【モスクワIDN=ケスター・ケン・クロメガー】
アフリカへの進出を強める中国とロシアの開発戦略を分析したリプトン・マシューズ氏(研究員・ビジネスアナリスト)のインタビュー記事。マシューズ氏は、①中国による過去30年に亘るイフラ開発における貢献、②共にアフリカで植民地支配の過去を持たない中ロ両国の比較有利と協力の可能性、③今年初めに発効したアフリカ自由貿易圏(AfCFTA)協定がもたらす展望について語った。(原文へ)
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【ベルリンIDN=アール・ジェイ・ペルシウス】
「核戦争に勝者はなく、戦われてはならない」―米国のジョー・バイデン大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、冷戦最終盤に前任者のレーガンとゴルバチョフが合意したこの有名で根本的な真実を6月16日のジュネーブサミットで再確認したと、7月5日付のドイツ紙『ライニッシェ・ポスト』への寄稿で、ドイツ外相(ハイコ・マース)、スペイン外相(アランチャ・ゴンザレス・ラヤ)、スウェーデン外相(アン・リンデ)が述べている。
当時、レーガン・ゴルバチョフ共同声明は、人類すべてに利益をもたらす米ソ間の軍備管理協議の始まりを画することになったと外相らは回顧している。バイデン・プーチン両大統領が再確認したこの言葉は、世界は核軍縮の道へと回帰することができるという新たな希望を世界にもたらしている。
3外相は、「私たちはさらなる進歩を必要としている。核軍縮・不拡散に関する協定は近年揺らいでおり、世界の大国間で新たな緊張と不信感が強まり、このところ核戦力の削減に陰りがみられる。」と強調した。
その一つの例が「2019年に失効した軍備管理の重要な協定である中距離核戦力(INF)全廃条約だ」と3外相は記している。実際、技術的な進歩によって複雑性が増し、新たなリスクが生み出され、あらたな軍拡競争の原因になるかもしれない。「そして、イランや北朝鮮のような地域的な核拡散問題に対しても、私たちは引き続き完全なる関与していかなければならない。」
3外相は、7月5日にマドリードで開催された「核軍縮と核兵器不拡散条約(NPT)に関するストックホルム・イニシアティブ」の第4回閣僚会議の直後にこの記事を寄稿した。
スウェーデンは16の非核兵器国の外相とのこの会談を2019年6月にストックホルムで開いたのだが、その目的は、核兵器のもたらす問題に対して効果的に対処することを可能とする建設的で革新的、創造的なアプローチを用いて「核軍縮外交をいかに前進させられるかを議論すること」にあった。
16カ国はあらゆる大陸から参加しており、アルゼンチン、カナダ、エチオピア、フィンランド、ドイツ、インドネシア、日本、ヨルダン、カザフスタン、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、韓国、スペイン、スウェーデン、スイスで構成されている。
ストックホルムでこの構想が立ち上げられてから、外相らは2020年2月にベルリンで第2回会合を行い、同年6月にオンライン会合をもった。第3回会合はヨルダンの首都アンマンで今年1月6日に開かれた。
この会議の際、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は「核軍縮と核兵器不拡散条約(NPT)に関するストックホルム・イニシアティブ」に対して「皆さんの国は、個別には別の地域を代表しているが、合わせてみれば、核兵器のない世界に対する集団的な公約を代表したものだ。」と語った。
3外相は共同寄稿の中で、この構想は4回の閣僚会議を通じて、核不拡散条約(NPT)を強化し、2021年8月のNPT再検討会議に向けた軍縮目標を履行するための20件以上の実行可能な提案をしてきた、と指摘した。
今年初めに新STARTが2026年2月4日まで延長され、軍備管理の将来とリスク軽減措置に関して米ロ間で新たな協議がなされる見通しがあり、6月16日の米ロ首脳会談で表明されたように最高の政治レベルで互いの抑制が約束されたことは好ましいことだ、と3外相は述べている。「こうした考えは、私たちが構想で提案してきた『飛び石』を構成するものだ。」
外相らは、こうした積極的な進展を歓迎しつつ、核兵器国に対して、軍縮に向けて更なる決定的な措置を取るように求めた。例えば、政策やドクトリンにおける核兵器の役割の低減、紛争や偶発的な核使用リスクの最小化、備蓄のさらなる削減、次世代の軍備管理協定への貢献などである。
外相は、これらによって、国連の「軍縮アジェンダ」と、軍備管理や核軍縮を求める世界各地の団体の見解を支持した。このことは、これを機会に包括的核実験禁止条約(CTBT)を発効させることで核実験を終わらせ、軍事目的の核分裂性物質の生産を禁止する条約の交渉を開始し、強力かつ信頼性のある核軍縮検証能力を強化しようとの彼らの呼びかけにも適用されるものでもある。
「言い換えれば、私たちは歴史に学び、将来を形作らねばならない。その中で、広島・長崎を含めた、核の影響を受けた地域とのつながりを強め、若い世代と関与していくことになろう。また、核軍縮分野の意思決定プロセスにおける女性の完全かつ平等な参加と、ジェンダー視点の完全なる取り込みに向けても、努力することになろう。」と3外相は述べている。(原文へ)
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This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.
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|視点|広島・長崎への核攻撃75周年を振り返る(タリク・ラウフ元ストックホルム国際平和研究所軍縮・軍備管理・不拡散プログラム責任者)(後編)
【コロンボIDN=スゲスワラ・デナディラ】
米軍のアフガニスタン撤退とタリバンの支配地拡大を受けてアフガンの安定に密接な利害関係を持つ周辺諸国の動向を分析したコラム。タリバンの勢力拡大は、イスラム原理主義勢力の浸透を警戒する中国(一帯一路政策と隣接する新疆ウィグル地域への影響)、中央アジア諸国、アフガン政府との密接な安全保障関係を構築してきたインド、さらには中央アジアへの米軍の拠点模索を警戒するロシアをして、アフガン政府とタリバン間の早期停戦・暴力停止、及び(上記すべての国が加盟する)上海協力機構としてアフガン政府と積極的に協力する姿勢を打ち出す動きへとつながっている。(原文へ)
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【ベルリンIDN=アール・ジェイ・ペルシウス】
米国のジョー・バイデン大統領とロシアのウラジミール・プーチン大統領は、6月16日にジュネーブで開いたサミットで、「核兵器に勝者はなく、戦われてはならない」とするロナルド・レーガン大統領とソ連の指導者ミハイル・ゴルバチョフが1985年に合意した原則を再確認した。両大統領はまた、「将来的な軍備管理とリスク軽減措置に向けた下準備をするため」の強力な「戦略的安定」対話を行うことを決めた。
しかし、2017年のノーベル賞受賞団体「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)が指摘するように、「ジュネーブサミットの結果は、現在の核のリスクの重大さを反映したものになっていない。」プーチン、バイデン両大統領は「核兵器禁止条約や世界の世論に従って自国の「核戦力を削減する公約を何ら行っていない」とICANは述べた。
ロシア(保有数6255発)と米国(5500発)は世界全体の9割の核兵器を保有しており、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によれば、1945年8月に広島に投下された核兵器よりもはるかに強力な核兵器が世界には約1万4000発も存在するという。他の核兵器国は、英国・フランス・中国・インド・パキスタン・イスラエル・北朝鮮である。その他31カ国が、核兵器の存在を是認している。
「軍備管理協会」のダリル・G・キンボール事務局長は、ジュネーブサミットのコミュニケは、「内容が穏健で遅きに失したものではあるが、現状は危険であり持続不可能であるとの明確な認識を示したものだ」との見解を示した。それは、世界を核の破滅の淵から救う軌道修正をするチャンスを提示している。
6月16日の会合に続いて発表された戦略的安定に関する共同声明で、米大統領とロシアのプーチン大統領はさらに、「戦略的安定対話は、『総合的に』『よく考えられた』『強固なもの』になるだろう。」と述べた。しかし、それぞれの当事者がどの程度歩み寄るかは不透明だ。米ロ両国は来たる戦略的安定対話に異なった思惑を込めている模様だ。
バイデン大統領は、この対話は「反応時間を短くし、偶発的戦争の可能性を高める危険で先進的な新型兵器が現れてきており、その規制につながるようなメカニズムについて話し合うもの。」だと述べたが、どの特定の兵器を念頭に置いているのかについては触れなかった。
両大統領は、対話の日程や場所はまだ決まっていないが、米国務省と、ロシア外務省によって間もなく決定されることになる。
軍備管理協会のキングストン・ライフ氏、シャノン・ブゴス氏、ホリス・ラマー氏は、6月22日の「カーネギー国際核政策会議」におけるロシアのセルゲイ・リャブコフ副外相の発言に注意を促している。同氏は、ロシア政府は米国に対して「第一歩として、互いの安全保障上の懸念について共同で検討すること」を提案した、と発言している。
次のステップは「この懸念に対処する方法を検討すること」であり、「結果として、実際的な協定や取決めにつながる交渉への関与を促す」ような合意された枠組みが目標になるという。
重要なことは、ジュネーブサミットの共同声明が、10年に及ぶ停滞の末に核軍備管理の分野で進展をもたらす長いプロセスの第一歩を記したということだ。世界最大の核大国間の最後の軍備管理協定があと5年で失効するだけに、なおさらだ。
前回の戦略的安定対話はトランプ政権下の2020年8月に行われており、新戦略兵器削減条約(新START)の失効が翌年2月に迫っていた。しかし、条約失効2日前に、バイデンとプーチン両大統領は、新STARTを2026年まで延長することを決めたのであった。
2020年6月の戦略的安定対話においては、米ロ両国が3つの作業部会を立ち上げることを決め、同年7月に会合が持たれた。米政府筋は当時、作業部会のテーマは、核弾頭・ドクトリン、検証、宇宙システムの3つであるとしていた。
それ以降、これらの作業部会が活動してきたかどうかははっきりしない。
軍備管理の専門家は、戦略的安定対話は、新STARTの後継となる軍備管理協定に関する協議とは別物であるとしつつも、そうした正式な後続協議の基礎を築くことにはなるかもしれない、としている。
米政府で新STARTの交渉責任者であったローズ・ゴットモーラー氏は、6月14日の『Politico』紙への寄稿で、戦略的安定対話の目標は「条約よりも、むしろ充実した議論でなくてはならない。もちろん、のちには、相互理解と信頼、予測可能性を築くための何らかの措置に両者が合意するかもしれないが。」と述べている。
新STARTに替わる今後の協議に関してゴットモーラー氏は、米ロ首脳に対して「新条約が何を対象とし、いつまでに協議を終わらせるかについて、明確かつ簡潔な指針を示すべきだ。」と促した。
「軍備管理協会」は、バイデン政権は「両国が直面している極めて複雑な一連の核戦力問題」について議論することを目指しているとする、ジェイク・サリバン国家安全保障問題顧問の6月10日の発言に注目している。その問題とは例えば、新STARTの後継条約はどうなるのか、中距離核戦力(INF)全廃条約がもはや存在しないという事実をどう考えるか、ロシアの新核兵器システムに関する我々の懸念にどう対処するか、といったことである。
1987年に署名されたINF全廃条約によって、米ソが保有する射程500~5500キロの核搭載及び通常型の地上発射及び巡航ミサイルが2692基廃棄された。
米国政府は、ロシアの非戦略核兵器の問題に対処し、中国を軍備管理プロセスに巻き込みたいとの意向を表明している。サリバン氏は「宇宙やサイバーといった領域において戦略的安定対話に新しい要素が持ち込まれるかどうかは、今後の成り行きによって決まってくるだろう。」と述べている。
ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は6月9日、「戦略的安定に影響を与えるどんな問題でも対話の対象となる」と述べた。例えば、「核兵器、非核兵器、攻撃的兵器、防御的兵器」がそこには含まれるという。加えて、ロシアは、中国だけではなくフランスや英国も協議に含めるよう提案しているという。
リャブコフ副外相は6月22日の「カーネギー国際核政策会議」で、「両者は、必要とあらば、異なったステータスの相互に関連した取決め或いは協定を採択することを決定するかもしれない。さらに、他の主体が参加する余地を残すための要素を検討することも可能かもしれない。」と語った。
中国の趙立堅外交部報道官は、ジュネーブサミット翌日の17日、「中国は、戦略的安定に関する二国間対話における関与に関して米ロ間で成された合意を歓迎する」と述べた。
趙報道官は「中国は常に核軍備管理における国際的な取り組みを積極的に支持してきた。また、5つの核兵器国の協力メカニズムやジュネーブ軍縮会議、国連総会第一委員会といった枠組みの中で、関連する主体とともに、戦略的安定に影響のある幅広い問題について議論を継続していきたいと考えている」と約束した。
さらに趙報道官は「相互の尊重をもって、平等な立場であるのならば、関連する主体と二国間対話をもつ用意は我々の側にはある」と述べた。この数日前、中国の王毅外相は5核兵器国に対して、「核戦争に勝者はおらず、戦われてはならない」とするレーガン=ゴルバチョフの原則を再確認するよう訴えていた。(原文へ)
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|視点|核兵器は常に違法だった:とっくに廃絶されてしかるべきものだ(ジャクリーン・カバッソ西部諸州法律財団事務局長)
「歴史は勝者によって記され、この(=広島への原爆投下)ような悲惨で残酷な大量虐殺の行為でさえも歴史の中で正当化されます。…市民を大量無差別に殺傷し、しかも、今日に至るまで放射線障害による苦痛を人間に与え続ける核兵器の使用が国際法に違反することは明らかであります。」1995年国際司法裁判所における平岡敬広島市長の陳述より。
【オークランドIDN=ジャクリーン・カバッソ】
2021年7月8日は、国際司法裁判所が刻兵器の法的位置づけに関して勧告的意見を出してから25周年にあたる。
国際司法裁判所では「徹底的かつ効果的な国際管理の下、全面的な核軍縮へと導く交渉を締結させることを誠実に追及する義務が存在する」という点で全ての裁判官が一致同意した。
同裁判所はまた、核兵器の使用と威嚇は、民間人や自然環境に無差別かつ不相応な被害をもたらすことを禁じた国際法に「一般的に」違反するという判断を下した。しかし、核兵器が国際法の下で審議されたのはこの時が初めてではない。
国連総会は1946年1月24日に全会一致で採択した第一号決議で、国連原子力委員会の設置と、核兵器および大量破壊が可能なすべての兵器の廃絶を目指す事を定めた。
1961年に米国・英国・フランス・中国が反対したものの、ソ連を含む国連総会加盟国の3分の2が採択した「核兵器使用禁止宣言」は、核兵器の使用は「戦争の枠さえ超えて人類と文明に無差別な苦しみと破壊をもたらすものであり、国際法とりわけ人道法に違反すると宣言している。」
1970年に発効した核不拡散条約(NPT)には、「各締約国は、核軍備競争の早期の停止及び核軍備の縮小に関する効果的な措置につき…誠実に交渉を行うことを約束する。」と明記した条項があり、5つの核兵器国(米国、英国、ロシア、フランス、中国)に軍縮義務を課している。
NPTの軍縮義務は、同条約の無期限延長が決められた1995年の再検討・延長会議、1996年の国際司法裁判所の勧告的意見、そして2000年及び2010年のNPT再検討会議における合意を通じて、繰り返し確認・強化されてきた。
1984年、国連人権委員会は、「核兵器の設計、実験、製造、保有及び配備が、生命に対する権利にとって、今日人類の直面する最大の脅威であることは明白である。」と決議した。生命に対する権利は、中国(署名したが批准していない)を除いて核兵器国9カ国が加盟している市民的及び政治的権利に関する国際規約(ICCPR)に明記されている。
2018年、国連の人権委員会はこの問題を再び取り上げ、「大量破壊兵器、特に核兵器による威嚇または使用は、その効果が無差別的であり、壊滅的な規模で人間の生命を破壊する性質のものであり、生命の権利の尊重とは相容れず、国際法の下で犯罪に該当する。」と宣言した。
同委員会は国際司法裁判所の勧告的意見を引用して、ICCPRの全ての加盟国は「徹底的かつ効果的な国際管理の下、全面的な核軍縮へと導く交渉を締結させることを誠実に追及する義務が存在することを尊重しなければならない。」との判断を下した。
最近幅広く称賛されたもう一つの進展は2017年に国連総会で採択された核兵器禁止(核禁)条約である。この条約は2021年1月22日に発効した。核禁条約は締約国に対して核兵器の開発、取得、保有、使用及び使用の威嚇を禁じている。この条約は、核兵器の使用や使用の威嚇を違法とする従来の規範を全ての国にあてはめ強化するとともに、NPTや各地域における非核兵器地帯条約で明記されている核兵器の開発と所有も禁止するもう一つの法的規範を付け加えた。
核禁条約は、核兵器を保有しない世界の大半の国々が核兵器を完全否定する姿勢を示して発効したのに対して、米国と核兵器を保有する8カ国、さらに米国の核の傘のもとにあるほとんどの国が、条約交渉そのものを拒否した。2017年7月7日に条約が採択された直後、米国、フランス、英国は、「我々は(核禁条約に対する)署名も批准も、あるいは締約国になるつもりもない。」と宣言した。
国際司法裁判所が、誠実な交渉を通じて核軍縮を追及する義務が存在するという判断を下してから25年、今世界はどこに位置しているのだろうか。2021年1月27日、原子力科学者会報は、地球滅亡までの時間を示す「世界終末時計」の針が残り100秒だと発表し、「世界が核戦争に遭遇する可能性は、2020年の間に増加した」と述べた。
米国とロシア、そして米国と中国の間の緊張関係は危険水域にまで増しており、ウクライナや台湾という紛争の火種が、核兵器を使用する衝突に発展する可能性がある。
米国の新政権に対する期待をよそに、バイデン政権は2022年度予算要求で、トランプ政権下で含まれていた全ての核弾頭及び運搬手段のアップグレードをはじめ、今世紀後半まで続く核兵器の研究、開発、製造、配備計画を網羅する核兵器のインフラ開発への莫大な投資を求めた。
全ての核兵器国が、質の面で核戦力の近代化を推進しており、中には量的にも核戦力の増強を図っているケースもある。核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)が発表した最近の報告書によると、2020年の間、新型コロナウィルス感染症のパンデミックの最中で、9つの核兵器保有国は合計で726億ドルを核兵器に支出していた。最大の支出国である米国の支出額は実に374億ドルに上り、この額は1分当たり7万881ドルを核兵器に支出している計算となる。
6月21日の共同声明で「核戦争には勝者はなく、絶対に始めてはいけない」という原則を再確認したバイデン大統領とプーチン大統領は、米国・ロシア・中国が中心となって集中的な外交努力を行う新時代の始まりを告げるべきだ。米ロ間が核兵器を大幅に削減できれば、他の核保有国との包括的な軍縮交渉に繋がる可能性がある。
世界終末時計の針は時を刻んでいる。核保有国と核依存国は、核禁条約に対する反対姿勢を転換すべきだ。それどころか、核禁条約が発効する数十年も前から国際法が示してきた規範や国際司法裁判所の勧告的意見に準拠する形で、長年の懸案であった「核兵器なき世界」を実現し永続的に維持する包括的な合意に向けた、前向きなステップとして歓迎すべきである。(原文へ)
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米国、拡大する中国の影響力に対抗する「体系的な」協定網の構築へ
カナダ・フランスの核兵器政策、「生命への権利」違反を問われる
人類が核時代を生き延びるには、核兵器がもたらす厳しい現実と人類の選択肢を報じるジャーナリズムの存在が不可欠(ダリル・G・キンボール軍備管理協会会長)
【ニューヨークIDN=J・ナストラニス】
ドナルド・トランプの予測不能の大統領任期が終了して5カ月近く、米国のジョー・バイデン大統領は、6月11日から15日にかけて開催されたG7や北大西洋条約機構(NATO)、欧州連合(EU)とのサミットで中国に対抗する「体系的な」協定を発動した。
NATOの同盟国30カ国は「(我々は)同盟の安全保障上の利益を擁護するという目的をもって中国と関与する。…中国の明らかな野心と強引な行動は、ルールに基づいた国際秩序と同盟安保に関する領域に構造的挑戦をもたらしている。」
NATO加盟国はまた、イェンス・シュトルテンベルク事務総長に対して、マドリッドで来年開かれるサミットで採択される新たな戦略概念を作成するよう求めた。「米国政府にとっては、米国の同盟ネットワークの要であるNATOが、中国の投げかける問題を認識し、大西洋を越える地域へと焦点を広げていくことは意義深いことだ。」とカーネギー国際平和財団の上級研究員で、2013年から17年まで欧州安全協力機構(OSCE)の米大使を務めたダニエル・バエル氏は述べている。OSCEには、欧州、中央アジア、北米から57が加盟している。
このNATO声明に続いて、G7(コーンウォル、6月11~13日)は、安全と法秩序に対する中国からの脅威に加えて、人権が守られていないと指摘した。「我々は中国に対し、特に新疆との関係における人権及び基本的自由の尊重、また、英中共同声明及び香港基本法に明記された香港における人権、自由及び高度の自治の尊重を求めること等により、我々の価値を促進する。」とサミットのコミュニケは述べている。
バエル氏は、今回のコミュニケは、2019年に開催された前回のG7サミットから一歩踏み込んだものとなっていると述べた。この時は、人権と自由の尊重を呼びかけるのではなく、共同声明と基本法について言及し、暴力の回避を呼びかけただけであった。また、前回のサミットのコミュニケは、新疆のイスラム教徒のウイグル人を標的とする中国政府の政策について触れていなかった。バイデン大統領とアントニー・ブリンケン国務長官は、これを大量虐殺だと主張している。
米・EUサミット共同声明は、政策の調整を行うことを相互に約し、台湾海峡における中国の威圧的な行動に対して直接言及した点で、G7声明と歩調を合わせている。「米大統領とEU指導部の間の共同声明でこのことが言及されたことはこれまでになかったことだ。」
しかし、ロイター通信が報じたように、中国は6月16日、同国を批判した米・EU共同声明を拒絶し、遺憾の意を示した。中国外交部の趙立堅報道官は定例記者会見で、中国政府は他国に自らの要求を押し付けるようないかなる国にも反対すると述べた。これは、対中問題も含めて、グローバルな問題で協力していくことを謳った米・EU声明に反応したものであった。
「料理したてで熱いスープは飲めない」とある人はいった。EUは中国の最大の貿易相手であり、2020年、中国は米国を抜き去ってEUの最大の貿易相手となった。この貿易のほとんどは工業製品である。2009年から10年にかけてだけで、EUの対中輸出は38%伸び、中国の対EU輸出は31%伸びた。
加えて、中国は、イタリアがコロナ禍に見舞われEUが医療支援を行うことができずにいた際に、イタリアを支援した。
「軍備管理協会」のダリル・G・キンボール事務局長は、こうしたことを背景に、「警告の発し過ぎ」に注意を促し、中国を軍備管理問題で巻き込んでいくことを呼びかけた。
キンボール事務局長が念頭に置いていたのは最近リークされた文書で、そこには、60年以上にわたって、米国が中国の地域的影響力や軍事活動、核能力について懸念してきたと書かれていた。例えば、1958年、米当局は核兵器を使用して、台湾支配下の島嶼部に対する中国軍の砲撃を抑止しようとした。「今と同じように、米中間の核の紛争は壊滅的な結果をもたらすだろう。」とキンボール氏は指摘した。
また、米戦略軍司令官のチャールズ・リチャード提督は「ロシアあるいは中国との地域衝突が発生した場合、もし(いずれかの国が)通常兵器による戦闘での敗北が体制あるいは国家そのものを危機に晒すと見なした場合、核兵器が絡む紛争に即座に発展する危険性がある。」と述べた。
さらに悪いことに、「米中間の緊張が強まるにつれ、多くの米議会議員や米国の核兵器当局が、中国の核兵器近代化が続いていることを新たな脅威だと誇張している。」とキンボール事務局長は指摘している。
リチャード提督は、4月の米議会証言で、「中国軍は約300発の核兵器の戦力を『圧倒的に強化』しようとしている。」と指摘したうえで、「これに対抗するため、すでに中国の10倍以上の規模をもつ米核戦力をさらに強化しなければならない。」と論じた。
これに対してキンボール事務局長は、「米国の政策決定者は、中国との核競争を刺激するような措置を取ることを回避し、計算違いを予防し紛争のリスクを低減するための協議を真剣に追求すべきだ。」と主張している。米国はまた、核軍縮プロセスに中国やその他の主要な核保有国を巻き込む現実的な戦略を立てる必要がある。
米国の予想では、中国は核戦力の規模を拡大する見込みだ。旧型の液体燃料ミサイルよりも迅速に発射可能な新型の固形燃料のミサイルを配備し、多弾頭を搭載した長距離ミサイルの数を増やし、より多くの大陸間弾道ミサイル(ICBM)を移動型にし、海洋配備の核戦力の能力向上を継続していると見られている。
「これらの動きは懸念材料ではあるが、警告の発し過ぎを正当化するものではない。中国は米国の核戦力に追いつこうとしているわけではなく、核戦力を多様化して、米国の核攻撃あるいは通常攻撃に耐えうるように核抑止力を維持しようとしているだけだ。」とキンボール事務局長は述べている。
「中国の核計画はまた、進歩を遂げる米国のミサイル能力に対する防御でもある。例えば、海上発射の『SM-3 ブロックIIA』システムは、中国の核による反撃能力を無力化する恐れがある。」とキンボール事務局長は付け加えた。
中国の核戦力の規模は小さいかもしれないが、それでも危険ではある。中国の核戦力近代化は、核軍備管理において意味ある進展をもたらす努力がより重要であることを示している。とりわけ、中国の指導層が、非差別的な軍縮と最小限の抑止を主張していることを考慮するば、なおさらである。「しかし中国は、より大きな核戦力をもつ米国やロシアが大規模な核削減を実現して初めて軍備管理に関与するとしている。」
「米国とロシアは、膨らんだ核備蓄を削減するためにできることがもっとあるはずだ。しかし、核不拡散条約上の核保有加盟国として、中国もまた、すぐにでも軍拡競争を終わらせ軍縮を達成するために貢献する義務を負っている。」と、キンボール事務局長はさらに主張する。
インドの元外相で元駐中国大使のビジェイ・ゴカール氏は別の見解を持っているようだ。著名な『ヒンドゥー』紙への2020年3月20日付の寄稿で同氏は、中国は中国外交の「マントラ(自説)」を放棄したと指摘したうえで、「かつて中国の外交官は言葉を選び尊厳を保っていた。力を誇示することがあっても、声高になることはなかった。交渉の要諦は相手方よりも多くのことを知ることにあるというのが周恩来首相の教えであり、かつての中国外交官は説明の天才であった。」と論じた。
1971年7月、周恩来首相は、米大統領の安全保障補佐官であり、中国への密使を務めていたヘンリー・キッシンジャー氏と会談した。両者は、米国のリチャード・ニクソン大統領が間もなく訪中することを発表した。
周の政策は、鄧小平が権力を掌握した1980年代まで続いた。「鄧は1997年に亡くなった。中国は鄧が想像したように繁栄した。…英語を話す能力を持ち、職業人的な発想を持った中国の新世代の外交官たちが、周や鄧が敷いた路線を少しずつ切り崩していった。その過程で傲岸が謙遜にとって替わり、中国の意思に反する行動を別の国々がとるとき、説得は放棄されて力が用いられるようになった。」とゴカール氏は論じている。(原文へ)
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【シンガポールIDN=ニサール・ケシュヴァニ】
想像してみてほしい。ここは海抜2000メートルのアジアで最も辺鄙なシルクロード沿いの山間部、中国からは240キロ離れている。人口が15万人になろうかというキルギス共和国の地方都市だ。その中に、全寮制の荘厳な大学がそびえたち、実家の財政状況に関わりなく入学してきた中央アジアの次代を担う若者たちが世界クラスの教育を受けている。
6月19日、中央アジア大学(UCA)(世界で初めての国際協力による高等教育施設)は歴史に名を刻んだ。開学時の57人の学生が、コンピューター科学部、コミュニケーション・メディア学部、経済学部、地球環境科学部を卒業するのである。
UCAのキャンパスは、キルギスのナルン、タジキスタンのホログにあり、現在カザフスタンのテケリに第3キャンパスを建設中である。
大学設置の計画は1997年に始まった。ソ連崩壊後、質の高い国際標準の教育が、中央アジアの進歩のために切望されていた。単純な計画のようにも聞こえるが、ある人たちに言わせれば「不可能を可能にした」のである。
2000年、アーガー・ハーン開発ネットワークとキルギス、タジキスタン、カザフスタン各政府との間で条約が署名・批准され、このプロジェクトが始動した。その歩みは、あたかも流れに逆らうかのように、一歩一歩が厳しい取り組みだった。その中心にあったのはイノベーションである。
この20年、少なくとも1000人の人々がこのビジョンを実現すべく貢献してきた。最も重要なことは、多くの地元の市民らが、学び、成長し、地元に戻って、手足となり働いたことだ。キャンパス建設のために元々の住民に道路の反対側へと移ってもらい、道路を建設し、水道や電気、インターネットを引き、古代の遺跡を発掘・保存し、気候変動に配慮した計画を立て、大学の居住・学習施設を世界標準にまで引き上げた。
では、私はどうしてこの大学と出会うことになったのか?
学部生活の最終年、中央アジアに貢献したいとの強い思いが抑えきれなくなった。私が最初に大学設置計画について聞いたのは、アーガー・ハーン財団の欧州事務所で任務を終えようとしている時のことだ。それから10年、私に教育休暇の機会が持ち上がった。私はUCAの広報活動を支援するためこの大学に行くことを決め、次の8年間は広報機能を構築することが私のフルタイムの仕事となった。その後2年は、メディア関係のカリキュラムをリモートで検討するボランティアを行っている。
中央アジア大学は、良質の幼児教育や近代的な医療施設、生涯教育、市民教育、公園などによって、立地都市の変革に寄与している。このプロジェクトを通じて、雇用が創出され、ビジネスが花開き、生活の質が改善され、将来は驚くほど明るくなった。また、山間部の気候と地域に関する研究は、この分野における知識を前進させる最先端の出版物の刊行に帰結した。
入学希望者やその親から大学のパートナー、研究者、教員、政府、メディアに至るまで、最先進国から最も辺鄙な村落に至るまで、多様な面をもった利害関係者と関われたことを光栄に思っている。コミュニケーションはしばしばロシア語と、私の知らない中央アジアの諸言語で行われた。
広報の専門家に、自分の役割は何かと尋ねてみるとよい。すると、情報を送り受け取る、メッセージを作る、意見を交換する、創造的に関わり聴衆を増やす…等、十人十色の答えが返ってくるであろう。しかし、私にとっては、中央アジア大学のような未来に長く続く組織を作ること自体が、自分の役割であったと思っている。
建物を建設するかのごとく、職員を雇用し、事業を遂行する。同様に大事なのが広報だ。あらゆる書かれた言葉、映像、話し言葉が慎重に生み出される。企業の最高幹部から補助職員に至るまで、あらゆる個人が(中央アジア大学の)「大使」としての役割を担っている。ビルのあらゆる看板が、その組織のアイデンティティを示している。
私の心の奥底には1983年以来、アーガー・ハーン卿の含蓄のある言葉がいつもあった。
「世の中には貧困の中で、生きる手段と、それを改善しようという動機を奪われた世界に生きている者がいる。自らで何かを成し遂げようという精神と決意に火をつける火花でもって、こうした不幸に対処していかない限り、彼らは再び、無気力と転落、絶望の中に沈み込んでしまうであろう。より恵まれた立場にある私たちこそがその火花を散らさねばならないのだ。」
その後、2016年の開学イベントでハーン卿は、「私たちがここで成し遂げようとしていることは、この地域だけではなく、はるか遠い地域の人々にとっても役立つ国際協力の価値ある模範となることです。」と語った。
中央アジア大学は、カナダ・英国・ロシア・スウェーデン・オーストラリアの大学とパートナーシップを組んで策定したカリキュラムを用いて、地域の山岳地帯における社会的・経済的開発の触媒となるべく創設された。
私にとっての最も誇らしい瞬間は、学生たちが初めてキャンパスに到着した時のことだ。多様な民族、背景、土地から集まった学生たちが、何日もかけて、ある者は徒歩で、ある者は馬で、またある者はバスでやってきた。しかし、いったんキャンパスに着くと、教育上の目標を目指して彼らは連帯したのである。希望と熱情、学びたいという意欲に満ちていた。
その一人ひとりと知り合いになれたのは光栄なことだった。自信をもって目撃してきたことなのだが、彼ら各々が夢を実現したのである。この若者たちは(コロナ禍の中でも)今や立派に卒業して、自分たち自身に、家族に、そして自分の故国に対して、近い将来、何らかの変化をもたらすべく準備を進めている。彼らの夢が実現したのと同じく、私の夢も実現した。
ある友人が私に「光栄なこととは何か」と尋ねた。
ある人にとっては資産を相続して生活を安定させること、ある人にとってはアイビー・リーグでの教育、またある人にとっては家族や友人からの支援を十分に得ていることであったりするだろう。私にとっては、来たる世代の、一人ではなく多くの生活が今後変わっていくし、永遠に変わり続けるという信念を持ちながら、伝説の組織の誕生に立ち会ってささやかな役割を果たす機会を得ることである。(原文へ)
※著者のニサール・ケシュヴァニはシンガポール生まれ。同地に戻るまで5つの大陸で生活し働いた世界市民である。中央アジアでは8年間生活し、現在はシンガポール大学教養・社会科学部で広報の責任者。中央アジア大学はINPS東南アジア総局がコミュニケーション・メディア学部の学生を対象に研修プログラムを実施した。
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【ニューヨークIDN=リサ・ヴィヴェス】
ロシアが近年アフリカ重視の外交姿勢を強める中、軍事協力(武器輸出、軍事アドバイザー、傭兵派遣等)にも積極的に乗り出しており、中には中央アフリカ共和国のような内戦が続く国で、ロシア人傭兵による残虐行為が国連の調査で指摘されるケースも浮上している。(原文へ)
INPS Japan
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‘Toward A Nuclear Free World’
This Report is a compilation of independent and in-depth news and analyses by IDN from April 2020 to March 2021. 2020-2021 was the fifth year of the INPS-IDN media project with the SGI, a lay Buddhist organization with headquarters in Tokyo.
But IDN has been a party to the joint project, first launched in 2009 in the wake of an agreement between the precursor of the International Press Syndicate (INPS) Japan and the SGI.
We are pleased that meanwhile, we are in the sixth year of the INPS-IDN’s joint media project with the SGI. This compilation comprises 33 articles analysing the developments related to proliferation and non-proliferation of nuclear weapons at multiple levels – governmental, intergovernmental and non-governmental. All articles have been translated into Japanese. Some have been translated into different languages, including Arabic, Bahasa, Chinese, German, Italian, Hindi, Korean, Malay, Norwegian, Swedish and Thai.
The backdrop to these articles is that nuclear-weapon states have been fiercely opposing the Nuclear Ban Treaty (TPNW), which has meanwhile entered into force. The nuclear weapons states argue that TPNW ignores the reality of vital security considerations. At the same time, the complete elimination of nuclear weapons is increasingly becoming a global collaborative effort calling for relentless commitment and robust solidarity between States, international organisations and civil society.
This compilation also includes an in-depth analysis of eminent Buddhist philosopher, educator, author, and nuclear disarmament advocate Dr. Daisaku Ikeda, who released his latest 39th annual peace proposal, titled “Value Creation in a Time of Crisis”, released on January 26. Dr Ikeda calls for further global cooperation to address the key issues of our time: extreme weather events that reflect the worsening problem of climate change and the onslaught of the novel coronavirus (COVID-19) pandemic which continues to threaten social and economic stability throughout the world.
TOWARD a Nuclear Free World メディアプロジェクトニュースレター(2020.4 – 2021.3)
‘Striving for People, Planet and Peace’
This Report is a compilation of independent and in-depth news and analyses by IDN from April 2020 to March 2021. 2020-2021 is the fifth year of the INPS Group’s media project with the SGI, a lay Buddhist organization with headquarters in Tokyo.
But IDN has been a party to the previous joint projects on ‘Education for Global Citizenship’ and ‘Fostering Global Citizenship’ respectively—as the result of an agreement between the precursor of the International Press Syndicate (INPS) Japan and the SGI.
We are pleased that at the time of writing these lines, we are already in the sixth year of the INPS Group’s ‘SDGs for All’ joint media project with the SGI.
This compilation comprises 33 articles analysing developments and events related to a sustainable world, peace and security on the whole and its 17 Goals with 169 targets at multiple levels—governmental, intergovernmental and non-governmental. Some of the articles have been translated into several European and non-European languages. The 17 Sustainable Development Goals (SDGs) of the 2030 Agenda for Sustainable Development—adopted by world leaders in September 2015 at a historic UN Summit—officially came into force in January 2016.
The SDGs, also known as Global Goals, are unique in that they call for action by all countries, poor, rich and middle-income to promote prosperity while protecting the planet. They recognize that ending poverty must go hand-in-hand with strategies that build economic growth and address a range of social needs including education, health, social protection, and job opportunities while tackling climate change and environmental protection.
SDGs for All メディアプロジェクトニュースレター(2020.4 – 2021.3)
on https://www.sdgsforall.net/documents/Striving_for_People_Planet_and_Peace_2021.pdf
Top image: Collage by Katsuhiro Asagiri, INPS Japan President
【マラケシュIDN=ヨセフ・ベン・メイル】
国連の持続可能な開発目標(SDGs)は、きわめて大胆な普遍性を持っており、誠実な目標とともに世界的に関連ある問題に対処しようとするものである。根本的に良いものを提供しているが目標には根本的な問題がある。目標は処方箋を欠いている。地元の人々の参加という、持続可能性の実現にとって必要不可欠だと思われるような内容すら、明確には盛り込めていない。
関連して言えば、17項目のSDGsが選ばれたプロセス自体が、世界の地域社会が表明したニーズ全体を反映したものではなかった。結果として、SDGsが生活改善を支援する対象となる人々は、ほとんどSDGsの存在そのものを知ることがなく、同時に、17項目を行動のための有益なガイドとして利用するために、彼らは力を与えられる必要があるのである。
SDGsのもつ性格は、部分的には、パンデミックを含め、非常に広い文脈において世界的に適用可能なところにある。我々の文化が無限のバリエーションを持っていることを考えれば、あらゆる状況において適切かつ効果的なアプローチを処方することなど不可能だ。しかし、達成の手段に関する何らかの指示がない限り、SDGsは、行動可能な目標ではなく、人心から離れたビジョンと堕してしまうかもしれない。
SDGsの履行を進めるために、各国は、地域の特性や個別の目標を超えるようなアプローチを考え出さねばならない。SDGsはグローバルかつ普遍的なものである一方で、地域レベルで実行されるものだ。したがって、意思決定と、受益者に対する管理を脱中央集権化することで、持続可能な発展につながる文化横断的な主要な要素を後押しすることになるのだ。すなわち、人々の参加ということである。
SDGsは、地域が主導した研究やデータ取集を含め、地域の実情に適応可能なものでなければいけない。これが、文化や政治、環境の多様さを認めることになる。そうした民族的な方法論や参加型研究は、人々自身の観点から地域の状況を浮き彫りにすることになる。この集団的分析プロセスを通じて、地域の人々は、自らが主張する直接的なニーズを超える実行可能なプロジェクトを見出すために、より強力な立場を得ることになる。
この目標のもつ普遍性は、一般的に言ってポジティブなものだ。人々は、生活の全ての側面に触れ、地域のもつ理想を反映させることができるのだから、自分たちの声がSDGsに盛り込まれていると見ることができるのである。しかし、だからと言って、SDGsによってやる気が出たり、あるいは、SDGsは行動可能な枠組みであると人々が積極的に考えることを意味しない。彼らが、SDGsの実行のために一肌脱ごうとやる気を出せるかどうかは、目標のデザインと策定そのものにどの程度参加できたかにかかっているからだ。
要するに、人々が自分自身の原則がそこに反映されていることを見て取ることができるように、ある程度までは、幅広い目標が採択されているのである。しかし、また別の人々にとっては、概念の立て方が問題となる。目標への感情的なつながりが欠けていることで、応用された指標としてSDGsを使うことが妨げられるのだ。SDGsは、世界全体で公的にそれを受け入れさせようとするのであれば、地元の参加によってその概念が実行され、さらには「概念の読み替え」が行われたときに、最も深い意味で受け止められたということができる。
SDGsの国別の実施を支援すべく国連が促進できるかもしれないもうひとつの導きの糸は、単一の開発プロジェクトによって複数の目標を促進することだ。そうした例をモロッコに見ることができるが、同時にまたそれは、世界全体の社会経済や環境の現状を示すものでもある。
多くの社会や文化においては、果樹農業は伝統的に男性の生産領域だとされてきた。残念なことに、農業が女性の完全な参加なしになされた際は、収入と利益が男性の手にのみ握られ、女性識字率や成長機会の向上などの間接的な利益は満たされないままになる。
従って、自信や自尊心をつけさせ、変化に向けた農業に関する考えを発展させるなどの能力強化を含め、女性を初めからプロセスに統合することで、ジェンダー平等(SDGs第5目標)だけではなく、強化された食料安全保障(第2目標)、適用可能な水・環境管理システム(第6目標)、教育(第4目標)、人間らしい労働と経済成長(第8目標)、責任感のある消費と生産(第12目標)、貧困の削減(第1目標)にも資することになる。
実際、持続可能な開発は、複数のニーズや関心が満たされ、民衆を生きながらえさせ利益を与えるイニシアチブをバランスよく促進する程度に依存している。国連はしたがって、どの地元や地域におけるプロジェクトによっても、広範な成果を達成するために多面的な開発を常に是認し、そのことによって、単にSDGsを達成するだけではなく、成功の基礎そのものを構築しなくてはならない。
17項目のSDGsが、地球上のどの社会や国においても意味をもつのと同じく、その履行に向けた原則についてもそうである。SDGsの達成が求められる際にはいつでも、開発への人々の参加が強調されねばならない。世界の民衆が成長の道筋を決める。従って、脱中央集権化が、なんらかの形や程度において、全ての場所で必要となってくる。
最後に、地域のニーズを満たすパートナーシップが成長を促進するならば、より大きな利益がもたらされるであろうし、より多くの集団がその継続を強く望むことであろう。SDGsとその象徴あるいは前文がものを言うことであろう。そうすることで、SDGsは、私たちが集団的に向かうべき方向だけではなく、そこに向かう方法をいかにして考えるべきかを体現するものとなろう。それはSDGsそのものの指標となるもの、あるいは、SDGsに即応するものとなろう。しかし、どこへ行くか、何をするかだけでは十分ではない。それぞれの人間集団にとって意義のある形で「どうやるか」ということがなければ、エネルギーは湧いてこないのである。(原文へ)
INPS Japan
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