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|ザンビア|コミュニティー、独自の学校運営に乗り出す

【ルサカIPS=ダンスタン・カウンダ】

ザンビアの首都ルサカに近い人口20万の町カンヤマに住む12歳の少年ムユンダ・ニャンバは、「お母さんは仕事がないので、僕と妹を政府の学校に行かせることができない」と言う

政府は2004年に初等教育の無償化を行ったが、PTA費、施設維持費などは支払わなければならず、貧困家庭にとっては大きな負担となっている。教育省の予測によれば、貧困により教育の機会を得られずにいる子供たちは全国で52万人に達するという。

 そんな中、父兄・コミュニティー学校委員会(Parent-Community Scholl Committees:PCSC)は、孤児、貧しい子どもたち、そして政府の教育システムからはじき出された子どもたちの教育を目指し、NGOと貧困地区コミュニティーのジョイント・ベンチャーとして学校運営を開始した。

ニャンバは現在、カトリック教会の中に設置されたコミュニティー・スクールに通っている。教育研修生1人が国際支援団体から寄付された古い教材を使って教えるつましい学校だが、200人の生徒がそこで学んでいる。

PCSCは、日々の学校運営とマイクロ・ファイナンス・プログラムを通じた財政的独立を目指している。また、学校における開発プログラムも推進している。「ザンビア・オープン・コミュニティー・スクール」のプログラム責任者ピーター・シンヤングェは、「PCSCの組織がしっかりしていれば独立運営は可能だ。各学校におけるマイクロ・ファイナンス・プロジェクトにより、運営費を賄うための収入活動資金が得られる。また、教員の給与、コミュニティーの生活向上のためにも役立つ」と語る。コミュニティーは、利益の40パーセントを学校運営費に充てることに同意しているが、マイクロ・ファイナンスにより、これらコミュニティー内の既存ビジネスへの資本提供も可能になるというのだ。

「ザンビア・オープン・コミュニティー・スクール」のプログラム・コーディネーター、マリエット・シアンジブ・ミヤトは、コミュニティー・スクールを貧困撲滅のためのけん引役、基盤として進めて行きたいと語る。

しかし、教育省は長い間コミュニティー・スクールを予算枠に含めることもせず、推進者の教育会議参加も認めてこなかった。教育省は、コミュニティー・スクールがザンビア初等教育に果たす補助的役割を調査中としている。

ザンビアのコミュニティー・スクールについて報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

|日本|国際放送に新規参入するNHKワールドTV

【東京IPS=C・マキノ】

独自のニュース発信を目指し、日本は2月2日に24時間英語ニュースを放送するNHKワールドTV をスタートさせ、英語圏以外の本格的な英語ニュース放送を行う国(インド、ロシア、中国、カタール)に仲間入りした。 

NHKの国際事業である日本国際放送(JIB)は、政府の交付金と視聴者の受信料約8,000万ドルで運営されている。JIBの番組はすでに70カ国で視聴可能だが、3月までに北米、欧州、中東、アジアの1億1、000万世帯に拡大していく。NHKワールドTV をアラビア語、中国語、フランス語、スペイン語でインターネット配信する計画もある。

 JIBの高島肇久社長は、「世界の視聴者およびインターネット使用者に日本の真の姿を伝えるために努力する」とIPSの取材に応じて語った。日本では国際舞台での日本に関する報道が十分でないと考えられている。「日本は世界に理解される必要がある。英語で主張できるすぐれた人材に世界に向けた発言の場を提供し、日本について広く知らせて行きたい」 

最近では海外メディアの日本への関心が低下し、たとえばロサンゼルス・タイムズ紙は東京から撤退してソウルから報道を行っている。高島氏は宣伝や広報ではなく、日本についての誤解の修正に役立ちたいという。NHKの今井義典副会長も、外国特派員の観点が日本人と異なる場合があると指摘する。「日本は顔の見えない国といわれるが、グローバル化の中で相互理解を深めて共生を目指すことは重要である」 

マンスフィールド財団(ワシントンDC)の小西ウェストン非常勤フェローは、海外メディアの日本に関する情報が正確でない場合があるという批判に同意する。「物珍しさが強調されることが多かったが、このプロジェクトによって日本への真の関心が高まるのを期待する」 

アラブ世界の考え方を発信するアルジャジーラのような国際放送を目指すものと思われるが、テンプル大学日本校のJ.キングストン教授は「競合する放送は多く、成功するにはNHK の官僚的なスタイルや核心を突こうとしない報道姿勢を改善する必要がある」という。 

だが国際放送の新規参入者となったNHKワールドTV が、世界における日本のイメージに有利に作用し、日本への関心を高める可能性を否定するものはほとんどいない。 

国際放送に新たに参入したNHKワールドTVについて報告する。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩 

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Q&A:途上国側の意見を反映させたニュース配信を求める

|財政|政府支出に関する情報公開が進んでいない国が大半

【ワシントンIPS=ジム・ローブ】

各国政府の透明性と説明責任の向上に取り組んでいるNGOインターナショナル・バジェット・パートナーシップ(IBP)(在ワシントン)が、各国政府の国民に対する歳出情報の公開度を評価した報告書を発表した。 

調査対象となった85カ国中、歳出情報の透明度を示す指数Open Budget Indexが高かった上位5カ国は、英国、南アフリカ、フランス、ニュージーランド、米国の順であった。

 しかし80%に当たる68カ国は、国民が公的資金の使用について把握、関与、監視するために必要な包括的な情報の適時公開を怠っている、と報告書は明らかにしている。85カ国のうち約半数の国は情報公開がほとんどなされていないため、浪費、不正管理、汚職腐敗を暴くことも実質的に不可能である。 

情報開示が下位の国は、中東と北アフリカが中心で、サハラ以南の諸国が次に続いた。また、低所得国、とりわけ外国からの援助や石油・ガスの輸出に歳入を大きく依存している国にその傾向が強く見られた。 

ただ発展途上国よりも先進国に歳出情報の開示が進んでいる傾向が見られたものの、例外も多く見られた。2位の南アフリカや8位のブラジルのほかにも、ペルー、スリランカ、コロンビア、パプアニューギニア、インドが上位20カ国に名を連ねた。 

こうした評価結果に、IBPのディレクターであるワレン・クラフチク氏は「貧困国であることや援助・石油ガス収益への依存国であることは、不十分な歳出情報公開の言い訳にはならないということ」と指摘する。 

また、現在情報の公開が進んでいない多くの貧困諸国でも、援助国や国内での利用目的のためにすでに情報は作成されており、最小限のコストで透明性を向上することができることが明らかとなった。 

クラフチク氏は「なすべきことはすでに作成済の情報をインターネットで公開するだけのこと。問題は情報の作成や作成能力の欠如ではなく、情報公開に対する政治的意思の欠如だ」とIPSの取材に応えて述べた。 

「透明性の欠如によって、市民は意思決定プロセスに関与することもできず、無駄で腐敗に関係した不適正な支出が生まれ、政府の各種事業の中でもとりわけ貧困撲滅事業の正当性や効果が低減されている」と指摘する報告書『Open Budgets Transform Lives』について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

|ブルキナファソ|記録的な豊作でも穀物不足

【ワガドゥグーIPS】

ブルキナファソの市場では穀物が不足している。2008~2009年の大豊作が発表されるや否や、近隣諸国の業者がブルキナファソに殺到して買っていったからだと市場関係者はいう。 

十分な降雨と政府からの補助金により、今期の穀物生産は420万トンに達し、71万7,000トンの余剰がでた。それでも価格が下がることはなく、上昇し続けている。いつもは輸入される穀物が、ガーナ、マリ、コートジボワールなどに輸出されているためだと考えられる。

 穀物価格情報を専門とするNGO、グリーンアフリカの1月の報告書によると、市場の穀物不足からアワで14%、ソルガムとトウモロコシで20%の値上がりとなっている。「11月にトウモロコシは1袋7,500CFAフラン(約15ドル)だったが、12月は12,000CFAフラン、1月は1,5000CFAフランだ」とシシリ農業専従者連合(FEPACI)のJ.D.ムーサ会長はいう。 

グリーンアフリカは、大豊作にもかかわらず穀物が不足しているのは、不足地域の生産者と業者による備蓄も原因と考えている。生産者の在庫の多くはまだ市場に出回っていないことから楽観視する専門家もいるが、価格下落を警戒する農家は、やはり豊作だった落花生、ゴマ、豆を当面売って対抗しようとしている。 

生産者に出荷を促す会合に出席したセドゴ農水相は、不信感を抱いて抵抗を示す生産者に補助金を更新するなどして市場に穀物を流通させたいと語った。昨年度は、物価上昇に対処するため3万トンの備蓄穀物を政府が割引価格で売り出すという事態になっていた。穀物部専門家間委員会のS.シセ委員長は、政府が事前に利害関係者と協議していれば、過剰な輸出が防げたのではないかという。 

サヌー貿易起業大臣は「常に意見を聴き、相互理解を重視しているが、今のところ問題解決に至っていない」という。「このまま価格上昇が続けば昨年同様暴動が繰り返される可能性もあるが、それは避けたい」 

ブルキナファソ農業者連合(CPF)のB.ダオ会長は、食糧の自給と生産者の福利を確立するために農業支援は重要だという。同会長は「問題を避けるため、政府は余剰分を買い取って市場に適切な価格で売ることに合意すべきだ」とIPSの取材に応じて語った。 

豊作でも穀物価格が上昇しているブルキナファソについて報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー= IPS Japan 浅霧勝浩 

|世界経済フォーラム|ダボス批判

【ダボスIPS=グスタヴォ・カプデヴィラ】

スイス東部の観光リゾート、ダボスで開催された今年の世界経済フォーラム(WEF)の特徴は、世界経済/金融危機の責任者およびそれを支持してきた体制との決別であった。 

スイス社会党のスザンヌ・ローテネッガー議員は、同国のNGO「ベルン宣言」と「リーンピース・スイス」が組織した反ダボス会議「Public Eye on Davos」(ダボスに対する市民の目)の表彰式でスピーチし、ダボス会議は危機の原因となった政策を推進してきたイデオロギー機関であると批判。「同会議は非公式ネットワークを築く場で、政治家は下座に座り、メディアはリッチでパワフルなグローバル・エリートを称賛してきた。同会議は、破たんしたネオリベラル・ビジネス・モデルの怪しげなロビイング機関である」と述べた。

 Public Eyeの主催者は、WEFメンバーおよび大企業が犯した社会/環境破壊行為を体現したとして、ガーナでの金採掘に疑念が持たれる米国のニューモント鉱産、ドイツに石炭発電所を建設したスイスのBKW FMB社にネガティブ賞を授与。 

ポジティブ賞は、アフリカ系800世帯を強制移動させ石炭採掘を行おうとした多国籍企業の決定を覆したコロンビアの組合リーダー、ジャイロ・クイロスとフレディー・ロザノ、そして彼らの組合シントラカルボンに贈られた。(ベルン宣言とグリーンピースは1月29日、多国籍企業の海外プロジェクトで地元コミュニティーの権利が侵害されることのないよう国際企業責任規則を採択するよう求める書簡をオバマ大統領宛てに送付した。) 

ローテネッガー議員は、ダボス会議は民間会議であるにも拘わらず、スイス政府が800万スイスフラン(700万ドル)の補助を行っていることについても疑問を投げかけた。更に、ダボス会議反対の街頭抗議運動は殆どが禁止され、期間中は言論の自由、集会の自由も認められないと述べた。 

しかし、経済モデルの発案者として成功を収める同会議は財政的にうまく行っており、世界のトップ1,000社、WEFメンバーからの寄付は毎年3,500万ドルを超えると同氏は予測する。スイスのチャリティー基金として活動するWEFは、金融会社の特別援助、会議参加者の料金を含め約8,800億ドルの年間収入があるという。 

ローテネッガー議員は最後に、ポスト資本主義体制およびその実現へ向けた根本的な議論、特に左派、組合、社会活動組織間の議論が必要と主張した。 

ベルン宣言およびグリーンピース・スイスが主催した「Public Eye on Davos」におけるスイス社会党議員の主張を紹介する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

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|世界経済フォーラム|危機を作り、危機後の世界を探る

|シンガポール|金銭教育の恩恵を受ける家庭内労働者

【シンガポールIPS=プリメ・サルミエント】

シンガポール在住のフィリピン、インドネシア、スリランカ出身の家庭内労働者150,000人以上が持つ一番の問題は、この豊かな都市で月に200ドルから300ドルという適正な賃金を受取っても、帰国して生活する十分な資金を貯蓄出来ないことだ。 

家庭内労働者が、虐待的な雇用主の元で働かなければならない事件は国際的に大きく報道されているが、実際はこの問題の方が大きい。

 2001年に国連女性開発基金(UNIFEM)が実施した調査によると、シンガポール在住の出稼ぎ労働者の目的は、国へ帰る資金を貯めることと手に職を付けることだった。 

UNIFEMシンガポール代表のサレーマ・イスマエール氏によると、家庭内労働者は収入のほとんどを祖国の家族に仕送りしてしまい、将来のために蓄える分さえ残さないのだそうだ。一方、支援を受ける家族は、そのお金でビジネスを始めたり土地を購入したりせずに散財してしまうという。 

「家庭内労働者はたくさん稼ぐので、家族を支えなければと罪悪感を抱く」とイスマエール氏は言う。出稼ぎ労働者への金銭教育が重要だ。「金銭が管理できれば、人生も管理できる。」 

2005年、アジア開発銀行(AsDB)が発行した出稼ぎ送金に関する調査でも、金銭教育を出稼ぎ労働者の状況改善手段の1つとしている。 

「出稼ぎ労働者は、自分の時間もなく、自分の一般的な権利や選択肢も(仕送りに関する物を含めて)知らない。教育を受ければ、情報に基づいた社会的、経済的決断が可能だ」とアジア開発銀行は述べている。 

2006年UNIFEMは、家庭内労働者向けの金銭教育を専門で行うシンガポール唯一の組織として創設されたAidhaに、16,000シンガポールドル(約10,000米ドル)の活動開始資金を提供した。 

創設者であり代表を務めるサラ・マブリナック氏は、起業家精神や金銭管理の教育をすれば、労働者が帰国後に生計を立てる助けとなると言う。 

Aidhaは会計、起業家精神、効果的なコミュニケーションスキル、コンピューター操作、時間管理、自尊心の向上などのワークショップを行っている。ボランティアが教える各コースに生徒はわずか25シンガポールドル(16米ドル)で参加出来る。 

マブリナック氏は、経済金融危機で皆が仕事の心配をしている今こそ金銭教育が重要だと考える。家庭内労働者はたいてい一家の稼ぎ手となっているので、金銭管理を学んで家族を危機にさらさない様にしなければならない。 

しかし、ワークショップに参加するより学んだことを実践する方が大事、とマブリナック氏は言う。「行動を変えなければならないので大変だ。預金口座を実際に作って、管理しなければならない。」 

Aidhaは、友人と作る金銭教育のクラブ、「財務羅針盤投資クラブ」に入ることを積極的に勧めている。メンバーは週に1度人生設計の指導員と会い、貯蓄目標と優先順位に関して話合い、目標達成のための毎月の貯金額を計算し、目標実現に必要な予算を貯める。 

出稼ぎ労働者が抱える問題を教育で改善するシンガポールでの取組みについて報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリ=IPS Japan 浅霧勝浩 

|世界経済フォーラム|危機を作り、危機後の世界を探る

【ジュネーブIPS=グスタヴォ・カプデヴィラ】

水曜日から世界経済フォーラム(ダボス会議)が開催される。多国籍企業の利益を考えるビジネス界のエリート、シンクタンク、政府首脳、政治家など、2,500人がスイスのリゾート地に集まる。 

報道機関は自由市場のイデオロギーに組みするもののみに、概ね限定されており、いくつかのセッションは、非公開で行われる。39回目となった今回の会議のタイトルは「危機後の世界の形成」である。

 創始者のクラウス・シュワブ氏は、ダボス会議がイデオロギーを有しているという批判を否定する。この10年間で極端な私欲が先行したことは修正されるべきだが、「資本主義改革」は果たされるべきてあると述べた。 

今週ジュネーブで国連人権委員会の諮問委員会に出席するジャン・シグレール博士は、同会議を批判し、「皮肉と傲慢と盲目そのものである。」と、IPS記者のインタビューで語った。シグレール博士は出席者の贅沢も批判する。政府に640億スイスフラン(5,630万ドル)の損失補填援助を受けたUBS(スイス銀行)の代表は、豪華ホテルに滞在している。 

20年前に同会議は規制緩和、市場の自由化、民営化を高らかにうたい、参加者は利潤の絶頂を謳歌していた。「ダボスに来ている銀行家や事業家の半分は、とっくに監獄に送られてしかるべきだ。彼らは世界を占有するための、イデオロギーの基礎を作ったのだ。」とシグレール博士は述べた。同博士によると、会議で元世銀頭取のウォルフェンソン氏は、「国家なき世界政府が究極の目標である。」と述べ、喝采を浴びた。 

新自由主義に基づく経済を先導し、今回の危機の原因を作ってきた人々が集うとの批判もあるダボス会議から報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

|開発|食糧サミット-懸念は示すも、具体案なし

【マドリードIPS=チトー・ドラゴ】

1月26、27両日に開催された国連とスペイン政府主催の『食糧安全保障に関するハイレベル会合(食料サミット)』には、100カ国の政府、市民団体、労組、民間企業、学界、国際機関、援助機関などが参加した。世界で飢餓に苦しむのは10億人。とりわけ南の開発途上国に集中している。会議ではこの問題について議論を深め、調整メカニズムを作り上げるために昨年6月のローマにおけるハイレベル会合以来の進展を振り返った。 

会議は具体策を打ち出すことができず、宣言の中で、各国政府と国際機関に約束した援助の履行を要請するにとどまった。

 NGO関係者によれば、公正な農業貿易を促進するために競争を阻害するような補助金の廃絶を訴えたことは前向きな側面だ。国連食料農業機関(FAO)のディウフ事務局長は「手を打たなければ飢餓の問題はさらに悪化する」と警告、今年度中に国家首脳級の食料サミットを開催し、専門家会議で科学的検証と国際的パートナーシップを促進する一方、既存の組織を改革して行動計画の効率化を促すことを提言している。 

IPSの取材に応じたスペインのモラティノス外相は「解決策は明白」として、2012年までに全ての先進工業国がGDPの0.7パーセントを援助にまわすことを求めた。スペイン現政権はODAを10億ユーロ増額することを表明、他の15カ国も来る5年間に55億ユーロの支援を約束。EUは13億ユーロの支援を約束している。 

世界で6,500万人が加盟する世界労働組合連名(WFTU)は、NATOの予算を10%削減すれば1,000億ドルのODA増額が可能と指摘。国境なき医師団、Vía Campesina Europaは飢餓対策の名目で種子や肥料の売込みが見られると指摘。食料主権の尊重を訴えた。 

国際農業開発基金(IFAD)のレナート・ボーゲ総裁はIPSの取材に応じ、世界の4億5,000の中小農家を支援すれば飢餓の改善に役立つと述べた。 

カリタス、国境なき技師団、La Suma de Todos、ProsaludのNGO4団体は『The Right to Food: Urgent(緊急の食料権利)』キャンペーンを立ち上げた。スペインのサパテロ首相が援助の増額合意を得たことを讃え、引き続き指導力を発揮するよう要望している。 

スペインで開催された食料サミットについて報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan 浅霧勝浩 

|気候変動|オバマ新政権、地球温暖化政策に本格始動

【ワシントンINPS=ジム・ローブ】

クリントン・ブッシュ両政権で成し得なかった問題にいよいよバラク・オバマ新大統領が挑む。温暖化対策防止に向けた京都議定書をめぐって、クリントン前政権では調印にまでは漕ぎつけたものの上院で否決され、一方のブッシュ前大統領は同議定書が米経済を損なうとして支持しない姿勢を固持してきた。

しかし、前政権の路線修正に踏み出すためオバマ新大統領は26日、気候変動政策について2つの具体策を打ち出した。

 まず、連邦環境保護局(EPA)に対し、カリフォルニアと他の13州が採用を求めている新たな自動車排ガス規制の認可に向けて検討を行うよう指示した。元々、この排ガス規制は連邦基準よりも厳しいものであったため、ブッシュ前政権は差し止めを決定。しかし、先週シュワルツェネッガー州知事はオバマ大統領に認可の再検討を求め、同大統領もカリフォルニア州の温暖化政策への積極的姿勢を評価しこれを認めた。 

次に、オバマ大統領は運輸省に対しても既存の燃料基準を2011年度から40%にまで徐々に引き上げるよう規制強化を指示。「全ての自動車がこれに従えば、1日で200万バレル以上の石油を節約できる。これはペルシャ湾から米国への原油の輸入量にほぼ相当する」と語った。 

一方、オバマ大統領から地球温暖化防止問題の米政府特使として任命を受けたトッド・スターン氏は「ようやく米国が気候変動問題への取り組みで国際的な交渉の場に堂々と立てる時が来た。我々は前向きで活発な議論を行う必要がある」と述べた。同氏はクリントン元大統領の下で京都議定書策定に携わった人物である。 

環境保護団体『グリーンピース』の地球温暖化運動に取り組むSteven Beil代表はオバマ新政権の新たな環境・温暖化政策に期待を示した。「アメリカは8年もの間ブッシュ前政権の反対を受け、温暖化対策に踏み切れなかった。しかし今後は、他国から『環境問題に消極的な米国』と批判・非難されることもないだろう」。オバマ米新政権が乗り出したエネルギー・環境政策について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー= IPS Japan 浅霧勝浩

|カリブ海地域|ハイテク・ネットワーク設立で武器密輸を監視

【ポート・オブ・スペインIPS=ピーター・リチャーズ】

 世界では約5億の小型武器が使用されており、それによって年間約50万人が殺害されている。カリブ諸国では、今年に入り既に100人の犠牲者が出ている。 

トリニダードに本部を置くImplementation Agency for Crime and Security(IMPACS:犯罪治安実行機関)のリン・アン・ウィリアムズ事務局長は、ある国で犯罪に使用された武器が別の国で再び使用されることも珍しくないと言う。 

ジャマイカ、トリニダード・トバゴ両政府は、拳銃の密貿易と麻薬売買の関係を把握しており、コロンビア、ハイチ、ホンジュラス、ベネズエラといった国々から高性能小型武器が送りこまれているとしている。

 トリニダード・トバゴの国家安全保障大臣でカリブ共同体(Caricom)国家安全保障・法施行担当大臣協議会の議長を務めるマーチン・ジョセフ氏は、「これらの武器は、密輸品の保護、ユーザー・競争相手に対する脅迫、縄張り確保、ギャング・メンバーのリクルートなどに使用されている。拳銃関連の暴力は、カリブ諸国にとって保健システムの負担になるだけでなく社会的/経済的問題を生じさせている」と語る。 

最近国連が発表した中央アメリカおよびカリブ諸国における小型武器の子ども・青少年に与える影響についての報告書によれば、武器密輸業者は年間数百万ドルの外貨を稼いでいるという。また、ラテンアメリカおよびカリブ諸国の殺人件数は世界全体の42パーセントを占めるという。 

ジャマイカ警察の統計では、2005年1月から2008年5月までに5,068人が殺されており、その78パーセントが拳銃による殺人だ。怪我人は2,000人を超える。トリニダードでは、昨年の死亡者は544人。その54.2パーセント、295人はギャング抗争による射殺という。 

カリブ諸国政府は3年前にIMPACS設立で合意。現在、メンバー国の小型武器密輸およびこれに関連した犯罪の取り締まりを強化するため、地域統合弾道情報ネットワーク(RIBIN)開発を行っている。ウィリアムズ事務局長は、これにより米国、カナダなどの国々との協力拡大も可能になると語っている。 

実際米政府は、既にジャマイカに対して「高い犯罪率はビジネスにも影響し、投資にも悪い影響を与える」と警告している。米国国際開発庁のジャマイカ担当カレン・ヒリアード部長は、「ジャマイカの中小企業は、年間収入の平均17パーセントをセキュリティー・コストに費やしており、イラクにおける23パーセントに匹敵する」と語っている。

ジャマイカおよびトリニダード・トバゴにおける小型武器密輸とそれによる殺人事件の増加について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPSJapan 浅霧勝浩

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