【カイロIPS=アダム・モロー、カーリド・ムッサ・アル・オムラニ】
8年間の中断を経て、イスラエルとシリアは、トルコを介して、ゴラン高原問題の交渉を再開した。2000年に米国の仲介による交渉が決裂したのは、シリアがイスラエルの全面撤退を求めているのに対し、イスラエルがガリラヤ湖の領有を譲らず、さらには、反イスラエル組織のシリア追放や、米国のシリア駐留を主張したためである。
シリアはゴラン高原を占領された1967年の第3次中東戦争以来、中東地域において対イスラエルの急先鋒となってきた。今回の交渉にあたって、イスラエル側が狙いとしているのは、シリアのイランとの関係、或いはハマス、ヒズボラそれぞれとの結びつきを、解消することである。
だがそれらの結びつきは、近来米国とイスラエルが押し進めてきた強硬な中東政策によって、却って強まっている。米国は2005年のレバノン・ハリリ首相暗殺事件以来、シリアの関与を示す確たる証拠はないものの、シリアへの圧力を国際社会に呼びかけてきた。イランは核兵器開発に関して、米国から圧力をかけられているし、イスラエルと戦闘のあったハマスとヒズボラは、米国が「テロリスト組織」と呼ぶところとなっている。
アルカラマ紙のハリム・カンディル氏は、シリアはイスラエルとの交渉の窓を開けることによって、「米国政府がシリアを孤立化させようとしているのに対抗し、国際社会に対して、和平に積極的だという姿勢をアピールするつもりだ。できれば米国に、シリア政府に反発する勢力への援助を、緩めてもらいたいと思っている」と分析する。
さらにカンディル氏は、「イスラエルはシリア一国なら恐れるものでなく、イラン、ヒズボラ、ハマスとの同盟があるから、深刻に警戒しているのだ。逆にシリアは、このような戦略的効力を発揮する同盟を、容易に放棄しようとはしない」と述べた。
カイロ大学のサラアマ教授(国際法)は、「シリアはヒズボラやハマスと手を切っても、イランとの緊密な関係は維持するだろう」と述べている。先月、シリアとイランの防衛大臣は、防衛協定の改定と軍事協力について会談したところである。
「だが、トルコの積極的な仲介、米国政府の協力、イスラエル、シリア双方の譲歩によって、交渉が実を結ぶこともあり得る」と同教授は見ている。また「常に地域のリーダーであったエジプトでなく、トルコが仲介役に選ばれたことは、驚きだった。エジプトが外交上の重みを失ってきているのに対し、トルコは政治的にも経済的にもプレゼンスを増している」と述べた。
一筋縄ではいかないイスラエルとシリアの交渉だが、対立深まる中東地域で、問題解決のきっかけとなればという期待がかかる。トルコを仲介として行われているイスラエル、シリア間の外交交渉について報告する。(原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan
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