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|米国|軍事費引き上げを求めるタカ派

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【ワシントンIPS=ジム・ローブ

縮小する国家経済と記録的な国防予算を抱えながらも、米国のタカ派は議会とオバマ大統領に軍事費引き上げを求め始めた。さらにオバマ大統領が進めている1兆ドルに迫る景気刺激策のうち、数百億ドルを国防費に回すべきだと主張している。軍事産業に金が回れば雇用が増えるという論理である。

新保守主義のシンクタンク、アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)の軍事アナリストのT.ドネリー氏は、「米国が世界の安全を保つことで経済基盤は強化され、景気回復につながる」という。軍事産業のロビー活動の活発化と時を合わせたタカ派のキャンペーンは、オバマ新政権が景気刺激策の迅速な議会通過を目指している大事な時期に始まった。 

作成中の2010年度予算について、行政管理予算局(OMB)は国防予算を8%増の5,270億ドルとしている。これには地球規模のテロとの戦いの費用は含まれず、世界の軍事費の40%はテロとの戦いに費やされている。だが今週、議会季刊誌(CQ)は、国防省側は統合参謀本部の要求が10%カットされたと主張していると伝え、極右のフォックスニュースも同様の報道を行った。

 さらに外交問題評議会(CFR)の軍事アナリスト、Mブート氏は、ゲーツ国防長官がOMBと対立したと断言した。また、カーネギー国際平和財団の新保守主義の論客R.ケーバン氏は、ワシントンポスト紙のコラムで10%軍事費カットの及ぼす悪影響について訴えた。

新アメリカ財団(NAF)のW.ハートゥング氏は、この新保守主義の動きを国防省と軍事産業の巨大キャンペーンの一部とみている。2001年のブッシュ大統領就任以来、イラクとアフガニスタンでの活動を含まない全軍事費は60%増加した。 

軍事費カットという疑わしい情報を流すとともに、国防省支持派は景気刺激策としての軍事費増を主張し始めた。昨年末にAEI のM.フェルドスタイン氏がウォールストリート・ジャーナル紙で少なくとも300億ドルの軍事費アップが33万人の雇用を生み出すと述べたことが始まりだった。それに呼応するタカ派の発言が続き、ロッキード・マーティン、ボーイング、ノースロップ・グラマンなどの主要軍事産業のロビー活動も活発化した。 

ハートゥング氏を初めとする反国防省派は、今こそ削減が重要だと主張している。「軌道修正できるのは今しかない」と同氏はIPSの取材に応じて語った。

不況の中でも軍事費増額を求める米国の新保守主義について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

|米国|アフガン増派計画、交錯する期待と不安

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【ワシントンIPS=ジム・ローブ】

オバマ米大統領が『対テロ戦の主戦場』と位置づけているアフガン増派計画に懸念の声が出始めている。タリバン政権崩壊から7年以上が過ぎたアフガニスタンでは、今もなお米軍の犠牲者は後を絶たない。 

昨年のアフガニスタンでの米兵の死者数は132人で、2001年のアフガン侵攻以降最悪の状態となった(2007年は82人)。メディアでは米主導のアフガン戦争をベトナム戦争の二の舞と批判が噴出。ロバート・ゲーツ米国防長官は先週、アフガンでの軍事戦略をめぐり議会に対して慎重な決断をするよう注意を促した。 

アフガニスタンには現在、米軍約3万3,000人が駐在。アフガニスタンでの兵力増強に意欲的なオバマ新政権は、今年夏までにアフガン駐留米軍を新たに3万人増派する考えを明らかにしている。 

ゲーツ氏は先週、戦況が悪化するアフガニスタンへ今年初秋までに2から3個の陸軍旅団(1万から1万2,000人)を追加派兵する計画を示した。その一方で「我々は10万人規模のアフガン軍と治安部隊が果たす役割に期待する」とし、今後更なる増派を行う事については否定的な考えをほのめかした。

 オバマ新政権への期待は国内外を問わず依然大きい。しかし、最近の調査によるとカナダや欧州諸国からはアフガン増派の問題をめぐる厳しい意見も出てきているという。アフガニスタン・パキスタン関連の特使としてオバマ大統領から任命を受けたリチャード・ホルブルック元米国連大使は、米政策の抜本的な見直し(アフガン問題をめぐる短期・長期的目標の設定、および目標達成に向けた政策立案)を行う予定だ。 

今のところ「タリバンが拠点を置く北西辺境州などの地域に暮らす市民の安全を確保すること、またカルザイ大統領に国内の汚職問題を解決させタリバン掃討作戦への参加を促すことは不可欠」との意見が一般的である。これに対し、イラクに比べアフガン駐留兵の数が少ない点や、増派をどこに配置させるかなどの課題は残されたままである。 

カーネギー国際平和財団のジル・ドロンソロ氏は3日、最新報告書の中で『アフガン増派は逆効果になる』と論じた。「タリバンの支配下にある部族地域に外国兵が駐留すれば、一層の混乱は避けられない。反政府勢力の勢いを食い止めるのは駐留米軍の撤退しかない」。米軍によるアフガン増派計画について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

|ザンビア|コミュニティー、独自の学校運営に乗り出す

【ルサカIPS=ダンスタン・カウンダ】

ザンビアの首都ルサカに近い人口20万の町カンヤマに住む12歳の少年ムユンダ・ニャンバは、「お母さんは仕事がないので、僕と妹を政府の学校に行かせることができない」と言う

政府は2004年に初等教育の無償化を行ったが、PTA費、施設維持費などは支払わなければならず、貧困家庭にとっては大きな負担となっている。教育省の予測によれば、貧困により教育の機会を得られずにいる子供たちは全国で52万人に達するという。

 そんな中、父兄・コミュニティー学校委員会(Parent-Community Scholl Committees:PCSC)は、孤児、貧しい子どもたち、そして政府の教育システムからはじき出された子どもたちの教育を目指し、NGOと貧困地区コミュニティーのジョイント・ベンチャーとして学校運営を開始した。

ニャンバは現在、カトリック教会の中に設置されたコミュニティー・スクールに通っている。教育研修生1人が国際支援団体から寄付された古い教材を使って教えるつましい学校だが、200人の生徒がそこで学んでいる。

PCSCは、日々の学校運営とマイクロ・ファイナンス・プログラムを通じた財政的独立を目指している。また、学校における開発プログラムも推進している。「ザンビア・オープン・コミュニティー・スクール」のプログラム責任者ピーター・シンヤングェは、「PCSCの組織がしっかりしていれば独立運営は可能だ。各学校におけるマイクロ・ファイナンス・プロジェクトにより、運営費を賄うための収入活動資金が得られる。また、教員の給与、コミュニティーの生活向上のためにも役立つ」と語る。コミュニティーは、利益の40パーセントを学校運営費に充てることに同意しているが、マイクロ・ファイナンスにより、これらコミュニティー内の既存ビジネスへの資本提供も可能になるというのだ。

「ザンビア・オープン・コミュニティー・スクール」のプログラム・コーディネーター、マリエット・シアンジブ・ミヤトは、コミュニティー・スクールを貧困撲滅のためのけん引役、基盤として進めて行きたいと語る。

しかし、教育省は長い間コミュニティー・スクールを予算枠に含めることもせず、推進者の教育会議参加も認めてこなかった。教育省は、コミュニティー・スクールがザンビア初等教育に果たす補助的役割を調査中としている。

ザンビアのコミュニティー・スクールについて報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

|日本|国際放送に新規参入するNHKワールドTV

【東京IPS=C・マキノ】

独自のニュース発信を目指し、日本は2月2日に24時間英語ニュースを放送するNHKワールドTV をスタートさせ、英語圏以外の本格的な英語ニュース放送を行う国(インド、ロシア、中国、カタール)に仲間入りした。 

NHKの国際事業である日本国際放送(JIB)は、政府の交付金と視聴者の受信料約8,000万ドルで運営されている。JIBの番組はすでに70カ国で視聴可能だが、3月までに北米、欧州、中東、アジアの1億1、000万世帯に拡大していく。NHKワールドTV をアラビア語、中国語、フランス語、スペイン語でインターネット配信する計画もある。

 JIBの高島肇久社長は、「世界の視聴者およびインターネット使用者に日本の真の姿を伝えるために努力する」とIPSの取材に応じて語った。日本では国際舞台での日本に関する報道が十分でないと考えられている。「日本は世界に理解される必要がある。英語で主張できるすぐれた人材に世界に向けた発言の場を提供し、日本について広く知らせて行きたい」 

最近では海外メディアの日本への関心が低下し、たとえばロサンゼルス・タイムズ紙は東京から撤退してソウルから報道を行っている。高島氏は宣伝や広報ではなく、日本についての誤解の修正に役立ちたいという。NHKの今井義典副会長も、外国特派員の観点が日本人と異なる場合があると指摘する。「日本は顔の見えない国といわれるが、グローバル化の中で相互理解を深めて共生を目指すことは重要である」 

マンスフィールド財団(ワシントンDC)の小西ウェストン非常勤フェローは、海外メディアの日本に関する情報が正確でない場合があるという批判に同意する。「物珍しさが強調されることが多かったが、このプロジェクトによって日本への真の関心が高まるのを期待する」 

アラブ世界の考え方を発信するアルジャジーラのような国際放送を目指すものと思われるが、テンプル大学日本校のJ.キングストン教授は「競合する放送は多く、成功するにはNHK の官僚的なスタイルや核心を突こうとしない報道姿勢を改善する必要がある」という。 

だが国際放送の新規参入者となったNHKワールドTV が、世界における日本のイメージに有利に作用し、日本への関心を高める可能性を否定するものはほとんどいない。 

国際放送に新たに参入したNHKワールドTVについて報告する。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩 

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Q&A:途上国側の意見を反映させたニュース配信を求める

|財政|政府支出に関する情報公開が進んでいない国が大半

【ワシントンIPS=ジム・ローブ】

各国政府の透明性と説明責任の向上に取り組んでいるNGOインターナショナル・バジェット・パートナーシップ(IBP)(在ワシントン)が、各国政府の国民に対する歳出情報の公開度を評価した報告書を発表した。 

調査対象となった85カ国中、歳出情報の透明度を示す指数Open Budget Indexが高かった上位5カ国は、英国、南アフリカ、フランス、ニュージーランド、米国の順であった。

 しかし80%に当たる68カ国は、国民が公的資金の使用について把握、関与、監視するために必要な包括的な情報の適時公開を怠っている、と報告書は明らかにしている。85カ国のうち約半数の国は情報公開がほとんどなされていないため、浪費、不正管理、汚職腐敗を暴くことも実質的に不可能である。 

情報開示が下位の国は、中東と北アフリカが中心で、サハラ以南の諸国が次に続いた。また、低所得国、とりわけ外国からの援助や石油・ガスの輸出に歳入を大きく依存している国にその傾向が強く見られた。 

ただ発展途上国よりも先進国に歳出情報の開示が進んでいる傾向が見られたものの、例外も多く見られた。2位の南アフリカや8位のブラジルのほかにも、ペルー、スリランカ、コロンビア、パプアニューギニア、インドが上位20カ国に名を連ねた。 

こうした評価結果に、IBPのディレクターであるワレン・クラフチク氏は「貧困国であることや援助・石油ガス収益への依存国であることは、不十分な歳出情報公開の言い訳にはならないということ」と指摘する。 

また、現在情報の公開が進んでいない多くの貧困諸国でも、援助国や国内での利用目的のためにすでに情報は作成されており、最小限のコストで透明性を向上することができることが明らかとなった。 

クラフチク氏は「なすべきことはすでに作成済の情報をインターネットで公開するだけのこと。問題は情報の作成や作成能力の欠如ではなく、情報公開に対する政治的意思の欠如だ」とIPSの取材に応えて述べた。 

「透明性の欠如によって、市民は意思決定プロセスに関与することもできず、無駄で腐敗に関係した不適正な支出が生まれ、政府の各種事業の中でもとりわけ貧困撲滅事業の正当性や効果が低減されている」と指摘する報告書『Open Budgets Transform Lives』について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

|ブルキナファソ|記録的な豊作でも穀物不足

【ワガドゥグーIPS】

ブルキナファソの市場では穀物が不足している。2008~2009年の大豊作が発表されるや否や、近隣諸国の業者がブルキナファソに殺到して買っていったからだと市場関係者はいう。 

十分な降雨と政府からの補助金により、今期の穀物生産は420万トンに達し、71万7,000トンの余剰がでた。それでも価格が下がることはなく、上昇し続けている。いつもは輸入される穀物が、ガーナ、マリ、コートジボワールなどに輸出されているためだと考えられる。

 穀物価格情報を専門とするNGO、グリーンアフリカの1月の報告書によると、市場の穀物不足からアワで14%、ソルガムとトウモロコシで20%の値上がりとなっている。「11月にトウモロコシは1袋7,500CFAフラン(約15ドル)だったが、12月は12,000CFAフラン、1月は1,5000CFAフランだ」とシシリ農業専従者連合(FEPACI)のJ.D.ムーサ会長はいう。 

グリーンアフリカは、大豊作にもかかわらず穀物が不足しているのは、不足地域の生産者と業者による備蓄も原因と考えている。生産者の在庫の多くはまだ市場に出回っていないことから楽観視する専門家もいるが、価格下落を警戒する農家は、やはり豊作だった落花生、ゴマ、豆を当面売って対抗しようとしている。 

生産者に出荷を促す会合に出席したセドゴ農水相は、不信感を抱いて抵抗を示す生産者に補助金を更新するなどして市場に穀物を流通させたいと語った。昨年度は、物価上昇に対処するため3万トンの備蓄穀物を政府が割引価格で売り出すという事態になっていた。穀物部専門家間委員会のS.シセ委員長は、政府が事前に利害関係者と協議していれば、過剰な輸出が防げたのではないかという。 

サヌー貿易起業大臣は「常に意見を聴き、相互理解を重視しているが、今のところ問題解決に至っていない」という。「このまま価格上昇が続けば昨年同様暴動が繰り返される可能性もあるが、それは避けたい」 

ブルキナファソ農業者連合(CPF)のB.ダオ会長は、食糧の自給と生産者の福利を確立するために農業支援は重要だという。同会長は「問題を避けるため、政府は余剰分を買い取って市場に適切な価格で売ることに合意すべきだ」とIPSの取材に応じて語った。 

豊作でも穀物価格が上昇しているブルキナファソについて報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー= IPS Japan 浅霧勝浩 

|世界経済フォーラム|ダボス批判

【ダボスIPS=グスタヴォ・カプデヴィラ】

スイス東部の観光リゾート、ダボスで開催された今年の世界経済フォーラム(WEF)の特徴は、世界経済/金融危機の責任者およびそれを支持してきた体制との決別であった。 

スイス社会党のスザンヌ・ローテネッガー議員は、同国のNGO「ベルン宣言」と「リーンピース・スイス」が組織した反ダボス会議「Public Eye on Davos」(ダボスに対する市民の目)の表彰式でスピーチし、ダボス会議は危機の原因となった政策を推進してきたイデオロギー機関であると批判。「同会議は非公式ネットワークを築く場で、政治家は下座に座り、メディアはリッチでパワフルなグローバル・エリートを称賛してきた。同会議は、破たんしたネオリベラル・ビジネス・モデルの怪しげなロビイング機関である」と述べた。

 Public Eyeの主催者は、WEFメンバーおよび大企業が犯した社会/環境破壊行為を体現したとして、ガーナでの金採掘に疑念が持たれる米国のニューモント鉱産、ドイツに石炭発電所を建設したスイスのBKW FMB社にネガティブ賞を授与。 

ポジティブ賞は、アフリカ系800世帯を強制移動させ石炭採掘を行おうとした多国籍企業の決定を覆したコロンビアの組合リーダー、ジャイロ・クイロスとフレディー・ロザノ、そして彼らの組合シントラカルボンに贈られた。(ベルン宣言とグリーンピースは1月29日、多国籍企業の海外プロジェクトで地元コミュニティーの権利が侵害されることのないよう国際企業責任規則を採択するよう求める書簡をオバマ大統領宛てに送付した。) 

ローテネッガー議員は、ダボス会議は民間会議であるにも拘わらず、スイス政府が800万スイスフラン(700万ドル)の補助を行っていることについても疑問を投げかけた。更に、ダボス会議反対の街頭抗議運動は殆どが禁止され、期間中は言論の自由、集会の自由も認められないと述べた。 

しかし、経済モデルの発案者として成功を収める同会議は財政的にうまく行っており、世界のトップ1,000社、WEFメンバーからの寄付は毎年3,500万ドルを超えると同氏は予測する。スイスのチャリティー基金として活動するWEFは、金融会社の特別援助、会議参加者の料金を含め約8,800億ドルの年間収入があるという。 

ローテネッガー議員は最後に、ポスト資本主義体制およびその実現へ向けた根本的な議論、特に左派、組合、社会活動組織間の議論が必要と主張した。 

ベルン宣言およびグリーンピース・スイスが主催した「Public Eye on Davos」におけるスイス社会党議員の主張を紹介する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

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|世界経済フォーラム|危機を作り、危機後の世界を探る

|シンガポール|金銭教育の恩恵を受ける家庭内労働者

【シンガポールIPS=プリメ・サルミエント】

シンガポール在住のフィリピン、インドネシア、スリランカ出身の家庭内労働者150,000人以上が持つ一番の問題は、この豊かな都市で月に200ドルから300ドルという適正な賃金を受取っても、帰国して生活する十分な資金を貯蓄出来ないことだ。 

家庭内労働者が、虐待的な雇用主の元で働かなければならない事件は国際的に大きく報道されているが、実際はこの問題の方が大きい。

 2001年に国連女性開発基金(UNIFEM)が実施した調査によると、シンガポール在住の出稼ぎ労働者の目的は、国へ帰る資金を貯めることと手に職を付けることだった。 

UNIFEMシンガポール代表のサレーマ・イスマエール氏によると、家庭内労働者は収入のほとんどを祖国の家族に仕送りしてしまい、将来のために蓄える分さえ残さないのだそうだ。一方、支援を受ける家族は、そのお金でビジネスを始めたり土地を購入したりせずに散財してしまうという。 

「家庭内労働者はたくさん稼ぐので、家族を支えなければと罪悪感を抱く」とイスマエール氏は言う。出稼ぎ労働者への金銭教育が重要だ。「金銭が管理できれば、人生も管理できる。」 

2005年、アジア開発銀行(AsDB)が発行した出稼ぎ送金に関する調査でも、金銭教育を出稼ぎ労働者の状況改善手段の1つとしている。 

「出稼ぎ労働者は、自分の時間もなく、自分の一般的な権利や選択肢も(仕送りに関する物を含めて)知らない。教育を受ければ、情報に基づいた社会的、経済的決断が可能だ」とアジア開発銀行は述べている。 

2006年UNIFEMは、家庭内労働者向けの金銭教育を専門で行うシンガポール唯一の組織として創設されたAidhaに、16,000シンガポールドル(約10,000米ドル)の活動開始資金を提供した。 

創設者であり代表を務めるサラ・マブリナック氏は、起業家精神や金銭管理の教育をすれば、労働者が帰国後に生計を立てる助けとなると言う。 

Aidhaは会計、起業家精神、効果的なコミュニケーションスキル、コンピューター操作、時間管理、自尊心の向上などのワークショップを行っている。ボランティアが教える各コースに生徒はわずか25シンガポールドル(16米ドル)で参加出来る。 

マブリナック氏は、経済金融危機で皆が仕事の心配をしている今こそ金銭教育が重要だと考える。家庭内労働者はたいてい一家の稼ぎ手となっているので、金銭管理を学んで家族を危機にさらさない様にしなければならない。 

しかし、ワークショップに参加するより学んだことを実践する方が大事、とマブリナック氏は言う。「行動を変えなければならないので大変だ。預金口座を実際に作って、管理しなければならない。」 

Aidhaは、友人と作る金銭教育のクラブ、「財務羅針盤投資クラブ」に入ることを積極的に勧めている。メンバーは週に1度人生設計の指導員と会い、貯蓄目標と優先順位に関して話合い、目標達成のための毎月の貯金額を計算し、目標実現に必要な予算を貯める。 

出稼ぎ労働者が抱える問題を教育で改善するシンガポールでの取組みについて報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリ=IPS Japan 浅霧勝浩 

|世界経済フォーラム|危機を作り、危機後の世界を探る

【ジュネーブIPS=グスタヴォ・カプデヴィラ】

水曜日から世界経済フォーラム(ダボス会議)が開催される。多国籍企業の利益を考えるビジネス界のエリート、シンクタンク、政府首脳、政治家など、2,500人がスイスのリゾート地に集まる。 

報道機関は自由市場のイデオロギーに組みするもののみに、概ね限定されており、いくつかのセッションは、非公開で行われる。39回目となった今回の会議のタイトルは「危機後の世界の形成」である。

 創始者のクラウス・シュワブ氏は、ダボス会議がイデオロギーを有しているという批判を否定する。この10年間で極端な私欲が先行したことは修正されるべきだが、「資本主義改革」は果たされるべきてあると述べた。 

今週ジュネーブで国連人権委員会の諮問委員会に出席するジャン・シグレール博士は、同会議を批判し、「皮肉と傲慢と盲目そのものである。」と、IPS記者のインタビューで語った。シグレール博士は出席者の贅沢も批判する。政府に640億スイスフラン(5,630万ドル)の損失補填援助を受けたUBS(スイス銀行)の代表は、豪華ホテルに滞在している。 

20年前に同会議は規制緩和、市場の自由化、民営化を高らかにうたい、参加者は利潤の絶頂を謳歌していた。「ダボスに来ている銀行家や事業家の半分は、とっくに監獄に送られてしかるべきだ。彼らは世界を占有するための、イデオロギーの基礎を作ったのだ。」とシグレール博士は述べた。同博士によると、会議で元世銀頭取のウォルフェンソン氏は、「国家なき世界政府が究極の目標である。」と述べ、喝采を浴びた。 

新自由主義に基づく経済を先導し、今回の危機の原因を作ってきた人々が集うとの批判もあるダボス会議から報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

|開発|食糧サミット-懸念は示すも、具体案なし

【マドリードIPS=チトー・ドラゴ】

1月26、27両日に開催された国連とスペイン政府主催の『食糧安全保障に関するハイレベル会合(食料サミット)』には、100カ国の政府、市民団体、労組、民間企業、学界、国際機関、援助機関などが参加した。世界で飢餓に苦しむのは10億人。とりわけ南の開発途上国に集中している。会議ではこの問題について議論を深め、調整メカニズムを作り上げるために昨年6月のローマにおけるハイレベル会合以来の進展を振り返った。 

会議は具体策を打ち出すことができず、宣言の中で、各国政府と国際機関に約束した援助の履行を要請するにとどまった。

 NGO関係者によれば、公正な農業貿易を促進するために競争を阻害するような補助金の廃絶を訴えたことは前向きな側面だ。国連食料農業機関(FAO)のディウフ事務局長は「手を打たなければ飢餓の問題はさらに悪化する」と警告、今年度中に国家首脳級の食料サミットを開催し、専門家会議で科学的検証と国際的パートナーシップを促進する一方、既存の組織を改革して行動計画の効率化を促すことを提言している。 

IPSの取材に応じたスペインのモラティノス外相は「解決策は明白」として、2012年までに全ての先進工業国がGDPの0.7パーセントを援助にまわすことを求めた。スペイン現政権はODAを10億ユーロ増額することを表明、他の15カ国も来る5年間に55億ユーロの支援を約束。EUは13億ユーロの支援を約束している。 

世界で6,500万人が加盟する世界労働組合連名(WFTU)は、NATOの予算を10%削減すれば1,000億ドルのODA増額が可能と指摘。国境なき医師団、Vía Campesina Europaは飢餓対策の名目で種子や肥料の売込みが見られると指摘。食料主権の尊重を訴えた。 

国際農業開発基金(IFAD)のレナート・ボーゲ総裁はIPSの取材に応じ、世界の4億5,000の中小農家を支援すれば飢餓の改善に役立つと述べた。 

カリタス、国境なき技師団、La Suma de Todos、ProsaludのNGO4団体は『The Right to Food: Urgent(緊急の食料権利)』キャンペーンを立ち上げた。スペインのサパテロ首相が援助の増額合意を得たことを讃え、引き続き指導力を発揮するよう要望している。 

スペインで開催された食料サミットについて報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan 浅霧勝浩