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ローマ教皇庁主催国際シンポジウム「核兵器なき世界と統合的な軍縮に向けての展望」を取材

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Filmed by Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director, President of INPS Japan.
Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director, INPS Japan.

INPS Japanの浅霧勝浩マルチメディアディレクターが、教皇庁人間開発のための部署が11月10・11両日に主催した国際シンポジウム「核兵器なき世界と統合的な軍縮に向けての展望」を収録したもの。

IDN-INPS covered the Vatican Conference on “Prospects for a World free from Nuclear Weapons and for Integral Disarmament” on November 10-11, the first such gathering organised by the Pope. Apart from giving a glimpse of conference sessions, INPS Multimedia Director and IDN Bureau Chief for Asia-Pacific Katsuhiro Asagiri shot video clips of interviews with the Vatican representatives and independent experts.

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|スリランカ|政府の有機農業政策にコメ農家が困惑

【ポロナルワIDN=R・M・サマンマリー・スワルナラタ】

農場で化学肥料の使用を禁じたスリランカ政府の有機農業政策が、産米地帯であり与党の政治的地盤であるこの地域の農民たちを困惑させている。また、スリランカの食料安全保障がこの政策で危機に瀕していると警告が出されるなど、農業専門家からの批判も招いている。

「ミネリヤ統合農業機関」のアニル・グナワルドゥナ議長は、「政府の有機肥料計画は、適切な準備と作業計画なしに発表されたものであり、大失敗だ。」と指摘したうえで、「政府の当初の計画では、10年で有機農業を達成するということだった。しかし、農民との協議なしに化学肥料の輸入を禁じてしまった。」と苦情を訴えた。

農業科学者のサマン・ダルマケーティ氏は、政府が化学肥料輸入を禁止した直後の昨年5月、『サンデー・タイムズ』紙で、この方針によって森林が失われ食料危機が起こると警告していた。

ゴタバヤ・ラジャパクサ大統領は2019年の選挙で「繁栄と輝きの展望」のテーマを掲げ、「健康かつ生産的な市民のコミュニティを創出することで、有害な化学物質に汚染されない食料を消費する習慣を作る必要がある」と述べていた。食の安全に対する民衆の権利を確保するために、スリランカ全土の農業で10年以内に有機肥料の使用を促進すると選挙公約は述べていた。

Photograph of Lieutenant Colonel Nandasena Gotabaya Rajapaksa/ By Mr Jorge Cardoso / Ministério da Defesa - Source Link, CC BY 2.0
Photograph of Lieutenant Colonel Nandasena Gotabaya Rajapaksa/ By Mr Jorge Cardoso / Ministério da Defesa – Source Link, CC BY 2.0

ラジャパクサ大統領が2021年4月に化学肥料と除草剤の輸入を禁じた際、健康上の理由を挙げていた。この輸入禁止は昨年5月6日の特別官報で通達された。内閣が「気候変動対策の持続可能な解決策によってグリーンな社会経済を創り上げる」との計画を承認したことを受けたものだった。この文書は、化学肥料の使用で生産量が増えることは認めたが、湖や運河、地下水を汚染しているとの認識を示していた。

20年以上にもわたって、謎の腎臓病が主要な産米地帯の農民に拡がっており、水質学者や医療関係者を困惑させてきた。農業における化学物質の過剰使用が原因ではないかと疑われてきた。

「緑の革命」技術からの離脱

多くの既得権が働く中、スリランカ政府は農業での化学物質使用から農民を引きはがすことは困難という苦い教訓を学びつつある。慎重な計画と農民との緊密な協議が必要なのだ。

スリランカの農業生産のしくみは、2つに大別できる。一つは植民地期に形成されたプランテーションであり、大規模農場で輸出向けのコーヒーや茶、ゴム、ココナッツといった多年生の作物を生産している。もう一つは小規模生産部門で、国内消費のコメや野菜、豆、ジャガイモ類、香辛料、果物などを小規模農家が生産している。

肥料や除草剤はスリランカのプランテーション生産で長らく使用されてきたが、数十年前まで小規模農家は化学物質をほとんど使わない農業を行っていた。化学肥料が広範に使用されるようになったのは、1960・70年代のいわゆる「緑の革命」期に「高収量」種子が使われるようになってからである。

高価な肥料輸入と補助金

中央銀行の統計によると、スリランカ(公的部門・民間部門の両方を含む)は2020年、海外から2億5900億ドル相当の肥料を輸入しており、これは同国の輸入全体の1.6%を占める。現在の国際価格からすると、2021年の輸入額は3億~4億ドルになるとの観測もある。スリランカ政府は、外貨流出を招く肥料輸入を制限あるいは禁止して、コストを抑えようとしている。

しかし、ペラデニヤ大学農学部元学部長のブディ・マランベ教授は最近の新聞記事で、急に有機肥料への転換を図れば収量の低下につながり、数か月の間に大規模な食糧不足を招きかねないと警告した。教授は、「私は科学に基づいて話をしている。エビデンスを基にした政策決定をしなければ、何もうまくいかない。」と述べ、人々は情報操作されているのだという政府の主張を否定した。また、「食料安全保障は国の安全保障の問題だ」と指摘したうえで、「外部からの食料輸入に頼ることに意味はないのだから、食料安全保障を守るためにも、持続可能な政策を採らねばならない。」と語った。

コメ農家の不満

一部の農民は、政府が十分な肥料を供給できないために、スリランカの主食であるコメを現在の「マハ季」や次の「ヤラ季」に栽培しないと決めている。農民は、化学肥料の輸入が突然禁止されたことに憤っている。農民らは主に田を耕し、低地野菜や穀物類、玉ねぎなどを作っている。しかし、この「マハ季」には化学肥料を使うことができない。もし政府が必要とされる有機肥料の供給を約束するとしても、農民はそれを適切な時期に受け取ることができないという。

コメ農家は、通常は茶やシナモン、ココナッツなどに使われる肥料で代用してきたという。今季のコメの収穫は少なく、収入もかなり減る。

デヒヤネウェラ、ディヴィルンカダワラ、ヴィハラガマ、メディリジリヤ地域の農民を代表している「エクサス・サルー農民組織」のピヤラトゥナ氏はIDNの取材に対して、同組織には142人の農民が属しており、合計で190エーカーの田畑を小規模灌漑水を用いて耕作していると語った。「ここの農民は通常、化学肥料を使って1エーカーあたり100~120ブッシェル(2.5~3トン)を収穫してきた。しかし、今回は肥料の使い方が不十分なためにそれほどの収穫は見込めない」「農業はいまや企業化しており、農民は自家消費のためだけに生産しているのではない。」

Map of Sri Lanka

品種と環境条件にもよるが、コメが種から生育するまでには3~6カ月かかる。発芽、再生産、成熟という三段階を経る。「ここの農民は、105~120日で生育する短期品種と、150日で生育する長期品種の2種類を育てている。」「農民は混合種の種子を使っており、伝統的な品種は用いない。これらの混合種の場合、収量を増やすには質の良い肥料を使わなくてはならない。有機肥料では高い収量を期待できない。」とピヤラトゥナ氏は語った。

ピヤラトゥナ氏は、ポロナルワ地域の農民に与えられている堆肥の品質が悪く、購入した堆肥の中にはごみの破片や種、石などが混じっているという。

ハマウェリ川B灌漑システムを利用している「エカムトゥ・ベドゥム・エラ農民組織」のカピラ・アリヤワスンサ氏は、ヤラ季とマハ季の両方で8エーカーの低地(主に田んぼ)を耕作しており、自身の組織には206人のコメ農家が属しているとIDNの取材に対して語った。また、「この地域では、有機肥料の使用は現実的ではない。」と指摘した。

「我々の村には堆肥を作るだけの資源がない。堆肥を使って野菜は作れるが、コメはできない。なぜなら、伝統的な品種ではなく混合種しかここにはなく、混合種を豊作にするには肥料が必要だからだ。」さらに、闇市でユリア(尿素)を購入するには2万3000ルピー(115米ドル)が必要だったと語った。

アリヤワスンサ氏は、次の収穫期の後に農村経済は崩壊してしまうのではないかと予想している。「今回は収穫が少ない。これまでの3割ぐらいしかないのではないか。マハウェリ地域のほとんどの人びとは農業に依存しているというのに。」彼はさらに、「マハワリB地区だけではなく、ポロンナルワ地区のほとんどの農民が、政府の有機肥料促進政策によって収穫を減らすだろう。」「現在の政府の政策は無計画な意思決定を基にしている」と嘆いた。

農民の期待

SDGs Goal No. 2
SDGs Goal No. 2

他方で、有機的な食料生産に対する農民の期待も高まっており、それが輸出力を強化することも彼らは理解している。一部の農業生産組織はそうした起業で成功を収めてもいる。有機食料生産・販売がスリランカで拡大する余地はある。しかし、効率的で生産的かつ利益を生む有機農業システムとその実践のためにはまだまだ研究が必要だ。これが、政府が現在直面している批判である。

「カルケレ民衆会社」のM・G・ダヤワティ会長は、「化学肥料の禁止は自社のマイクロファイナンスにも悪影響を与えている。」と指摘したうえで、「我々はマハ季に75人の農民に対して52ラーク(520万ルピー[ラークは10万ルピーを表す])の耕作融資を行ってきた。残念ながら、農民は期待される収入を得ることはできないし、借金を返すこともできないだろう。」「さらに、農民は、闇値で化学肥料を買うために自らの金や乗り物を担保に入れている。彼らは借金地獄にはまっている。無計画な政府のこんなやり方では(農民の)生活向上は望めない。」と語った。(原文へ

(注)マハ季:年2回ある季節風シーズンのうちの1つ。北東からモンスーンが吹く10月から翌2月あたりまでの期間を指す。なお、もう一方はヤラ季と呼ばれ、南西モンスーンが吹く3月から9月までの期間を指す。

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【ニューヨークIDN=リサ・ヴィヴェス】

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【国連IDN=タリフ・ディーン

「孤立した王朝」と呼ばれている北朝鮮は、完全なる政治的孤立の下にいる、あるいは世界から完全に切り離されているわけではないようだ。

それは、米国やその同盟国が北朝鮮の高官5人に対する制裁案(その真の狙いは複数回の核弾道ミサイル実験によって西側に対抗し続ける国そのものを標的としていたものだったが)をまとめるのに失敗したことから判断すると、そのようである。

1月19日、国連安保理の非公開会合でこれらの北朝鮮高官に対する制裁案が話し合われたが、中国・ロシアという2つの常任理事国の反対によって成案とはならなかった。

米国の提案が安保理の会合において正式提案されていたならば、両大国はこれに対して拒否権を発動したことだろう。しかし、その結果を予想した米国は、案を提出する道を選ばなかった。

Official Partrait, Ambassador Thomas-Greenfield/ By U.S. Mission to the United Nations, Public Domain

今月に入って7度目の弾頭ミサイル実験であり、2017年以来最長の射程となる今回の実験について、米国のリンダ・トーマス=グリーンフィールド国連大使は1月30日、ABCテレビの取材に対して「極めて挑発的な行為であり、これまでにも安保理で厳しく批判してきたことです」と語った。

「ご存じのように米国は、北朝鮮に対して過去数週間で単独制裁を発動し、安保理でも制裁発動を推進してきました。北朝鮮の行為によって脅威にさらされている韓国や日本といった同盟国とも協力して、その他の方法を探りたいと考えています。」

ジョー・バイデン大統領が北朝鮮の金正恩と直接交渉する可能性について、大使は「初めからそのことは明確に述べてきました。米国政府は外交的協議を行う用意があります。このことは北朝鮮に何度も提案してきました。しかし彼らがそれを受け入れないわけです。しかし、米国政府は、前提条件なしに外交的関与に前向きです。私たちの目標は、北朝鮮が隣国に対して行っている脅迫的な行動をやめさせることです。」と語った。

北朝鮮の初の核実験後、安保理は2006年に北朝鮮に対して制裁を発動し、その後も核実験のたびに制裁が発動されて、北朝鮮経済を苦境に陥れてきた。

他方で、食料不足に苦しむ北朝鮮に対して国連が行った人道支援にも関わらず、北朝鮮は相変わらず核開発を続けている。

世界食糧計画(WFP、本部ローマ)の2019年の報告書によれば、1100万人が栄養不足に陥っており、2550万の人口のうち5人に1人の子どもが発育不良であるという。

1月28日付のニューヨーク・タイムズによれば、延世大学(ソウル)のジョン・デルリー教授(歴史学)が「コロナ禍がこの2年間で与えてきた圧力に比べれば、制裁など大したことはない。それでも北朝鮮は『兵器を止めるから援助を』と乞うているだろうか。」と述べたという。

北朝鮮は核兵器を放棄するよりも「草を食べるだろう」と教授は語った。これは、「我々は草を食べ、飢えたとしても、自らの核兵器を手に入れるだろう。我々に他の選択肢はないのだ!」というパキスタンのズルフィカール・アリ・ブット首相の有名な言葉を念頭に置いている。

ブットのこの発言は、1974年にインドが「平和的核爆発」を実施したことを受けてなされたものだ。

9つの核保有国のうち、中国・インド・パキスタン・北朝鮮の4カ国がアジア諸国である。残りの5つは、米国・英国・ロシア・フランス・イスラエルである。

「平和・軍縮・共通の安全保障を求めるキャンペーン」の代表であり、国際平和ビューロー代表でもあるジョセフ・ガーソン氏は、IDNの取材に対して、北朝鮮核危機にはいくつかの淵源があるが、そのうちのひとつは、朝鮮戦争に始まって、米国が核兵器で北朝鮮を攻撃すると何度も脅しをかけてきたこと、米国が21世紀に入って何度も機会を逃し続けてきたことにある、と語った。

ジョージ・W・ブッシュ大統領は、前政権[クリントン政権]のペリー国防長官とオルブライト国務長官が北朝鮮と協議してなされた包括的合意を拒絶するという大きな過ちを犯したとガーソン氏は指摘する。北朝鮮が核実験を開始したのはブッシュ政権の時であった。

バラク・オバマ政権は「穏健な無視」という誤った政策をとり、その間に北朝鮮の核・ミサイル能力は向上してしまった。つづけて、トランプ大統領とボルトン国家安全保障問題顧問が北朝鮮との間で段階的に軍備管理を追求することを拒み、また機会が失われてしまった、とガーソン氏は語った。

「国際的に孤立し、権威主義的で高度に軍事化された北朝鮮は、同国の体制転換に向けた訓練も含む米韓軍事演習を脅威と見なしてきた。」

北朝鮮は、軍縮協議で進展をもたらすために、米国がまず北朝鮮への敵対的政策をやめよと訴えてきた。

Map of North Korea
Map of North Korea

「バイデン政権が欧州における米国の権力と影響力の強化に力を入れ、ロシアとの間でウクライナ危機が持ち上がり、バイデンとブリンケンが中国封じ込めの優先順位を上げる中、米政府の北朝鮮への関心は弱くなっている。それで金正恩による最近のミサイル実験が起きるわけだ。」とガーソンは指摘した。

バイデン政権が北朝鮮への敵対的アプローチを終結させるとのシグナルを送るために取るべき方法は、72年に及ぶ朝鮮戦争を終結させるとの宣言をすべく韓国と行っている協議をまとめあげることだ。

「もっと多くのことが必要だが、それは、朝鮮半島と北東アジアを非核化するために不可欠な相互信用と信頼を構築する重要な第一歩になるだろう。」とガーソン氏は語った。

「韓国平和ネットワーク」の平和活動コーディネーターであるケビン・マーティン氏は、「[北朝鮮による一連のミサイル実験は]残念だが、北朝鮮のこれまでの行動ぶりからすれば理解できることだ。」と語った。

北朝鮮は米韓(それに日本も加えることができる)軍事同盟に対して当然ながら不安を持っており、それを「敵対的政策」と呼んでいるのである。

バイデン政権は、平和のパートナーとなる韓国が文在寅政権である間に、北朝鮮と緊急に重大な外交協議を開始すべきだとマーティン氏は語った。

朝鮮戦争終結を求め、平和構築における女性のリーダーシップ強化をめざす「非武装地帯を超える女性たち」のクリスティーン・アン代表は「北朝鮮による今月7回目のミサイル実験で重要な点は、米国から一方的な第一撃を抑止する能力を見せつけたということだ」と、IDNの取材に対して語った。

米国が「いつでも、どこでも」北朝鮮と協議する用意があると述べているにも関わらず、米国による「敵対的」政策は一ミリも動いていない。

実際、バイデン大統領は、制裁強化・体制転換論者であるフィリップ・ゴールドバーグを韓国大使に任命したばかりである。

このことは、米国が一方も譲らず、軍事演習および制裁という失敗に終わってきた政策に固執し続けるとのメッセージを送ることになる。これが北朝鮮の態度を硬化させ、軍事能力のさらなる強化につながってしまう。

「危険な瀬戸際外交のゲームだ。これを解決するのは、朝鮮戦争停戦を和平協定へと進ませる真の外交だ」とアン代表は語った。

WFPのウェブサイトによると、北朝鮮の食糧・栄養事情は悪いままであり、同国の人道的な状況をさらに悪化させているという。

耕作地の不足、最新の農業機械や肥料の不足、繰り返される自然災害のために農業生産は毎年の食料需要に見合っていない。

干ばつや水害、台風、熱波が毎年北朝鮮を襲い、土壌の流出、喪失、地滑り、作物やインフラへの損害が生じている。

小規模の災害でも農業生産や食物供給に深刻な損害を与えることがあり、すでに限られた北朝鮮の対処能力にさらに打撃を与えている。2018年末には、同国の「穀倉地帯」とされている地域を厳しい熱波が襲い、平均よりも11度も気温が上昇した。

その直前の2018年8月末には台風「ソウリク」が同国の咸鏡道南部・江原道に大雨をもたらし、黄海道北部・南部でも洪水が起こった。

国連安保理によって課された制裁によって国際貿易・投資にも制限がかかっており、経済的・政治的問題がさらに困難さを増している。

2021年2月、WPFは、コロナ禍に関連した制約によって、WPFが北朝鮮に食料を搬入し、職員を派遣し、WPFの支援事業を監視する能力が「悪影響を受けている」と述べた。(原文へ

INPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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勢いを増すインドの核抑止政策

経済制裁下にある西アフリカ地域で様々な文化行事が予定される

【ニューヨークIDN=リサ・ヴィヴェス】

報道では、新型コロナの蔓延、イスラム過激派による襲撃による治安の悪化、クーデター、経済制裁など暗い話題が多い西アフリカ地域だが、様々な困難に柔軟に対応しながら「このような時だからこそ未来への希望と平和を合言葉に」音楽、ダンス、文化活動に取り組んでいるこの地域のアーティスト達やイベント(コンゴ民主共和国のアマニ〈=スワヒリ語で平和〉祭り、マリの砂漠の音楽祭等)に焦点を当てた記事。(原文へFBポスト

INPS Japan

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核軍拡競争の停止を求める高い呼び声

【ベルリン/プラハIDN=ラメシュ・ジャウラ】

1946年1月24日、国連総会はその決議第1号を全会一致で採択した。「原子兵器と、大量破壊に適用しうるその他すべての主要な兵器を各国の兵器庫から一掃する」ための委員会を国連安保理に創設するためのものであった。同決議は「原子力の発見によって提起された問題に対処するための委員会」と題されていた。

世界中の組織や著名人からなるグローバルなネットワークが、核軍縮が国連の主要目標であると確認したこの総会決議を想起して、核先制不使用や、核戦争を戦わずに済むその他の政策を採択するよう核保有国に求める公開書簡を発表した。

UN Secretariat Building/ Katsuhiro Asagiri
UN Secretariat Building/ Katsuhiro Asagiri

これまでのところ、書簡には69カ国の1000人以上が署名している。1月24日付の同書簡は、「核五大国」の指導者と、核兵器不拡散条約(NPT)に加入しているその他185カ国の政府に対して出されたものだ。「核五大国」とは中国・フランス・ロシア・英国・米国であり、国連安全保障理事会の常任理事国でもあることから「P5」とも呼ばれている。

「NPTを実現せよ「核の脅威から人間の安全保障へ」と題されたこの公開書簡は、世界各地の団体、学者、政策決定者、市民活動家などによるグローバルなネットワークである「NoFirstUse Global」によって出されたものである[訳注:「No First Use」とは「核先制不使用」を意味する]。

世界各地から、元政府閣僚、大使、議員、2人の国連総会議長経験者、元軍人、ノーベル賞受賞者、科学者、宗教指導者、企業経営者、市民活動家が書簡に名前を連ねた。

公開書簡は、核兵器生産を停止することによって核軍拡競争を終わらせ、核先制不使用から始めて安全保障政策における核兵器の役割を低減し、NPTの75周年にあたる2045年までにすべての核兵器を全廃するよう公約し、予算と公的資金を核兵器産業から医療や気候変動関連、持続可能な開発へと移すように、核保有国に求めている。

NPTの締約国に対しては、核戦争を予防し、核兵器なき世界を達成するために誠実に取り組む法的・道義的義務があること、そして、今その機会が訪れていることを強調した。

「先制使用オプションは、文字通り、非常に燃えやすい状況の中で火を弄ぶようなものであり、過失や計算違いによって始まる核戦争を導く危険性がこれまでにもあった。」

「単独での先制不使用宣言や二国間の先制不使用協定、あるいは多国間の先制不使用協定によって、これらの危険を減じることができる。これに続いて、先制不使用政策を実施するために核戦力や作戦管制を再構成し、核の危険をさらに減ずるために政策への信頼性と信用を構築することができよう。そして、最も重要なことは、先制不使用(あるいは「唯一の目的」方針)の採択によって、核保有国やその同盟国が核兵器の完全廃絶に向けた協議に参加できるようになるという点である。」

公開書簡は、核兵器を高度の警戒態勢下においた核保有国同士の緊張の高まりや、P5のすべてが核戦力を近代化している新たな核軍拡競争に駆り立てられて出されたものだ。こうした現状は、故意(意図的なエスカレーション)によるものであれ、あるいは計算違いや情報の誤り、未承認の使用、システムの不備(事故的な使用)によるものであれ、核戦争勃発のリスクを高めている。

こうした現状の下、米国の団体が1月12日に出した共同声明は、ICBMの廃絶を次のように呼びかけた。「大陸間弾道ミサイルは特に危険であり、誤報や計算違いによって核戦争が起きる可能性を著しく増大させてしまうものだ。ICBMの全廃以上に、世界的な核のホロコーストの可能性を減じるために米国が取れる重要な措置はない。」

声明は次のようなウィリアム・ペリー元国防長官の言葉を引いている。「もし我々のセンサーが敵のミサイルが米国に向かっていると示したならば、大統領は、敵のミサイルが我が方のICBMを破壊してしまう前にその発射の決断を下さねばならない。ひとたび発射されたなら、取り消しは不可能だ。大統領には、この恐るべき決断を下すまでに30分も与えられていない。」

ペリー元国防長官は、さらにこう書いている。「米国はまずもって、冷戦期の核政策の主要素であった大陸間弾道ミサイル(ICBM)戦力から安全に撤退することができる。ICBMを退役させることで相当のコストは浮くが、利益があるのは予算面だけではない。これらのミサイルは世界でもっとも危険なものの一つだ。事故的な核戦争を引き起こしかねない。」

Doomsday clock, positioned at 1.67 minutes (100 seconds) to midnight/ By Ryanicus Girraficus - Own work, Public Domain
Doomsday clock, positioned at 1.67 minutes (100 seconds) to midnight/ By Ryanicus Girraficus – Own work, Public Domain

さらに、『原子科学者会報』は、「世界終末時計」を3年連続で「真夜中まで100秒前」にセットしたと発表した。これは史上最も真夜中に近く、今日の核戦力と核政策のリスクのレベルが引き続ききわめて高いことを示している。

先の公開書簡の署名者らは、P5が2022年のNPT再検討会議(新型コロナのために8月まで延期)の準備の一環として1月3日に出した共同声明について触れた。声明でP5は「核戦争に勝者はなく、戦われてはならない」と述べたが、同時に安全保障政策における核兵器の役割を再確認してもいた。

公開書簡の著名な署名者たちは、核兵器の現状についてこのようにコメントしている。

マリア・フェルナンダ・エスピノーサ(エクアドル元外相、第73回国連総会議長)「核兵器は現在および将来の世代に脅威を与える。それは、国家間の紛争解決の役に立たず、コロナ禍や気候変動、食料安全保障、サイバーセキュリティ、持続可能な開発目標の達成など、今日および将来の人間の安全保障の問題にとって逆効果ですらある。NPTの実現、核兵器を世界的に廃絶するという1946年に国連が打ち立てた目標の実現を図るべき時だ」。

トマース・グラハム・ジュニア大使(グローバル・セキュリティ研究所無党派安全保障グループ議長、1995年NPT再検討・延長会議での米代表)「イラン情勢や北朝鮮問題、急速に悪化する気候変動、その他の重大な問題によって、10~15年前よりも核戦争の可能性は高まっている。」「これに対処する意義のある方法は、米国が核兵器を先制使用しないと宣言し、その他の核保有国にもその方針に賛同するよう要請することである。」

デイビッド・ハネイ卿(グローバル安全保障と不拡散に関する英国超党派議員の会共同代表、元英国国連大使、元英国欧州連合大使)「国連安保理事会の常任理事国は、核先制不使用や『唯一の目的』概念も含め、核戦争のリスクを減じる方法について真剣な協議を始めるべき時だ。『核戦争に勝者はおらず、戦われてはならない』とするレーガンとゴルバチョフの見解をこれらの国々が再確認してからまだ数日しか経っていないのだ。」

Professor the Hon Gareth Evans AO QC, at the University of Melbourne, Australia/ Gareth Evans

ギャレス・エバンス(アジア太平洋リーダーシップネットワーク創設者、元豪州外相)「先制不使用を採用するかどうかはリトマス試験のようなものだ。『核戦争に勝者はおらず、戦われてはならない』とする宣明は、それ自体待ち望まれていたし、歓迎すべきことでもあるが、核先制不使用なしには空疎なレトリックにすぎない。」

ジョルジオ・パリシ(2021年のノーベル物理学賞受賞者)「非核兵器国は核不拡散条約を尊重してきたが、核兵器国はその義務を尊重してきていない。非核兵器国の市民として、核兵器を世界的に廃絶する協議に参加することを核保有国が拒んでいることに、私は腹立たしく思っている。」

フランク・フォンヒッペル(プリンストン大学公共国際問題学教授、元米大統領府国家安全保障問題顧問補佐)「現代社会の多くの相互的な脆弱性を我々が理解するところでは、全面戦争に対するあらたな抑止力が登場しているということだ。この理解を基盤にすれば、核軍縮に向けた第一歩としてまずは核先制不使用を約束するのが当然ということになるのではないか。」

公開書簡に賛同した軍の元司令官や退役軍人らは、核兵器の先制使用の可能性を残した現在の政策は核の大惨事のリスクを増大させるものであり、司令官らは、とりわけ核兵器を発射するよう命令された場合に困難な立場に追いやられると考えている。

例えば、英海軍のロバート・フォーサイス元中佐はこう述べる。「巡航している戦略潜水艦の司令官には、なぜ核を発射するのか、標的は何か、発射の結果として民間人はどうなるのかといったことを知るすべがない。だから私は1970年代、私の艦からポラリスミサイルで先制攻撃するつもりはなかったし、どのような場合でも核による先制使用には強く反対してきた。」

「戦争は我々が21世紀に直面している問題への答えではない」と語るのは、間もなく任期が満了する「平和を求める退役軍人の会」のアドリアネ・キン代表である。「既に人間や環境に恐ろしい影響を与え、将来の世代にも影響を与え続けるであろう核兵器と機器に関してもそのことが言える。我々のお金や資源、知性を、今日の世界のニーズを満たす解決策を見つけるために使うべきだ。」

公開書簡の署名者らはまた、先制不使用政策の採択によって核軍備管理・核軍縮協議の現在の行き詰まりが打開され、核兵器なき世界に向けての扉が開かれると主張した。

例えば、ロシア軍事科学自然科学アカデミーの会員であるウラジミール・P・コジンはこう述べる。「核兵器国はミサイルや爆弾の正確性を向上させ、核・非核両用の航空運搬手段を拡散し、国境の外側に前進配備される新型核兵器へと移行している。」

「これらが合わさって、それぞれの国家の核戦略において戦略核・戦術核を使用することがますます正当化されるようになっている。これは劇的かつ危険な展開であり、戦術核や運搬システムを縮小したりその使用を禁じたりするための公的交渉を核兵器国が行っていないという事実が事態を悪化させている。」

「他方で、核兵器の先制不使用という方針をすべての核保有国が採用するならば、核兵器の役割がまずは小さくなり、最終的には、この地球のすべての住民と国際安全保障全体の利益のために、地球上からそのような大量破壊兵器が廃絶されるという、画期的な展開がもたらされることになるかもしれない。」

核保有国が先制不使用政策を採択することの政治的・軍事的実現可能性や望ましさについては、『核兵器の先制不使用:一国的・二国間・多国間アプローチとそれが安全保障、リスク低減、軍縮に与える影響』と題する作業文書で論じられており、この文書は公開書簡とともにNPT加盟国に送付された。(原文へ) (PDF版

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国連が20の国・地域で飢餓が急増すると警告

【ローマIDN=ジャヤ・ラマチャンドラン】

 国連の2つの食料援助機関が新たに発表した報告書によると、世界の20の国・地域において、今後数か月で人口の一部が壊滅的な急性の飢餓に直面し、命と生活を危機的な状況に晒されている地域「ハンガーホットスポット」が特定されている。

なかでも、とりわけ紛争や、経済的打撃、自然災害、政情不安に見舞われている地域や、人道支援のアクセスが限定されている地域の被害拡大が懸念されている。

国連世界食料計画(国連WFP)と国連食料農業機関(FAO)は1月27日に発表した2022年上半期中に推測する危機的飢饉の報告書「ハンガーホットスポット」で、エチオピア、ナイジェリア、南スーダン、イエメンを引き続き最も憂慮される国々と警告している。これらの4カ国はいずれも、死に直面するほど深刻な飢餓に陥る(=5段階の総合的食料安全保障レベル分類〈IPCフェーズ〉で最も深刻な「大惨事」)人々が多くなるとみられる地域を抱えており、緊急の対応を必要としている。

報告書は、飢餓と紛争の因果関係は複雑で広範に及んでいると指摘している。事実、WFPが支援している人々の多くが、紛争から逃れるために、自らの家屋や土地、仕事を諦めることを余儀なくされた経験をしている。紛争や暴力は、ミャンマー、中央アフリカ共和国、コンゴ民主共和国、中央サヘル地域、スーダン、南スーダン、ソマリア、エチオピア北部、ナイジェリア、モザンビークにおいて長引いたり激しさを増したりするとみられている。

Hunger Hotspots/ FAO-WFP
Hunger Hotspots/ FAO-WFP

気候と食料価格

もう一つの憂慮すべき傾向は、極端な気候がもたらす影響である。WFPとFAOは、「気候変動はもはや未来の問題ではなく、世界中のコミュニティーが日々の現実の中で直面している問題」と認識している。この点について報告書は、「気候変動がもたらす被害は既に、ハイチ、東アフリカ、マダガスカル、モザンビーク、最近ではアフガニスタン北西部のバードギース州で確認されている。また、パンデミック後の経済苦境は長引き、食料価格が高騰する傾向が続くだろう。」と指摘している。

食料価格は、2021年中旬に一時下落したものの、2020年5月以来上昇傾向にある。この点で最も憂慮すべき地域は、近東、北米、中東・東アジアである。

報告書はまた、複雑な安全保障環境の下で、支援を必要とする人々への人道支援のアクセスが困難になっている地域として、エチオピア、マリ、ナイジェリア北部、ニジェール、シリアを挙げるとともに、中央アフリカ共和国とコロンビアについては、こうした困難状況が長期に継続していく恐れがあると警告している。

南スーダン

アフリカ中東部に位置する内陸国である南スーダンは、危険なレベルの急性食料不安が最も懸念されている4カ国の一つで、紛争と人道支援アクセスの困難、新型コロナパンデミックの影響、経済苦境、食料価格の高騰などにより状況はさらに悪化の一途をたどっている。また同国は大規模な洪水により広範な地域において、住民が家屋や農地などの生活基盤を失い、既存の問題が一層深刻化する事態に見舞われている。

ナイジェリア

政情不安と高インフレ率で深刻な食糧不足が起こっている。とりわけ、紛争に直面している北部ボルノ州の状況は深刻で、もし人道援助と生活再建を支援する外部からの介入が長期にわたって維持されなければ、約13,500人が壊滅的な飢餓状態に陥ると予測されている。

エチオピア

同国については2021年7月―9月期の報告書からの更新はないが、当時専門家らが、北部ティグレ州で401,000人が飢饉に似た状況に直面していると結論付けていた。FAOとWFPは、こうしたデータの欠如を深刻な問題と受け止めている。前回の報告書では、住民らが既に急性の飢餓状態に陥っている可能性が高く、壊滅的な大惨事のレベルにまで悪化する可能性を指摘していた。

イエメン

同国では、6年以上におよぶ紛争と経済低迷により「飢饉」に近い状態(IPCの5段階分類のうち最も深刻なフェーズ5)が広がっている。その結果、国内世帯の半数以上が、必要な量の食料を入手できなくなっている。政府支配下の行政区に住む世帯が、最低限の食料を入手するために必要な費用が2倍以上になった。これは(従来食料の8割を輸入に依存してきた)イエメンの外貨準備高がほぼ枯渇したために食料の輸入が困難になっているためだ。2021年の4月から7月の間に人道支援が強化されたことで、食料安全保障のレベルは一時安定したが、主要指標の分析によると21年後半には再び状況が悪化している。

その他の地域に対する警鐘

報告書は、アフガニスタンの状況についても注目している。同国では、深刻なレベルの食料不足に直面する人々の数が記録的に増加すると見られている。また、現在の危機的状況を収めることができなければ、一部の人口が飢餓と死に直面する深刻なリスク(IPCフェーズ5)に直面する可能性がある。現在2280万人のアフガン人が深刻な食糧不安に直面している。3月のリーンシーズン(収穫前の最も食料が不足する時期)までに、昨年同時期と比べて2倍以上で史上最多にあたる870万人が緊急事態(IPCフェーズ4)の急性食料不安に陥ると見られている。

Map of huger hotspots Befruary to May 2022 Outlook/ FAO-WFP
Map of huger hotspots Befruary to May 2022 Outlook/ FAO-WFP

既に食料不安に陥る傾向にあるアフリカの角地域は、現在ラニーニャ現象により引き起こされた3期目の旱魃に直面している。最も影響を受けているエチオピア、ケニヤ、ソマリアでは、22年中旬までに、既に深刻なレベルにある食料不安が一層悪化すると見られている。

アフリカのサヘル地域では、短い雨期に降雨量が少なかったため農地や牧草地に深刻な悪影響を及ぼした。この地域では昨年の同時期と比較して2割増の1050万人以上の人々が、高レベルの急性食料不安(IPC/CHフェーズ3以上)の影響を受けると見られている。(原文へ

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かつて旧ユーゴスラビアとルワンダで勃発した内戦で、親族や知人、隣人同士までもが殺戮の熱狂に巻き込まれた「民族浄化」の構図(政治家が少数民族に対する憎悪を掻き立て、実行部隊が殺戮と恐怖を煽り、犠牲者が増える中で一般市民は身を守るために自身の民族グループを暗黙に支持せざるを得ない状況に追い込まれる)を振り返りながら、ボスニア・ヘルツェゴヴィナで再び民族主義が台頭している危険性を指摘したジョナサン・パワー(INPSコラムニスト)による視点。(原文へFBポスト

2004年にボスニア・ヘルツェゴヴィナのサラエボにセルビア人、ボスニア人、クロアチア人の青年たちがホストして開催した「欧州青年平和サミット」を取材した際の映像です。憎悪と恐怖を扇動する政治家と少数の実行部隊が引き起こすパニックが、いかに一般の人々を分断し悍ましい「民族浄化」が起こったかを証言(映像の3分20秒)していたのが印象的だった。(撮影:IPS Japan浅霧勝浩

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