観点からすれば、イランは自国の生存を脅かす脅威なのである。また、シリアでも未申告の核活動が残っており、イスラエルにとって重大な懸念となっている。

最後に、ユダヤ人の歴史的経験とイスラエルの現代的安全保障の観点から、イスラエルの国家安全保障を巡るイスラエルの懸念は特に重要である。

「イスラエルが核兵器を保有していることは公然の秘密化しているが、中東の他の国々が核保有することを抑止するために、核保有を否定も肯定もしない『あいまい政策』を採り続けている。」とベン=ミーア博士は語った。

「イスラエルはNPTに加入することを拒み続け、国連総会が要求するように、すべての核兵器を放棄したり国際原子力機関の監視下に核施設を置いたりすることを拒み続けている。」

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                               

「従って、こうした状況が続き、イスラエルとイランを含む地域のすべての国との間で包括的な和平合意が成立しない限り、核兵器やその他の大量破壊兵器のない地帯を中東に創設するというのは幻想にしか過ぎないだろう。」と、ベン=ミーア博士は主張した。

中東の非核化を加速させる上で、もう一つ極めて重要な動きは、米国がこの地域の友好国・同盟国に核の傘を提供するという条約上の保証を与えることだ。

Map of Middle East
Map of Middle East

「こうした措置によって、イランなどの国々が核兵器取得を目指すという危険な道を回避することができる可能性がある。」と、ベン=ミーア博士は付け加えた。

国連によると、現在、南半球の大部分と中央アジアに5つの非核兵器地帯(NWFZ)が存在する。また、南極大陸とモンゴルも特別の非核地位を有している。

「非核兵器地帯は、世界の核不拡散・軍縮の規範を強化し、平和と安全に向けた国際的な努力を強化するための重要な地域的アプローチである。」

非核兵器地帯のそれぞれの領域では、核兵器の取得・保有・配備・実験・使用が禁止されている。

さらに、これら非核兵器地帯条約の締約国は、核保有国がこれら非核地帯を構成する国々に対して核兵器を使用したり使用の威嚇を行ったりすることを予防する法的拘束力のある協定を正式に締結するための努力を続けている。

グテーレス事務総長が「軍縮アジェンダ」で述べているように、「非核兵器地帯は、核兵器のない世界に向かう地域的取り組みと世界的取り組みとの相乗効果を示す優れた例となる『画期的な手段』である。」

国連は「非核兵器地帯はそれ自体が目的であると考えるべきではないが、これらの地域協定はそれぞれがより平和で安定した世界を実現するための集団的な取り組みに大きな価値を与えることになるだろう。」としている。(原文へ

INPS Japan

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|世界人権デー|アントニオ・グテーレス国連事務総長メッセージ

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【国連IDN=アントニオ・グテーレス】

世界は、人権における未曽有かつ相互に連鎖する課題に直面しています。

飢餓と貧困が拡大しています。これは、何億もの人々の経済的・社会的権利に対する侮辱です。

シビック・スペースが狭められています。 世界のほぼすべての地域で、報道の自由とジャーナリストの安全が危険なほどに低下しています。

特に若者たちの間で、制度に対する信頼が失われつつあります。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、女性と女児への暴力のレベルが上昇しています。

人種主義、不寛容、差別が蔓延しています。 気候変動、生物多様性の喪失、汚染という地球の三重の危機から、人権をめぐる新たな課題が浮上しています。

また私たちは、一部のニューテクノロジーが人権に及ぼす脅威をようやく理解し始めたばかりです。

こうした試練の時代において、私たちは、市民的、文化的、経済的、政治的、社会的権利を含むあらゆる人権に対する決意を新たにしなければなりません。

私が2020年に立ち上げた「人権のための行動呼びかけ」では、私たちが直面する課題の解決策の中心に、人権を据えています。

このビジョンは、人権に根差した新たな社会契約の導入を求める、『私たちの共通の課題(Our Common Agenda)』に関する私の報告書に反映されています。

来年迎える世界人権宣言の75周年を、行動の機会としなければなりません。 私は、加盟国、市民社会、民間セクターなどに対して、悪影響をもたらしている今日の傾向を反転させる取り組みの中心に人権を据えるよう要請します。

人権は人間としての尊厳の基礎であり、平和で包摂的、かつ公平・平等な繁栄する社会の礎です。 人権は、求心力であり、団結のための掛け声です。

人権は、私たち共通の人間性という、私たちが共有する最も基本的な部分を反映しています。 今年の「人権デー」にあたり、私たちは、すべての人々の人権を擁護するとともに、あらゆる権利の普遍性と不可分性を再確認します。(原文へ

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「世界共通の人権文化として定着させることが重要」(創価学会インタナショナル池田大作会長インタビュー)

|視点|インドのG20議長国就任は、世界をひとつの家族に変えるチャンスか?(イマーネ・デルナイカ・カマリ セントジョセフ大学講師)

【トリポリINPS/Aldonyanews(レバノン)=イマーネ・デルナイカ・カマリ】

インドのナレンドラ・モディ首相は9月に地域協力組織「上海協力機構」首脳会議に合わせて開催した印露首脳会談の席で「今日、私たちは生存のために戦う必要はない。われわれの時代は戦争の時代である必要はない。実際、そうであってはならない。」と、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対して苦言を呈したが、この宣言が20カ国・地域(G20)バリ・サミットの最終コミュニケへの道を切り開いた。

By Imane Dernaika Kamali
By Imane Dernaika Kamali

今日の世界が地政学的地経学的に困難な状況にあることは間違いなく、これらのリスクに効果的に対処する方法が見直されなければならない。

気候変動、テロリズム、パンデミック(疾病の世界的流行)など国境を越えた問題が広がる中、万人の平等と世界平和のために多国間協力が必要になってきている。

私たちは、土地や資源を巡って他国と争えば、どの国でも勝利と進歩が得られると信じようとした時点で失敗したのだ。

世界中の何十億という人々が欠乏の中で生活しているのに、私たちは自分たちの生存のためにこれらの資源を巡って争い失敗したのだ。

真の主権とは、何よりも人道的かつ普遍的な責任であることを知らずに、国家のいわゆる「主権」を口実に、戦争や虐殺への人道的介入を回避して、私たちは失敗したのだ。

さらに、国連は戦争を止め、紛争を防ぐことができなかった。残念ながら、国連は、諸国に対する権威ではなく、より高次の機関(=国連)に主権を譲渡することを拒否してきた諸国の手に委ねられた権威にとどまっている。

国連が政治的現実を変え、大国間の合意を形成し、紛争を消滅させることに失敗した後、多国間協議の仕組みが登場し、この暗いシナリオの中で状況を覆し、ゲームのルールを変えようと試みているのである。

その中でも、G20はユニークなプラットフォームであることは間違いない。

G20は、1990年代後半に東・東南アジアを襲った金融危機を背景に、中所得国の関与によって世界金融の安定を確保することを目的に、1999年に結成された。

G20 は世界の政府間フォーラムの一つとして登場し、20の先進国と発展途上国(アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、イタリア、日本、韓国、メキシコ、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、英国、米国、欧州連合)から構成されている。

G20は、世界のGDPの85%以上、商業の約75%、世界人口の60%を占める経済圏を代表している。

G20の議長国は加盟国間で毎年交代し、議長国を務める国は前・次期議長国とともに、いわゆる「トロイカ」を形成している。

インド(12月1日に就任)は、2023年12月末までG20の議長国を務め、9月の1ヶ月間、インドのG20議長国を癒しと調和と希望のあるものにするために、各国政府・首脳との会議を200以上開催する予定だ。

ここで、いくつか疑問が生じるかもしれない。つまり、インドは本当にこの世界に根付く戦争と紛争の論理を廃絶することができるのか?富と貧困の両極を際立たせるだけの現在の経済システムを改革するよう、世界を後押しできるのか?根本的な「一体感」を提唱し、人間の安全保障を確保するために、すべての人が共に行動するよう促すことができるのか?といった疑問だ。

実際、インドは多国間協議のプラットフォームにおいて途上国や新興国がより広く代表されるよう努力してきた。またグローバルサウスを代表して、何度もこうした国々の問題や不満を提起してきた。つまり、インドは今年の議長国として、途上国や新興国が関心を持つ問題をG20のトップテーブルに上げて強調することは確実であろう。

G20のロゴマークは、インドの文化、歴史、遺産を象徴する蓮の花をデザインし、インドの国旗の色であるサフラン、白、緑、青を使用した。ロゴの7枚の花びらは、7つの海、そして2023年に議長国インドに集う7つの大陸を表しており、蓮の花の周りに座ることで、世界がひとつの家族であるというインドのビジョンと、人類が難局を乗り越え勝利するためにインドが取るアプローチを表現している。

インドが掲げたG20のタイトル「一つの地球、一つの家族、一つの未来」は、「ヒンドゥー教の教典に登場し、インドの国会議事堂の入り口に刻まれている「世界はひとつの家族」を意味するサンスクリット語「Vasudhaiva Kutumbakam」に由来している。

モディ首相は、このG20のテーマを単なるテーマではなく、気候変動、食糧安全保障、医療、技術など、インドが世界の緊急課題と考える課題に取り組むことが使命であり責任であると考えている。

その上で、モディ首相は、私たちの家族において、最も必要としている人が常に最初の関心事でなければならないように、G20でも、その声が聞こえないことが多い「グローバルサウス」の国々のパートナーに優先順位をつけていくことを強調した。

さらに、来年インドが中国の習近平国家主席をニューデリーに迎えることは、平和への一歩となるだろう。特に、中印関係は、ヒマラヤにおける両国の国境をめぐる領土問題で現在行き詰っているからだ。

G20サミットに合わせてニューデリーでの開催が見込まれるロシアのプーチン大統領とウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領の会談は、外交と対話を通じて戦時下の両国の間に事態収束の橋をかける契機となり得るものである。

最後に、現在の地政学的な状況において、各国間の緊張が高まり、多国間機構がますます信頼性を失っている中、インドの課題は極めて困難であると思われる。

世界の人口の6分の1を擁し、マハトマ・ガンジーの思想に基づき賢明にも世界最大の民主主義国家と世界第5位の経済大国に成長したインドが、G20議長国への就任を、単なる多国間機関の議長交代に終わらせるのか、それとも世界を一つの家族に変える絶好の機会にするのか、今後一年を通じてその真価が問われることとなる。(原文へ

翻訳=INPS Japan

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太平洋諸島における気候関連の移動と人間の安全保障を方向づける

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

【Global Outlook=ティム・ウェストバリー 】

太平洋諸島の安全保障をめぐる言説は、多くの場合、地域外の意見や関心に支配されている。近頃行われたシャングリラ対話では、太平洋地域における地政学的な戦略的競争をめぐる喧噪の中で、フィジーのイニア・セルイラトゥ防衛相が「われわれの存在そのものに対する唯一最大の脅威は[……]人間が引き起こす壊滅的な気候変動である」と述べた。太平洋島嶼各国の政府は、ずっと以前より安全保障の概念を拡大して人間の安全保障の観点を含める必要があることを認識してきた。直近では、2018年のボエ宣言で、気候変動を「太平洋の人々の生活、安全、福祉にとって唯一最大の脅威」と指摘している。2019年に採択されたボエ宣言行動計画は、人間の安全保障や紛争との相互関係など、気候変動が太平洋地域の安全保障に及ぼす影響をよりよく予測し、理解し、状況に沿った把握をする必要があるという認識を示している。これは、太平洋地域で人々が直面している、単独で扱うことはできない安全保障課題に取り組むためには、伝統的な安全保障のアプローチでは不十分であるという認識を反映している。気候変動は、生計手段、淡水供給、食料安全保障を脅かし、健康に悪影響を及ぼし、貧困と不平等に拍車をかけている。また、太平洋地域の気候安全保障に関する一部の報告では、人口移動や資源競争によって国内紛争や不安定性が引き起こされ、地域安全保障に影響が及ぶリスクが指摘されている。(原文へ 

気候変動が人間の移動に及ぼす影響は、太平洋地域コミュニティーの人間の安全保障を脅かすリスクの例として広く取り上げられ、地域における気候安全保障のリスク経路として認識されている。個人、世帯、地域社会、そしておそらく環礁の島々や国の住民にとって、移動は気候変動への対応としてますます現実味を帯びている。気候変動は、地域における多様な移動パターンに深刻な影響を及ぼすと予想される。しかし、気候移住が人間の安全保障にもたらす影響は、それをどのように捉え、管理するかに大きく依存する。例えば、伝統的な安全保障のアプローチは、国境の警備を促進し、また、移民を安全保障上の脅威と見なすことができる。法律上も概念上も不正確であるにもかかわらず、「気候難民」という表現は、太平洋地域の気候安全保障課題に関する世界の言説に依然として広く行き渡っている。しかし、このような特徴付けは、気候変動の被害を受けている人々を非人間的に扱いその力を奪うリスクがあり、太平洋地域では広く拒絶されている。それはまた、生計手段の多様化や環境リスクマネジメントの方法として長い歴史を持つ、太平洋地域における人間の移動の複雑性を考慮に入れていない。また、都市化や災害からの避難など、現代的な移動課題にもこの地域は直面している。移動の決定には複数の原因があり、貧困、社会的排除、土地や資金やサービスへのアクセスの不平等といった問題の影響を受ける。知識へのアクセスといった経済的・社会的要因も、移動がどの程度強制的か自発的か、そもそも実際に人々が移住するか否か(しばしば「不動性」と呼ばれる)にも影響する。

太平洋地域の全ての国が、計画外の移動による悪影響を防ぎ、移動できない、または移動を望まない人々を支援するための策を講じる必要があることは明らかである。移動は、選択によってなされ、人間の安全保障のアプローチ(国連総会決議66/290を参照)を通じて促進される自由と呼応する太平洋の人々のさまざまな希望や能力に見合ったものでなければならない。人間の安全保障は、気候変動と安全保障の関係を理解し、移動による対応を導く人間中心の視点を提供する。しかし、それは万能薬ではなく、人間の安全保障に対する幅広いアプローチへの批判があることも認めなければならない。このような状況で、気候移動に対する人間の安全保障のアプローチの価値を示し、それが、安全保障、レジリエンス、気候変動への適応、持続可能な開発に重点を置いた既存の政策領域をいかに補足するかを明確にすることが重要である。太平洋諸国の政府は概して小規模であり、競合する政策ニーズへの対応やサービス提供において、すでに課題に直面している。政策の調整と一貫性が肝要である。人間の安全保障は、太平洋コミュニティーが直面する「日常的」な不安の複雑性と、脆弱性を低減するために移動が果たす役割に注意を向けている。また、太平洋諸島の豊かな文化的、政治的、歴史的、経済的な多様性にも注意を払っている。気候関連の人の移動に対する人間の安全保障のアプローチは、地域に合わせた調整、予防、保護、エンパワーメントの重要性を強調するべきである。

人間の安全保障は、国家計画プロセスに分析的な支援を提供し、人間の移動のガバナンスに関する規範を導くことができる。また、重要な点は、安全保障と開発を結びつける枠組みを提供し、さまざまな規模にわたって、幅広い関係者の能力を集結させる統合的行動を支援することである。とはいえ、明らかに国や地方レベルで真のインパクトをもたらすためには、人間の安全保障を実用化することが鍵である。人間の安全保障のアプローチは、現地の移動に関する課題に合わせて対処能力を構築することの重要性を認識しなければならない。また、人間の安全保障を実用化するためには実用的な定義も必要であり、国家レベルの重要課題を反映し、政府全体の賛同を確保しなければならない。また、インパクトと有効性を測定するためにモニタリングを行うべきである(太平洋人間の安全保障枠組み2012-2015<Pacific Human Security Framework 2012-2015>の総括報告書に指摘されるように)。人間の安全保障のアプローチに関する概念を明確にし、文脈に沿ったものにすることが重要となる。

人間の安全保障の視点は、移動する人々やその出身地および目的地のコミュニティーにとって、移動がいかに不安への対処や人権の実現に寄与するかを理解するために役立つ。人間の安全保障のアプローチを実用化し、実施に必要な資源を分配するなど、このアプローチを採用することの価値を評価するのは、明らかに国家政府の役割である。人間の安全保障の価値は、両立可能な目標を掲げ、脆弱性の原因となる絡み合う問題を解決し、レジリエンスを構築する政策的アプローチを促進する形で実用化されるとき、明白になる。気候移動に対する人間の安全保障のアプローチが太平洋地域全体のプロセスとして統合され、強化されるようにすることが重要である。このような「入り口」としては、提案されている太平洋人間の安全保障枠組みの「刷新」、気候関連の人間の移動に関する地域的議論、ボエ宣言行動計画に基づく国家安全保障戦略の策定などがある。太平洋地域の人々が日常的に直面する安全保障課題の脅威への対処を助けるため、太平洋島嶼民の実体験と移動に伴う彼らの希望や能力に基づいて、人間の安全保障を理解し、地域の状況に応じて把握しなければならない。

ティム・ウェストバリーは、気候安全保障、人間の移動、地域主義、持続可能な開発に関心を持つ国際開発実務者である。太平洋地域における国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)持続可能な開発担当シニアオフィサーなど、20年以上にわたりアジアおよび太平洋地域において国連システムの業務に従事してきた。シドニー大学より環境法修士号を取得し、現在はクィーンズランド大学の博士課程で太平洋地域の気候安全保障と人の移動に重点を置いて研究に取り組んでいる。本稿は、太平洋気候変動移住と人間の安全保障(PCCMHS)プログラムの元で発表した政策提言‘Navigating human security and climate mobility in the Pacific Sea of Islands’に基づく。

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宗教団体・市民団体が朝鮮半島危機終結を訴え

【国連IDN=タリフ・ディーン】

700以上の宗教団体・市民団体が、朝鮮半島の危機を終結させ「戦争を挑発する軍事行動」を回避するよう訴えている。

これら団体は共同声明の中で、「私たちは今日、大きな危機感を抱いてここにいる。戦争という言葉がかつてないほど身近に感じられる。韓国、米国、北朝鮮の軍事演習が何日も続き、かつてないほど緊張が高まっている。」と述べた。

韓国プレスビテリアン教会、韓国全国教会協議会、韓国平和アピールキャンペーン、6月15日共同声明履行韓国委員会などが署名した。

10月27日に立ち上げられたこのキャンペーンでは、朝鮮半島で進行中の紛争に関わるすべての当事国政府に対して、あらゆる敵対行動を即時停止し、対話と相互の信頼醸成を通じた紛争解決に戻るよう呼び掛けている。

声明文では、和平協定の締結、核兵器と核の脅威のない朝鮮半島(及び世界)の実現、制裁と圧力ではなく対話と協力を通じた紛争の解決、軍拡競争の悪循環からの脱却と、人間の安全保障と環境の持続可能性への投資などを訴えている。

集められた署名は、国連と、大韓民国・朝鮮民主主義人民共和国・米国・中華人民共和国を含めた朝鮮危機の当事国政府に届けられる。

共同声明はまた、危険な軍の演習が繰り返し行われ、この土地のすべての命の安全が危険に晒され出口が見えなくなっていると警告した。

Image: South Korean commuters watch TV coverage of the North Korean missile launch from a Seoul railway station. (AFP: Jung Yeon-je)
Image: South Korean commuters watch TV coverage of the North Korean missile launch from a Seoul railway station. (AFP: Jung Yeon-je)

「このままでは、一瞬の過失から予期せぬ武力衝突が起こり、戦争が現実のものとなってしまうかもしれない。軍事的危機と不安定な状況が続けば、社会・経済全体に大きな影響を与える。」

「『新冷戦』と言われる混沌とした国際秩序と軍拡競争の激化の中で、朝鮮半島の危機がどのようなリスクをもたらすか予測することは困難である。現在の火急の課題は、一触即発の状態から脱出することだ。」

他方で、平和的な解決を求める声明は、北朝鮮が核武装を続け、隣国の韓国と長年の宿敵である米国を脅かす弾道ミサイルを相次いで発射する中で出された。

ニューヨーク・タイムズ紙は11月14日、北朝鮮が先週発射した23発を含め、今年に入ってから「どの年よりも多い」86発ものミサイルを発射したと報じた。

同紙は、北朝鮮はまた「韓国に向けて核ミサイルを発射する準備を行っている」としている。

「北朝鮮は開発中の新型大陸間弾道ミサイルを実験するのみならず、米韓同盟が共同軍事演習を強化する中で、両国に対峙するために短距離ミサイルを頻繁に発射している。」

このミサイル実験は、「北朝鮮はいつミサイルを使い果たすのか」という修辞的な疑問も誘発してもいる。

Photo: The writer addressing UN Open-ended working group on nuclear disarmament on May 2, 2016 in Geneva. Credit: Acronym Institute for Disarmament Diplomacy.
Photo: The writer addressing UN Open-ended working group on nuclear disarmament on May 2, 2016 in Geneva. Credit: Acronym Institute for Disarmament Diplomacy.

核に関する専門家で「核兵器廃絶国際キャンペーン」の初代代表であり、1996年の包括的核実験禁止条約と2017年の核兵器禁止条約の交渉にも参加したことのあるレベッカ・ジョンソン博士は「北朝鮮における緊張の高まりは、ある文脈の下で理解されねばならない。」と語った。

彼女はIDNに対し、「北朝鮮の非核化は、単に指をくわえて見ているだけではだめで、朝鮮半島全体とその周辺の島や海を非武装化し、非核化するための交渉の中で行われなければなりません。」と語った。

米国、中国、南北朝鮮、日本、ロシアは、過去数十年間の「六者協議」に参加した政府であるが、近年の核の脅威の高まりに対応し、前提条件なしに平和と非核化に関する地域交渉にもっと建設的に関与する必要がある。

「もしそうすれば、核兵器の製造や脅威、使用を防ぐためのより良い方法を見出すことができる。核兵器禁止条約の履行と検証のための新しい多国間ツールを活用することは、各国政府と国民が国家の安全保障を見直す道を開くことにもなり、紛争含みの地域における脅威的な体制の非核化に向かう協議が可能となるだろう。」とジョンソン博士は主張した。

北朝鮮の国営「朝鮮中央通信」によると、10月に相次いだミサイル実験は、米韓による大規模な海上機動訓練に対抗して行われたものである。この実験は、韓国への戦術核の投下を想定したもので、劇的な警告の意味合いが含まれている。

Ned Price, Spokesperson for the U.S. Department of State/ U.S. Department of State, Public Domain
Ned Price, Spokesperson for the U.S. Department of State/ U.S. Department of State, Public Domain

米国務省のネッド・プライス報道官は11月7日、北朝鮮の軍司令官による「反撃」の脅威について問われ、「我が国の対応は、今回の一連の挑発行為を通じて皆さんが聞いてきた通りです。条約上の同盟国、つまり日本と韓国の防衛と安全に対するわが国のコミットメントは、確固たるものです。」と記者団に語った。

「我が国は、防衛と抑止の態勢を強化するための多くの措置を取ってきました。今後もそのアプローチや活動を適切に調整していきます。」

プライス報道官はまた、「朝鮮半島の完全な非核化は、昨年の対朝鮮半島政策見直し(新たな対北朝鮮政策についてトランプ政権の『グランドバーゲン〈一括取引〉』とオバマ政権の『戦略的忍耐』のアプローチはとらないと明言。日韓両国と連携して『調整された現実的アプローチ』をとり、北朝鮮の非核化を目指すとした:INPSJ)完了以来の目標であり、その後変更ありません。また今後も変更はないだろう。」と説明した。

国連のステファンドゥジャリク報道官は10月、「北朝鮮最高人民会議が(9月8日に)採択した『核戦力に関する朝鮮民主主義人民共和国の政策について』の法律に対して国連のアントニオ・グテーレス事務総長が懸念を持っています。安全保障ドクトリンにおける核兵器の役割と重要性を強化することは、核のリスクを削減し根絶しようとしてきた国際社会の数十年に及ぶ努力に反するものです。」と記者団に語った。

「北朝鮮は、弾道ミサイル技術を利用したミサイルを開発するなど、核兵器計画を推進することによって、そうした活動を停止するよう求める安保理の諸決議を無視し続けている」と、国連事務総長の言葉を引用して語った。

Antonio Gutierrez, Director General of UN/ Public Domain
Antonio Gutierrez, Director General of UN/ Public Domain

グテーレス事務総長は北朝鮮に対して、朝鮮半島の持続可能な和平と、完全かつ検証可能な非核化を達成することを視野に入れて、主要な当事者との対話を再開するよう求めている。

他方で、韓国・国連間の第21回軍縮不拡散協議が11月3・4両日にソウルで開催された。

韓国政府と国連軍縮局が主催しているこの協議は「地域および国際安全保障にとって重要な問題について率直な議論を行い、現在の軍縮関連問題を検討すること」を目的としたものである。

国連によるとこの会議には、韓国の朴容民外交調整官(多国間・グローバル問題担当)、中満国連軍縮問題上級代表を初めとして、政府関係者、国連関係者、シンクタンクや 学術機関を含む市民社会組織の代表者など、国内外から50人以上が参加した。

この会議では、「『将来の軍縮状況の評価:宇宙の安全保障とミサイル開発』と題し、国際安全保障の分野で新たな課題に直面している諸問題に対処しようとするものであった。

国連によると、宇宙システムに対する脅威と誤算によって起こるリスクには幅広いものがある。これは、宇宙空間における新たな軍拡競争の可能性に関して国際社会が懸念を強めており、これらの脅威に対応する規範やルール、原則を確立する必要性が高まっている、という。(原文へ

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【ウィーンIDN=オーロラ・ワイス

国連教育科学文化機関(UNESCO)、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)、オーストリア連邦欧州国際問題省(BMEIA)は11月初旬、「ジャーナリストの安全に関する国連行動計画」の10周年を記念して、「ジャーナリストの安全:民主主義を守るためにメディアを保護する」と題するハイレベル会議に参加した。

この会議には、外務大臣、メディア担当大臣、国際機関、市民社会、学界の関係者など、400人以上が参加した。

ユネスコは会議に先立ち、アフリカ、アジア、欧州、ラテンアメリカ、アラブ地域で地域別・テーマ別の協議を開催した。これらの協議の結果を踏まえ、11月3日、関係者、特に市民社会組織(CSO)、学術界、ジャーナリスト、学生の代表者がウィーンに集まり、国連行動計画の実施を改善するための具体的な勧告を策定するためのプレ会議を開催した。

Image source: Sky News
Image source: Sky News

今年は11月1日までに、すでに76人のジャーナリストが職務中に落命しており、そのうち10人はロシアのウクライナ侵攻を取材している最中であった。2006年から21年の間に、1200人以上のジャーナリストが殺害され、約86%のケースで犯人が処罰されないままとなっている。

会議では、ジャーナリストの保護と報道の自由強化に向けた締約国のコミットメントを再確認する政治宣言を採択した。11月4日現在、53カ国がこの宣言への支持を表明しており、さらなる各国の支持を募っている。

さらに37の国、国際機関、市民社会組織が、報道の自由とジャーナリストの安全を支援する具体的な誓約を表明した。28名の大臣・副大臣が、直接またはビデオメッセージを通じてコミットメントを表明した。

11月3日から4日にかけてウィーンで開催されたハイレベル会合の重要性は、2017年6月に国連が「行動計画」の実施を強化するための世界協議会を開催し、そこで市民社会組織がジャーナリスト殺害に対する不処罰を国家やその他のステークホルダーが今後取り組むべき優先課題として挙げたことを想起すればより理解できるだろう。

Safety of Journalists: Protecting media to protect democracy High-level Conference, Vienna  Credit: BMEIA/Michael Gruber
Safety of Journalists: Protecting media to protect democracy High-level Conference, Vienna Credit: BMEIA/Michael Gruber

この30年間で、ジャーナリストを殺害した犯人と黒幕の両方が捕まった事件の割合が5%という事実が示しているように、国際社会は全体として、必要な対応策を打ち出せていないとの見方がある。

この会議では、人権活動家の一部から、「法執行機関、警察、シークレットサービス、司法制度といった機関は信頼できないパートナーだが、同時に、ジャーナリストの保護と安全確保のために、これらの組織と協力することが必要」との指摘があった。ジャーナリストに対する犯罪の90%は起訴されないままであるため、法制度との協力も重要な役割を担っている。現状では、捜査官も弁護士も裁判官も、襲撃された際にそのジャーナリストはどんな記事を書いていたのか、以前はどんな記事を書いていたのかといった動機を考慮していない。

また、これらの組織の教育、専門化、感化が特に重要であることが指摘された。ジャーナリストに対する襲撃事件で、警察が関与したり、その他の政府職員が関与したりした場合には、第三者機関を設置し、独立した立場で調査を行うことが必要である。

High-level Conference – Safety of Journalists: Protecting media to protect democracy/ Österreichisches Außenministerium

重要なことは、様々な犯罪集団が、警察のみならず政界や法曹界にも影響力を持ち、その結果、証拠の改ざんや目撃者の抑え込み、捜査妨害が行われたり、判決結果そのものに影響を及ぼすことがしばしばあることを念頭に置く必要がある点である。また、検察や司法は、政治指導者などの権力者によって、特に外国人特派員の信用を失墜させる目的で、ジャーナリストを標的にした迫害の道具として利用されることがある。

会議ではまた、ジャーナリストの避難プロトコルや、ある国から別の国へ一晩で避難させる方法、身分の変更、経済的支援、家族の避難、受け入れ国への再統合などについても話し合われた。

残念ながら、政府が解決策として提示した保護メカニズムは機能していない。例えば、オランダ政府は、手続きを始めるには、まず申請して結果を待つ必要があると語った。「シェルター・シティ」という人権活動家を保護する素晴らしいプロジェクトがあるが、残念ながら、生命と安全が脅かされているジャーナリストにとっては選択肢にならない。このような場合、致命的な結果を防ぐために、48時間以内の即時の行動が求められる。恐怖と絶え間ない脅威の中で生活することは、自己検閲、経済的損失、長期的な心理的ダメージ、さらには命の損失など、ジャーナリストという職業に極端な影響を及ぼしている。

様々なNGOが資金を集め、プロジェクトから利益を得ていることも、多くの組織がこの会議に参加した動機となっていた。しかし、(ジャーナリストに対して)いざサービスを提供できるかという議論になると、具体的なリアクションはほとんどなかった。このことは、多くのメディア関係者が目撃している。

したがって、ジャーナリストへの無差別な攻撃に関する恐ろしい統計に関して、政府組織だけを責めることはできないということで意見が一致した。ここでは、この仕事のために経済的利益を得ているすべての人々の共生と具体的な行動が絶対的に重要である。また、ジャーナリストの安全を目的とした資金提供プロジェクトの成果を点検し、管理することが必要である。

外国特派員は深刻な危険に晒されているが、政治家はしばしば彼らを国家の安全保障に対する脅威と決めつけている。

相互依存がますます進む世界では、人々は国境を越えて何が起きているのかについての知識と理解を必要としている。対外的に発信されるジャーナリズムは、このニーズを満たすのに役立つ。いわゆる 「外信」と呼ばれるものは、専門家の検証を経たニュースや情報に基づいた分析を提供し、国内の読者の疑問に答えたり、海外の重要な動向に対する認識を高めたりすることを目的としている。

Safety of Journalists: Protecting media to protect democracy High-level Conference, Vienna  Credit: BMEIA/Michael Gruber
Safety of Journalists: Protecting media to protect democracy High-level Conference, Vienna Credit: BMEIA/Michael Gruber

このような特別なコンテンツを制作するジャーナリストは、例えば、自然災害に対する連帯、気候変動の緩和、新型ウイルスに対する世界的な予防接種の確保、人口移動の管理、世界を変える出来事の重要な証人として戦争と平和の問題に取り組むなど、人類が共通の利害に基づいて行動するために不可欠な存在となり得る。

残念ながら、今日、外国人特派員を含む多くの人々が、その職業上の活動により、暴力的な攻撃、誘拐、恣意的な逮捕や虐待の恐怖の中で生きることを強いられている。特に女性ジャーナリストは、今回の会議を主催したオーストリアのような民主主義国家であっても、悪質な女性差別的嫌がらせ、性的攻撃、脅迫の被害を受けやすい。

ジャーナリストの自己検閲が、表現の自由とメディアの自由に対する深刻な障壁となっていることは、数多くの研究が示している。威嚇や報復が「常態」になると、外国特派員として働く人々にも冷ややかな影響が及ぶ。外国特派員として勤務するホスト国の国民であれ、外国人として仕事をする者であれ、彼らは皆、国家または非国家主体からの深刻なリスクに直面する可能性がある。

政治指導者のなかには、外国人ジャーナリストや外国特派員として働く現地人を、国家の安全に対する脅威や虚偽の情報の拡散者という烙印を押すことによって、信用を失墜させ、委縮させようとする人々もいる。

ウィーンに本拠を置く国際プレス研究所(IPI)によると、2020年10月28日現在、2000年以降、職業活動の結果として殺害されたジャーナリストは1700人を超え、2020年だけでも世界で39人が殺されている(2019年:48人、18年:79人)。

A photojournalist in a gas mask on Mansour Street during protests near the Ministry of Interior in central Cairo in February 2012. Later, in 2014, a reporter commented that a gas mask was the only free piece of safety equipment provided to him by his newspaper ( www.thecairopost.com/news/106461/inside_egypt/reporter-li... ) but in 2012 I think even these were still mostly bought by journalists themselves.
A photojournalist in a gas mask on Mansour Street during protests near the Ministry of Interior in central Cairo in February 2012. Later, in 2014, a reporter commented that a gas mask was the only free piece of safety equipment provided to him by his newspaper ( www.thecairopost.com/news/106461/inside_egypt/reporter-li… ) but in 2012 I think even these were still mostly bought by journalists themselves.

実際の被害者の数は、この職業ゆえに攻撃されたり脅迫されたりしている人たちの数よりも何倍も多いと推測される。特に、批判的なメディアの代表者に対する標的型殺人の増加は憂慮すべきものである。同時に、解決されたケースの数は驚くほど少なく、報告されたケースの約90%は、加害者が事件の影響を恐れることなく行動するため、解決されることはない。

ジャーナリストの安全は、世界人権宣言第19条および市民的及び政治的権利に関する国際規約第19条(2)に規定されているように、表現の自由および報道の自由に対する普遍的で不可侵の権利の実現に必要な要件である。

国家には、安全な労働条件を確保してジャーナリストを保護する明確な責任がある。しかし残念ながら、この責任はあまりにも頻繁に無視されている。ジャーナリストやメディア関係者だけでなく、メディア組織、市民社会の代表、各国政府、国際機関を含む包括的なアプローチのみが、ジャーナリストの効果的な保護につながると、有識者筋は述べている。

特に女性ジャーナリストの保護に重点を置いている。女性ジャーナリストは、とりわけオンライン上で標的とされ、ジャーナリストとして、また女性であることを理由に攻撃されることが多くなっている。2021年、殺害されたジャーナリスト全体に占める女性の割合は、前年の6%から11%へとほぼ倍増している。2022年9月30日現在で入手可能なデータでは、これまでに殺害された記者の11%が女性ジャーナリストであることが再び示されている。

また、このデータは、ジャーナリストに安全な空間がないことを示している。2020-21年に殺害された117人のジャーナリストのうち、78%にあたる91人が、事務所を離れている間に殺害された。ほとんどの殺害はニュースルームの外で起きているが、彼らの職業に関連していたと思われる。路上や車の中で殺害されたジャーナリストもいれば、誘拐されて死体で発見されたジャーナリストもいる。何人かは子供を含む家族の目の前で殺された。

ジャーナリストに対する犯罪の加害者を非難するだけでは十分ではなく、その背後にいる黒幕を非難する必要がある。

欧州評議会のドゥニャ・ミヤトヴィッチ人権担当委員に話を聞いた。ミヤトヴィッチ委員は、加害者を裁くだけでなく、ジャーナリストの襲撃を命じた者についても調査を行うよう主張することが非常に重要だと指摘した。ミヤトヴィッチ氏は、人権担当委員として、また以前はOSCEのメディアの自由に関する代表として、ジャーナリストやその他のメディア関係者が欧州全域、そして欧州以外の各地でいかに脅かされているかを直接目撃してきた。

Council of Europe Commissioner for Human Rights Dunja Mijatovic (left) and our correspondent Dr Aurora Weiss.

ミヤトヴィッチ委員によると、欧州では今年、13人のジャーナリストが職務遂行中に殺害されており、そのほとんどがウクライナ戦争の取材中に殺害された。昨年は欧州連合(EU)諸国を含め、さらに6人が殺害された。過去30年間に欧州で殺害されたジャーナリストは150人以上に上る。つまり、2カ月に平均して1人のジャーナリストが欧州の地で殺されていることになるが、視野を世界に移せば、状況はさらに深刻だ。紛争を取材中に殺害された者もいれば、犯罪行為を世間の目に触れさせようとしたために殺された者も少なくない。

ミヤトヴィッチ委員は、2018年に欧州安全保障協力機構(OSCE)で報道の自由に関する代表として、また欧州人権委員としての任期の間に取り組んだマルタのダフネ・カルアナ・ガリジアさんのケースに言及した。ダフネの職業生活は、ジャーナリストが直面している多くの困難(暴力、嫌がらせ、誹謗中傷)がジェンダーの次元で悪化していることを証言するものだった。しかし、ダフネは真実と正義を守るために声を上げることを選択した。彼女は、公共の利益のために自立して考え、行動することを選んだ。この無私の献身が彼女の人生のトレードマークだったのだが、そのために彼女は殺害されることになった。

ミヤトヴィッチ委員は、「私があの事件に取り組み始めたのは、OSCEでの任期の終盤2017年2月のことです。当時、彼女が家族と共に大きな圧力に晒されていて、多くの訴訟が起こされているという情報を得たのです。また、5万ユーロ入っていたダフネの口座も封鎖されていました。当時のマルタ政府のメンバーからの圧力だったのです。」と語った。

何十年もの間、EUは、ジャーナリストが自由に活動できる地域だったが、ダフネの殺害事件や、スロバキアの調査ジャーナリスト、ヤン・クツィアクと婚約者、北アイルランドのライラ・マッキー、オランダの調査ジャーナリストで犯罪記者のピーター・R・デ・フリースなどの殺人事件とその後に起こったことは、まったく新しい雰囲気を作り出した。

Matthew Caruana Galizia at the conference, he describes the horror in which he tries to pull his mother out of a burning car after an explosion. All he saw was fire and body parts scattered around. Credit: BMEIA/Michael Gruber
Matthew Caruana Galizia at the conference, he describes the horror in which he tries to pull his mother out of a burning car after an explosion. All he saw was fire and body parts scattered around. Credit: BMEIA/Michael Gruber

ミヤトヴィッチ委員はマルタを訪問中、(事件後に就任した)ロバート・アベラ首相と会談し、ダフネが殺害された場所を訪れた。また、彼女の家族にも接見した。これに先立ち、ミヤトヴィッチ委員はアベラ首相に公開書簡を送り、引き続き実行犯の逮捕起訴に留まらず、この暗殺を指示し組織した黒幕を捜査していくことと、政府による情報開示・捜査協力を要請した。これに対して、情報公開と協力を約束したアベラ首相からの回答は公開されている。ここでは1つの事例を挙げたが、これだけではない。徹底した捜査と不処罰との戦いが、こうしたジャーナリスト殺害事件の解決にとっては最も重要なことだ。

ミヤトヴィッチ委員は、この忌まわしい犯罪の首謀者を処罰すると同時に、この犯罪を可能にした動機と組織的責任に全面的に光を当てることが重要であると主張している。

ダフネの暗殺事件に関する公開調査は、彼女の死について国に責任があることを明らかにした。報告書は、「国は記者の生命に対するリスクを認識し、それを回避するための合理的な手段を講じることができなかった。その結果、最高幹部によって生み出された不処罰の雰囲気が醸成された。」と指摘した。

Memorial to murdered investigative journalist Daphne Caruana Galizia at the foot of the Great Siege Monument in Valletta, Malta./ By Ethan Doyle White - Own work, CC BY-SA 4.0
Memorial to murdered investigative journalist Daphne Caruana Galizia at the foot of the Great Siege Monument in Valletta, Malta./ By Ethan Doyle White – Own work, CC BY-SA 4.0

女性ジャーナリストはますます危険な状況に直面しており、ジェンダーに配慮したアプローチの必要性が浮き彫りになっている。専門的な職務を遂行する上で、彼女らはしばしば性的暴力の危険に晒される。それは、しばしば仕事の報復として狙われる性暴力、公共のイベントを取材するジャーナリストを狙った暴徒による性暴力、あるいは拘留中や監禁中のジャーナリストに対する性的虐待という形のものである。さらに、こうした犯罪の多くは、強力な文化的・職業的スティグマの結果、報告されない

UN global ambassador against sexual violence  credit:UNWomen/Catalina Barragán
UN global ambassador against sexual violence  credit:UNWomen/Catalina Barragán

「ジャーナリストに対する犯罪は、常に腐敗と権力に絡んでおり、セクハラや暴力があれば、裁判の段階に至る可能性は、行動や証拠が増えるごとに低くなります。」と、ウィーンでの会議でコロンビア人ジャーナリストのヒネス・ベドヤ・リマは強調した。

ボゴタのラ・モデロ刑務所の入口で準軍事組織のリーダーを取材するために待っていた彼女は、拷問を受け、誘拐した3人の男たちにレイプされた。彼女は罠に誘われたのだ。彼女はジャーナリストであることが命取りになるという想定はしていなかった。前年に最初の襲撃を受け、この襲撃に至るまで何度も脅迫されていたにもかかわらず、彼女は犯人がこれほど大胆になるとは思ってもみなかった。ベドヤは、その日まで、準軍事組織、ゲリラ闘士、コロンビア治安部隊のメンバーによって組織された武器取引と人身売買のネットワークを非難し続け、自分こそが大胆な人間であったと語っている。

2000年、26歳のジャーナリスト、ベドヤは、国家公務員と右派民兵組織「コロンビア自警軍連合」による武器取引について調査していた。彼女は「ベーカー」と呼ばれる準軍事組織のリーダーへのインタビューの約束を取り付けてボゴタのラ・モデロ刑務所を訪れた。彼女はエル・エスペクタドールの編集者とカメラマンを連れていたが、刑務所に入る許可を待つ間、二人が一瞬離れた隙に姿を消した。彼女は右翼準軍事組織によって誘拐され、集団レイプされ、拷問され、監禁された。誘拐犯らはベドヤをレイプする際に「よく覚えておけ。これはコロンビアの報道陣に対するメッセージだ。」と語った。

それから4年も経たないうちに、こんどは左派民兵組織「コロンビア革命軍(FARC)」に誘拐され、拷問を受けた。分裂した国の手によって信じられないような恐怖を味わった後、ベドヤは沈黙を破った。2009年、彼女は、過去10年間に戦争と紛争の名の下にレイプと拷問に晒された50万人以上の女性の代弁者として、その権利を主張した。

ベドヤは、「もし私が男性だったら、迷うことなく殺害命令を実行したことでしょう。つまり、殺し屋に頭を撃たれて終わりだったと思います。しかし、私が女性であったために、彼らは私を誘拐するだけでなく、これだけのことをする勇気のある女性に屈辱を与えるために私を利用する必要があったのです。」と述べ、勇敢にジャーナリストとしての仕事をしたためにレイプされたことを説明した。

べドヤにとってとりわけ辛かったことは、同僚たちが彼女に汚名を着せたことだ。同僚たちは彼女を被害者と見なさず、彼女に起こったことの責任は彼女だけにあるとした。彼女が事態の全体像を理解するのに時間がかかったのは恐らくこのためだろう。

「私は何年もの間、検察庁での無数の公聴会で証言し、私がレイプされたことを証明しようとしました。当時はジャーナリストとして、組織からの支援もなく、さらに悲しいことに自分のメディア仲間からの支援もないという過酷な状況でした。そんな疲弊した日々が続いた2009年のある日の午後、まだ始まってさえいない司法手続きの追求を諦めようかと検察庁の階段に座って泣いていた私に、『報道の自由のための財団』の元理事が声をかけてきました。彼は私を信じ、私を襲った犯人を特定することが可能だと考えていた唯一の人でした。これが不処罰との戦いの転機となりました。」とベドヤは語った。

その後、彼女は亡命を拒否し、ジャーナリストとしての仕事を続けた。現在、彼女はエル・ティエンポの記者兼編集者として、性暴力のサバイバーが感じる非難を根絶するために精力的な活動を続けている。「被害者に自分の体験を名乗り出る勇気を与えることが、性暴力に直面した女性の現実を変える手段です。」とベドヤは語った。

「未だに道のりは長い。私の事件では3回も検察官が交代したのに未だに犯人は処罰されていません。加害者が裁かれることはないかもしれない。コロンビアの裁判所を通じての進展はありません。」と、べドヤは数年前に指摘していた。

ベドヤが米州人権委員会に提訴するまで、この事件はコロンビア検察庁で10年以上停滞したままだった。2011年5月、準軍事組織の兵士が逮捕され、ベドヤを襲った3人のうちの1人であると自白した。21年10月、地域の人権裁判所は、ベドヤの誘拐、拷問、レイプについてコロンビア政府の責任を認めた。

明らかに世論喚起が必要

Leon Willems, Director of Free Press Unlimited  Credit: BMEIA/Michael Gruber
Leon Willems, Director of Free Press Unlimited Credit: BMEIA/Michael Gruber

「不処罰の主な理由は、政治的な意志の欠如です。沈黙を破り、不処罰の連鎖を断ち切ろうと真剣に考えるなら、政治的な意志の欠如をいかに断ち切るかに目を向けなければなりません。」と、 フリー・プレス・アンリミテッドのレオン・ウィレムス前事務局長は、市民社会の視点から語った。

対談の中でウィレムス前事務局長は、不処罰を減らすという意味で有効なポイントをいくつか挙げた。

例えば、目撃者が公式に保護されれば、彼らは名乗り出るでしょう。ジャーナリストが殺される事件では、目撃者が次の標的になることを恐れて話さないケースが多く見受けられる。だからこそ、証人保護制度は重要だ。

また、証拠がきちんと収集され確保されても、迅速な反応が得られないということもある。だからこそ、迅速な対応が必要だ。それだけでなく、迅速な世論喚起も重要である。つまり、現地の市民社会、メディア、国際機関のすべてが連動して世論喚起を組織しなければならない。政治家はそれに最も敏感なのである。

メディア関係者が、職務故に標的にされないようにするためのメカニズム、つまり、国や地方の司法機関に、より迅速に行動するよう強制できるシステムが必要だ。

「次のステップは、警察の捜査員に、ジャーナリスト殺害はただの殺人ではなく、沈黙と弾圧を目的とした特定の動機に基づく殺人であることを理解させることです。つまり、この問題とジャーナリストの安全確保の必要性を理解するよう警察の捜査員に指導する警察署長、政府高官との関わりが必要です。しかし、警察はジャーナリストを理解していないので、これは長い道のりです。」と、ウィレムス前事務局長は強調した。

ジャーナリストが殺されたりレイプされたりすることへの認識を高め、捜査過程や訴追を改善することは、長い道のりだ。だからこそ、法の支配、司法、内政、国際NGO、監視団、EUのメカニズムが連携できるよう、効率的で誠実なつながりを作る必要がある。

紛争地でのジャーナリストの殺害はメッセージではなく、戦争犯罪である。

Boris Nemzow, By Olaf Kosinsky - Own work, CC BY-SA 3.0 de
Boris Nemzow, By Olaf Kosinsky – Own work, CC BY-SA 3.0 de

2022年5月30日現在、2014年にロシア・ウクライナ紛争が始まって以来、少なくとも15人の民間人ジャーナリストやメディア関係者が殉職している。その内訳は、ロシア人6名、ウクライナ人4名、イタリア人1名、米国人1名、リトアニア人1名、アイルランド人1名、フランス人1名である。

さらに、少なくとも6人のウクライナ人ジャーナリストが職務外または曖昧な状況で殺害されている。

「私は10日間ウクライナに滞在し、国内外のジャーナリストと会いましたが、彼らの話では、出版社は十分な注意を払っていないとのことでした。彼らは、紛争地帯で働く人々、つまり、他の人々が行けないところに行き目と耳となる人々を保護することを考えなかったのです。」

「犯罪に光を当て、何が起きているのかを指摘すること。機材だけでなく、十分な保険や心理的な支援も必要です。紛争や紛争地域に対処する際には、これは非常に重要です。」と、ミヤトヴィッチ委員は強調した。

ロシアのジャーナリストで2021年ノーベル平和賞受賞者のドミトリー・アンドレーエヴィチ・ムラトフ氏は、ウィーン会議での講演で、「過去にはプレスラベルはジャーナリストを保護するために役立ちましたが、今では標的にされています。ジャーナリストの殺害や、彼らが巻き込まれる組織的な罠は、政治的なメッセージを発信する手段になっているのです。このような場合、調査を主張し、犯人を戦争犯罪法廷に引きずり出すことが必要です。」と語った。

ウィーン会議では、国連行動計画を実施するために設けられた制度的枠組みを把握し、ジャーナリストに対する犯罪の不処罰と戦うための行動を拡大するために、既存の人権メカニズムの活動やSDG16.10.1に関する各国の自主報告といかにうまく結びつけるかについて検討された。

Safety of Journalists: Protecting media to protect democracy High-level Conference, Vienna Credit: BMEIA/Michael Gruber
Safety of Journalists: Protecting media to protect democracy High-level Conference, Vienna Credit: BMEIA/Michael Gruber

これは、国連システム内のアクターやメカニズムだけでなく、他の地域・国際機関や、司法、立法者、検察、治安部隊、国内人権機関、その他のステークホルダーを含む国内機関にも言及するものである。また、デジタル化に関連する課題や、ジャーナリストに対する組織的な嫌がらせなど、過去10年間に出現した新たな課題についても議論された。(原文へ

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北極圏会議で注目を浴びる先住民族

【レイキャビクIDN=ロワナ・ヴィール】

北極地域は地球の生態系の中でも特異な地位を占めている。この地域の諸文化や先住民族らは寒冷で極端なこの地の気候に適応してきた。北極での生活は、動物プランクトンや植物プランクトン、魚類や海洋生物、鳥類、陸上生物、人間社会を包含している。

北欧の国アイスランドの首都レイキャビクは、第27回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP27)まであと4週間を迎える中、「北極圏会議」の主催地となった。北極は、エジプトのシャルム・エルシェイクで行われる2022年の年次会合の議題には上がっていない。

しかし、10月13日から16日にかけて開催された北極圏会議には2000人が参加し、600以上の講演やセミナーが持たれるなど、「大成功」を収めたとみられている。

10月にレイキャビクで開催された北極圏会議は、公式のイベントに加えて、継続中の研究やその結果の公表や拡散、社会・環境問題の議論など、ネットワークを広げるために多くの時間を費やすことができる構成となっていた。あまり知られていない研究でも、多くの人々に届けることができる。

The Frederik Paulsen Arctic Academic Action Award 2022: Ceremony and Reception/Arctic Circle

例えば、スウェーデン製薬業界の億万長者フレデリック・ポールセン氏は北極圏会議でを創設し、2年目を迎えた。気候変動の劇的な影響を具体的に反転させようと試みる行動志向の科学的取り組みに対して賞を与えることにしたのだ。

今年の受賞者は、ロングイェールビーンのスヴァールバル大学センターに勤めるハン・H・クリスチャンセン氏とマリウス・O・ヨナッセン氏であった。彼らの研究は、異常気象とインフラに関連して北極圏社会の適応力をつけることを目的とした先進的な永久凍土・気候変動対応システムの開発に力を注ぐものだ。

アイスランドの左派緑運動党の議員で「西部ノルディック評議会」の議長であるスタイナン・トーラ・アルナドッティル氏は、「西部ノルディック地域におけるグリーンイノベーションと若者の新しい機会」と題したセミナーを開いたが、北極圏会議から特に具体的な動きが出てきていないことを認めた。「北極圏会議は人脈作りと交流の場、つまり、アイディアをもらい意見を交換する場です。しかしそれが北極圏会議の目的でもあります。政治家や学者、研究者、企業人を一堂に会させるという役割です。」とアルナドッティル氏は語った。

アルナドッティル氏は、自らにとって何が重要かを語る若者たちが多くのセミナーに参加していたことに感心した。あるセミナーでは、先住民族の英知について言及がなされた。「英知をいかに世代を超えて伝えるか、自然の力に対処するにあたって過去の世代の英知を科学者が理解できるような『言語』に先住民族がいかにして翻訳していくかが重要です。」と指摘した。

Photo: Anders Oskal from Norway's International Centre for Reindeer Husbandry said the Arctic Council’s Arctic Monitoring and Assessment Programme works with reindeer herders and how they deal with climate change. Credit: Lowana Veal | IDN-INPS.
Photo: Anders Oskal from Norway’s International Centre for Reindeer Husbandry said the Arctic Council’s Arctic Monitoring and Assessment Programme works with reindeer herders and how they deal with climate change. Credit: Lowana Veal | IDN-INPS.

アイスランド「若者環境協会」のエステル・アルダ・フラフンヒルダー・ブラガドッティル氏は、先住民族社会や環境正義、それにエコフェミニズムという考え方に特に関心を持っており、いくつかのセミナーに出席した。

彼女は、技術的な解決策について、先住民のコミュニティと欧米諸国の人々の間で考え方に違いがあることに気づいた。あるセミナーでは、「カナダ、グリーンランド、米国の先住民が、「自然を基盤とした解決策(Nature -based Solutions=NbS)」や地球工学といった欧米の解決策は、彼ら先住民が実際に目の当たりにし直面している問題を考慮した不可欠な解決策ではないと語っていた。」しかし、彼女が次に参加した「欧米の白人が主導したセミナー」では、「欧米のパネリストらが、まさにこうした解決策を賞賛していた。」のだ。

にもかかわらず、ブラガドッティル氏は、より良い方向に向けて何かが変わりつつあると感じている。先住民族に関する数多くのイベントが開かれ、「先住民族に関する状況は、2013年に第1回北極圏会議が開催されて以来、かなり改善してきた」という評価が見られた。

「同じことは女性に関しても言えます。」とブラガドッティル氏は語った。今回の会議では、アイスランドのカトリーン・ヤコブスドッティル首相が北極圏におけるジェンダー平等と女性のリーダーシップに関する部会の司会を務めた。「この部会が開かれるまでに5年を要したことをあとで知り驚きました。それでも今回開催できたことはよかったと思います。」とブラガドッティル氏は付け加えた。

Ólafur Ragnar Grímsson/ By premier.gov.ru, CC BY 4.0
Ólafur Ragnar Grímsson/ By premier.gov.ru, CC BY 4.0

オラフール・ラグナー・グリムソン氏は、自身が大統領在任中に北極圏会議を創設した(2016年まで大統領職にあった)。16年間の職責の間、多くの政治家に会い、有名なスピーカーを多く北極圏会議に招いてきた。

一部の国は、北極圏内にはないためにオブザーバーという形で参加してきた。例えばシンガポールがそうである。シム・アン外務担当兼国家開発担当上級国務大臣は、シンガポールはその地理的な特徴ゆえに北極圏会議に参加している、と語った。

彼女は発表でこう述べている。「北極で起こっていることはシンガポールのような小規模な島嶼国には重大な影響を及ぼしています。我が国の約3割は海抜5メートル以下のところにあり、地球温暖化による海水面の上昇に脆弱です。従ってシンガポールとしては、気候変動のマイナスの影響に対処する上で多くの北極圏国家と積極的に協力していきたいと思っています。」

シンガポールは2050年までに温室効果ガス排出ゼロ(ネットゼロ)を目指している。

今も北極圏会議の議長を務めるグリムソン氏は、「北極圏会議の特徴は、設立以来、気候変動対策、クリーンエネルギー開発、北極の氷の急速な融解に対するより良い理解など、多くの重要な分野における複数のアクションやプロジェクトにつながる条件やコンタクトを創出させてきたところにあります。2022年の会議は、様々なパートナーや組織、政府を一堂に会して、複数の方法で行動を強化する北極圏の招集力を再び見せてくれました。」と説明した。

「『北極圏』の民主的な性格によるならば、このイニシアチブの役割は、必ずしも新たにアクションを生み出すことではなく、他者が具体的な方法で前進するのを可能にするところにあります。さらに、今回の会議では、近年で最も重要な気候-北極圏研究である歴史的な「北極気候研究のための学際的漂流観測(モザイク)」探検隊を表彰し、北極圏賞を授与しました。」と付け加えた。

「『モザイク』は、北極海の北極に近いところで砕氷船を用いた1年に及ぶ探査である。砕氷船には科学調査の機器を積み、その目的は、地球温暖化の震源地である北極に迫り、気候変動に関する理解を深める知見を得ることである。20カ国から数百人の研究者が関わっている。」

「このように、2022年の会議は、北極圏の科学と気候変動の脅威を理解することの根本的な重要性を伝えています。」とグリムソン氏は締めくくった。

シンガポールのような熱帯の国々にも利するところがある。アイスランドでの毎年のイベントに加えて、特定の問題に焦点を当てた小規模のフォーラムが各地で開かれている。次のフォーラムは、来年1月と3月にそれぞれアラブ首長国連邦のアブダビと日本で開催の予定だ。(原文へ

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【ハラレIDN=ジョフリー・モヨ】

ジンバブエの首都ハラレにある人口密度が中程度の郊外で、かつては森林が豊かな土地であったグラウディナでは、木々が消えゆく中で住宅の建設が進んでいる。

ザンビアの首都ルサカに程近いジンバブエ北西部では、かつて豊かな森林だった場所をつぶして、数十年かけてスラムやバラック街が形成されてきた。

Map of Zambia
Map of Zambia

国連ハビタットによると、ザンビアでは公的な低コスト住宅が十分にないため、都市部の成長とともに住宅危機が相次ぎ、都市周辺部では無許可の居住地が拡大しているという。

環境活動家によると、ザンビアの都市部の木々がこのために伐採されているという。同国の環境活動家ノムサ・ムレンガ氏は、「人々がよりよい経済的機会を求めて村を去っていくため、都市部の人口が増えている。人々は残り少ない都市部の木々を伐採して、住宅のためのスラム街を形成しています。」と語った。

6人の子を抱える未亡人ポーリーン・チャンダさん(56)も、そうして都市の木々を容赦なく伐採して都市部に定住してきた多くのザンビアの人の一人だ。

チャンダさんはIDNの取材に対して、「20年前にこの地にやってきたときに自生していた木々を、子どもたちと切り倒しながら生きてきました。当初は、まずは自分たちが住む家を建てるために、木々を伐採するところから始めました。」と語った。

土地・天然資源・環境保護省によると、ザンビアでは毎年、25万~30万ヘクタールの森林が失われ森林破壊が進んでいるという。

「グローバル森林ウォッチ」(GFW)によれば、昨年、ザンビアでは20万1000ヘクタールの木々が失われたが、これはCO2排出量7830万トン分に相当するという。

GFWは、最新の技術を利用し、森林の状況を監視するデータとツールを提供して、世界の森林がどこでどのように変化しているのかを誰でもリアルタイムに把握できるオンラインサイトを運営している。

Map of Mozambique
Map of Mozambique

非政府科学機関である国際森林研究センター(CIFOR)によれば、ザンビアでは電化が進んでいないため、約9割の世帯が薪燃料のみに依存している。

モザンビークでも、都市化の進展が森林を蝕み、遠隔地での経済的困難から逃れるために、都市部の土地を求め、しばしば違法に住居を建てる人々が後を絶たない事態が進行している。モザンビークではかつて、都市と農村の両方に豊かな森林があったが、現在では徐々に森林が絶滅の危機にある

昨年、海岸沿いの国であるモザンビークでは27万8000ヘクタールの森林が失われたが、これはCO2排出量1億900万トン分に相当する。

ジンバブエの北側にあるマラウィでも、同様に森林破壊の影響が町や都市を襲っている

Map of Malawi
Map of Malawi

マラウィの首都リロングウェの独立系環境専門家であるニコラス・カソンゴ氏は、IDNとの電話インタビューで、「マラウイの多くの都市部では、木材燃料の需要の増加が、100キロメートル圏内まで森林破壊の輪を広げています。」と語った。

人口2000万人のマラウィでは都市の人口が12%程度だが、政府によれば、昨年だけでも1万4700ヘクタールの森林(CO2排出量530万トン相当)が失われたという。

マラウィの開発専門家らは、都市を襲っている森林破壊を引き起こす農村部から都市への大量移住を非難している。

マラウィの開発専門家アジボ・ブウェラニ氏は、「多くの人々が都市への移住を選択するようになり、都市部のサービス低下が顕著になっています。結果として、住宅で電力が利用できないために、木材を燃料として使うようになってきています。」とIDNに語った。

ジンバブエでは、農村から都市への移住者の多くが、経済的な機会を求めて仮設住宅を建てるために木を切り倒し、環境保護活動家らによると、これが森林を絶滅の危機に晒しているとしている。

しかし、ハラレの東南25キロのところにあるチトゥングウィザ郊外の町デマのトライノス・ガバさん(46)のような都市への移住者は、同じような境遇の人々がいくら木々を切り倒していたとしても後悔はないと語った。「生計を立てたいのです。畑を耕さないといけないし、毎日のように停電している近くの町チトゥングウィザに燃料用の薪を売りに行かなきゃならない。12年前に田舎からここに出てきてから、ずっと仕事がないのです。」と、ガバさんは語った。

Uncontrolled woodcutting in remote areas of Zimbabwe like Mwenezi district has left many treeless fields. Credit: Jeffrey Moyo/IPS
Uncontrolled woodcutting in remote areas of Zimbabwe like Mwenezi district has left many treeless fields. Credit: Jeffrey Moyo/IPS

ジンバブエのネリスワ・チョンベ氏のような生態学者は、都市化の進展が南部アフリカの森林を破壊するにつれ、この地域の自然生態系も脅威に晒されていると指摘している。「都市にやってきた人々が家を建てることで森林が破壊され、生態系にも影響が出てきています。」

ジンバブエ森林委員会によると、同国では毎年26万2000ヘクタールの森林が消失している。

この中には、ガバ氏のような都市移住者の行為によって失われた森もある。なにしろ彼らは、森林を伐採して建てた小屋に住み続けるために、街で必死に薪を売って生計を立ているのだ。

しかし、環境活動家らによると、ハラレのようなジンバブエの大都市でもまた、緑地帯が急速に消滅していっているという。ハラレの環境活動家リバティー・ムセヤンワ氏は、「公園のような緑地帯をつぶして住居や工場を建設する一方で、その代わりとなる再森林化計画がないためにこのような事態が生じています。」と説明した。

国連によれば、ジンバブエのようなアフリカ南部の国で人口が増える中、世界の都市人口の割合は2050年には70%近くにまで上昇する見通しであるという。

ムセヤンワ氏は「この流れが、都市部の森林破壊を加速することになるだろう。」と語った。

実際、「森林は都市で大規模に破壊されている。建設のための開発も進み、倒された木々を盗んで稼ぎにしようとする者もいます。」とムセヤンワ氏は語った。

現在、ジンバブエのエネルギー供給全体に占める木材利用の割合は6割以上である。

Southern Africa regions/ Burmesedays, minor amendments by Joelf – Own work based on the earlier map by Shaund and Nick Roux, CC BY-SA 3.0
Southern Africa regions/ Burmesedays, minor amendments by Joelf – Own work based on the earlier map by Shaund and Nick Roux, CC BY-SA 3.0

ジンバブエ森林委員会によると、家庭内の料理、暖房、そして主要農産物であるタバコの乾燥加工のために、同国では毎年最大1100万トンの薪が必要とされている。

ジンバブエの森林は現在国土の約45%を森林が覆っているが、近年、毎年約15%~20%のペースで減少している。(原文へ

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This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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