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|視点|カザフスタン、核兵器禁止条約の普遍化を訴え(ムフタル・トレウベルディカザフスタン副首相兼外務大臣)

【ウィーンIDN=ムフタル・トレウベルディ】

核兵器禁止条約第1回締約国会合は、完全な核軍縮という普遍的な目標を推進するための10年近くに及ぶ集団的な取り組みの結果、驚くべき歴史的な成果を収めたものであります。

私たちは、この会議が、一般的かつ完全な核軍縮の問題に関して共通の基盤を見出すという深いコミットメントと政治的意思に突き動かされて、望ましい成果を生むものと確信しています。

Mukhtar Tileuberdi, Deputy Prime Minister and Foreign Minister of Kazakhstan addressing High-level Session of the First Meeting of the States Parties (MSP) to the Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons (TPNW). Credit: Katsuhiro Asagiri, IDN-INPS Multimedia Director

カザフスタンは、核兵器禁止(核禁)条約の起草及び採択プロセスの全ての段階に積極的に関与し、条約に初めて署名・批准した国の一つとなりました。核禁条約は、「核兵器なき世界」に向けたより具体的な行動を求める声がますます強くなっていることの証左であります。冷戦の最も暗い時期以来、核兵器による交戦のリスクが最大限に高まっている現在の危機的な状況にあって、こうした意志は特に重要性を帯びています。したがって、核禁条約は、こうした懸念を表明し、解決策を見出すための重要なプラットフォームとならなければなりません。

Semipalatinsk Former Nuclear Weapon Test site/ Katsuhiro Asagiri
Semipalatinsk Former Nuclear Weapon Test site/ Katsuhiro Asagiri

カザフスタンがこの条約に参加することを決めたのは、政治的な理由だけでなく、核軍縮に対する長年のコミットメントによるものであります。カザフスタンのカシム=ジョマルト・トカエフ大統領は、「核兵器のない世界」を実現することは、カザフスタン国民のアイデンティティーの重要な一部であり、核兵器廃絶に向けた世界の運動の先頭に立つという道徳的権利を与えてくれていると述べています。私たちは、ソ連の核兵器開発計画の破壊的な遺産に苦しめられた過去の世代に負う人道的義務から力を得ているのです。

このような背景から、核兵器の影響を受けたコミュニティーの代表者たちが、何としても避けねばならない核の悪夢の証人として、カザフスタン共催のものを含むサイドイベントに参加していることを心から歓迎します。

核軍縮への強力な政治的障害が存在するこの時にあって、被害者支援と環境修復に関する条約の積極的な義務の履行に焦点を当てることが、核禁条約の目的を促進させる将来性のある道筋を提供していることに強く賛同するものであります。

Side-event at the margins of the 1st meeting of state Parties to the TPNW

核爆発による被害者支援と環境修復のための道徳的要請を促進し、このテーマについてより幅広い議論を確保するため、カザフスタンはこの会議に合わせて、キリバス共和国創価学会インタナショナル核時代平和財団と共に、核実験の被害者の二世、三世が参加するサイドイベントを開催します。また、カザフスタンの核の遺産に関する展示会への参加も歓迎いたします。

カザフスタンは、2つの核保有国(ロシアと中国)に挟まれた北半球に中央アジア非核兵器地帯を設定したセミパラチンスク(セメイ)条約の創設国の一つでもあります。核兵器のない地帯を地球上に押し広げるために、私たちは、国連事務総長の「軍縮アジェンダ」第5項にあるように、既存の非核兵器地帯間における協力を促進することが特に重要だと考えています。

カザフスタンは、来たる第77回国連総会第1委員会(軍縮・国際安全保障問題)の議長国として最大限の努力をしてまいります。軍縮の問題に並んで、世界の成長と発展に影響を与える、グローバルな問題と平和への脅威についても、重要な協議を促進してまいる所存です。

核禁条約の締約国及び署名国は、その準備プロセスでの議論において、非常に高いレベルの一致と連帯を示してまいりました。私は、この協力の精神が、今後条約の加盟国が増える中でも、強化されるであろうことに自信を持っております。このことは、全ての人々にとっての、公正かつ包摂的、透明なプロセスの構築への道を開くものでありましょう。

この点において、私は、今日の会合にオブザーバー参加があることを歓迎し、将来的にはそうした参加がさらに増えることを強く信じております。

私たちは、他の軍縮条約の経験に基づき、核兵器禁止条約の普遍化に向けて協働していかねばなりません。このプロセスにおいて、私たちは、積極的な役割と発想力をもった市民社会、学術界、若者の支援を求めることができます。このことは、今年8月の第10回核不拡散条約(NPT)再検討会議、そしてその後に向けて、特に重要であります。

私たちはまた、核兵器計画の廃絶に向けた期限を決定する上で、核禁条約の規定を履行するという今会合の決定を歓迎いたします。この目的のために、私たちは、全ての核兵器計画の永遠かつ不可逆的な廃絶を検証することを任務とした適切な国際制度枠組みを確立する必要があります。

Vienna International Center/ photo by Katsuhiro Asagiri
Vienna International Center/ photo by Katsuhiro Asagiri

この会合の議題を成功裏に達成するための皆さま方の取り組みに対する我が国の完全なる支持をここで改めて表明させてください。

また、第2回締約国会合の議長国にメキシコが選出されたことをお喜び申し上げます。私は、メキシコが次のステップを導くにあたり、我が国の全面的な支援を約束し、第3回締約国会議の議長職を引き受ける用意があることを確認し、全ての義務を果たすために最善を尽くすことを誓います。

カザフスタンは、このフォーラムに対して、そして、我々が長らく求めてきた核兵器なき世界に向けて貢献することをここにお約束いたします。(原文へ

*カザフスタンのムフタル・トレウベルディ副首相・外相が2022年1月6月21日の核兵器禁止条約第1回締約国会合ハイレベル開会セッションにおいて行ったスピーチ内容。

INPS Japan

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イラン核合意の復活に向け、米に外交再開の圧力強まる

【ワシントンDC=J・C・スレシュ】

軍備管理の専門家たちはジョセフ・バイデン大統領に対して、「共同包括的行動計画」(JCPOA)として知られる2015年のイラン核合意の履行再開に向けて、膠着状態を打破する努力を直ちに強化するよう圧力をかけている。

例えば、国際原子力機関(IAEA)のラファエル・マリアーノ・グロッシ事務局長は、核施設を監視する一部のカメラの接続を解除したとのイランの6月9日の発表以来、今後3週間から4週間でJCPOA再開の努力には「致命的な打撃」があるだろうと警告した。

イランは今週、核施設を監視している27個のカメラの接続を解除した。2003年以前からの核開発計画に関連した未申告核物質のIAEA調査に協力することをイランに求めたIAEA理事会決議に反発したものである。

グロッシ事務局長は6月9日、カメラが3~4週間以上接続されない場合、JCPOAを復活させるために必要なイランの核活動に関する情報をIAEAが継続して得ることが難しくなると警告した。

「軍備管理協会」のダリル・G・キンボール事務局長は、「バイデン大統領は、イランによる兵器級核物質の生産能力を弱め、イランの機微な核活動に対するIAEAのより厳格な監視を維持するには、JCPOAの相互順守を回復させる方向性を明確に支持している。」と語った。

キンボール事務局長は、「残念ながらバイデン政権は、トランプ大統領が2018年にイラン核合意から無責任に離脱したことによって引き起こされた危機の拡大を、それに見合う必要な緊急度をもって取り扱っていない。しかし、新たな不穏な動きを受けて、ホワイトハウスが緊急の動きを取らなくなってしまうかもしれない」と不満を述べた。

軍備管理協会「不拡散政策プログラム」の責任者ケルジー・ダベンポート氏は、「JCPOAの遵守に向けて双方が回帰していく協議がなされており、即時に実行に移すことが可能だ。核兵器とは関係のない問題、すなわち、米国がイスラム革命防衛隊を海外テロ組織指定から解除するかどうか、解除するならその条件は何かということをめぐって米国とイラン双方が強硬な態度を取るのを止めれば、の話だが」と語った。

「双方が行き詰まりを解決し、最終的にすべての利害関係者のためになること、つまり2015年の核合意の遵守を回復するための合意を実現する機はとうに熟している。」とダベンポート氏は語った。

キンボール氏は、「バイデン政権は、合意の受け入れ、あるいはテロ組織指定の解除の問題についてはイラン次第という態度を取り続けている。しかし、この問題に関してゆきづまりを打開するための外交努力を即時強化するとの発表を行わないのは、ホワイトハウスのリーダーシップ不足だ。イランを感情的あるいは政治的に非難すれば満足感は得られるかもしれないが、目前の核危機がそれで解消されるわけではないし、米国の国益にもならない。」と語った。

「バイデン大統領がイラン革命防衛隊の制裁を解除してもその政治的コストは小さいものだ。イランが核武装して国家安全保障や国際安全保障に大きな脅威が与えられることと比較すれば、大した問題ではない。現在、イランは10日もかからずに核爆弾1発分の核物質を生産することができる。これは、テヘランの行動が国際査察団に探知されない可能性があるほど短い期間である。JCPOAによるイランの核開発制限を回復すれば、その余裕は約6カ月に大幅に拡大し、国際社会はイランの核兵器開発への動きに対抗するための効果的な行動を取るのに十分な時間を確保できる。」とダベンポート氏は語った。

ダベンポート氏はさらに、「もしバイデン大統領がJCPOA復活に向けたイランとの協議を妥結することができなければ、トランプ政権が追求した誤った方針が継続されることになる。イランが核開発を強化し、IAEAとの保障措置上の義務を果たさないのを認めることになってしまう。バイデンはイランが核開発の瀬戸際にまで到達するのを許した大統領として歴史に名を残してしまうかもしれない。米国がこのゆきづまりを打開するために創造的な提案を行う機は熟している。」と警告した。(原文へ

INPS Japan

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サッカー、パンデミック、クレムリン、軍事専門家について

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

【Global Outlook=ハルバート・ウルフ 】

にわか専門家の時代を皮肉るハルバート・ウルフの風刺エッセイ

大手新聞やニュースサイトのどれでも良いが、その分析や結論をちょっと見ると分かることがある。自称「軍事専門家」が担当し、「重火器」「飛行禁止区域」「対空砲」「旗艦」などが何であるかをわれわれに教えてくれようとしているのだ。別にいいじゃないか? 彼らは今や、かなりの期間この問題に取り組んでいるのだから。2022年2月24日から丸2カ月にもなる。(原文へ 

1979年以降、われわれはこのような問題を取り上げる必要がなかった。当時、NATOが中距離核ミサイルを配備すると同時にワルシャワ条約機構との交渉を進めるという二重決定を下し、多くの人は突如として、「パーシングII」ミサイルが西欧からモスクワに到着するまでの飛行時間がわずか7分であることを知ったのである。本物の専門家たちは、高濃縮ウランとプルトニウムの違いや、どちらも核兵器開発に使用できることを説明してくれた。その頃は、正確に何台のソ連軍戦車が侵攻のためにフルダ・ギャップに待機しているか、計測担当者は証明することができた。ロシアがウクライナで戦争を始めた今、われわれ西欧人は再び、軽火器と重火器、防御兵器と攻撃兵器の技術的詳細について「関心」を向けるようになった。しかも単に「関心がある」だけではない。それについては間違いなく何でも「知っている」のだ!

同様に、ほんの2年前、コロナ・パンデミックが始まった時、8,200万人のドイツ代表サッカーチームの監督(EU全体では何人いることやら)が一夜にしてウイルス学者や疫学者になった。行きつけのパブでサッカー代表チームの顔ぶれや拙速に過ぎた戦略について意見を言い合う、古き良き時代は過ぎ去った。今やわれわれは、コロナ感染症の発生率や新規感染率、ロックダウン戦略や超過死亡数を考慮しなければならなくなった。テレビのトーク番組やソーシャルメディアにおいて、われわれはもはやありとあらゆる専門知識から逃れることはできなくなった。われわれ自身がワクチンの専門家になり、スプートニクやシノバックはいかなる場合もファイザーに太刀打ちできないと確信した。

ロシアのウクライナ侵攻はすでに3カ月目に入り、なぜバルト諸国の空軍がソ連製のMIG29を使っているのか、英国が供与したNLAW(次世代軽量対戦車兵器)システムの射程距離はどれだけか、ドイツのゲパルト自走対空砲はどのような能力があるかを知ることが重要になっている。ゲパルトは、時速65 km以上、35 mm機関砲2基、複雑な照準システムを有する。とはいえ、全ての詳細を知らなくても心配はいらない。幸いにも、コロナウイルスに対抗する世界のさまざまなワクチン戦略について詳細な情報をわれわれに教えてくれたジャーナリストたちが、今日では、なぜウラジーミル・プーチンが6メートルのテーブルを隔ててアントニオ・グテーレスと会談したのか、絶対確実に知っている。なぜなら、プーチンのクレムリンというのは見た目ほど単純ではないから、そう、つまり彼らははるかに単純だからだ。そして、これらの専門家たちは、ドイツのオラフ・ショルツ首相が無責任にもウクライナ支援をためらったために、ドイツの評判を損なったと確信している。なにしろこの首相は、50年前のデタント政策によって現在のドイツがロシアのエネルギー供給に依存する状況の基礎を作った政党に属するのだから、何の不思議もない。「貿易を通じた変化」を覚えているだろうか? よくもあんなことをしてくれたものだ。つまり私が言いたいのは、ヴィリー・ブラントとエゴン・バール、そして彼らの東方外交のことだ! と言った後、専門家らは寛大にも、「それ以降はもっと賢くなったけれど」と詫びるように付け加えようとする。

当然ながらこういった専門家たちは、にわか仕立ての対決的な解決策を提案する。それを聞いていると、「大声を出すのではなく、論拠を強化しなさい!」というデズモンド・ツツの言葉を思い出させてやりたくなる。

さて、8,200万人のサッカー、パンデミック、クレムリン、軍事専門家に話を戻そう。もちろん、ウクライナのロシア兵は戦争犯罪者である。いや、戦争犯罪者というだけじゃない。これはジェノサイドだ! その通りだ。兵器と戦争についてこれほど精通している人なら、十分な訓練を積んだ国際法専門家でもあり、戦後にプーチンを罪に問うにはどうしたらいいかを自分のソーシャルメディアアカウントで断じることもできるというわけだ。

もちろん、NATOの2%目標が最終的に達成されることは適切であり、必要であり、何よりも長期的には明白である。2%目標? 軍事費をGDP比2%にすることだと、もはや誰にも説明する必要はない。はいはい、みんな前から知っていたね。いずれにせよ、この2%目標はすぐに達成されるだろう。第1に、いまや軍事費を大幅に増強する「ターニングポイント」が公式に発表されている。それによって、軍事費の比率は急増するだろう。そして第2に、経済不況が予想される。GDPは低下しており、そのため軍隊の防衛力は増大している。なんだって! ちょっと言葉足らずだった。われわれは2%目標を達成しつつある。ただし、ここではそれを行使可能な戦力として見なしている。

西欧は、自らの立場をギリシャのそれになぞらえている。ギリシャだって? なぜギリシャがモデルになって、フランスや英国ではないのか? ご存じのとおり、金融危機があった2008年、ギリシャは欧州の病人だった。当時ギリシャは、ほぼ90億ユーロを軍事費に充てていた。4年後、それは半減した。しかし、それでもなおギリシャはNATOの2%目標を楽々と達成している。手品だろうか? まったく違う。それが、西欧の進む道である。EUと国際通貨基金が策定した安定化計画は、ギリシャに経済不況をもたらした。経済の縮小が防衛費の削減を大きく上回ったため、ギリシャは良好な数字を達成することができた。非の打ちどころないデータで、ドナルド・トランプにも感銘を与えただろう。

「イエス、ウィー・キャン!」 だから心配はいらない。何よりも統計の問題なのだ。1年後、2年後、遅くとも3年後には数字が達成できたら、EUがアフガニスタンで(おっと、そうだった、20年にわたる駐留で成功を収めた後、われわれはもはやそこにいない)、あるいはマリやどこかで何をできなければいけないかを話し合おう。そのとおり。目下はバルト諸国や、NATOの東方のどこか一角に目を向けよう。そのうえで、今日の決定の何が間違っていたかを専門家(そのほとんどは男性で、女性はごく稀だ)に尋ねよう。なぜなら、われわれは「それ以降はもっと賢く」なり、トーク番組で知識を披露することができるからだ。

だから尻込みせずに発言しよう。高校時代にレフ・トルストイの『戦争と平和』と読んだことがあるなら、専門家を自任するべきだ。ジョージ・バーナード・ショーの短編『武器と人』も読んだことがあるなら、全国放送でコメントする資格がある。

ハルバート・ウルフは、国際関係学教授でボン国際軍民転換センター(BICC)元所長。2002年から2007年まで国連開発計画(UNDP)平壌事務所の軍縮問題担当チーフ・テクニカル・アドバイザーを務め、数回にわたり北朝鮮を訪問した。現在は、BICCのシニアフェロー、ドイツのデュースブルグ・エッセン大学の開発平和研究所(INEF:Institut für Entwicklung und Frieden)非常勤上級研究員、ニュージーランドのオタゴ大学・国立平和紛争研究所(NCPACS)研究員を兼務している。SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)の科学評議会およびドイツ・マールブルク大学の紛争研究センターでも勤務している。

INPS Japan

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宗教コミュニティーが「核兵器禁止条約第1回締約国会議」を歓迎

【ウィーンIDN=INPSチーム】

「世界各地の多様な伝統を背景にもつ」信仰者のコミュニティーが、核兵器禁止条約(TPNW)の第1回締約国会議(MSP)の開催を記念するために、声を一つに結集した。

High-level Session of the First Meeting of the States Parties (MSP) to the Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons (TPNW). Photo credit: Katsuhiro Asagiri. IDN-INPS Multimedia Director

6月21日に発表された「宗教間共同声明」では、「この歴史的な機会を歓迎し、核兵器のない世界に私たちを近づけるこの重要な節目を祝福します。」と述べている。声明は、TPNWの締約国に対し、世界の被爆者の声に耳を傾けるよう求めている。

声明は以下の通り。「私たちは、核兵器による全滅の脅威を、かつてないほど身近に感じる時に集っています。核保有国による脅威の高まりに呼応して、私たちの多くが不安に苛まれています。このような緊急の差し迫った脅威を前にして、私たちは核兵器廃絶への決意をこれまで以上に強くするものです。」

「私たちは、人類と私たちの愛する地球が直面している脅威を痛感しています。世界的なパンデミックがもたらす壊滅的な影響から、気候変動による大災害の脅威の高まりに至るまで、地球上の生命に対する危険はかつてないほど高まっています。核兵器は、人間の健康と環境の安定にもたらすリスクとあわせ、こうした脅威の中で最悪なものであることを明確に示しています。」

「現在、これらの兵器の開発と維持に費やされている資源は、食糧、教育、医療、気候変動対策への投資を通じて、最も脆弱な人々の支援と地球を守ることに向けられるべきです。」

「私たちの信仰が持つ伝統は、このような資源の悪用を糾弾し、核兵器を永遠に廃絶するために、国際的な協力を拡大するよう呼びかけます。核兵器は、人間の安全保障を優先させることが喫緊に必要とされている時において、支配と暴力による強制的な手段です。」

「私たちの宗教的、精神的伝統は、相互に助け合うこと、見知らぬ人に配慮すること、コミュニティーを信頼するといった精神を守ります。私たちの信仰がもつ伝統は、より良い未来を構築するとの信念を持ち続けています。私たちは、私たちが、弱さ(脆弱性)と、思いやりと知性をもって政策の選択を行う能力を共に持ち合わせていることを思い起こします。」

「私たちは、自分たちの安全保障だけでなく、お互いの安全保障と幸福のために、引き続き努力します。私たちは、正義と平和の相互関係を理解し、どのコミュニティーも他のコミュニティーを消滅させる力を持たず、ある人の安全が、他の人の危険の上に築かれることのない世界を目指して、引き続き努力することを約束します。」

「私たちは、核兵器禁止条約の締約国に対し、国際社会として核兵器による被害を回復するための取り組みを開始できるよう、世界のヒバクシャの声に耳を傾け、また被災したコミュニティーの声を十分に取り入れることによって、条約の強化に貢献するよう求めます。」

Vienna International Center. Photo by Katsuhiro Asagiri

「私たちはまた、すべての締約国に対し、条約の普遍化への努力を求めるとともに、まだ批准していないすべての国に対し、直ちに批准するよう求めます。そして最後に、私たちはすべての核保有国に対し、核軍縮への約束に従って行動し、核の脅威を減らすための具体的な措置をとることを求めます。」

共同声明は次のように結んでいる。「暗いと思われがちな世界において、私たちはこの第1回締約国会議を、一筋の希望の光であるとして祝福します。私たちが、それぞれの信仰が持つ伝統を越えて、声と祈りを一つにして集ったように、私たちは、分裂と緊張の時代に多国間主義と外交に尽力される皆さんの献身を称えます。私たちは、世界から核兵器をなくし、共通の安全と相互の繁栄のために共に前進する世界を構築するために、皆さんと共に立ち上がります。」

この共同声明に賛同した団体は以下の通り。(原文へ

All Souls Nuclear Disarmament Task Force
Alliance of Baptists
American Friends Service Committee
Anglican Pacifist Fellowship
Bruderhof
Buddhist Council of New York
Cameroon Youths and Students Forum for Peace (CAMYOSFOP)
Canadian Interfaith Fast For the Climate
Casa Generalizia della Società del Sacro Cuore
Center for Peace Education
Centro de Estudios Ecuménicos-México
Christian Campaign for Nuclear Disarmament
Christian Reformed Church Office of Social Justice
Christians for Peace Newcastle Australia
Church and Peace – European Ecumenical Peace Network
Church Council of Greater Seattle
Church of Scotland
Colectivo familiares en Búsqueda Maria Herrera Chilpancingo
Comisión General Justicia y Paz
Community of Christ
Community of Christ – British Isles
Community of Christ – Western Europe Mission Centre
Community of Christ International Peace and Justice Team
Community Pope John XXIII – APG23
Company of the Daughters of Charity of St. Vincent de Paul
Comunidad Luterana Santísimo Redentor
Conferencia de iglesias Evangelicas Anabautistas Menonitas de Mexico (CIEAMM)
Conselho Nacional de Igrejas Cristãs do Brasil
Creation-Justice-Peace Steering Group, European Province Third Order Society St Francis
Deben prohibirse las armas nucleares porque son una ofensa a Dios al poner en riesgo la vida de
la Humanidad y del Planeta
Disciples Peace Fellowship
Divine Word Missionaries
Dominican Sister of Hope
Dominican Sisters ~ Grand Rapids
Dominican Sisters of Sinsinawa
Dorothy Day Catholic Worker House, Washington, DC
Ecumenical of Peace Institute/CALC
Edmund Rice International
Eje de Iglesias de Morelos
Eje de Iglesias y Comunidades de Fe de la Brigada Nacional de Búsqueda
Ejes de Iglesia
Episcopal Peace Fellowship
Federation of Sisters of St. Joseph of Canada
Fellowship of Reconciliation
Franciscan Peace Center
Franciscan Sisters, Daughters of the Sacred Hearts of Jesus and Mary
Franciscan Sisters of the Sacred Heart
Friends World Committee for Consultation (Quakers)
Fundação Luterana de Diaconia
Global Ministries of the Christian Church (Disciples of Christ) and the United Church of Christ
Hale Ho’onani A.M.E. Fellowship
Imdosoc
Institute of the Blessed Virgin Mary
Interfaith Council of Southern Nevada
International Fellowship of Reconciliation – IFOR
InterReligious Task Force on Central America
JPIC NDS
Kairos Foundation of Nigeria
Kosmos Associates. Unity Earth
Kristna Fredsrörelsen i Göteborg
Kvekersamfunnet i Norge – the Religious Society of Friends in Norway
Leadership Conference of Women Religious
Maryknoll Office for Global Concerns
May Peace Prevail On Earth International
Melbourne Unitarian Peace Memorial Church
Mennonite World Conference
Missionary Oblates JPIC Office
Missionary Society of St Columban (Australia)
Mujeres para el Diálogo
Multifaith Association of South Australia Inc
Multifaith Voices for Peace and Justice
Muslim Peace Fellowship
National Council of the Churches of Christ in the USA
National Shrine of Our Lady if la Salette Pax Christi
New Humanity International NGO
Northern Friends Peace Board
One Billion Youth for Peace
Pace e Bene & Campaign Nonviolence
Pacific Conference of Churches (33 member churches and 10 National Council of Churches)
Pastoral Social, Iglesia Anglicana de México
Pax Christi Australia
Pax Christi Fatima Shrine Holliston MA
Pax Christi International
Pax Christi Long Island
Pax Christi MA
Pax Christi Metro New York
Pax Christi New York State
Pax Christi Philippines
Pax Christi Queensland
Pax Christi Victoria
Pax Christi Vlaanderen
Pax Christi Western Massachusetts
Peace and Social Justice Committee of Friends Meeting at Cambridge (Quaker)
Presbyterian Peace Fellowship
Presentation Sisters San Francisco, CA
Presentation Sisters USA Unit
Public Affairs Commission, Anglican Church of Australia
Quaker Peace and Legislation Committee
Raelian Movement
Red de Entidades para el Desarrollo Solidario-REDES
Religious of the Sacred Heart of Mary, Western American Area
School Sisters of Notre Dame, Central Pacific Province
Serviço de Paz – SERPAZ
Shepparton Interfaith Network
Sisters of Charity Federation
Sisters of Charity of Leavenworth Office of Justice, Peace, and Integrity of Creation
Sisters of Charity of Nazareth Congregational Leadership
Sisters of Charity of Nazareth Western Province Leadership
Sisters of Charity of New York
Sisters of Mercy of the Americas Justice Team
Sisters of Notre Dame de Namur USA
Sisters of Providence
Sisters of Providence Holyoke, Massachusetts
Sisters of Saint Joseph of Chestnut Hill Philadelphia, PA
Sisters of St. Francis of Assisi
Sisters of St. Francis of Philadelphia
Sisters of St. Francis, Clinton, Iowa
Sisters of St. Joseph of Baden, PA
Sisters of St. Joseph of Carondelet, LA
Sisters of the Good Shepherd, Province of Australia and Aotearoa New Zealand
Sisters of the Humility of Mary
Soka Gakkai International
SS. Francis and Therese Catholic Worker
St. Susanna Parish, Dedham, MA
Swedish fellowship of Reconciliation/Kristna Fredsrörelsen
THE CHURCH OF THE LORD (TCL) Worldwide
The Ethiopian Evangelical Church Mekane Yesus
The Faith and Justice Network (FJN) of the Mano River Basin Countries, West Africa
The Swedish Society of Friends (Quakers)
The United Church of Canada / L’Église Unie du Canada
Trinity Cathedral Episcopal Church, Cleveland, Ohio
Una luz en el camino
United Church of Christ, Justice and Local Church Ministries
United Reformed Church (UK)
United Religions Initiative
Uniting Church in Australia, Synod of Victoria and Tasmania
Valley and Mountain Fellowship
Vichara, Mavelikara, India
We Can Disarm the World
Wellspring Community Australia
Wheaton Franciscans
World Council of Churches
World Yoga Community
Youth Arts New York/Hibakusha Stories 

This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

【Global Outlook=ラメッシュ・タクール】

2020年の大統領選で、ドナルド・トランプ大統領の支持者は明白な性格的欠陥よりも国内政策や外交政策の成果に目を向けたが、反対派はいかなる政策的成果を評価するにも彼の性格に目をつぶることはできなかった。ジョー・バイデンが大統領になったのは、米国人のバイデン票と同じぐらい反トランプ票があったからである。しかし、世論調査にはっきりと表れた「購入者の後悔」を見ると、どうやら有権者は、自分が何を望んでいるかを慎重に考えるべきだったようだ。(原文へ 

2017年4月18日付「ニューヨーク・タイムズ」紙の論説で、アントニー・ブリンケンはこう書いた。「外国のパートナーが大統領の判断を疑うというのは由々しき事だが、そのパートナーが大統領の言葉を疑うようになったら、そちらのほうがはるかにまずい」。いまや国務長官となったブリンケンが、バイデンの判断と言葉について、また、「自ら招いた信頼性の欠如を克服する」ために助けられるかについて、内心どう考えているのか、われわれは思いを巡らせるのみである。

第1の問題は、トランプに関してブリンケンが語った別の表現を借りるなら、バイデンの「正直さとの困難な関係」である。バイデンの一連の嘘言癖伝説的である。彼が、作り上げたには、ネルソン・マンデラに会いに行ったアパルトヘイト下の南アフリカで逮捕された、公民権運動の行進に参加した、法科大学院を上位半分の成績で卒業した、18輪の大型トラックを運転していた、副大統領時代にアムトラックの車掌とおしゃべりをした(その車掌はバイデンが副大統領になる15年前に引退していたというのに)、ピッツバーグのシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)「ツリー・オブ・ライフ」を2018年の銃乱射事件後に訪れた、イラク戦争には最初から反対していた等々がある。

最後の例は、第2の大きな問題である外交政策通という誇張された自慢を示している。バイデンは、1991年にクウェート解放戦争に反対し、2003年のイラク戦争を支持し、2011年にオサマ・ビンラディン暗殺をやめるようバラク・オバマ大統領に助言した。「物事をダメにするジョーの能力を過小評価」しないほうがいいというオバマの手厳しい評価は、それゆえである。それを裏付けるように、ロバート・ゲイツ元国防長官も、バイデンは数十年にわたる政治家生活の中で、あらゆる重要な外交政策や国家安全保障問題に関して間違っていたと主張した。

大統領選では批判的な見地から厳しい吟味がなされるのが普通だが、トランプを軽蔑する大手メディアや大手テクノロジー企業のおかげで、バイデンはそれを免れた。世界は今、現実が噛みついてきたとき、実際の結果がどれほど深刻になりうるかを見いだしつつある。そこには、米国とロシアの核戦争の可能性が、1962年のキューバ・ミサイル危機以来、かつてないほど現実味を帯びてきたという認識も含まれている。

 周到に計画された核攻撃は、まずないだろう。むしろ、どちらの側も望まない戦争のリスクはミスコミュニケーション、誤解、誤算の可能性の方に潜んでおり、それが挑発とエスカレーションのサイクルへと発展して制御不能になる恐れがある。一方で、ウラジーミル・プーチン大統領は、核兵器の保有と使用の威嚇に関する発言を常態化させているという点で、核兵器国の指導者9人の中で最も罪深いまでに無責任である。他方、バイデンの「言葉の失禁」(ジェラルド・ベーカー)と認知機能障害は、ミスコミュニケーションや不用意による発射によって核戦争になる恐れがある。米国の現行プロトコルは、スピードと効率性を高めるよう策定されており、大統領が口頭の命令ひとつで核兵器を発射できるようになっている

過去10年間、核兵器国の指導者が無責任にも核をちらつかせて虚勢を張るということが幾度かあった。2016年5月、英国のテリーザ・メイ首相は、10万人の命を奪いうる核攻撃を許可する覚悟があると述べた。同年12月には、イスラエルがパキスタンへの核攻撃を示唆したというフェイクニュースに反応し、パキスタンのカワジャ・ムハンマド・アシフ国防相がイスラエルへの核攻撃をすると脅かした。それに続いて2017年、トランプと北朝鮮の金正恩が相互の侮辱好戦的レトリックの応酬を繰り広げた。2019年2月には、パキスタンのイムラン・カーン首相が核戦争の可能性を警告し、それに対してインドのナレンドラ・モディ首相が同様の発言でやり返した

このような背景があるにせよ、プーチンによる連続の核の脅しは警戒すべきものである。2014年にロシアがクリミアを併合した後、西側の敵意ある批判を浴びたプーチンは、「ロシアは最も強大な核兵器国の一つだ」とあからさまに述べた。2017年2月にトランプ大統領が米国は「[核兵器保有国の]グループの頂点」に立ち続けると主張したとき、プーチンはロシアの抑止力で同様のことをする必要性があると述べた。2018年3月、プーチンは新しい無敵の核兵器を誇った。プーチンは、2022年2月19日に弾道ミサイルの発射演習を実施し、23日に核戦争をほのめかし、27日にロシアの核抑止戦力を「特別警戒態勢」に置いた。そのメッセージがまだワシントンで受け止められていない段階で、クレムリンの報道官が「存亡の危機」が迫った場合ロシアは核兵器を使用すると述べた後、3月29日、「デイリー・メール」紙(英国)がプーチンとその最高司令部はすでに極秘の核シェルターに身を隠していると報道した。その目的は、単に核戦争のサインにいっそうの切迫性を持たせることだったかもしれない。NATOの東方拡大が侵攻を正当化する主な口実であったことを考えると、ロシアにとってあいにくなことは、米国の核兵器が、数ある場所の中でもとりわけロシア西方のポーランドと東方の日本に配備されるという結果になり兼ねないことである。

一方バイデンは、同盟国に呼びかけてウクライナの決意を後押しするために近頃欧州を訪問した際、三つの危険な失言を放った。3月24日にブリュッセルで記者会見を行い、ロシアがウクライナで化学兵器を使用した場合について質問されたバイデンは、「それは同様の対抗措置をもたらすだろう」と述べた。翌日、ポーランドに駐留する米軍を前に演説した際、米軍兵士はウクライナに行くだろう、すでに一部は現地にいたと示唆した。3月26日にワルシャワで行った演説では、「何としてもこの男を権力の座に留めてはならない」と述べて、ロシアの体制転換を訴えた。これはプーチンのパラノイアをいっそう刺激し、ロシア国内の戦争反対派の信用を落としやすくしただけであろう。これに対してモスクワからは激しい反発があり、また、バイデン政権の高官同盟国の指導者からも反論が出た。バイデンの三つの発言が失言であるなら、憂慮すべきことである。もしそれらが失言でないなら、失言の積み重ねが核戦争に至るという恐ろしいリスクを思い起こさせるものである。その後、体制転換に関する記者の質問に対し、台本にないことを口走らないよう用意された「カンニング・ペーパー」に厳密に従って答える姿が捉えられた。

ハンター・バイデンのラップトップ・スキャンダルが真実であることは、「ニューヨーク・ポスト」紙が提供した情報源と内容の詳細さを踏まえれば、最初から明白だった。「ニューヨーク・タイムズ」紙ですらそれを認めた今、次の重要な問題は、ウクライナ危機の今後に重要な役割を果たす中国、ロシア、ウクライナとの怪しげな取引に大統領が関与していた場合の影響について、ここから何が分かるかということである。ウクライナの腐敗ぶりに目をつぶらなくても、ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領が思いがけず発揮した英雄的リーダーシップは称賛できるだろう。トランスペアレンシー・インターナショナルが2022年1月25日に発表した2021年腐敗認識指数によれば、ウクライナのスコアは100分の32で、180カ国中122位、欧州では文句なしに最も腐敗した国である。EUの平均スコアは100分の66である。

ロシアは20年以上にわたり、ウクライナを巡るレッドラインを示してきたが、西側はあっさりとそれを無視した。これは、「フィナンシャル・タイムズ」紙でエドワード・ルースが指摘する通り、なぜウクライナに関する反ロシア的コンセンサスが西側諸国に限られ、世界規模ではないかを説明する一つの理由である。インドのシブシャンカル・メノン元国家安全保障顧問(2010〜14年)は、「フォーリン・アフェアーズ」誌に、ウクライナにおけるロシアの戦争は欧州の地政学的情勢を変容させるだろうが、それは独裁主義と民主主義の超越的対立でもなく、世界秩序を再編するものではなく、インド太平洋にとっては限定的な関連性しか持たないと書いている。中国の持続的台頭のほうが、地政学的な面でも規範的な面でも新たな世界秩序を再構成するうえで、ロシア帝国の最後のあがきよりはるかに重要な意味を持っている。クリミア、ドンバス、そしてウクライナの確かな安全保障を伴った何らかの中立的状態に関して、今後行きつくかもしれない条件のもと、ウクライナにロシアとの和解を勧めるのであれば、その際、不道徳的な宥和と慎重な現実主義との間の線引きはどこにあるのだろうか?

ラメッシュ・タクールは、国連事務次長補を務め、現在は、オーストラリア国立大学クロフォード公共政策大学院名誉教授、同大学の核不拡散・軍縮センター長を務める。近著に「The Nuclear Ban Treaty :A Transformational Reframing of the Global Nuclear Order」 (ルートレッジ社、2022年)がある。

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【ニューヨークIDN=リサ・ヴィヴェス】

米国では少数民族、年長者、子供、移民等を無作為に狙った銃乱射事件が相次ぎ、再び銃規制を巡る議論が高まっているが、太平洋を隔てた西アフリカのナイジェリアでも、無辜の老若男女が無作為に殺害される銃撃事件が頻発して社会問題になっている現状に焦点を当てた記事。

Map of Nigeria
Map of Nigeria

ナイジェリアでは、北西部と中部で農耕民と牧畜民が土地を巡って衝突してきた歴史があり、その一部が「盗賊団」と化して、殺人や略奪、身代金目当ての誘拐を繰り返している。また、ボコハラム等のイスラム過激派も、(カザフィ政権の崩壊に伴う)リビアから流出した大量の武器を入手して、ナイジェリア国内で襲撃を繰り返している。これに対してナイジェリア政府は有効な対策を打ち出せないでいる。こうした状況に、同国のノーベル文学賞作家ウォーレ・ショインカ氏が、国民が一致団結して、襲撃問題に対処する啓発するキャンペーンを開始した。

ナイジェリアでは2022年の1週間(4月10日から16日)、武装した「盗賊団」が様々な攻撃で少なくとも215人を殺害し、最も死者が多い週となった。今回の集計以前には、2022年の最初の3週間で少なくとも486人が殺害され、今年最悪の犠牲者数を記録している。(原文へ

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*本日からオーストリアのウィーンで核兵器禁止条約締約国会議が開催される。IDNでは核なき世界を目指してICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)の国際メンバーとして活動している創価学会インタナショナルと2009年以来、核軍縮・廃絶をテーマとしたメディアプロジェクト「核なき世界に向けて」を推進している。今回は、アーカイブの中から、ヒバクシャの声を取材した記事を掲載します。

【IDNシドニー=ニーナ・バンダリ】(11.03.2012 にIDNから配信)

森本順子さんは、米国が彼女の故郷広島に最初の原爆を投下したとき13歳の少女だった。1945年8月6日の当日、彼女は腹痛を訴え学校を欠席していたことから、爆心地から1.7キロ離れた自宅で被爆した。もし市の中心部に位置していた広島女学院高等女学校に登校していたら360名の同窓生とともに命を失っていただろう。

森本さんは手術が不可能な脳腫瘍を患っており、その影響によりバランス感覚が不自由である。原爆投下から70年近くが経過したが、日本の人々は今でも、放射能が環境や世代を超えて人体に及ぼした恐るべき後遺症とともに日々の生活を送っている。

 「広島と長崎への原爆投下は私たちに2つの教訓をもたらしました。一つは、私たち人間が地獄をこの世に作り出す能力を手に入れてしまったということ。そしてもう一つは、私たちは、その恐ろしい能力を実際に使ってしまうほど、あまりにも愚かで、信用できない、つまらない存在だということです。」と、森本さんは語った。彼女は1981年にオーストラリアに移住し、今は著名な絵本作家・画家として活躍している。

今年の7月8日は、国際司法裁判所(ICJ)が核兵器の威嚇・使用の合法性に関する画期的な勧告的意見を出してから15周年にあたる。ICJの15人の判事全員一致の見解として、「各国政府は、厳格かつ効果的な国際的管理のもと、あらゆる分野にわたる核軍縮につながる交渉を誠実におこない完了させる義務が存在する。」と述べた。

7月5日、メルボルン市庁舎で核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)とオーストラリア赤十字の共催のもと、公開討論会が開催され、「核兵器のない世界」実現を求める人々が、会場を埋め尽くした群集の前で演説を行った。

たんなるオプションではない

この公開討論会に登壇した自由党のマルコム・フレーザー元首相は「核軍縮はたんなるオプションではありません。国際法で義務付けられたものなのです。そしてそれは、核兵器禁止条約-いかなる国家による核兵器保有も禁止し、定められた期間内に全ての核弾頭の廃絶を完了させる法的メカニズムを打ち立てる包括的な条約-の発効を通じて最も望ましい形で実現できるのです。」と語った。

ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が6月に発表した世界の軍備動向に関する2011年の年次報告書によると、現在8カ国或いは9カ国の兵器庫に合計20,000発を超える核兵器が保有されている。

米国、ロシア、英国、フランス、中国、インド、パキスタン、イスラエルの8カ国は合計で20,500発以上の核兵器を保有している。その内、5,000発以上が実戦配備されており、内約2000発は高度な「即応態勢」に置かれている。 

核兵器廃絶を目指す世界的な運動組織「ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)」は、向こう10年間に世界で核兵器に費やされる金額は1兆ドルを上回ると予測している。核兵器保有国は今年だけでも核兵器プログラムに総額で約1000億ドルを費やす予定である。

「政治指導者たちは、核兵器がいかなる人の安全にも寄与しないということを理解すべきです。彼らは世界をかえってより危険なものにしているのです。益々多くの国々が核兵器を製造する方法を習得しています。もし核軍縮に向けた努力が今よりもはるかに真剣な形で進められなければ、核兵器の保有を目指す国々は益々増え、故意か事故に関わらず、核戦争が勃発する危険性はより大きなものとなるでしょう。」とフレーザー元首相はIDNの取材に応じて語った。

2010年4月、世界の備蓄核兵器の95パーセントを保有する米国とロシアが、控えめな規模の核軍縮に合意する新戦略兵器削減条約(新START)を締結した。しかし、米露両国とも、現在新たな核兵器運搬手段の配備を進めるか、或いはそのような計画がある旨を発表している。一方、インド、パキスタン両国は、引き続き核弾頭を搭載可能な弾道ミサイルや巡航ミサイルの開発を続けている。

フレーザー元首相は、こうした兵器を一刻も早く廃絶する重要性を強調して、「核兵器を廃絶するための多国間協議プロセスが、実質的に存在していないという現状を深く憂慮しています。とっくに発効してしかるべき核兵器禁止条約も、未だ実現していません。オーストラリアは、核廃絶に向けた実質的な協議が進められるよう国際的な圧力をかけていくべきです。」と語った。

オーストラリアのジュリア・ギラード首相は、核廃絶を国会決議とするよう、国会に動議を上程する意向を示している。ギラード首相は、この核廃絶決議を超党派のものにしようと、トニー・アボット自由党党首に協力を呼びかけた。

核問題を党派対立から遠ざける
 
「これは政府にとって、核と軍縮の問題を、より党派間対立が少ない非政治的な領域に持っていくことで、むしろ人道的な問題に転換する絶好の機会なのです。」と、ICANオーストラリアのティルマン・ラフ議長はIDNの取材に応じて語った。

オーストラリアは、興味深い立ち位置にある。なぜなら、オーストラリアは国家としては核兵器を保有していないが、同盟間にある米国の核の傘(拡大核抑止)理論に賛成している立場をとっているからである。

「オーストラリアが安全保障を米国の『核の傘』に依存している限り、いかに核軍縮を唱えても説得力に欠けるものがあります。米国の大統領が核軍縮という大義を支持している今こそ、オーストラリアが核兵器に依らない国防体制を採択するとともに、核軍縮に向けた重要な貢献を開始する理想的な時期のように思います。」とフレーザー元首相は語った。

オーストラリアは、ウラン埋蔵量が全世界の約40%を占め、主要なウラン輸出国である。

「我が国のウラン輸出は、確かに軍縮を進める上で一つの障害となっています。たとえオーストラリア産のウランを輸入する国々との保障協定が結ばれていたとしても、それらのウランが軍事用に使われたり、或いはその代わりに国内の備蓄ウランが同様の目的で使われたりするリスクが常にあるのです。」と、ICANオーストラリア核廃絶国際キャンペーンディレクターのティム・ライト氏はIDNの取材に応じて語った。

各国の政府や一般市民は、福島第一原発の危機を見て、発電のための核技術に本来的に備わっている危険性を認識し警戒するようになった。ICANは、放射能は、原子炉からのものであろうが核爆弾由来であろうが、出発物質(化学反応の原料)は同じであり、もたらされる影響も完全に無差別かつ同質のものであると指摘している。

「原発用の原子炉級ウラン濃縮を行えるいかなる国も、実はウランを兵器級まで濃縮するために必要なものをすべて手に入れているのが実情です。すなわち、両者は不可分なのです。現在、ウラン濃縮についても、プルトニウム抽出のための使用済核燃料処理についても、制限が設けられていません。これらの物質は、核兵器の原材料である核分裂性物質の元ですが、各国によるこうした物質へのアクセスを制限する国際規制は現在のところないのです。このような現状は、『核兵器のない世界』の実現或いは維持という理想とは、相矛盾するものです。」とラフ議長は語った。

核不拡散から核廃絶へ

核兵器ゼロの支持者は、ラメッシュ・タクール元国連事務次長補が述べたように、議論の焦点が核不拡散から核廃絶へと移ることを望んでいる。タクール元国連事務次長補は、「私たちには、以下のような優先順位に基づく具体的なステップを踏まえた核廃絶へのロードマップが必要である:①核兵器の保有と使用を分けるより強固な保護システムを導入する、②既存核弾頭の更なる大胆な削減と中期的な計画に基づく核分裂性物質の生産凍結を実現する、③私たちが生存している間に、確固たる検証体制の下で全ての核兵器の破棄を義務付ける核兵器禁止条約(NWC)を発効させる。」と語った。

タクール元事務次長補は、NPTに加盟していない核保有国(インド、パキスタン、イスラエル)が、非核保有国としてNPT加盟を余儀なくされる事態は可能だと考えるのは、現実的ではないと見ている。

核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND)によると、今日地球上に存在する核兵器の総破壊力は、広島に投下された原爆の15万倍に相当する。

ラフ議長が言うとおり、世界の核兵器のほんの僅かな量が、比較的小さな地域に使用されたとしても、その影響は、極めて深刻かつ前例のない地球規模のものとなる。米国科学アカデミーは、核爆発の影響を確実に防ぐ方法はないと明確に結論付けている。核兵器と気候変動は、現在生きている人類のみならず、人類の未来や複雑な生態系を支える地球の能力に対しても、かつてない脅威を及ぼす。従って、核兵器をゼロにするまで、一刻も早くもっていくことが緊急に求められているのである。
 
オーストラリア赤十字は、核兵器の違法性を確認するさらなる法律の必要性を訴えるうえで、国際的に指導的な役割を果たしている。

オーストラリア赤十字の国際法、戦略顧問であるヘレン・ダーラム博士は、IDNの取材に応じ「国際法は極めて断片化された体系となっており、すべてを包含した一つの方法を見出してものごとを前進させるというわけにはいかないのが現状です。しかし世界各国の政府は、自国の市民がこの問題について関心を持っているということを理解する必要があると思います。」と語った。

オーストラリア赤十字は、核兵器の使用が人道的にどのような結果をもたらすか、その惨禍について人々が本当に理解できるよう、公共教育キャンペーンを実施する予定である。「私たちは様々なイベントを実施していきます。また11月初旬には、若者の関心を引き寄せる目的でインターネット上の教育プログラムを開始します。これは全ての人々が立ち上がって、このような兵器は決して受け入れられないと声を上げるべき問題なのです。」とダーラム博士は語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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核兵器の近代化が進む中、さらなる核兵器の脅威にさらされる世界

【国連IDN=タリフ・ディーン

世界で進む核兵器の近代化により、そう遠くない未来に致死的な兵器が増加する恐れがある。

この厳しい予測は、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が6月13日に発表した最新のシプリ年鑑(SIPRI Yearbook 2022)によるものである。

The 53rd edition of the SIPRI Yearbook/ SIPRI
The 53rd edition of the SIPRI Yearbook/ SIPRI

重要な調査結果の一つは、2021年に核弾頭数がわずかに減少したにもかかわらず、今後10年間で核弾頭数が増加すると予想されることだ。

世界の9つの核保有国-米国、ロシア、英国、フランス、中国、インド、パキスタン、イスラエル、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)-は、核兵器の近代化を続けている、と報告書は述べている。

SIPRIの大量破壊兵器プログラムのディレクターであるウィルフレッド・ワン氏は、「すべての核保有国が核兵器を増やし、改良しており、そのほとんどが核のレトリックを鋭くし、軍事戦略において核兵器が果たす役割を強めています。これは非常に憂慮すべき傾向です。」と語った。

シプリ年鑑によると、2022年初頭の推定12,705個の核弾頭のうち、約9,400個が使用可能な状態で軍に備蓄されていた。そのうち3,732発がミサイルや航空機に搭載され、約2,000発(ほぼすべてがロシアか米国のもの)が厳戒態勢で運用されていると推定される。

Photo: U.S. Air Force Staff performing a simulated missile reduction in accordance with the New Strategic Arms Reduction Treaty on Minot Air Force Base, N.D., 2011. Credit: Flickr/US Air Force
Photo: U.S. Air Force Staff performing a simulated missile reduction in accordance with the New Strategic Arms Reduction Treaty on Minot Air Force Base, N.D., 2011. Credit: Flickr/US Air Force

2021年を通じて、両国の使用可能な軍事備蓄の核弾頭数は比較的安定していた。しかし、両国の戦略核戦力の配備は、二国間の新戦略兵器削減条約(2010年の戦略核兵器の更なる削減と制限のための措置に関する条約、新START)で定められた範囲内であった。また新STARTは、非戦略核弾頭の総保有量を制限していない。

SIPRIの核軍縮・軍備管理・不拡散プログラムの上級研究員で、米国科学者連盟(FAS)の核情報プロジェクトのディレクターであるハンス・M・クリステンセン氏は、「冷戦終結後、世界の核兵器を特徴づけてきた削減が終了したことを示す明確な兆候がある。」と語った。

タリク・ラウフ国際原子力機関(IAEA)前渉外政策調整部検証安全保障政部長は、IDNの取材に対して、「2021年2月の新START延長と6月のジュネーブにおける米ロ首脳会談を受けて、戦略の安定とさらなる核軍縮のための暫定的な対話が開始されました。しかし、この対話は、ロシアのウクライナ軍事侵攻(昨年2月)を受けて中断し、現在は残念ながらさらなる核軍縮の見通しは立っていません。また、中米間の核軍備管理対話も欠落したままです。」と指摘した。

国連安保理常任理事国でもある現在のNPT上の核兵器国5カ国(米国、英国、フランス、ロシア、中国)は、核軍縮の義務を果たしておらず、他の4つの核保有国も制約を受けないままである。

Russian President Vladimir Putin addresses participants of the Russia-Uzbekistan Interregional Cooperation Forum in Moscow, Russia/ By Kremlin.ru, CC BY 4.0
Russian President Vladimir Putin addresses participants of the Russia-Uzbekistan Interregional Cooperation Forum in Moscow, Russia/ By Kremlin.ru, CC BY 4.0

「世界は再び核戦争の危険が高まる危険な時代に入り、9つの核保有国すべてで首脳のリーダーシップが欠如しており、改善の見込みはほとんどありません。」とラウフ氏は警告した。

1996年の包括的核実験禁止条約(CTBT)と国連の核兵器禁止条約(TPNW)に携わったアクロニム軍縮外交研究所事務局長のレベッカ・ジョンソン博士は、IDNの取材に対して、「恐ろしいことに、冷戦終結時に政府がすべての核兵器を廃絶できなかったことが、いま悲惨な結果をもたらしています。ウクライナ侵攻後のウラジーミル・プーチン大統領による核の脅威は、いかなる政府にも核兵器を保有させることが人類にとって実存的な危険であることを示しています。」と語った。

また、「もし、このような政治指導者の強欲と近視眼を止められなければ、数十年前に環境破壊をもたらす化石燃料に固執して気候変動に対処できなかった政府や産業のように、世界を破壊してしまうかもしれません。世界の安全保障のために責任ある行動ができないことが明らかな核中毒者とガス中毒者を止めるために、私たち、民衆が一緒に行動することが重要です。」と語った。

ceridwen / Greenham Common women’s protest 1982, gathering around the base / CC BY-SA 2.0

「1980年代に市民社会が立ち上がり、核兵器や核基地が削減され始めたが、その結果、核軍縮ではなく、核管理が行われるようになったのです。」とジョンソン博士は指摘した。同氏は、1982年から87年までグリーナムコモン英空軍基地周辺の「女性平和キャンプ」に滞在し、NATOの中距離核ミサイル配備に反対する運動を展開したため投獄された経験を持つ。

核不拡散条約(NPT)が1995年に無期限延長された後も、核兵器の増強は続けられた。核武装国は5カ国から9カ国に増え、いずれも軍事費を増やし続けている。

「こうした背景があったからこそ、大多数の国や 人々が集まって、2021年にTPNWを発効させることができたのです。あとは国際人道法との兼ね合いで、この条約を機能させなければなりません。」

「優先すべきは、TPNWの法的な禁止事項、規範、要件を強化し、定着させることにあります。さらに、核の脅威を常態化し、戦術兵器と戦略兵器、あるいは第一次利用と第二次利用の区別を殊更に強調することによって、核使用の結果を無視しようとする人々の議論に付随する危険性を認識することが重要です。」

「このような偽りの区別は、報復核攻撃を正当化するのに役立ち、大量殺人、核の冬、世界的な飢餓という恐ろしい結果を伴う核戦争を可能にするのです。核兵器の運搬範囲や弾頭の大きさに関係なく、核兵器の使用は人道に対する罪として告発されなければなりません。」とジョンソン博士は語った。

SIPRIによると、英国は2021年、数十年にわたる漸進的な軍縮政策から一転して、核弾頭の総保有量の上限を引き上げる決定を発表した。中国やロシアの核の透明性の欠如を批判する一方で、英国は今後、同国の運用中の核兵器の備蓄量、配備済み核弾頭やミサイルの数値を公にしないことも発表している。

2021年初頭、フランスは第3世代の原子力弾道ミサイル潜水艦(SSBN)の開発計画を正式に開始したと指摘した。

インドとパキスタンも核兵器を拡大しているようで、両国は2021年に新型の核運搬システムを導入し、開発を続けている。

核兵器保有を公にしていないイスラエルも、核兵器の近代化を進めているとみられるとSIPRIは指摘した。

一方、北朝鮮は引き続き軍事核計画を国家安全保障戦略の中心的な要素として優先している。北朝鮮は2021年中に核実験爆発や長距離弾道ミサイル実験を行わなかったが、SIPRIの推定では、現在最大20個の弾頭を組み立て、合計45〜55個の弾頭に十分な核分裂性物質を保有していると見られている。

SIPRI大量破壊兵器プログラムのマット・コルダ研究員(FAS核情報プロジェクトの上級研究員)は、「核保有国が軍縮のために直ちに具体的な行動をとらない場合、世界の核弾頭の在庫はまもなく冷戦後初めて増加に転じるかもしれません。」と語った。

さらにジョンソン博士は、「イラク、アフガニスタン、ウクライナでの戦争やその他の世界各地の武力紛争が明らかにしているように、軍国主義、核の脅威、環境破壊は、あらゆる人々に対する暴力、家父長制、産業の連続的な危害の一部に他なりません。」と語った。

核戦争を防ぐには、何百万人もの立派で勇気ある人々が、卑劣な者たちを失脚させ、軍縮と平和のために行動を共にすることが必要である。

Photo: ICAN campaigners protest in Sydney, Australia on 22 January.
Photo: ICAN campaigners protest in Sydney, Australia on 22 January.

「女性は、暴力的な脅威を拒否し、平和的な関係を築き、地球の資源を共有するための持続可能な方法を生み出す最前線にいます。だからこそ私は、核軍縮、気候変動への正義、そして平和のために、執筆、講演、行動を続けているのです。」

United Nations Office at Vienna/ Wikimedia Commons
United Nations Office at Vienna/ Wikimedia Commons

「私はCOP26に参加するためにグラスゴーに滞在し、6月21日から23日に開かれるTPNW第1回締約国会議に提出するTPNWの履行に関するワーキングペーパーを作成しました。 各国政府は、(核禁条約に加盟して)核兵器の威嚇や使用が許されない環境になれば、私たちのリードに従うでしょう。そして、核兵器の製造や配備に資金を費やすことをやめることになります。」

「私たちは核兵器の使用を止め、すべての核兵器を廃絶することができます。私たちは戦争に反対し、すべての国際条約と協定を軍縮、平和、環境のためにもっと効果的に機能させるために協力しなければなりません。」とジョンソン博士は語った。(原文へ

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気候変動対策の1000億ドル支援公約、果たされず

【国連IDN=タリフ・ディーン

6月初めにスウェーデンで開催された国際会議「ストックホルム+50」で、国連のアントニオ・グテーレス事務総長が、干ばつや洪水、熱波、公害、多様性の喪失などが世界的にもたらしている壊滅的な影響を軽減するための資金提供を富裕国が怠っていることに対して強い不満を表明した。

資金不足は、貧困や飢餓を2030年までに根絶するとした国連の17項目の持続可能な開発目標」(SDGs)の履行にも影を投げかけている。

「私がはっきりと言ってきたのは、先進国は2020年以降、年間1000億ドルを途上国に支援するという公約を実行すべきということです。そして、残念なことにそれは2020年には実行されず、2021年にも実行されていない。これまでのところ、2022年にも実行されるのかどうかはっきりしていません。」とグテーレス事務総長は嘆いた。

Antonio Gutierrez, Director General of UN/ Public Domain
Antonio Gutierrez, Director General of UN/ Public Domain

しかし、開始から3年が経過したコロナ禍と、ロシアによる2月以降のウクライナ侵攻がもたらした壊滅的な経済的影響によって、資金提供の公約を果たすことが難しくなっている。

6月2・3両日に開かれた「ストックホルム会議から50年」会議は、1972年の国連人間環境会議から50年の節目に開かれたものだ。同会議は、スウェーデンの首都で開催された史上初めての環境に関する国際会議と言われ、1992年のリオデジャネイロでの歴史的な地球サミットへとつながっていった。

今回の会議では、17項目のSDGsのすべてが健全な地球に依存しているとの見方が示された。「私達は気候変動、公害、生物多様性の喪失という三重の危機による被害を回避する責任があります。地球の自然体系は私達の要求に追いつけません。それは地球だけではなく自分たちをも傷つけているのです。健全な環境が、すべての人々、17項目のSDGsすべてにとって必要なことです。それによって、食料や清潔な水、医療品、気候規制、異常気象からの保護が提供されることになるのです。」とグテーレス事務総長は語った。

スウェーデンが主催した今回の会合は、1972年のストックホルムでの会議に源流を持つ国連環境計画の本拠地でもあるケニアの支援も得ている。

ケニアのケリアコ・トビコ環境大臣は、「この2日間で出てきた様々な声や大胆なメッセージは、この会議の可能性に応え、私たちの唯一の惑星である地球に、私たちの子供や孫のための未来を築きたいという、真の願いを示しています。私達は単に記念するためにここに来たのではありません。1972年以来の歩みを踏まえて、より良い未来を築くために来たのです。」と語った。

Inger Andersen (environmentalist), 2010./By CIAT - Inger3Uploaded by mrjohncummings, CC BY-SA 2.0
Inger Andersen (environmentalist), 2010./By CIAT – Inger3Uploaded by mrjohncummings, CC BY-SA 2.0

「ストックホルムから50年会議」の事務局長であり、国連環境計画の代表でもあるインガー・アンダーセン氏は、「私達は国連人間環境会議から50年の今年、何かを変えねばならないとの思いをもってここに来ました。もし変わることができなければ、気候変動、自然と生物多様性の喪失、公害と汚染という地球の三重の危機が加速されることになるでしょう。このエネルギーと行動への公約を前に押し進めて私達の世界を形成しなくてはなりません。」と語った。

17項目のSDGsの中で、第13項目が気候変動対策を呼びかけている。

国連開発計画によると、気候変動からの大きな影響を受けていない国はひとつとして存在しない。温室効果ガスの排出は1990年より5割以上も増えている。地球温暖化は気候システムに長期的な変化を引き起こし、いま行動しなければ不可逆的な結果がもたらされる危険性がある。

気候変動が原因で起きている災害による経済的損失の年間平均は数千億ドル規模に上る。国連開発計画によれば、これとは別に地球上の災害で気候変動関連が91%もあり、1998年から2017年の間に死者130万人、負傷者440万人を数えている。

SDGsは、気候変動に対応し低CO2排出型の開発に投資する途上国のニーズに応えるために年間1000億ドルが必要との目標を立てている。

グテーレス事務総長は過去を振り返ってこう述べた。「スウェーデンの偉大な故オロフ・パルメ首相が当時述べたことを引用します。『人間―環境の分野では、人間にも国家にもそれぞれ独自の未来などと言うものはない。私たちの未来は共通のものだ。私たちはそれを共有して共に築き上げねばならないのです。』と。」

「気候変動からコロナ禍、ウクライナ戦争に至るまで、私たちが抱えている世界的な問題全体にわたって、故パルメ首相の見方は今でも意義を持っていると信じています。」とグテーレス事務総長は語った。

また、世界のあらゆる部門の指導者に対して、世界を「この混乱から救い出す」よう訴え、G20の諸政府に対して石炭インフラを解体するよう求めた。経済協力開発機構(OECD)の国々に関しては2030年までに、その他の国々に関しては2040年までに石炭利用から脱却するよう訴えている。また、すべての金融関連アクターに対して、化石燃料への投資を止めた代わりに再生可能エネルギーに投資するよう求めた。

会議では4つの全体会が開かれ、世界の政治指導者らが、2030アジェンダと持続可能な開発目標の履行を加速させる大胆な環境関連活動を呼びかけた。

指導者による3つの対話セッション、若者による会合など無数のサイドイベント、ウェビナー、今回の会議に向けた地域レベルでのさまざまな利害関係者による一連の協議によって、世界中の多くの人々が集って議論に参加し、自分たちの見解を披露した。

事前の予測によると、6000人が個人で参加登録をした。そこには、参加146カ国からの10人の国家元首、110人の閣僚も含まれている。

気候変動の帰結に対する警告は、国連総会のアブドラ・シャヒド議長からも寄せられた。議長は、海面の上昇によって絶滅の危機に立たされている島嶼国モルディブの出身である。

Abdulla Shahid giving remarks during a briefing on Climate Change and Security: Human Rights Challenges and Opportunities in Small Island Developing States.
Abdulla Shahid giving remarks during a briefing on Climate Change and Security: Human Rights Challenges and Opportunities in Small Island Developing States.

「今日、私たちは地政学的なものから環境問題まで、相互に関連した多くの地球規模の危機に直面しており、人類の進歩と繁栄が健全な環境と深い相関関係にあることが改めて明らかになりました。こうした危機を解決し、持続可能な開発に向けた2030アジェンダを実行する能力は、現在直面している地球規模の難題に対処する私達の能力にかかっている。」と語った。

またその例として、「パンデミックによる世界経済やサプライチェーンの混乱は、私たちの生活、食料安全保障、福祉に影響を与えています。しかし、気候危機が続き、その規模と深刻さが加速度的に増大するにつれ、その影響に効果的に対処する私たちの能力はさらに低下していくことになります。」と、シャヒド議長語った。

さらに、「私達の世界の食料システムは、気候変動の帰結や生態系の破壊という制約の下で困難に直面しています。干ばつ、土壌の劣化、砂漠化、海洋生物等の生物多様性の喪失、重要な天然資源の減失は、私達が直面している問題の一部に過ぎません。よりよい将来を生み出すために私達は子どもたちや孫たちに対する責任を持っているのです。」と語った。

他方、6月7日に発表された「オックスファム」の調査報告書によると、洪水や干ばつのような異常気象に対応する国連の人道支援は20年前の8倍の規模になっており、ドナーは要請に応えることができていない、という。

国連による気候変動関連支援要請2ドルあたり、ドナー国は1ドルしか支援できていない。

2000年から2002年にかけての異常気象関連人道支援の年間平均要請額は少なくとも16億ドルであり、2019年から2021年にかけてはその819%にあたる平均155億ドルに増えている。

今日の気候変動の原因のほとんどを作った富裕国は、2017年以来、この要請の54%しか満たしておらず、330億ドルが不足している。

異常気象によって頻繁に人道支援要請を繰り返している国としては、アフガニスタン・ブルキナファソ・ブルンジ・チャド・コンゴ民主共和国・ハイチ・ケニア・ニジェール・ソマリア・南スーダン・ジンバブエが挙げられる。

[オックスファムの]報告書『支払いをする(Footing the Bill)』は、気候変動によって異常気象の頻度と激しさが増していることは、すでにして不足している人道支援システムへに対する圧力になっていると指摘している。

Footing the Bill/ Oxfam
Footing the Bill/ Oxfam

嵐や干ばつ、洪水による破壊のコストとは、不平等を加速させることだ。貧困地域や低収入の国々の民衆が最も激しい被害を受けるが、彼らには富裕国が本来は対処すべきシステムや資金が欠けている。

地球上の富裕層上位1%が貧困層の半分の人々の2倍のCO2を排出している。

国連の要請は最も緊急の人道支援に焦点を当てているが、気候変動が国々の経済に与えている損失や損害の表面を僅かになでているだけに過ぎないとオックスファムは述べている。

2021年の異常気象による経済コストだけでも、世界全体で年間3290億ドル(史上3位)に上るのではないかと推定されている。これは、富裕国が途上国にその年提供した援助全体の2倍の額にあたる。

中低所得国に対する損失や損害のコスト、例えば、サイクロン後に住宅や病院を再建したり、シェルターや食料、緊急現金給付を提供するために必要な資金は、2030年までに2900億ドル~5800億ドルに達する可能性がある。これには、人命、文化、生活様式、生物多様性の損失といった非経済的損失は考慮されていない。

国連の要請は、気候災害のコストのうち、特に脆弱な人々にかかるコストの一部に過ぎず、苦しんでいる人々のほんの一部にしか届いていない。

オックスファムの調査は、国連の要請では、2000年以来、異常気象災害によって影響を受けた中低所得の国々の推定39億人のうち僅か4740万人、つまり8人に1人しかカバーできていないと指摘する。

SDGs Goal No. 13

オックスファムのガブリエラ・ブッチャー事務局長は、「人間の活動は産業化以前のレベルより地球の平均温度を1.1度押し上げ、私達は今その影響に苦しんでいます。さらに憂慮すべきことに、現在の予測では『1.5度上昇』というセーフティ・ラインすら上回りかねません。気候破壊のコストは上昇し続け、今排出量を削減しなければ、人類に破滅的な結果をもたらすでしょう。人命や家屋、学校、雇用、文化、土地、先住民族や地域の知恵、生物多様性といった、この背後にある莫大な経済的・非経済的損失と損害を無視することはできません。」と語った。

さらに、「これは私達が長い間警告を続けてきた気候の混沌状態です。気候変動によって最大の被害を受けている多くの国々は、紛争や食料価格の上昇、コロナ禍などの影響を既に受けています。これが、不平等の拡大、強いられた大規模人口移動、飢餓、貧困につながっているのです。」とブッチャー事務局長は警告した。(原文へ

INPS Japan

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アルビニズムの人たちに対する恐ろしい攻撃が報じられる

【ニューヨークIDN=リサ・ヴィヴェス

2014年12月18日、国連総会は、アルビニズム(先天性白皮症)の人の権利並びに、拷問や残虐で非人道的な品位を傷つける取扱い、または刑罰の対象とならない、という彼らの権利を保護し守るために、6月13日を「国際アルビニズム啓発デー」と定めた。

今年、ジュネーブの国連人権理事会で、ムルカ・ミティ=ドラモンド弁護士が、アルビニズムの人々(=アルビノとも言う)の権利状況に関する国連独立専門家として最初の報告を行った。

「ほんの数日前、2つの国で、アルビノが攻撃され、誘拐されたという不穏な報告を受けました。いずれの国でも、ほんの数カ月前まではアルビノに対する攻撃はほとんど、或いは全く知られていませんでした。犠牲者の1人は子供で、眼球と臓器を摘出された後、川に遺棄されていたと報じられています。儀式に使われたのは間違いありません。」とミティ=ドラモンド氏は語った。

Muluka-Anne Miti-Drummond, UN Independent Expert on the enjoyment of rights by persons with albinism OHCHR

過去10年間に、国連人権理事会には、アルビノの子どもや大人に対する600件以上の襲撃事件が報告されている。アルビノの体の一部が、それを所有する人に幸運をもたらすと信じる人々がいるため、魔術がこうした襲撃事件の根本原因の1つであると特定されている。

ミティ=ドラモンド氏は、人権理事会で説明した事件のような、アルビノに対する衝撃的な攻撃を、「憎悪犯罪と有害な慣行 」と呼んだ。

アルビニズムは、皮膚、髪、目にほとんど或いは全く色素がない遺伝的疾患である。サハラ以南のアフリカで最も多く、最も深刻なのは眼球アルビニズムで、白い髪、ピンク色の肌、弱視や失明、皮膚癌に罹りやすくなるなどの特徴がある。

アルビニズムは遺伝的に受け継がれるもので、有病率は地域によって異なるが、サハラ以南のアフリカで最も高い割合となっている。セネガルとケニアでは数千人がアルビニズムと共に生きており、タンザニアはアルビニズムと共に生きる人々の数が最も多いと報告されている。カメルーンのアルビノ普及協会は、アルビノの子供が生まれた時に親が放置し、嬰児殺が一般的であることを報告している。

国連人権高等弁務官事務所によると、アルビノハンターは人間の遺体全体を最高7万5千ドルで売り、腕や脚は2千ドル程度の値がつくこともある、という。また、アルビノの墓が掘り返され、体の一部を調達するために荒らされることもよくあることだ。

アルビニズムは、社会的にも医学的にも大きな誤解をされている。アルビノの身体的外観は、しばしば迷信に影響された誤った考え方や 神話の対象となり、彼らに対する排除や社会的疎外を助長している。このことが、さまざまな形の偏見や差別につながっている。

UNIC Tokyo
Salif Keïta in 2015, Festival Internacional Cervantino, Mexico.By ProtoplasmaKid, CC BY-SA 4.0

マリのシンガーソングライターで、古代マリ王国の直系の子孫でもあるサリフ・ケイタ氏は、日頃から自らの著名人としての立場を利用して、アルビニズムに関する啓蒙活動を行ってきた。

自身もアルビノであるケイタ氏は、「アルビノの現状をもっと世界に知らしめなければなりません。非人道的な扱いをする人々を抑止できるように、アルビノを守るためには、あらゆる形でより多くの支援が必要です。私はアルビノとして生まれ、人生は決して楽なものではありませんでした。私はこの現実を意識して生きようと思い、この財団を設立しました。特に子供たち、教育を受けられないアルビノの人々のために何かしようと思ったのです。」と語った。

アフリカのアルビノたちは、さまざまな偏見や社会的スティグマに直面している。彼らはしばしば、他の人種に属しているとか、或いは幽霊や精霊のように見なされている。

今年、マリで5人のアルビノが犠牲になった。選挙期間中は、より深刻な事態になる。「選挙があるときは、最悪の事態を避けるために、彼らの安全を確保するようにしています。」とケイタ氏は言う。「大物政治家がアルビノの生け贄を要求しても、権力者だからと処罰されることはありません。アルビノの生け贄に関わった者を罰することができるよう、世界中の人々にも我々の活動に参加して頂きたい。」とケイタ氏は語った。(原文へ

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