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イスラエルとシリアが演じる外交劇

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【カイロIPS=アダム・モロー、カーリド・ムッサ・アル・オムラニ】

8年間の中断を経て、イスラエルとシリアは、トルコを介して、ゴラン高原問題の交渉を再開した。2000年に米国の仲介による交渉が決裂したのは、シリアがイスラエルの全面撤退を求めているのに対し、イスラエルがガリラヤ湖の領有を譲らず、さらには、反イスラエル組織のシリア追放や、米国のシリア駐留を主張したためである。

シリアはゴラン高原を占領された1967年の第3次中東戦争以来、中東地域において対イスラエルの急先鋒となってきた。今回の交渉にあたって、イスラエル側が狙いとしているのは、シリアのイランとの関係、或いはハマス、ヒズボラそれぞれとの結びつきを、解消することである。

 だがそれらの結びつきは、近来米国とイスラエルが押し進めてきた強硬な中東政策によって、却って強まっている。米国は2005年のレバノン・ハリリ首相暗殺事件以来、シリアの関与を示す確たる証拠はないものの、シリアへの圧力を国際社会に呼びかけてきた。イランは核兵器開発に関して、米国から圧力をかけられているし、イスラエルと戦闘のあったハマスとヒズボラは、米国が「テロリスト組織」と呼ぶところとなっている。

アルカラマ紙のハリム・カンディル氏は、シリアはイスラエルとの交渉の窓を開けることによって、「米国政府がシリアを孤立化させようとしているのに対抗し、国際社会に対して、和平に積極的だという姿勢をアピールするつもりだ。できれば米国に、シリア政府に反発する勢力への援助を、緩めてもらいたいと思っている」と分析する。

さらにカンディル氏は、「イスラエルはシリア一国なら恐れるものでなく、イラン、ヒズボラ、ハマスとの同盟があるから、深刻に警戒しているのだ。逆にシリアは、このような戦略的効力を発揮する同盟を、容易に放棄しようとはしない」と述べた。

カイロ大学のサラアマ教授(国際法)は、「シリアはヒズボラやハマスと手を切っても、イランとの緊密な関係は維持するだろう」と述べている。先月、シリアとイランの防衛大臣は、防衛協定の改定と軍事協力について会談したところである。

「だが、トルコの積極的な仲介、米国政府の協力、イスラエル、シリア双方の譲歩によって、交渉が実を結ぶこともあり得る」と同教授は見ている。また「常に地域のリーダーであったエジプトでなく、トルコが仲介役に選ばれたことは、驚きだった。エジプトが外交上の重みを失ってきているのに対し、トルコは政治的にも経済的にもプレゼンスを増している」と述べた。

一筋縄ではいかないイスラエルとシリアの交渉だが、対立深まる中東地域で、問題解決のきっかけとなればという期待がかかる。トルコを仲介として行われているイスラエル、シリア間の外交交渉について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan

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イラン人権団体、少年死刑囚に関する詳細情報を発表

【国連IPS=オミド・メマリアン】

イランの人権擁護団体International Campaign for Human Rights in Iranは6月18日、同国の少年死刑囚に関する詳細リストを初めて公表した。同リストは、著名なイラン人人権活動家エマド・バギ氏の広範な調査の結果で、「未成年者の死刑はイラン当局が主張するイスラム法に基づくものではない」と主張する同氏の著書「Right to Life II」にも盛り込まれている。(同著書はイランの議会、司法、NGO等に配布されたが、検閲により出版は禁止された。) 

同リストによると、今年に入ってから既に2人が処刑され、少なくとも114人が極刑を待っているという。その中には、犯行当時12歳だった者もいる。International Campaignのハディ・ガエミ氏は、世界が死刑廃止に向かう中で、イランの未成年処刑増加は恥ずべきことと語る。 

ヒューマンライツ・ウォッチの報告書によると、2004年以降未成年者の処刑を行っているのはイラン、スーダン、中国、パキスタンのみで、スーダンは2005年に2人、中国は2004年に1人、パキスタンは2006年に1人を処刑したという。これに対し、イランは2004年に少なくとも3人、2005年に8人、2006年に4人を処刑している。総数でいえば中国の処刑人数はイランを上回るが、比率ではイランが世界で最も高い。同国では、殺人、強姦、強盗、誘拐、麻薬密輸はすべて極刑となる。 

国連子ども権利条約および国際自由権規約は、18歳以下の犯行に死刑を課すことを禁じており、イランは両条約を批准している。 

死刑判決を受けた子供達の罪状は殺人である。しかし、バギ氏の調査が示すように多くの判決は厳しい尋問/拷問の後の疑わしい自白に基づいたものの様だ。裁判所は、被告が提出した正当防衛の証拠を取り上げることはないと、同報告書は述べている。 

ヒューマンライツ・ウォッチ中東・北アフリカのクラリサ・ベンコモ氏は、「我々が調べたケースでは、もし子供達に十分な法的支援と適正な裁判が行われていれば、多くは無実となっていただろう」と語っている。9月の国連総会でも取り上げる予定のイラン未成年処刑について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

|ポーランド|前政権による情報機関濫用を正す

【プラハIPS=ゾルタン・ドゥジジン】

ポーランドでは右派「法と正義(PiS)」のヤロスワフ・カチンスキ前政権によるイデオロギーおよび政治的目的のための情報機関の濫用によって、諜報活動が完全な混乱に陥っている。 

昨年10月の総選挙で政権を奪ったリベラル「市民プラットフォーム」のドナルド・トゥスク首相は、情報機関の徹底改革を進める意向であり、検察官および調査委員会が各種情報機関における権力濫用の調査を進めている。 

情報機関は、党利党略への対応、文書偽造、機密情報の漏洩、盗聴装置の濫用、腐敗汚職への誘惑、内規違反などを非難されている。

 こうした中、前政権が政権中の活動の証拠を隠そうとしているとの容疑が高まっている。とりわけ注目を集めている公安庁(ABW)の活動の悲劇的な結果は、謎に包まれたままである。 

PiSは、情報機関からの共産主義後およびロシアの影響の排除という前政権の功績を現政権が台無しにしていると非難している。前政権は、共産党時代のロシア情報機関との関係、そしてポーランドの多くの高官がモスクワで訓練を受けたという事実が国家安全保障上の脅威となっているとの考えから、旧軍情報部(WSI)の解体を図ったのである。 

だが、当時の野党市民プラットフォームも支持したこの動きは今、アフガニスタンおよびイラクにおけるポーランド部隊と高官の安全を著しく阻害していると考えられている。昨年10月には、ポーランドの駐イラク大使の車列が爆弾攻撃にあった。多くの人はこの事件が、間接的には現地におけるポーランドの諜報活動が突然の欠如したことによる結果であると解釈している。 

ポーランド前政権による情報組織再編がもたらしている影響について報告する。

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

|ノルウェー|平和協議の一方で武器を輸出

【オスロIPS=タルジェイ・キッド・オルセン】

平和調停国ノルウェーは、世界第7位の武器/弾薬輸出国である。

アムネスティ・インターナショナル、オックスファムおよび小型武器に関する国際ネットワーク(International Action Network on Small Arms:IANSA)が主宰する武器規制キャンペーンによると、現在世界には約6億3,900万の小型武器が存在するという。そして、これらの武器が武器商人などの手に渡って戦争や犯罪を引き起こし、発展の妨げとなっているのだ。

ノルウェー中央統計局(SSB)によれば、2007年の武器輸出収入は前年比18パーセント増の4億2,500万ドルで、世界全体の3.5パーセントとなる。ノルウェーの外務省規定では、紛争地帯への武器輸出は認められていないが、NGOノルウェー・チャーチ・エイド(NCA)によれば、1990年代にクルド反政府勢力と武装闘争を行っていたトルコなどへの輸出が行われてきたという。

トルコ問題を重要視したノルウェーは、その後外務省への武器輸出年次報告を義務化し議会の監視、透明性の強化を図った。また、2007年には、武器輸出の決定に民主主義/人権の原則を考慮することを宣言した。

しかし、これで問題がなくなった訳ではない。最大の課題は、武器輸入国の再販防止である。たとえば、ノルウェーから大量の武器を輸入しているチェコは、スーダン、アンゴラ、エジプト、サウジアラビアなどへの武器輸出を行っている。ノルウェーは、北欧諸国およびNATO同盟国に対しては、再販しないとの誓約を義務化していないのだ。ノルウェーが和平努力を行っている間も、米国を始めとするNATO加盟国はコロンビア、イスラエル、ネパール、フィリピン、スリランカといった紛争国への武器輸出を行っている。

スカンジナビアの武器/弾薬は主にNammo社を通じ行われている。Nammoはノルウェーに本社を、スウェーデン、フィンランドに姉妹会社を置き、ポーランド、マレーシア、米国を含む数社と武器のライセンス製造を行っている。Nammoは、ノルウェーの通商産業省とフィンランドの国防企業Patriaとの共同所有であるが、ノルウェー通商産業省は、Nammoの道義的責任について、外務省のガイドラインに従うものと期待すると述べるに止まっている。

ノルウェーの武器輸出について報告する。(原文へ

INPS Japan

アフリカ開発支援における日本の重要な役割

【IPSコラム=緒方貞子】

今アフリカは、開発支援の主要なフロンティアとなっている。最近のアフリカ大陸の経済的、民主的、社会的な前進を確固たるものとし、さらに強化していくことには、大きなチャンスとともに課題もある。

今年日本はアフリカの検討課題を策定する上で重要な意味を持つ2つのイベントを主催する。5月28~30日に開催されるアフリカ開発会議(TICAD)と、その後7月に行われアフリカ大陸の問題が注目されるG8サミットである。

最近まで、日本の多くの領域にとってアフリカは常に遠い問題だと思われていたが、TICADプロセスにより、アフリカ大陸が日本政府の外交政策の主流にしっかりと組み込まれた。簡単にいえば、アフリカは急速に日本にとって重要性をもつ存在となっている。

Sadako Ogata

 
5月のTICAD会議は、アフリカに関する一連の会議の中で4回目のものであり、これらの会議はアフリカ大陸への国際的な対応と措置の立案を支援してきた。第1回TICAD会議は1993年に開催され、もっぱら経済問題に集中した。その後は、紛争防止、平和の構築、住民と地域社会のための「人間の安全保障」、さらに最近では気候変動や環境にも取り組んでいる。

2000年に日本で開催された沖縄G8サミットの際に、アフリカの4カ国が初めて招待され、ようやくアフリカ自らがTICADプロセスに直接かかわることになった。対照的に、今回のTICAD会議にはアフリカから40人の国家および政府の首脳が出席する予定となっている。

5月の会議は進展状況を見直すとともに、今後の課題に取り掛かる機会となる。経済的には、アフリカは近年、5%という堅調な年間成長率を享受しており、2008年の主要目標のひとつはこの発展を加速することになる。その一環として、農業および工業の拡大を促進する、全国的、地域的、および大陸間を結ぶ道路網など、大規模なインフラ整備プロジェクト支援が検討されるだろう。

一方、私が理事長を務める独立行政法人国際協力機構(JICA)は、開発支援には十分に統合された取り組みが不可欠だと考えている。したがって、経済的拡大を支援しながらも、草の根の活動、「人間の安全保障」という概念にもさらに大きな関心を払っており、生活に直接的にかかわる医療や教育などの分野で地域社会と個人がより大きな役割を果たすべきだということを重視している。

日本国内の発展が、アフリカの開発支援に影響するのはもちろんである。JICA独自のアフリカ大陸向けの事業予算は、2008年度に15%増額し、およそ2億6,000万ドルとなった。これは心強いが、政府開発援助(ODA)が同時期に減少しているのが気になる。

日本は世界第2位の経済大国であり続けながらも、政府は国内で財政上の大きな制約に直面しており、この困難な環境の中で私たちは開発支援の減少傾向を食い止めていかなければならない。2007年のODAは76億9,000万ドルだった。

この予算を増やすことは難しいだろうが、増やしてほしいというにとどまらず、増やすべきだと主張する。

日本のODA制度全体の複数年点検の一環として、JICAと国際協力銀行(JBIC)の長期低利貸付部門が年内に合併する。この合併はアフリカにとって朗報であり、おそらくまず、経済基盤を拡大するために長期低利貸付を求めるアフリカ諸国が、そうした貸付をより容易に迅速に得られるようになるという効果を上げると思われる。

アフリカ諸国はココアやコーヒーの栽培だけにとどまらず、科学、情報技術の専門知識、工業に進出し、発展させていきたいと考えている。現代社会では国が農業だけに頼っていては生活水準を向上させられず、新たな収益源となる商品も生産していかなければならない。

TICADの代表者たちはふたつの比較的最近の重大局面についても検証する予定である。

ここ数カ月、一連の要因による世界規模の食糧価格高騰が、政治不安、栄養不良の増加、貧困を引き起こしている。コートジボワール、カメルーン、エジプト、モーリタニア、モザンビークおよびその他のアフリカ諸国では、暴動や抗議運動が起きている。

数万人のアフリカの人々がすでに十分な食料を得られていない状況であり、短期的にはアフリカの苦しみは続くだろう。食糧価格を下げるための一連の緊急支援機構が必要である。長期的には、たとえば10年を考えると、生産方法の改善と民間への投資により、アフリカは農業において莫大な利益を上げることも可能である。たとえばJICAは現在、ネリカと呼ばれる新しい品種の米の開発に関与していて、ネリカ米は特にアフリカ大陸に適したものであり、収穫量を大幅に高めると思われる。

気候変動については、おそらくアフリカが直面している危機の中でもっとも予想のつかないものである。

開発の専門家は長い間、教育、健康、紛争後の復興に携わってきたが、地球温暖化、海水面の上昇、その他の関連する現象の長期的影響は、まったく新たな課題となっている。

アフリカは大きく前進し始めている。世界の他の国々に追い付くための「時間との競走」と表現されたレースで、アフリカはその差を縮め始めたものの、すべきことはまだ山積している。2008年に実現しつつある進展から、アフリカと日本の双方が恩恵を得られることを期待する。相互依存の時代である今日、日本を含め、どんな国も一国だけで繁栄はできない。(原文へ

翻訳=IPS Japan
 

|ウガンダ|色褪せる平和への願い、和平交渉決裂

【カンパラIPS=ジョシュア・キャリンパ

ウガンダ北部出身のAlfred Bogominは10歳の頃、内戦を避けるためPaicho村から避難した。難民キャンプで20年間過ごしたBogominは先月、生まれ故郷の村に戻った。しかし、このままPaicho村に残るかどうかについては決まっていない。Bogominは「和平協定が調印されれば、父の亡骸をきちんと埋葬することができるのに」と、悔しさを滲ませた。 

2006年に始まったウガンダ政府と LRA(神の抵抗軍)との和平交渉は、進度は遅いものの紛争終結に向けて大きな前進になったと見られている。

The return of IDPs like this Ugandan girl to their homes is in jeopardy as a peace agreement remains unsigned Credit: Manoocher Deghati/IRIN
The return of IDPs like this Ugandan girl to their homes is in jeopardy as a peace agreement remains unsigned Credit: Manoocher Deghati/IRIN

 しかし、その後の2年にわたる交渉を経て今年4月、LRA指導者ジョセフ・コニー氏は最終の和平協定の調印を拒否した。また、コニー氏は人道に対する罪でICC(国際刑事裁判所)が出した告訴を取り下げるか否かについて明らかにするよう求めている。 

ウガンダのヨウェリ・ムセベニ大統領は6日、演説の中で和平交渉が決裂したと述べた。政府軍は『プランB』を進めようとしていることを発表した。同計画では、コンゴ民主共和国(DRC)と中央アフリカ共和国との国境付近で政府軍が近隣国の軍と協力し、LRAを鎮圧するとしている。 

政府は今後の和平協議のためにもICCの告訴をうやむやにしたくはないようだが、和平調印がまたもや延期されたことでウガンダ北部の国民の不安は益々大きくなっている。Bogominは「なぜ政府はLRAとの交渉を続けないのか。戦争が再開すれば、再び我々は難民キャンプに戻らねばならないじゃないか」と訴えた。 

行き詰まるウガンダ政府と反政府組織との和平協議について伝える。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 


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|ウガンダ|性的暴力に怯える難民キャンプの女性達

|エジプト|イスラエルを巡り異なる見解、国民と政府

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【カイロIPS=アダム・モロー、カレッド・ムーサ・アルオムラニ】

「イスラエルのこととなると、カイロを含め大半のアラブ諸国政府の立場は、国民世論と真っ向から対立する。60年を経て、アラブ人民は依然としてイスラエルとその政策に反対する。」イスラエル建国60周年に際し、著名な歴史家でシオニズムに関する百科事典の著者Abdel Wahab al-Masiri氏は述べた。

エジプト最大の野党勢力ムスリム同胞団のEssam al-Arian議員は「イスラエルはパレスチナの地の犯罪的な占領によって建国され、それは今でも変わらない。1948年の建国はパレスチナの元来の住民の民族浄化でもある」と述べている。

1979年エジプトはイスラエルと和平条約を締結、シナイ半島の返還も実現した。それから30年、両国は正式な外交関係を維持しているものの、パレスチナ人民に対するイスラエルの政策に怒りを覚えるエジプトの世論はその後も変わらない。

 
5月11日には、ムバラク大統領がイスラエルのペレス首相に建国記念に祝意を示す電報を送ったことが報じられたが、al-Masiri氏は「ムバラクのペレスに対する祝い状は、アラブ諸国政府のイスラエルに対する従属を露呈するもの」と断じた。

また5月11日にカイロのエジプト・ジャーナリスト・シンジケートで開かれた会議では、大統領の祝意に対する批判とともに、イスラエル建国は「近代史における人類に対する最大の犯罪」と評し、ユダヤ人国家建設の柱であるシオニズム非難が行われた。

カイロでは5月15日、パレスチナとレバノンの対イスラエル抵抗グループと連帯して数多くの抗議デモが行われた。あらゆる方面の反政府勢力からデモに参加した人々はイスラエルの国旗を焼き、イスラエル大使のカイロからの追放を要求した。但しデモの規模は、政治デモに対する政府による武力鎮圧をおそれて、限定されたものとなった。

しかしその一方でエジプト政府は、メディアによる批判を懸念して、テルアビブに本拠を置くエジプト・イスラエル友好協会の代表団のエジプト訪問を土壇場でキャンセルしたことが報道されている。

イスラエルを巡る政府と国民世論の対立について報告する。(原文へ)

翻訳/サマリー=IPS Japan

「世界共通の人権文化として定着させることが重要」(創価学会インタナショナル池田大作会長インタビュー)

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【国連IPS=タリフ・ディーン

Photo: Thalif Deen
Photo: Thalif Deen

世界人権宣言が国連で採択されて60周年を迎える今年、東京に本拠を置く創価学会インタナショナル(SGI)が、「人権教育に関する会議」の開催を呼びかけている。 

SGIは、世界190カ国地域、1200万人以上の会員を擁する非政府組織で、提案の会議は市民社会を中心とすべきと訴える。 

SGIの池田大作会長は、従来人権問題は主に政府によって取り組まれてきたし、またそうあるべきだと認めながらも、「人権の尊重を政府レベルの議論にとどめるだけではいけない」と述べた。 

「人々の現実生活に深く根差した世界共通の『人権文化』として定着させることが重要」と、世界平和を希求する仏法者で著作家でもある池田会長は語った。 

会議開催に対する日本の政治的支援はあるかとの質問に対し、会長は次のように答えた。「この課題に関しては、日本やその他の国の政治的支援とともに、より一層深く、市民社会の役割に期待したいところです」 

IPS国連総局長のタリフ・ディーンのインタビューに応えた池田会長は「この会議は、人権理事会で人権教育の問題を取り上げているいくつかの政府からの関心を得ています。もちろんそれは極めて歓迎すべきですが、あくまで、市民社会のイニシアチブに基づく会議という本質を損なわないようにすべきでしょう」と述べた。

 1月に発表した2008年度の「平和提言」では、池田会長は、核軍縮、非武装、貧困・飢餓の撲滅、環境保護を含むグローバルな諸問題に対し具体的な国際的取り組みも呼びかけている。インタビューの抜粋を紹介する。 

IPS:冷戦が20年前に終結したにもかかわらず、世界は依然として、内戦や国家間の紛争の増加に直面しています。なぜ国際社会、特に国連は、恒久平和を実現できずにいるのでしょうか? 

池田:確かに、国連にはさまざまな限界があり、批判も多い。しかし国連を除いて、大多数の国が参加してグローバルな諸問題について、恒常的に話し合う場は、ほかにありません。ゆえに平和な世界の構築に向けて、私は常に「国連」を基軸として提言を続けてきました。人類が20世紀に2度も味わった世界大戦の悲劇を、再び繰り返してはならないとの思いからです。 

国連は、難民への支援や、紛争の平和的解決や平和構築のための活動など、世界のセーフティーネットの形成のために、地道な努力を続けてきました。今、こうした機能が失われてしまえば、世界がさらに悲惨な状況になることは、誰の目にも明らかです。 

かつて、国連のブトロス・ブトロス・ガリ元事務総長と会談した折、「多くの期待」が寄せられる一方で、「最小の支援」しか寄せられていない国連の現状について、語り合ったことがあります。つまり、国連そのものが本質的に無力なのではなく、「国連を中心に問題を解決していこうとする国際社会の意思の弱さ」が、そのまま国連に影響を与えてきたのではないでしょうか。 

ゆえに私は、この不安的な状況を打開するために、世界各国のリーダーと対話を重ね、国連への支援を呼びかけてきました。そして、平和提言を通して、国連のこれまでの成果を紹介するとともに、国連を軸に地球的問題群に取り組むための諸提案を、毎年、発表してきたのです。 

その上で私どもSGIは、国連諸機関や他のNGOと協力しながら、軍縮や環境などの諸問題に対する意識を喚起し、地球市民意識を啓発するための活動を広げてきました。それらはいずれも、「国連が成功するか否か」といった発想ではなく、国連を有効に機能させるために「我々は何を為すべきか」「何が出来るか」という問題意識と責任感から出発したものでした。 

ガンジーの言葉にも「善いことは、カタツムリの速度で進む」とあります。国連の無力を嘆いたり、世界の厳しい現実に冷笑主義に陥っても、何も生まれてきません。肝心なのは、国連の活動を粘り強く支えていく「民衆の連帯」を着実に広げる努力ではないでしょうか。国連を通し、様々な国家と国民が協力し行動するという経験を重ね、智慧を蓄積していくことが、極めて重要です。こうしたことが、遠い百年先、二百年先の人類への最大の遺産となるのではないかと、私は確信しております。 

IPS:今日世界中で高まっている過激主義、非寛容に終止符を打つために、民族間の対話はどれほど必要不可欠であると考えますか? 

池田:いかなる過激主義や非寛容の問題も、軍事力などのハード・パワーだけで抑え込み、解決できるものではありません。もちろん「話せばわかる」というほど、現実の問題は単純なものではありません。対話が不可能とさえ思える相手や、過去の経緯から、対話が成り立ち難い状況が存在することも、事実です。 

しかし、いかなる「大義」を掲げようとも、暴力や力による解決は、次の世代に憎しみを再生産し、紛争を恒常化させるだけです。この”憎しみの連鎖””復讐の連鎖”が温存される限り、暴力を生み出す根を断ち切ることは永遠にできません。そうした”負の連鎖”を断ちゆくために、困難であればあるほど、粘り強い対話、勇気ある対話こそが、民族間の過激主義、非寛容を乗り越えていく道となるのではないでしょうか。 

IPS:平和提言で示された目標が、次の10年間、または今の世代で実現されることについて、どれほどの確信をお持ちでしょうか? 

池田:「地球上から悲惨の二字を消し去りたい」――これは、50年前に亡くなった私の師である戸田城聖・創価学会第2代会長の言葉です。私が毎年の提言を通し、世界が直面する問題についてさまざま模索を重ねてきた根底には、この師の悲願がありました。紛争や内戦、貧困や飢餓、環境破壊をはじめ、今なお世界には、多くの脅威にさらされ、現実に苦しんでいる人々が何億人もいます。いずれの提案も、そうした人々が「悲惨」を乗り越え、「生きる力」を取り戻して欲しい、との切なる願いから発したものなのです。 

私は政治家でもないし、専門家でもありません。提案も完璧とはいえない面もあるでしょう。しかし私の提案が、議論を深める何らかの材料となり、解決の糸口を探すための一つの端緒になればとの思いで、民間人の立場から発信を続けてきたのです。そうした中で、「持続可能な開発のための教育の10年」の国連での制定など、いくつかの提案は、関係機関や他のNGO(非政府組織)と力を合わせて実現をみました。 

私は、青年の可能性に対して、深い信頼を寄せています。若い人々は、本当にその気になれば、何でも出来る。変革できないものはない。こうした青年の心に”時代変革への種子”を蒔く思いで、これからも力の限り、思索と行動を続けていきたいと決意しています。(原文へ)(英文版) 

翻訳=INPS Japan 

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青年の力で国連の改革を(英文)(PDF版

|パキスタン|タリバンに対処できないパキスタン新政府

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【イスラマバードIPS=ムダシール・リズヴィ】

アラー・フサイン・メフスードさんは、パキスタンの新政権がタリバンと交渉してアフガン国境付近での彼らの戦闘行為をやめさせる能力があるとは考えていない。バイトゥラ・メフスード司令官が率いる「パキスタン・タリバン運動」(TTP)は、パキスタン軍と各地で激しい戦闘を繰り広げてきた。

「軍隊は山に隠れた地元の兵士をターゲットにして、F-7戦闘機とヘリコプターを使って私たちの村にロケットを撃ち込んできた」とフサインさんは語る。彼は南ワジリスタン州の出身だ。

 また、ウズベク人の流入も増しているという。フサインさんは、ウズベク人は情け容赦のない人びとで、彼のおじもウズベク人を助けることを拒んで殺されてしまった。

パキスタン新政権はすべての武装勢力と交渉する姿勢を見せ、タリバンも3月末には一時停戦を発表していた。しかし、政府軍がすべての部族地域から撤退するのが先だとしてタリバンはすでに停戦合意を破棄している。

合意が破棄された2日後、ワジリスタンに接した町バンヌにおいて自爆テロが起こった。いつでもどこでも治安を悪化させることができるとのタリバンの意図を示したものと受け取られている。

2007年の間に、武装勢力による攻撃によって750人以上が亡くなった。中にはベナジール・ブット元首相も含まれている。

タリバン勢力の衰えないパキスタン情勢について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan

|ドイツ|遺伝子組み換え作物は解決法でなく問題

【ボンIPS=ジュリオ・ゴドイ】

先頃ボンで開催された国連の会議で、バイオテクノロジー利用の安全性について議論が交わされた。147ヶ国から集まった3000人以上の科学者、農業従事者、環境運動家たちは、遺伝子組み換え作物は、食物生産に貢献するものでなくリスクであると、従来の警告を繰り返した。 
フランスでは有機栽培をする農家が、遺伝子組み換え作物による汚染を訴えている。例えばブルトンの有機農業協同組合は4月の定期検査で、有機トウモロコシ畑が、35キロ先に生育する遺伝子組み換えトウモロコシから、影響を受けていることを明らかにした。この有機農家はフランス政府を告訴している。 

プロバンスの有機ワイン農家はIPS記者の取材に答えて、「どんなに努力してリスクを排除しようとしても、遺伝子組み換え作物の粒子は、空気中または水に混ざって、畑に入り込む。」と語った。ポワトゥー=シャラント地域圏の副知事セルジュ・モラン氏は、「国は法律を改正して、戸外での遺伝子組み換え作物生産を禁止するなど、全面的な手続の見直しをすべきである。そして汚染の被害にあった有機農家に補償を与えるべきだ。」と主張する。

 フランスの著名な料理人とワイン生産者は、議会に向け公開書簡を送り、「食物と健康への影響を考えるに、遺伝子組み換え作物は食卓から一掃されるべきである。」と訴えた。このような動きは、欧州の他の国にも広がっている。 

科学者や環境運動家たちは、遺伝子組み換え作物はその有害性をおいても、食糧不足を解消するものではないと指摘する。「遺伝子組み換え技術の多くは病害虫に対抗するもので、増産を目的としていない。実際、遺伝子組み換えでない作物の方が生産性が高い。」とハノーバー大学の生物学者ハンス・ヨルグ・ヤコブセン氏はIPS記者に語った。 

グリーンピースのアルノード・アポテケル氏は、取材に答えて、「遺伝子組み換え作物が飢餓問題解決に役立つという話は、生化学企業のプロパガンダだ。」と述べた。巨大化学企業側でもBASFのハンス・カスト氏らは、遺伝子組み換え作物は、「飢餓問題を解決しない。」と認めている。 

アフリカ大陸では70%が農業に従事するが食糧不足が続いている。ドイツのNGO、Welthungerhilfeのホアキム・プラウス氏は、「アフリカが必要としているのは遺伝子組み換え作物でなく、よりよい灌漑システムである。」と指摘する。 

ボンの会議で、生化学企業の連盟から、「昨年バイオテクノロジー作物は、23ヶ国1200万人の農家により、1億1430万ヘクタールで生産された。」と発表があった。 

遺伝子組み換え作物は、生産が広がっているものの、食糧不足の解決にならず、また危険性が高いことが、国際会議で改めて訴えられた。(原文へ) 
 
翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 


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