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|ギニア|軍事クーデターで大統領が拘束される

【ニューヨークIDN=リサ・ヴィヴェス

9月5日のクーデターで大統領が拘束されたギニア情勢を分析した記事。政府による弾圧、亡命、投獄などを経験してきたアルファ・コンデ大統領(83歳)は「ギニアのマンデラ」を自称してきたが、自身が政権を獲得すると、憲法を書き換えて自らの3選を可能にし、反対派の大量投獄、審理前の謎の死亡など前任者同様の独裁的傾向を強めていた。ギニアは、鉄鉱石、金、ボーキサイト等天然資源が豊富な一方で、国民の半数以上が貧困線以下の生活を送り、約2割が極貧状態にある。特に飢餓は深刻で230万人の子供が栄養失調、25.9%の国民が慢性的な栄養失調に喘いでいる。クーデターは非難されるべきだが、民主的に選ばれた大統領が必ずしもより良い統治をするとは限らない。(原文へFBポスト

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クーデターの指導者たちは国連演説に正当性を求めようとしたのか

バングラデシュの「安価なワクチンのパイオニア」にアジアのノーベル賞を授与

【コルカタIDN=アミタバ・チョウドリ】

毎年約400万人が感染し児童を中心に約13万人の命を奪ってきたコレラ(ビル・ゲイツは「世界最長のパンデミック」と呼んでいる)は、開発途上国の難民キャンプやスラムなど人口が密集した衛生環境が劣悪で清潔な水や医療へのアクセスが困難な場所で流行する。先進国の大手企業が供給してきた従来の高価なワクチンに代わって、安価な経口コレラワクチン開発・普及に尽力し、ロヒンギャ難民キャンプでのアウトブレイク防止に貢献したパングラデシュ人科学者フィルドウジ・カドリ博士に焦点を当てた記事。彼女は今年、「アジアのノーベル賞」といわれるマグサイサイ賞を受賞した。(原文へ

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|インド|クラウドベースのCoWINプラットフォームと ユニバーサルワクチン接種への道

Former Ambassador of Sri Lanka and Ex-ACP Secretary General Join to Support as Advisors

BERLIN (IDN) — The Non-profit global media agency International Press Syndicate, with IDN-InDepthNews as its flagship, had invited two renowned international relations practitioners and diplomats to join it to support its global mission and outreach activities. We are pleased to announce that the former Sri Lankan career Ambassador A.L.A. Azeez and the former Secretary General of the Organization of ACP States Ambassador Dr. P.I. Gomes have accepted our invitation.

 Ambassador Azeez, who joins us on October 1, 2021, will support us as “Multilateral Diplomacy Advisor” and Dr. Gomes “Advisor for the African, Caribbean and Pacific States”. Mr. Azeez will have an additional charge as “Editorial Coordinator” for South Asia and Middle East.

Ambassador Azeez chaired in 2014 the Group of 77 (G-77) in Vienna in its 50th anniversary, followed by his election as the President of the General Conference of International Atomic Energy Agency (IAEA). He also took on leadership roles within the UNIDO and the CTBTO and chaired as well the Multilateral Diplomatic Committee in Vienna. In 2017, he contributed to the renegotiation of Sri Lanka’s access to the EU GSP + benefit after the country had lost it in 2010.

According to informed sources, it involved a complex process which required active follow-up on international conventions; nuanced, sensitive, but extensive negotiations; and confidence and consensus building which he and his team piloted successfully at the experts’ level. In Geneva, Ambassador Azeez chaired several multilateral conferences, which led to consensus outcomes on some of the most intractable issues, which included, inter alia, UN Human Rights Council’s Social Forum and UNCTAD’s Trade and Development Committee (2018), and WHO’s Global Coordination Mechanism on Non-Communicable Diseases (NCDs) and the Conference of States Parties to the International Convention on Cluster Munitions (2019).

Ambassador Dr. P.I. Gomes designated as our Advisor for the African, Caribbean and Pacific (ACP) States served as Secretary-General of the Group of ACP States for five years until February 29, 2020. The 79-nation inter-regional body officially became the Organisation of African, Caribbean and Pacific States (OACPS) on April 5, 2020. Dr Gomes was previously Ambassador of the Republic of Guyana to the EU in Brussels. He was also accredited to the Government of Italy, the FAO and WTO during the years 2005 until 2015 when he joined the ACP as Secretary-General. He brings with him a wealth of knowledge and expertise as a top negotiator and consensus-builder.

The International Press Syndicate which had followed Ambassador Azeez’s professional path closely since 2011 has taken the view that his innovative perspectives and insights on varied global and regional challenges; this clarity of thought; his accessibility, outreach and public diplomacy; and strategic leadership and consensus-building abilities are among assets that are too invaluable to be laid to rest after his retirement from Sri Lanka’s public service.

It is especially so at a time when the media and the world at large need creative thinkers, who can help others see the blind spots in the evolving international and regional geo-strategic landscape. Our decision to offer the position of Multilateral Diplomacy Advisor with an additional charge as Editorial Coordinator rests on this recognition and assessment made.

Ambassador Gomes will contribute to our thematic discourses on regional and international issues and provide substantive advice on trade and development related matters as concerns African, Caribbean and Pacific regions. He will also guide us in our outreach activities and network-building.

Ambassador Azeez will have the freedom to comment on multilateral and regional issues; guide our institution in its work and performance and assist other media institutions/think tanks which seek inter-agency support, with critical inputs, strategic mapping and capacity-building; lead thematic colloquium and interactive dialogues on issues of global and regional concern; advise on multilateral issues, public diplomacy, and global policy. We have a number of governmental and non-profit partners who will be delighted to have his advice on a wide range of multilateral issues. [IDN-InDepthNews – 12 September 2021]

Photo: Ambassador A.L.A. Azeez (left) and former ACP SG Dr. P.I. Gomes (right).

|視点|「対テロ戦争」の正当性を疑うとき(ジョン・スケールズ・アベリー理論物理学者・平和活動家)

【コペンハーゲンIDN=ジョン・スケールズ・アベリー

2001年の9・11同時多発テロから20年が経過し、混乱のうちにアフガニスタンからの撤退を図る米国の状況を見ると、いわゆる「対テロ戦争」の正当性を疑うことは適切なように思える。対テロ戦争を名目に開始された米国の20年に亘る一連の戦争では、約200万人以上が殺害され、3700万人が家を追われ、8兆ドルという莫大な戦費が費やされた。

もしこれらの戦争がテロの脅威を削減するためのものだとしたら、目的は果たせなかったと言えよう。なぜなら、米軍が民間人の頭上に投下した爆弾は、新たなテロリストを生むことになったからだ。一方、戦争の目的が軍需産業を儲けさせるものだとするならば、「対テロ戦争」は所期の目的を達成したと言えるだろう。

John Scales Avery

しかし果たしてテロの脅威とは現実のものだろうか。それとも、群れを追いやる犬の鳴き声のようなものだろうか。一方、食料の安全保障が脅かされつつあることや、壊滅的な気候変動が迫っていることは、極めて現実的な問題だ。既に1100万人の子供達が栄養失調と貧困関連の問題が原因で毎年命を落としている。また、第三次世界大戦が勃発して、人類文明や地球の生態系が消滅してしまう脅威も現実のものだ。

さらに再生不能資源が枯渇して経済が崩壊する脅威や、不安定な部分準備銀行制度に関連した脅威も現実のものだ。これらはいずれも、私たちの未来に対して現実の脅威だが、これらと比べれば、テロの脅威は極めて小さなものに過ぎない。

今日の世界では数百万人が飢え、数百万人が予防可能な病気で命を落とし、数百万人が戦争の犠牲者になっている。こうした膨大な犠牲者の数に比べれば、テロの犠牲者は遥かに少ないと言わざるを得ない。毎年交通事故で亡くなる人々の数と比較すれば、テロの犠牲者の数はほぼ見えなくなるほど少ない。

9・11同時多発テロの公式説明は事実ではない

9・11同時多発テロの公式説明は事実ではなく、米国政府が終わりなき対テロ戦争と国内において市民権を縮小する措置を正当化するために、大惨事を実際よりも悪く仕向けたことを裏付ける強力な証拠が公開されており、真相を知ろうとする者は誰でもインターネットで調べることが可能だ。

しかし世界貿易センター攻撃に関する公的説明に異議を唱えるものは少ない。定義上、公的説明を受入れる者は立派な市民ということになり、異議を唱える者は、「左翼」で「おそらくテロリスト同調者」ということになる。ジョージ・W・ブッシュ大統領が述べた通り、文字通り「敵か味方か。」に分類されることになる。

イラクとアフガニスタンの戦争

9・11同時多発テロに対するブッシュ大統領の反応は、これでイラクに遠慮なく侵攻できるか補佐官らに尋ねるものであったようだ。元テロ対策大統領補佐官のリチャード・クラーク氏によると、ブッシュ大統領は9・11後、主要攻撃目標としてイラクに執着していたという。

9・11同時多発テロの9日後、英国のトニー・ブレア首相がホワイトハウスに大統領のプライベートディナーに招待されていた。同席していたクリストファー・メイヤ―駐米英国大使によると、ブレア首相はその席でブッシュ大統領に対して「標的はあくまでもタリバンとアルカイダであり、そこから逸れてはなりません。」と語った。するとブッシュ大統領は、「トニー。あなたのおっしゃるとおりです。まずはこれ(タリバンとアルカイダ)に対処しなければなりません。しかし、アフガニスタンをかたづけたら、イラクに戻らなければなりません。」と回答したという。マイヤー大使によれば、「アフガニスタンに加えてイラクと戦争になる可能性に直面しても、ブレア首相は抗議しなかった。」という。

2002年の夏、ブッシュ大統領とブレア首相は電話でイラク問題を協議した。ヴァニティ・フェア誌が報じたところによると、通話記録を読んだディック・チェイニー副大統領府の高官は以下のように述べている。「記されていたことは何が起ころうと、サダム(フセイン)は去らなければならない。つまり彼らはイラクを攻めてフセイン政権を倒す。正しいことをしようとしているのだ、と。ブレア首相に対して説得は必要ないようだった。つまりブッシュ大統領がブレア首相に参加を求めるシーンはなかった。私は2人のやり取りを読んで、『OK。翌年私たちが何をすべきか理解できた。』と思ったのを覚えている。」

2002年6月1日、ブッシュ大統領は米国の新政策を発表したが、それは従来の米外交政策から逸脱するのみならず、国連憲章と国際法を毀損するものだった。ブッシュ大統領は、ウェストポイント陸軍士官学校の卒業式で演説し「米国は、将来我が国に危害を及ぼす可能性があるいかなる国に対しても、先制攻撃をしかける権利を有している。」「テロの脅威が現実化するまで待ったら、待ちすぎだ。」と述べ、世界の3分の1にあたる60カ国がこのカテゴリーに該当すると示唆した。

米国やいかなる国であろうと先制攻撃で戦争を開始できる権利があると主張することは、国連憲章のとりわけ第1章第2条3項及び同4項に違反する。これらの条項には、「すべての加盟国は、国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危くしないように解決しなければならない。」「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。」と明記されている。

国連憲章はまた、加盟国が武力攻撃を受けている場合には、安全保障理事会が必要な措置をとるまでの間、当該国に個別的又は集団的自衛の固有の権利を認めている。

対テロ戦争の名目で行われてきた殺人と拷問

冷戦の終焉に伴い、米国の巨額の軍事予算を正当化する新たな名目が必要となった。そこで見出されたのが「対テロ戦争」である。そこでは、テロ行為がたとえ国家によるものではなく個人の犯行で、戦争ではなく警察力による対処が適切だったとしても、それは顧みられず、テロを支援したとして一国全体が糾弾され、軍事侵攻作戦が実施された。

さらに、個々のテロ容疑者に対しては、例えば、無人航空機(ドローン)を用いた超法規的殺害が実行に移された。また大規模な拷問プログラムが立ち上げられ、「対テロ戦争」にはあらゆる手段が許されるとした言い訳で正当化された。

もちろん、ドローン攻撃で無実の民衆を殺害し、容疑者に拷問するプログラムを実施したことは、テロリストの削減に寄与するどころか、より多くのテロリストを生み出し、彼らの過激主義を強める結果になった。しかし、「対テロ戦争」の真の目的が、テロの根絶ではなく、肥大化した巨額の軍事費を正当化することだった政府はこのことを意に介さなかった。

この記事は、米国による「対テロ戦争」を厳しく批評したものだが、米国には多くの善人がいる。軍産複合体(や新興実業家等)から流れるカネが多くの腐敗政治家を支配しているが、改革派が反撃に出ている。私たちは、米国のみならず世界各地で、改革派のもとに団結して、軍国主義と闘わなければならない。(原文へ

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|視点|トランプ・ドクトリンの背景にある人種差別主義と例外主義

人類の生存を危機にさらす核兵器と気候変動

「テロとの戦い」に懐疑的なアジア

核軍縮を促進するあらたな若者のオンラインサイト

【ジュネーブIDN=ジャムシェッド・バルーア】

世界の若者たちが平和と核軍縮のために立ち上がり、数多くの革新的なアクションに取り組んでいる。核兵器廃絶を目指すグローバルネットワーク「アボリション2000」の青年ワーキンググループは、若者のアクションの間で協力を図り、国連などの主要な軍縮フォーラムに若者の声を持ち込んでいる。同グループは「ユース・フュージョン」という核なき世界を目指す新たなオンラインの枠組みと若者のアクションプランを立ち上げた。

2020年の世界人権デーに立ち上げられた、若者個人と団体のためのこのネットワーキングの枠組みは、軍縮や平和、気候問題、持続可能な開発をつなげ、コロナ禍からの回復を図りつつ、若者のアクションと世代間対話を目指すものである。学生や活動家、熱心な層に情報を提供し、教育し、つなげ、参加を促す。

Jayathma_Wickramanayake

そうした中、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、8月12日の「国際青少年デー」に寄せたメッセージで、「全ての人にとっての包摂的で公正、持続可能な開発を基盤にした世界をつくろうというなかで、若者に発言権を保証するよう、すべての人々に求める」と述べた。「ユース2030」は国連のこの戦略を表現したものだ。2017年6月に26歳で事務総長の若者問題特使に任命されたジャヤタマ・ウィクラマナヤケは、国連の活動を若者に近づける活動を続けている。

「ユース・フュージョン」は国連軍縮局の「#Youth4Disarmament」と協力して、1991年8月29日の「核実験に反対する国際デー」を記念した。この日は、カザフスタン共和国のヌルスルタン・ナザルバエフ初代大統領のイニシアチブによって、国連総会で全会一致で採択されたものだ。この歴史的な決定は強い政治的なメッセージを送っており、1996年の包括的核実験禁止条約(CTBT)の採択につながる国際的な取り組みを生んだ。2021年は、セミパラチンスク核実験場閉鎖から30年を迎える。

「ユース・フュージョン」は、8.29キロ、あるいはそれと同等の10,900歩をウォーク/ランニングする「#StepUp4Disarmament」を若者に呼びかけている。

Nursultan Nazarbayev/ President.am, CC BY-SA 3.0″

このキャンペーンは、運動を通じて核実験が健康に及ぼす被害への関心を高め、あらゆる年齢の人々の健康を図る持続可能な開発目標の第3目標を促進することも目指している。

「ユース・フュージョン」は、スイスのクリエイティブ・スタジオ「ドクマイン」と組んで、映像・オンラインプラットフォーム「核のゲーム」をプロモーションしている。「核のゲーム」は、核の歴史と、核兵器・核エネルギーのリスクと影響に関する動画であり、オンラインのプラットフォームでもある。非政府組織や反核活動家、若者のリーダーらとともに、東京五輪の開会式が行われた7月23日に立ち上げられた。

進行中のプロジェクトの一環として、「ユース・フュージョン」は、世代間対話と、平和・軍縮分野で長く活躍してきた人たちの経験から若者が学ぶことの重要性を強調している。「この点で、私たちは、尊敬に値し、そのリーダーシップや成果、アイディア、知恵に対してインターネットと私たちの活動を通じて着目してきた『ユース・フュージョンの先達』(Youth Fusion Elders)に敬意を表したい」と今回のプロジェクトチームでは述べている。

『ユース・フュージョンの先達』は、ブルース・ケント、ウタ・ザプ、モーエンス・リュッケトフト、アナ・マリア・セット、トールゲン・ムカメジャノフ、アンドレアス・ニデッカー、シシリア・エルワージーである。

ケント氏は、キリスト教と多様な社会的・政治的活動の接点で常に活動してきた、生涯を平和運動と社会変革に捧げてきた人物である。ザプ氏はドイツの国会議員を23年務めてきた。リュッケトフト氏は、第70代国連総会議長であり、デンマーク社会民主党の重鎮。アナ・マリア・セット教授は著名な物理学者で、パグウォッシュ会議に参加し、ラテンアメリカから科学技術分野の女性の声を長らく伝えてきた。

ムカメジャノフ氏は詩人で、交響曲やオペラ、室内楽、映画音楽、劇や歌、恋愛映画、ポピュラーな楽器音楽などを手掛けてきた。「ネバダ=セミパラチンスク」社会運動にも積極的に参加している。民衆の反核抗議の国歌にもなっている「ザマン・アリ(時代よ)」のような歌の作者でもある。また、「文化を通じた平和」国際協会の会長、「世界精神文化フォーラム」の共同議長、「世界芸術文化アカデミー」の会員でもある。

アンドレアス・ニデッカー教授(医学博士)は著名なスイスの医師であり、核軍縮活動家、「バーゼル平和オフィス」会長、それに、核戦争防止国際医師会議(IPPNW)の初期のメンバーでもある。エルワージー博士はこの40年、非暴力手段による平和構築と紛争解決に身を捧げてきた。「オックスフォード研究グループ」「ピース・ダイレクト」「ライジング・ウーマン・ライジング・ワールド」などの有名な活動の創始者であり、ノーベル平和賞にも3度ノミネートされたことがある。

Semipalatinsk former Nuclear Weapon Test site/ Katsuhiro Asagiri

「ユース・フュージョン」のウェブサイトにはブログや記事もあり、核軍縮の様々な側面を探求し、この問題に関する広い視野を読者に提供している。こうしたブログや記事は、若いボランティアチームや「ユース・フュージョン」のスタッフが作っており、世界中の若い書き手や学術的探求心のある人々からの投稿を募っている。

Zhou Enlai during the Chinese Civil War./ By Unknown author -, Public Domain

「カーネギー・清華グローバル政策センター」(北京)で、カーネギー国際平和財団核政策プログラムの上級研究員を務めるトン・ツァオ博士とのインタビューがそうした記事の一つである。ツァオ博士は、中国の核先制不使用政策と軍縮政策についての経験を語っている。

ツァオ博士は「中国の核先制不使用政策は、周恩来毛沢東といった中国第一世代の偉大な指導者によって確立された。彼らの支持があったために、核先制不使用は中国の伝統的な核戦略の中核的な要素となった。つまり、中国第一世代の政治指導者のもつこうした独自の権威ゆえに、その後数十年にわたって指導層が代わっても、長年にわたって先制不使用政策が守られてきたのだ。」と指摘した。

ツァオ博士はさらに、「中国が長年にわたって先制不使用を採用してきたために、中国の核・軍事戦略に沿って核兵器を開発・配備する計画を策定する方向性にも影響を与えてきた。要するに、中国は核兵器の先制使用はしない。敵の核攻撃があって初めて、核兵器を使用することになる。」と語った。(文へ) 

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This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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青年・平和・安全に関する初めての国連安保理決議

若者を核兵器禁止運動の前面に

東京オリンピックに合わせ、若者向け映像「核のゲーム」発表

国連、包括的核実験禁止条約発効へ圧力

【ニューヨークIDN=J・ナストラニス】

サイバー技術や核技術の近代化競争が勢いを増す中、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、包括的核実験禁止条約(CTBT)を「核実験を完全に終わらせる世界の取り組みの中心」と呼んだ。事務総長の代理で中満泉・国連軍縮問題上級代表が読み上げた声明では、核実験が人間に引き起こす苦しみと環境への災害から将来世代を守る力がCTBTにはあると述べている。

グテーレス事務総長によれば、CTBTは核不拡散に対する貴重な貢献ともなっている。「核軍拡競争に歯止めをかけ、新兵器の開発に対する強力なバリアとなるものだ。」

声明は、9月8日の「核実験に反対する国際デー(IDANT)」を記念し促進するハイレベル総会において出された。国連総会はまた、国際的な核軍備管理枠組みにおけるCTBTの重要な役割を強調した。

UN Secretariat Building/ Katsuhiro Asagiri
UN Secretariat Building/ Katsuhiro Asagiri

CTBTは、誰がいつどこで行う核爆発についても完全に禁止している。1996年9月24日に署名開放されたCTBTへの支持はほぼ普遍的な支持を得ているが、まだ条約は発効していない。こうした中、グテーレス事務総長は「条約を批准していない国は、速やかに批准するよう」求めた。

185カ国が条約に署名し、そのうち核保有国のフランス・ロシア・英国を含む170カ国が批准している。しかし、核技術を持った特定44カ国の署名・批准がCTBT発効の要件となっており、そのうち中国・エジプト・インド・イラン・イスラエル・北朝鮮・パキスタン・米国がまだ批准していない。インド・北朝鮮・パキスタンは署名すらしていない。「附属書2」記載の国で最後に条約を批准したのはインドネシアである(2012年2月6日)。

CTBTは国際監視システム(IMS)という独自の検証制度を備えている。これは、地震波・水中音響・微気圧・放射性核種という4つの技術を用いて、核爆発が探知されることなく実施されることがないようにするものであり、現在、302の認証施設が世界中で稼働している(システムが完成すると337施設になる)。

包括的核実験禁止条約機関準備委員会(CTBTO)の事務局長として初めて国連総会で演説したロバート・フロイド博士は、CTBTは、署名開放以来25年間、核実験に反対するほぼ普遍的な規範を打ち立てることに成功してきたと述べた。

Robert Floyd, CTBTO Executive Secretary/ CTBTO

フロイド氏は、ドイツのウォルフガング・ホフマン氏(在任1997~2005)、ハンガリーのティボール・トート氏(在任2005~2013)、ラッシーナ・ゼルボ氏(在任2013~2021)につづく、CTBTO4代目の事務局長である。今年5月にCTBT加盟国によって選出され、8月1日に任期が始まった。

フロイド氏はかつて、大量破壊兵器を規制する様々な条約を履行する豪州の国家機関である保障措置・不拡散局の局長を務めていた。核爆発を探知するCTBTの国際監視システムの23施設を監督する任務も含まれていた。

「核実験に反対する国際デー」は、核爆発の影響を想起し、CTBTへの支持を表明するために2009年に国連総会によって創設された。カザフスタンが旧ソ連のセミパラチンスク核実験場を1991年に閉鎖した日であり、ソ連が1949年に初めて核実験を行った日でもある。

フロイド氏は、ハイレベル会合に対する9月8日の声明で「この重要な日を記念するにあたって、核実験により悲劇的な影響を被った人々の声に耳を傾け続けることが重要だ。」と語った。

フロイド氏はまた、カザフスタンのヌルスルタン・ナザルバエフ初代大統領が30年前、「大胆かつ先見性のある行動で」、ポリゴンの名称で知られるセミパラチンスク核実験場の閉鎖を決める大統領令に署名したと語った。

Nursultan Nazarbayev, president of Kazakhstan in Brasilia 2007.

その2週間前、フロイド氏は旧セミパラチンスク核実験場の爆心地に立ったばかりであった。フロイド氏は、「ポリゴンで450回以上の核実験が行われ、爆発力の総量は広島原爆2500発分にもなった。人間の健康と環境に及ぼした影響の規模が完全に理解されることはないかもしれない。」と指摘したうえで、「セミパラチンスクや私の国(=オーストラリア)を含む世界各地の核実験場周辺で被爆したコミュニティーにとって、その痛みと苦しみは、野放図な核実験の時代の悲しい遺産となっている。」「しかし、核戦争によって引き起こされるであろう、もっと大きい苦しみと損失を見失ってはならない。それは人類という集団のあらゆる層を引き裂くことになる。」と語った。

そのうえでフロイド氏は、次のようなことを求めた。

・核実験の破壊的な帰結を世界が再び被ることがないようにすること。

・核のリスクを低減し、核戦争を予防すること。

・核不拡散・軍縮を前進させる具体的な行動を起こすことによって、将来世代のためにより安全な世界を構築すること。

カザフスタンのムフタル・トレウベルディ副首相兼外相とフロイドCTBTO事務局長の共同声明は、すべての国々に対して、核爆発のモラトリアム(凍結)を続けるよう求めた。

CTBTO

声明はまた、「条約をまだ署名あるいは批准をしていない国々に対して、すみやかに署名・批准するよう求める。その批准が条約発効要件となっている附属書2の残り8カ国に対して、国際の平和と安全を支持するこの重要な措置を取ることによって、核不拡散・軍縮へのコミットメントを示すよう求める。」「私たちは、核軍縮を前進させ、将来世代のためのより安全な世界を構築するために、今こそ包括的核実験禁止条約を発効させるべき時だと訴える。」と述べている。(原文へ

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|核実験に反対する国際デー|核兵器禁止へのコミットメントを再確認する、と国連事務総長

核軍縮における市民の役割と科学・外交の相互作用

核兵器廃絶展を通じて絆を深める日本とカザフスタン

|アフガニスタン|米国がもたらした戦争、腐敗、貧困に終止符をうたなければならない

【ニューヨークIDN=メディア・ベンジャミン】

アフガン復興費として米議会が認めた1440億ドルの内、880億ドルが今般早々に瓦解したアフガン治安部隊の訓練・装備・人件費に使われ、155億ドルがアフガニスタン復興担当特別監察官が指摘したところの「(復興目的以外の)途方もない無駄」に費やされ、かろうじて2%未満が開発目的使用されたことが明らかになっている。極度に腐敗したアフガン政権の下では、全人口の4分の3を占める農村部は開発支援の恩恵はほとんど受けておらず、米軍支配下の終わらぬ戦争と政府の腐敗に将来を絶望した一般国民の不満が、タリバン急拡大の下地になっていたと見られている。米国と西側同盟国は人権・民主主義の名の下にアフガン政府資金と国際機関の援助凍結を進めているが、これは結果的に(これまでも援助がほとんど届かなかった)極貧と新型コロナウィルス感染症第3波に晒されているアフガン国民に飢餓と人道危機をもたらすことになると警告している。(原文へ

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アフガン政府軍があっけなく崩壊した真相を探る

著名アスリートらがより良い社会を作るためのスポーツの役割を強調

【ニューヨークIDN=J・ナストラニス】

国連は、多様性・寛容・尊厳といった価値を促進し、女性や若者、個人、地域をエンパワーし、保健や教育、社会的包摂といった目的に貢献する力がスポーツにはあると信じている。日本の国連広報センターは、「スポーツがつなぐ世界 SDGsを前へ」をテーマとした「SDG Zone at Tokyo」というキャンペーンを立ち上げた。

最初の3つのセッションである「開発と平和のためのスポーツ」「持続可能性・気候行動のためのスポーツ」「ジェンダーとスポーツから考える多様性」は、7月28日から30日にかけて行われた。「パラアスリートが語る『スポーツと可能性』」「スポーツの『進化』を通じた社会デザイン」「次世代に残るレガシー、2020からその先の社会のために」は8月25日から27日にかけて行われる。

「SDG ZONE」セッションは朝日新聞との共催で行われた。国連はこの趣旨を次のように説明している。「各国レベルの国連広報センターが主催する『SDGメディアゾーン』の初めての試みとして、今回はアスリートを招き、幅広い地域の市民社会や産業界、学界、各国政府・自治体、国連システムからのインフルエンサーやイノベーターを交えて、スポーツの力がいかにしてグローバルな課題の解決につながるかを論じるものだ。」

7月23日から8月8日まで開催された東京オリンピックに合わせて行われた今回の国連のオンラインイベントでは、有名なアスリートやインフルエンサー、イノベーターが、すべての人々にとってのより良い世界を作るためにスポーツが果たせる役割について議論を交わした。

2016年のリオ・オリンピックで初めて結成された難民チームの一員となり、現在は国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の親善大使を務めるピュール・ビエル氏は「スポーツは、難民キャンプで生活している難民の人生を変え得るものだ」と語った。

8月8日まで行われる今回のオンライントーク「SDG Zone at Tokyo」に加わったビエル氏は、自身の故郷である南スーダンでのトラウマに満ちた体験の生きていく上で、いかにスポーツが役立ったかを説明した。

アスリートとしてのビエル氏の経験に対しては、多くのスピーカーが賛同し、スポーツには世界を変える積極的な力があり、難民に希望をもたらし、気候関連の行動を促し、すべての人がその背景に関わらず輝ける社会をつくることができる、という共通のメッセージを伝えた。

元サッカー日本代表の北澤豪氏は、「世界が『ワンチーム』としてプレーしているからこそ、ゲームの中で感じるあらゆることが可能となる。」と述べ、懸け橋となるスポーツの役割を強調した。国連事務次長で軍縮問題上級代表の中満泉氏は、「相互の尊重やチームワーク、平等、フェアプレイといったスポーツが促進する価値は、開発と平和を多国間で推進する要素と非常に似ている。」と指摘した。

セーリングの五輪代表であり、使い捨てプラスチックの使用停止を求める運動「ビッグ・プラスチック・プレッジ」の創設者であるハンナ・ミルズ氏は、アスリートは、そのスポンサーとなっている企業やブランドに対する影響力があると指摘した。

ミルズ氏に続いて、5月に宇宙飛行から戻った日本の宇宙飛行士・野口聡一氏、「気候変動に関する国連事務総長ユース諮問グループ」のメンバー、アルチャナ・ソレン氏が発言し、両者ともに、時として異なる利害関係をもつ異なった集団の間の協力が地球を救うために必要だと語った。

近代五種の選手としてエジプトを代表して五輪に出場したアヤ・メダニー氏と、順天堂大学女性スポーツ研究センター長の小笠原悦子氏は、アスリートを支援する立場、とりわけコーチとなっている女性がいかに少ないかについて語った。

東京のLGBTコミュニティに賛辞を贈るイベントである「東京レインボープライド」の共同代表理事である杉山文野氏は、アスリートとしての活動を続けつつも、トランスジェンダーとしての自分のアイデンティティを明らかにすることがいかに困難であったかについて語った。また、「もしスポーツの世界が、あらゆる人々が不安なく参加できる方向に進めば、『誰も置き去りにされない』社会づくりに貢献することになるだろう。」と語った。

東京の国連広報センターの根本かおる所長は、「スポーツは喜びとインスピレーションをもたらすものであり、人間の人生に近い。」と指摘したうえで、「スポーツは、このコロナ禍という困難な時を生きぬくにあたって従来よりも必要と考えられる勇気と決意を与えてくれるものだ。こうした対話を通じて、持続可能な開発目標を前進させ、すべての人にとって、より環境にやさしく、平等で、包摂的で、持続可能な社会の実現を可能にするものとしてスポーツが役に立つさまざまな方法に光が当たることを期待している。」と語った。(原文へ

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【ニューヨークIDN=UNニュース】

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、包括的核実験禁止条約(CTBT)をまだ批准していない国々に対して、一刻も早く批准するよう改めて強く呼びかけた。

この呼びかけは、8月29日の核実験に反対する国際デーに寄せてなされたものだ。

今日は、カザフスタンにあった旧ソ連最大の核実験場、セミパラチンスク核実験場が閉鎖されてから30年目にあたる。ここでは40年間に450回を超える核実験が行われた。

United Nations Secretary-General, António Guterres UN Photo/Mark Garten

グテーレス事務総長は、「核実験は甚大な人的被害と環境破壊をもたらした。」と指摘したうえで、「被害を受けた地域の住民の健康に恐ろしい影響を及ぼしました。多くの人々が代々受け継がれてきた土地を離れざるを得なくなり、生活や生計が混乱しました。手つかずの環境や生態系が、修復には数世紀とは言わないまでも数十年はかかるほど、破壊されました。」と語った。

「この実験場の閉鎖により、無制限な核実験の時代が終わりを告げました。その後程なく、CTBTの交渉を開始しました。CTBTは、いかなる国による、いかなる場所での核兵器のすべての実験的爆発も禁止しており、核軍拡競争に歯止めをかけ、新たな核兵器開発に対する強力な防壁となります。」と事務総長は語った。

CTBTは1996年に採択され、これまでに185カ国が署名、170カ国が批准している。しかし、この条約が発効するには核技術を有する44カ国すべてが署名・批准しなければならない。

「セミパラチンスク核実験場の閉鎖から30年の間に、核実験に反対する規範が徐々に形成されてきました。しかしながら、CTBTはほぼすべての国で採択されているにもかかわらず発効されていないために、その可能性を完全には発揮できていません。」と事務総長は嘆いた。

グテーレス事務総長は、「私は、この条約をまだ批准していない国々に対して、一刻も早く批准するよう改めて強く呼びかけます。その批准が条約発効に必要な8カ国(米国、中国、エジプト、イラン、イスラエル、北朝鮮、インド、パキスタン)は、特別な責任を負っています。それと同時に、あらゆる国々が核爆発のモラトリアムを維持または実施すべきです。」と指摘したうえで、「『核実験に反対する国際デー』は、いかなる者がいかなる場所で行うものであっても、すべての核実験を禁止するという私たちの約束を再確認する機会です。この目標の達成を遅らせる理由は存在しません。」と語った。

核兵器が国際社会に及ぼしている脅威は「今も厳然として変わりません。」とマグジャン・イリヤソフ国連大使は、国際デーを前にUNニュースの取材に応じて語った。(インタビュー内容はこちらへ

「私たちカザフ人にとって8月29日は単なるカレンダーの日付ではありません。核実験によってカザフスタンだけでも150万人の人々が今も苦しんでおり、残念ながら将来の世代にわたって、被爆に起因する遺伝性疾患、癌、白血病等に苦しむことになります。セミパラチンスク核実験場で行われた核爆発のインパクトは、第二次世界大戦中に広島に投下された原爆の1200倍に相当します。」

Semipalatinsk Former Nuclear Weapon Test site/ Katsuhiro Asagiri
Semipalatinsk Former Nuclear Weapon Test site/ Katsuhiro Asagiri

「セミパラチンスク核実験場はイスラエルの国土に相当します。これだけの広大な地域が、数十年に亘って、農業など生産的な活動に全く活用できないのです。これを考えれば、今は閉鎖された世界各地の核実験場がもたらした被害の規模が想像できるでしょう。」とイリヤソフ大使は語った。(原文へ

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【ニューヨークIDN=ラドワン・ジャキ―ム】

核実験に反対する国際デー」(8/29)を前にCSTO(集団安全保障条約機構)は声明を出し、30年前のソ連崩壊時に最大規模であったセミパラチンスク核実験場を閉鎖し世界第4位の核戦力を放棄したカザフスタン初代大統領の英断を称えるとともに、引き続き核不拡散と核実験禁止を目指す決意を表明した。CSTOは旧ソ連の6カ国(ロシア、カザフスタン、アルメニア、キルギス、タジキスタン、ベラルーシ)で構成し、第3国が軍を駐留する場合、全ての加盟国の事前了承をとらなければならない。(原文へFBポスト

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