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|視点|ウクライナ紛争は理性の自殺につながる(ロベルト・サビオIPS創立者)

【ローマIDN=ロベルト・サビオ

Russian President Vladimir Putin addresses participants of the Russia-Uzbekistan Interregional Cooperation Forum in Moscow, Russia/ By Kremlin.ru, CC BY 4.0
Russian President Vladimir Putin addresses participants of the Russia-Uzbekistan Interregional Cooperation Forum in Moscow, Russia/ By Kremlin.ru, CC BY 4.0

ロシアのウクライナ侵攻から6週間が経過し、そろそろ有名なラテン語の格言CUI PRODEST(いったい誰〈=どのアクター〉の得になるのか)に着目しながらこの紛争を把握する必要があるようだ。…そして明らかに言えることは、誰も何も得ていないこと、そして、私たちは「理性の自殺(Suicide of Reason)」時期にあるということだ。

まずは最初のアクター(=ウラジーミル・プーチン)を見てみよう。彼には2つの目的があった。つまり1つ目は、G8から追報された現状から再び世界の指導者の舞台に返り咲くことだった。しかし、(ウクライナ侵攻で)彼は永遠にのけ者になってしまった。もう1つの目標は、ロシア語を話す人々を再統一することであった。しかしこちらの方も、その意図に反してロシア系の人々を何世代にも亘って分断させた他、長い目で見れば、ロシアそのものも中国に依存する状態に陥らせてしまった。

Photo: US President Joe Biden. Source: The Conversation.
Photo: US President Joe Biden. Source: The Conversation.

次に2人目のアクター(=ジョー・バイデン)を見てみよう。彼はこの危機に際して西側諸国のリーダーとなることで、米国内での人気を取り戻したいと考えていた。ウクライナ戦争から6週間が経過し、彼の支持率は42%から43%に上昇した。彼は民主党が過半数を失う11月の中間選挙までには既にレームダックになっている公算が大きい。また現実的に、2024年の大統領選挙で再選される見込みはない。つまり、彼の最初の目標は達成できないだろう。

長い目で見れば、バイデンはロシアを、米国の真の敵対国である中国の腕の中に追いやったようなものだ。そして今、プーチンを犯罪者とするよう要求している。米政府もロシア政府と同様に、国際刑事裁判所にも、クラスター爆弾禁止条約にも、化学兵器禁止条約にも署名していないのだが、これらの悪事でロシアを非難しているのだ。

次に3人目のアクター(=欧州)を見てみよう。(ウクライナ危機を受けた)再軍備によって、欧州は再びドイツを経済大国だけでなく、向こう5年間で1000億ドルを軍事費に拠出する軍事大国にもしようとしている。私たちは2つの世界大戦を忘れてしまった…そして明らかにフランスと英国ではナショナリズムが再燃するだろう。欧州は再軍備によって、欧州連合(EU)のバランスを崩した上に、食糧、エネルギー、原材料、インフレ、GDPの減少という深刻な問題を自らに負わせてしまった。そしてこの影響は、欧州の貧困層が少なくとも今後3年間は感じることになるだろう。さらに長い目で見れば、ロシアを欧州から追い出したことになる。

Official portrait of Volodymyr Zelensky/ By President.gov.ua, CC BY 4.0
Official portrait of Volodymyr Zelensky/ By President.gov.ua, CC BY 4.0

次に4人目のアクター(=ウォロディミル・ゼレンスキー)を見てみよう。私たちが英雄にしたこの人物は皆に説教をすることができ、国連に解散を求めることさえできる。国連が彼の訴えを聞かなければ、彼は今や自分の役割の虜となり、プーチンのように妥協することができない。ドイツのフランク・ヴァルター・シュタインマイヤー大統領が親ロシア派だからという理由で、面会を拒否することさえできる。しかし、ドイツの大統領は国民が直接選挙で選んだわけではない。私の知る限り、シュタインマイヤー大統領はロシアの問題で選挙キャンペーンをしたことはない。しかし今、私たちはゼレンスキーを世界の裁判官として委任してしまった。これはさらに何千人もの市民の死を意味する。しかしベルトルト・ブレヒトはよく言ったものだ。「英雄のいない国が不幸なのではない。英雄を必要とする国が不幸なのだ。」

次に、アクターではなく、犠牲者である人類について話そう。気候変動を巡る戦いは棚上げにされた。「理性の自殺」に投じられた金額があれば、地球における人類の存在を脅かすものとして、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が指摘した問題を全て解決できたはずだ。地球がプーチンやバイデンに興味を持っているとは思えない。地球の気温が1.5度上昇する前に、私たちに残された(気候変動がもたらす最悪の事態を回避する)僅かな可能性は閉じつつある。

Wheat (Triticum aestivum) near Auvers-sur-Oise, France, June 2007/ Wikimedia Commons
Wheat (Triticum aestivum) near Auvers-sur-Oise, France, June 2007/ Wikimedia Commons

そして、私たち人類には、既に新型コロナのパンデミックの影響で貧困の淵に立たされている人々が約8億人もいる。彼らにとって、小麦の価格が20%、トウモロコシの価格が25%上昇することは、単純に飢餓を意味する。国際連合児童基金(ユニセフ)の発表によれば、アフリカの栄養不良の子供の数は2800万人に達しているが、開発援助の資金はウクライナに流れている。これは「理性の自殺」を象徴的に表している現実である。ウクライナの紛争に対する欧州の援助は、EUが長年かけて構築した平和促進基金から拠出されている。

要するに、私個人としては、これらの出来事はすべて「夢遊病者たち(Sleepwalkers)」が引き起こした狂気の沙汰だと思わざるを得ない。これは、歴史家が第一次世界大戦を引き起こした当事者らを指して呼んだもので、彼らは本当に何も考えずに紛争に突入した。彼らの狂気は、関係した帝国の終焉を招いた。すなわち、ドイツ帝国、ロシア帝国、オーストリア・ハンガリー帝国、そしてオスマン帝国である。従って、ウクライナに関与したアクターらの過ちや理由に関するこうした議論はすべて、彼らにとっては有益でも、本質的な問題に比べれば取るに足らないものにしか思えない。

私たちには、長期的な視点を持てない「テストステロン的」な支配層がいる。本来ならば長期的な問題とその複雑さ(賛成/反対の二元論ではない)に目を向けなければならないのに、「プーチン賛成、プーチン反対」というメディアが掻き立てるヒステリーの罠に陥っている(イタリア最大の日刊紙「コリエレ・デラ・セラ」の過去45日分の紙面の主要部分をウクライナ関連記事が占め、その他の世界の出来事は消えてしまったかのようだ)。

Photo Credit: climate.nasa.gov
Photo Credit: climate.nasa.gov

メディアは概して、プロ意識の欠如を見事に証明している。記事は出来事にのみ焦点があてられ実質的にプロセスが無視されている。主要なコメンテーターの一人は、もし私たちがプーチンを止めなければ、彼は(欧州大陸の西端である)リスボンまで手を伸ばすだろう、と書いている… 私に言わせれば、人類は羅針盤を失ってしまったのだろうか。ラテン語では、神々が人間を罰しようとしたとき、まず第一に、彼を狂気に陥らせたと言われている。そして、ローマ法王の訴えはほとんど報道されない。…人類はいつになったら、寛容と対話を平和のための重要なツールとして再び考慮し利用し始めるのだろうか。(原文へ

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ウクライナをめぐる核戦争を回避するために

ウクライナ戦争におけるエスカレーションとデ・エスカレーション

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

これは、2022年3月14日にデュースブルク・エッセン大学の「Development and Peace Blog」に掲載された記事の短縮版です。

【Global Outlook=トビアス・デビール、ハルバート・ウルフ 】

遅くとも2021年からウクライナ紛争をエスカレートさせてきた犯人が明白に存在する。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領である。彼は、その好戦的で冷笑的な戦争レトリックによって平和的解決の可能性を潰した。ウクライナは非武装化を要求されているだけでなく、存在する権利さえ否定されている。これに加え、「非ナチ化」という突拍子もない言い分や、西側が侵略を邪魔すれば核エスカレーションも辞さないという脅しもある。プーチンは、いわゆる「抑止力」を警戒態勢に置き、西側の制裁を宣戦布告とみなし、作戦面でもレトリック面でもエスカレートしていった。(原文へ 

現在の非常にエスカレートした状況をもたらした責任の所在がどうあれ、われわれは、危機を脱する道を見いだすために紛争の発端を冷静に分析するべきである。核兵器という側面があるために、われわれはすでに極めて危険なエスカレーションのダイナミクスの中にあり、両陣営がそれに関与している。現在の非対称な政治的責任と「有責性」の帰属が明白であるため、西側諸国は道徳的優越感を抱き、自らの行動は合理的にも規範的にも正当であると考えたくなるだろう。しかし、紛争のエスカレーションに関する研究成果を偏見なく受け入れることも、自らの道徳的自信に負けず劣らず重要である。

非常にエスカレートした紛争

1960年代のエスカレーション論者(ハーマン・カーンなど)は、エスカレーションラダー(Escalation ladder)という概念を説明し、エスカレーションの各段階における意思決定の選択肢を政府に提示しようとした。現在、われわれは明らかにエスカレーション拡大の段階にいる。現代の紛争研究では、エスカレーションの罠は双方にとって望ましくない結果をもたらす恐れがあり、四つの核保有国が関与すれば破滅的な結果を招くことが示されている。

フリードリッヒ・グラスルは、おそらくドイツ語圏では最も有名なエスカレーションラダーを(2011年に)開発した。ウクライナにおける紛争と戦争に当てはめてみても、その説得力には目を見張るものがある。グラスルは、紛争を次の9段階(ドイツ語の原文から独自に翻訳したもの)に分類した。

  1. 硬化
  2. 討論、論争
  3. 言葉より行動
  4. イメージ、連合
  5. 面目失墜
  6. 脅迫戦略
  7. 限定的破壊攻撃
  8. 破砕
  9. 双方破滅

ウクライナ戦争では、政治、経済、軍事と、さまざまな分野でエスカレーションが見られる。政治面では、エスカレーションは主に紛争の責任は誰にあるかに関するものである。プロパガンダと虚偽情報により、ロシアでは、ウクライナや西側諸国とはまったく異なるイメージが形成されている。経済面では、制裁がエスカレーションの中心にある。しかし、最高レベルのエスカレーション(金融制裁、SWIFTからの排除、西側による原材料輸入の停止、ロシアによる原材料輸出の停止)にはまだ達していない。ウクライナ戦争は、明らかに第7段階にある。この段階まで、軍事的状況はロシアの行動により明らかにエスカレートしている。紛争の両当事者の間には多くの違いがあるが、どちらの側も相手の「人間の質」(グラスルの用語)を否定する言説を用いている。また「限定的破壊攻撃」は、「自国への比較的小さな損害が……利益と見なされる」場合は「適切な対応」とされる。

上述した核の脅迫により、ロシア指導部はすでに第9段階(双方破滅)に近づきつつある。これは、「自己の破壊と引き換えにした相手の破壊」を意味する。しかし、西側も、制裁を強化するばかりでデ・エスカレーションを目指してはおらず、現在の目標が第8段階(破砕)に近づきつつあるのはあまりにも明白である。これは、「敵のシステムを麻痺させ、崩壊させる」ことを目指すものである。

冷戦になぞらえるのは時代遅れ

ソ連崩壊とともに終焉した第1次冷戦は、意味深長な略語MAD(相互確証破壊)に象徴されるパラドックスを体現していたといえるだろう。核兵器とそれに影響を受けた合理性を前に(自らが破壊される危険を冒すな!)、MADは「狂おしいほど」うまくいく、つまり効果的であることが立証された。その一方で、相互確証破壊が軍事的勝利を不可能にすると認識したことは、同時にデ・エスカレーションとそれに続くデタント政策の前提条件となった。しかし、恐怖の均衡は、かなり正確に特定できる前提の下でしか機能しなかった。

  1.  少なくともキューバ・ミサイル危機の終結以降は、どちらの側も予測可能な行動をしていた。
  2.  誤って、または意に反して世界戦争が起こらないよう、コミュニケーションのチャンネルは開拓された。
  3.  一方が他方に対し、存亡にかかわる経済的損害を与えることができないよう、抑止力を組み込んだ意図的な相互依存の政策が策定された。
  4.  合意された上限設定、技術的可能性の制約、信頼醸成措置を通した軍備管理によって、危険な軍備増強を抑制した。
  5.  東西が平和的共存を目指すことに合意した。

今日多くの人が冷戦の再来を口にする。しかし、現在の状況を考えると、この例えは時代遅れに思える。上記五つの条件から見ると、まず目につくことは、プーチンの危険なロジックが、レオニード・ブレジネフ以降のソ連共産党政治局員のリスク回避型で非常に予測可能な思考回路とはもはや相いれないものとなっていることである。また、条件2と条件5も、もはや機能していない。

デ・エスカレーションの政策に向けて

西側がデ・エスカレーションと力の政策を同時に追求することは、六つの異なる認識に基づくべきである。

  1.  経済制裁はロシアに大きな打撃を与えなければならない。しかし、完全に追い詰められたときに「敵も滅びるならば自殺を望む」(グラスル)可能性がある体制の崩壊を目指すべきではない。「体制転換」の試みが無効であることは、はるかに小さな国で(アフガニスタン、イラク)すでに立証されている。
  2.  デタント政策の根幹の一つ(「貿易を通した変革」)は、部分的に裏目に出ている。経済的に密接な結びつきがあり、対立関係にある国同士は、紛争を軍事的に解決するのではなく協力する傾向があるという1970年代の理論は、ウクライナ戦争の場合には両刃の剣であることが証明されている。ロシアの天然ガス、石油、石炭への経済的依存は、脆弱性と脅迫を意味する。これは、西側による強圧的な経済措置のエスカレーションを危うくする一方、断固とした懲罰的経済措置を講じる余地を狭めるものでもある。
  3.  ウクライナに対する防衛兵器の提供を超えた軍事的支援は、危険な火遊びであり、エスカレーションラダーの段を上ることである。これは特に、議論されているポーランドのミグ29戦闘機の展開に当てはまる。それらをウクライナに後方支援するだけでも、NATOの直接的な戦争関与の瀬戸際まで危険なほど近づくことになる。
  4.  ウクライナが飛行禁止区域の設定を求めるのは人道的見地から理解できるが、それと同じぐらい、ロシアから見ればそれはNATOによる宣戦布告であることも理解できるし、どのような結果が待ち受けているかは目に見えている。
  5.  短中期的には、核抑止力を囲い込む最低要件を盛り込んだ包括案をまとめる必要がある。より予測可能な状態に戻す、外交関係の断絶を避ける、経済的相互依存関係を大幅に低減するが完全な分断は避ける、軍備管理を議論する(国境地帯から兵器システムを移転する、ベラルーシは核兵器を保有しない)、欧州における共通安全保障体制という視点から欧州安全保障協力会議(CSCE)のような話し合いの場を設置することなどである。
  6.  これらの後に、デ・エスカレーション、信頼醸成、軍備管理、軍縮が続く。「デ・エスカレーションは心の中で始まる」という格言には、重要な心理的要素が含まれている。現在、国内政治の視点から「悪」を指し示すのは当然と思われるが、マニ教的世界観はそれほど役に立っていない。悪魔化し、屈辱を与えることは、交渉の場への道筋をつけるものとはならない。

もちろん、戦争がウクライナとその国民に容赦ない損害を与えている現在、新たなデタント政策を論じるのは時期尚早である。目下の状況は良くない。しかし、デタントの歴史を見ると、1970年代と1980年代にデタントが成功を収めたときも、同じぐらい見込みがないと思われる状況であった。相互の核の脅威、東西ブロックの対立、ドイツの分断、体制間のイデオロギー競争があったにもかかわらず、少なくともある程度までは緊張を緩和し、平和を促進する条約を締結することができたのである。今日の状況は解決不可能な対立と見なされることもあるが、軍事的手段にのみ頼るようなことがあってはならない。

トビアス・デビールは、デュースブルク・エッセン大学(University of Essen/Duisburg)(ドイツ)で国際関係学教授、開発平和研究所(Institute for Peace and Development)副所長、国際協力研究センター(Centre for Global Cooperation Research)副所長を務めている。

ハルバート・ウルフは、国際関係学教授でボン国際軍民転換センター(BICC)元所長。2002年から2007年まで国連開発計画(UNDP)平壌事務所の軍縮問題担当チーフ・テクニカル・アドバイザーを務め、数回にわたり北朝鮮を訪問した。現在は、BICCのシニアフェロー、ドイツのデュースブルグ・エッセン大学の開発平和研究所非常勤上級研究員、ニュージーランドのオタゴ大学・国立平和紛争研究所(NCPACS)研究員を兼務している。SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)の科学評議会およびドイツ・マールブルク大学の紛争研究センターでも勤務している。

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世界の軍事費、初めて2兆1000億ドル超で過去最高を更新

【ニューヨークIDN=タリフ・ディーン

世界の軍事費は昨年、過去最高を更新し、2兆1000億ドルという驚異的な金額に達した。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が25日に発表した最新の数値によると、2021年の5大支出国は米国、中国、インド、英国、ロシアで、合計で支出の62%を占めている。

2020年3月に始まった事実上の世界的なパンデミック封鎖にもかかわらず、軍事費の増加は衰えることなく続いている。

Image credit: Royal United Services Institute (RUSI)
Image credit: Royal United Services Institute (RUSI)

SIPRIの軍事費と武器生産プログラムの上級研究員であるディエゴ・ロペス・ダ・シルバ博士は、「新型コロナのパンデミックによる経済的打撃の中でも、世界の軍事費は過去最高水準に達した。」と述べている。「インフレのため、実質的な伸び率は鈍化した。しかし、名目値では、軍事費は6.1%伸びた」という。

ロシアのウクライナ侵攻と現在進行中の残虐な戦争が24日に3カ月目に入ったが、ロシアは2021年に国防費を2.9%増の659億ドルにして以来、ウクライナとの軍事対決を前に十分な装備を整えていた。この増加は、ロシアがウクライナ国境沿いの軍事力を強化する中で行われた。

これは3年連続の増加で、ロシアの軍事費は2021年にGDPの4.1%に達していた。

Photo: Russian-made Su-30K fighter jets sold to Ethiopia. Source: Horn Affairs
Photo: Russian-made Su-30K fighter jets sold to Ethiopia. Source: Horn Affairs

SIPRIで兵器と軍事支出を専門とするルーシー・ベローシュドロー氏は、「高い石油・ガス収入」が2021年のロシアの軍事費増強に役立ったと述べている。

ロシアの軍事費は、エネルギー価格の低下と2014年のロシアのクリミア併合に伴う制裁が重なった結果、2016年から19年にかけて減少していた。ロシアの軍事費全体の約4分の3を占め、武器調達だけでなく運用コストの資金も含まれる「国防」予算枠は、1年の間に上方修正された。SIPRIによると、最終的には484億ドルで、2020年末の予算より14%増加した。

ウクライナの軍事費は、2014年のクリミア併合以来、72%上昇している。2021年の支出は59億ドルに減少したが、それでも同国のGDPの3.2%を占めている。

ウクライナに40億ドル近い兵器や軍事支援を提供してきた米国は、2021年に8010億ドル以上を支出し、20年から1.4%減少した。米国の軍事負担は、20年のGDP比3.7%から21年には3.5%へとわずかに減少した。

Photo: Laser Weapon System (LaWS) on USS Ponce. Credit: US Navy
Photo: Laser Weapon System (LaWS) on USS Ponce. Credit: US Navy

米国の軍事研究開発(R&D)資金は2012年から21年の間に24%増加したが、武器調達資金は同期間に6.4%減少した。21年には双方に関する支出が減少した。

しかし、SIPRIによれば、研究開発費の減少(1.2%減)は、武器調達費の減少(5.4%減)より小さいという。

SIPRIの軍事費と武器生産プログラムのアレクサンドラ・マークシュタイナー研究員は、「2012年から21年の10年間に研究開発費が増加したことは、米国が次世代技術により注力していることを示唆している」と述べた。「米国政府は、戦略的競合相手に対する米軍の技術的優位性を維持する必要性を繰り返し強調している」と述べている。

世界第2位の支出国である中国は、2021年に推定2930億ドルを軍事費に割り当て、20年と比較して4.7%増加した。

中国の軍事費は27年連続で増加している。2021年の中国予算は、25年まで続く第14次5カ年計画の下での最初のものであった。

日本政府は2021年予算の初承認後、軍事費に70億ドルを追加した。その結果、21年の歳出は7.3%増の541億ドルとなり、1972年以降で最も高い年間増加率となった。

オーストラリアの軍事費も2021年に4.0%増加し、318億ドルに達しました。

「南シナ海と東シナ海周辺における中国の自己主張の高まりは、オーストラリアや日本などの国々における軍事費の主要な原動力となっている。その一例が、豪州、英国、米国の三国間安全保障協定AUKUSであり、最大1280億ドルのコストをかけて原子力潜水艦8隻を豪州に供給することを計画している。」と、SIPRIのナン・ティアン上級研究員は語った。

SIPRIは、世界の軍事費に関するその他の注目すべき動きも取り上げている。

2021年、イランの軍事予算は4年ぶりに増加し、246億ドルとなった。イスラム革命防衛隊への資金は、21年も20年に比べて14%増加し、イランの軍事費全体の43%を占めた。

ナイジェリアは、2021年の軍事費を56%引き上げ、45億ドルに達した。この増加は、暴力的な過激派や分離主義者の反乱など、多くの安全保障上の課題に対応するためである。

2021年、イランの軍事予算は4年ぶりに増加し、246億ドルとなった。イスラム革命防衛隊への資金は、21年も20年に比べて14%増加し、イランの軍事費全体の34%を占めた。

The flag of the North Atlantic Treaty Organization (NATO).
The flag of the North Atlantic Treaty Organization (NATO).

欧州の北大西洋条約機構(NATO)加盟国8カ国は、2021年にGDPの2%以上を軍に支出するという同盟の目標に到達した。これは20年の実績よりも1カ国少ないが、14年の2カ国から増加している。

中・西ヨーロッパで第3位の支出国であるドイツは、2021年に560億ドルを軍事費に費やし、これはGDPの1.3%に相当する。インフレの影響で軍事費は20年に比べて1.4%減少した。

2021年のカタールの軍事費は116億ドルで、中東で5番目に大きな支出国となっている。カタールの21年の軍事費は、同国が21年以前に支出データを最後に公表した10年と比較して434%増となった。

インドの軍事費は766億ドルで、世界第3位となった。これは、2020年から0.9%、12年から33%増加した。国産兵器産業の強化を図るため、21年の軍事予算では資本支出の64%が国産兵器の取得に充てられた。(原文へ

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〈特別インタビュー〉 アフリカ・ルワンダ共和国 アーネスト・ルワムキョ駐日大使

この記事は、聖教新聞電子版が配信したもので、同社の許可を得て転載しています。

悲劇の歴史を越え“奇跡の発展”

差異の受容と尊重から平和な社会は築かれる

東アフリカの内陸国ルワンダが、ICT(情報通信技術)立国として注目を浴びている。同国では1994年、多数派民族であるフツ出身の大統領暗殺を契機に、フツの過激派や民兵集団が、約3カ月間で100万人以上といわれる少数派ツチの人々を殺害するジェノサイド(大量虐殺)が起きた。それから28年。同国は悲劇の歴史を乗り越えて復興を果たし、「アフリカの奇跡」と呼ばれるほどの経済成長を成し遂げた。きょう4月7日は、国連が定める「1994年のルワンダにおけるジェノサイドを考える国際デー」。同国のアーネスト・ルワムキョ駐日大使にインタビューし、同国の発展の原動力や、平和構築の方途などを聞いた。(聞き手=木村輝明、福田英俊)

――近年、ルワンダはICTの発展に力を注いできました。その結果、インターネットの国内サービス可能エリアは95%まで拡大し、ネットワーク普及率は東アフリカで第1位です。
  
2000年にポール・カガメ大統領が策定した国家開発計画「ビジョン2020」において、ICT政策は、その中核の施策でした。ICTの発達によって、教育、医療、農業、金融などの分野で成果を挙げることができると考え、その整備に3億米ドル以上をかけて投資しました。
 
その結果、多様な変革が生まれました。例えば、農業分野での革新です。農業従事者が銀行のある都市に移動することなく、電子決済で支払いを行えるようになったり、彼らが市場価格を知ることで、適正な商品価格で売買を行えるようになりました。
 
ICTは、わが国の経済成長の重要な原動力となっています。

――ICTの発展を軸に、ルワンダは大きな経済成長を続けてきました。世界銀行が発表した「投資環境ランキング2020」では、「不動産登記」「会社設立」の容易さなどが評価され、アフリカ第2位という、高い順位を得ていますね。
  
カガメ大統領は「ビジョン2020」を引き継ぐ「ビジョン2050」において、ルワンダが35年までに高中所得国に、そして50年までに高所得国になることを目標に掲げています。
 
ビジョンの全体像としては、福祉の向上とともに、国際社会と連携を取りながら公共投資、民間投資を生かしてルワンダを「技術革新の中心地」にすることを目指します。
 
また、日本からも国際協力機構(JICA)を通じて、補助金や技術支援など多くの協力を受けています。日本を含む各国と協力していけば「ビジョン2050」も達成できると考えています。

――ルワンダは、国連のSDGs(持続可能な開発目標)達成への取り組みにも力を入れてきました。特に気候変動の分野では、各国が取り組む温室効果ガスの排出削減目標を、アフリカで最も早く決定しています(2020年5月)。
  
わが国は気候変動問題に対し、非常に熱心に取り組んできました。その理由の一つは、人口の大半が「天水農業(かんがいを行わない農業)」に従事していることです。自然降水を利用するため、雨水の酸性化を防ぐ必要があるのです。
  
ルワンダの世界に占める二酸化炭素(CO2)排出量は約0・001%にすぎません。しかし、地球温暖化や酸性雨の原因となる、CO2の排出量削減に向けた行動を起こすことが非常に重要だと考えてきました。
  
中でも、「eモビリティー戦略」は、最も力を注いでいるプロジェクトの一つです。ルワンダではCO2排出の要因として、自動車などの排ガスが全体の約13%を占めています。
  
首都キガリでは、約3万台のバイクタクシーが市民の足として利用されています。現在、これらに代わる電動バイクの導入を推進しています。さらには、普段の料理で使用する燃料を、生物由来のバイオマス燃料に転換することを推奨するなど、国民一人一人が気候変動対策に関与できる体制を構築しています。

環境投資を推進

――ルワンダでは、豊かな自然遺産を生かした「エコツーリズム」の推進など、環境保護のための先進的な取り組みも行われていると伺いました。
  
私たちは、自然を尊重しなければなりません。なぜなら自然は私たちの生活の一部だからです。丘陵地帯であるルワンダは、森林伐採が原因の地滑りや土砂崩れがたびたび発生し、農場や住宅が被害を受けています。自然破壊は即、自分たちの生活の破壊につながるのです。
  
こうした中、自然資源をそのまま観光に生かす「エコツーリズム」は、環境保護の観点からも、経済を支える上でも、重要な要素になっています。
  
「アカゲラ国立公園」では、1994年のジェノサイドの後、密猟などによって多くの動物が姿を消してしまいました。しかし環境保全活動に取り組んだ結果、ライオンやサイなどが戻ってきたのです。活気を取り戻した同公園は今、エコツーリズムで人気の場所の一つとなっています。
  
長期的な視点を持ち、環境への投資を推し進めることが有益な結果につながると思います。

――現在の目覚ましい発展は、ジェノサイドの後、ルワンダ国民の血のにじむような努力によって成し遂げられたものであると思います。痛ましい歴史がもたらした憎悪や分断を、人々はどのように乗り越えてきたのでしょうか。
  
ジェノサイドは、人間が起こしうる最悪の悲劇でした。国を再建するためには、真の団結と和解を生み出すための途方もない努力が必要でした。これなくして、ルワンダ社会が永続する方法はなかったのです。
  
困難な状況下で、和解を実現する方途として行ったのが「ガチャチャ裁判」でした。同裁判は、実際に暴行や略奪等に加担した者が近隣住民らの意見に基づいて裁かれる司法手続きです。私たちは、この裁判を罰を与えるためではなく、人々を結び付ける過程として位置付けました。時間はかかりましたが、こうした努力が実り、現在では平和と調和がわが国に戻ってきたと思います。
  
また、フツ、ツチなど出身の民族を示す身分証明書は廃止しました。
  
和解を生み出すために取り組んできた運動の中に、「ウムガンダ」があります。
  
「ウムガンダ」は、毎月最終土曜日の午前中に各地で近隣住民が集まり、地域の清掃や公共施設の建設等を行う社会奉仕活動です。
  
この活動の特徴は、単に社会奉仕に汗を流すだけでなく、作業の終了後に毎回、集会を行う点です。この中で、地域社会の問題について意見交換がなされ、住民同士が自身の思いを話し合うのです。
  
皆で語り合うことで互いへの理解を深め合うウムガンダは、人々が和解の道をたどる原動力になり、ルワンダを語る上で不可欠な文化となっています。

――国家の再建において、女性の存在が大きな役割を果たしていると伺いました。ルワンダは国会議員に占める女性の割合が6割を超え、その比率は世界第1位です。
  
わが国ではジェノサイドの際に、多くの男性が犠牲となり、女性の社会進出がこれまで以上に求められました。このため、経済的、政治的、社会的な側面で、女性が活躍できる仕組みづくりを考えたのです。
  
例えばルワンダの憲法では、「指導的機関の地位のうち少なくとも30%を女性が占めるものとする」と規定されています。また、地方自治体では女性の市長、副市長が就任するようになりました。
  
かつては、教育を受けられる女子は少なかったのですが、女性の社会進出が大きく進む中、就学率も向上しました。
  
女性の視点や経験を大切にしないのは、国民の半分の意見を無視することと同義です。多様な考えを受け入れ、全ての人を尊重することが、地域社会の絆を強くし、平和な社会を築くための力となるのです。

青年こそ「未来」「変革の主体者」

――平和構築において、「教育」は重要な柱の一つです。池田SGI会長は「教育こそ、21世紀の平和社会を建設する源泉」と、その重要性を訴えています。大使ご自身の教育に対する信条をお聞かせいただけますか。
  

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Seikyo Shimbun

世界平和に多大な貢献をされている池田会長と創価学会に対し、心より感謝申し上げたいと思います。また、教育の分野でも、大きな成果を残されてきたと認識しております。ルワンダは、平和や調和の促進など、貴会の活動から多くを学ぶことができます。創価学会に関する書物も幾つか読ませていただき、大変に感動しました。
  
教育は人間の心を開き、他者への理解を深め、多様性や他の考えを尊重する姿勢を育むための、非常に重要な手段です。これこそ、ジェノサイドを経験した私たちが国民に提供したいものであり、貴会が世界で実践されていることの核心にあるものだと思います。
  
私がルワンダ国立大学(現ルワンダ大学)に入学したのは95年。ジェノサイドの直後でした。キャンパスは破壊され、まだ大きな困難を伴う時期でした。
  
実はその時にお世話になった教授の一人が日本人の博士でした。彼は、ルワンダの惨状を知り、「何かできることはないだろうか」と考え、同大学に1年間、無償で教えに来たというのです。とても感動しました。私が大学院への進学を志した時には、彼が推薦人の一人になってくれました。今も良き友人として交流を続けています。
  
これまでルワンダから日本に多くの学生が留学し、素晴らしい知識や技術を学んでいることを本当にうれしく思っています。しかし、私はそれだけでなく、日本の人々が持つ勤勉さ、誠実さなどを吸収してほしい。そうすれば、彼らは見違えるような成長を遂げると思うのです。私自身、今も学び続けています。
   
――平和な世界を築くためには、若い世代の存在が不可欠であると思います。未来を担う青年へのメッセージをお願いします。
  
青年には、世界を変革する力があります。青年こそが「国の未来」であり、「変革の主体者」であることを忘れないでほしいと思います。そして、常に前向きであっていただきたい。また、新しい考えを受け入れていくことも大切でしょう。
  
世界が幾多の困難に直面している今こそ、変革力と創造性を発揮して、道を開いていってほしいと願っています。(原文へ

 
アーネスト・ルワムキョ 1969年、ウガンダ生まれ。ルワンダ国立大学(現ルワンダ大学)を卒業後、米コーネル大学大学院で国際開発修士号を取得。2004年にルワンダ財務・経済計画省に入省し、同省経済開発計画局長等を歴任。駐イギリス大使、駐インド大使を経て20年から現職。

INPS Japan/『聖教新聞4月7日付を転載」

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コロナ禍が奪ったバンコクの風物詩「露店売り」

【バンコクIDN=パッタマ・ヴィライラート】

バンコクの露店売りは、新型コロナ感染症が流行する以前から、毎年ここを訪れる何百万人もの観光客にとって象徴的な魅力となっている。食事をしたり買い物をしたりと、人生を心から楽しむタイ人たちの生き方と完璧にマッチしていた露店売りは、1世紀もの間、タイやバンコクの人々の心の中に根を下ろし、タイ人と外国人の両方を楽しませていた。

タイの観光産業に壊滅的な打撃を与えた新型コロナのパンデミック封鎖は、露店売りの生活にも深刻な影響を与えた。パンデミックが発生した当時、タイには毎年約4000万人の観光客が訪れていた。露店売りは数多くのタイ人にとって持続可能な生計の選択肢とみなされていたのだ。観光客は2021年11月に渡航規制が解除されてから徐々に戻り始めているが、露店売りが過去の活況を取り戻せるかどうか、重大な疑問符がつく。

IDNは、バックパッカーの天国と呼ばれるカオサン通りと、夜のパラダイスと呼ばれるスクンビット通りを歩き、5カ月前に外国人観光客を解禁して以降の露店売りの実態に迫ってみた。

カオサン通り商店主組合のサンガ・ルアングワッタナクル会長は最近、あるメディアのインタビューに答えて、2019年末時点で商売の収入の8割を外国人観光客に依存していると述べていた。新型コロナの影響は深刻だ。カオサン通りはかつて眠らない街だった。「コロナ禍以前、屋台は100万バーツ(2万9670米ドル)で売れていた。しかし生き残った屋台はほとんどなく、店主は故郷へ帰ってしまった」という。会長によれば、観光客が戻ってきた場合に出店するのは新しい店主たちになるだろうという。

Yordchai looks forward to tourists returning to support his business. 

路上でゲームや小道具を売っているヨードチャイの見方も会長のそれと一致する。「ここで30年以上も商売している。露店を買うのに100万バーツなんて出せないから、月1万5000バーツで2メートルのスペースを借りて、自分の小さな露店を出そうと思った。」と彼は語る。コロナ禍で商売が打撃を受けるまでは、実入りのある投資だった。1日あたり3000バーツ(90米ドル)を稼いでいたが、2020年のロックダウン以来、同じような額を稼げていない。しかし、同年10月に始まった政府の共同支払い景気刺激策にヨードチャイは参加している。

タイ財務相によると、「コン・ラ・クレング」という名の共同支払い刺激策は、国内の消費・経済成長を刺激することを目的としている。政府は、飲食物や一般商品の購入額の50%を補助する。第一段階から第三段階にかけて、補助金総額は1人当たり1日150バーツ(4.45米ドル)を上限とし、今年2月に始まった第4期では、120バーツ(3.56米ドル)に減少した。

しかし、ヨードチャイは「共同支払い策に参加したとしても、場所を借りたり日常的な支出をするためには自分の貯金を使わなくてはならない。私ももう62才だから、カオサン通りに観光客が戻ってくるのを待つしかないんですよ。他にどうしたらいいか分からない。」と語った。昨年12月からはカオサン通りに外国人観光客が戻り始めたが、ヨードチャイの1日当たりの収入は500バーツ(15.80米ドル)程度である。

政府の共同支払い策の対象には、露店売りだけではなく、福祉カードの保有者や特別の支援を必要とする市民も含まれる。支援を受けるにはアプリ「パオタン」をスマホにインストールして登録しなくてはならない。「データリポータル」によると、タイには、今年1月時点で全人口の77.8%にあたる5450万人のスマホユーザーがいるという。

IDNは、カオサン地区出身の露店売りヌイの話を聞いた。「コロナ禍以前には、多くの国籍の外国人観光客が来ていて、1日4000バーツ(119米ドル)以上は稼げていた。でも、2020年3月の最初のロックダウン以来、食べ物を売ることはできなくなった。ほとんどが家に居て、たまに奇特な人が、困っている人に食べ物をあげに来るという時だけ屋台に出てきた。」とヌイは語った。

コロナ禍の最中に自分の屋台まで来て見ると、そこにいたのは、帰国できなくなった観光客と他の露店売りで、無料の食料を求めていた。ヌイは政府の支援策に頼ることはできなかった。スマホを持っておらず、自分の貯金と無償提供の食料で生活を凌いだ。昨年11月に露天売りを再開したが「私は60歳になっていて、もうただ生きていくだけ。今さら人生を変えられるとは思わない」という。

夜の街スクムビット地区では、ノクノイ(40)が経験を語ってくれた。「観光で有名な『11番通り』のバーで20歳の時から給仕をしていたが、昨月とうとう閉店してしまった。今後の生き方を思案してスカイトレイン駅の近くで屋台を引いて飲み物を売ることにした。」新顔として、たとえば街頭で露店売りには何が禁じられているのかといったいろいろなことを覚えなくてはならないという。他の露店売りとは違って、彼女はコロナ禍の間に自分の故郷であるタイ北東部のスリン県に戻らなかった。彼女は、バーが閉店するまではそこで働いていたのだ。

ノクノイは政府の支援策「ロア・チャナ」(「私たちは勝つ」)からの支援を受けた。タイ財務省のウェブサイトで説明されているように、支援の基準には、行政が記録している対象者の収入や貯蓄レベルといったことが含まれている。フリーランサーや露店売り、農民など、あらゆる職業の人がこの支援策の対象となる。コロナ禍がノクノイにもたらした新たな生活の中で、彼女は外国人観光客や地元市民相手に1日あたり600~700バーツ(20米ドル)の収入を得ている。

ノクノイの屋台からそれほど離れていないスクンビット通り沿いで、IDNは古典的な布の露店売り、スアイの話を聞いた。パンデミック以前は、何千人もの観光客が歩道のナイトマーケットに集まり、色とりどりのタイのドレスや服、靴、バッグを値切りながら買っていた。ノクノイは30年以上前からスクンビット通りに出店している。

Map of Thailand
Map of Thailand

「コロナ禍以前には1日5000バーツ(150米ドル)を稼いでいたが、一連の封鎖中は貯金を使い果たし、屋台再開の時を待つだけだった。しかし昨年11月に外国人の渡航規制が解除されてすぐに私は露店に戻った。歩道が人であふれる状態はまだ戻ってきていないが、そのうち夜が訪れると、歩くのも難しくなる。そのときが稼ぎ時だ。」とノクノイは語った。

バンコクの観光地にある露店売りの生活は、外国人観光客に大きく依存している。ロックダウン期間中は、多くの露店商が故郷に帰った。かつての露店を続けられるだけの資本があれば、また仕事に戻ってくるかもしれない。露店の一部は新規参入者と入れ替わっている。ただ、古株であれ新顔であれ、観光客は、街頭で安価で提供されるタイ料理の彩りや豊かさ、香しさを楽しむことだろう。そうした光景が少しずつ戻ってきて、世界中の何百万人もの人々を魅了するバンコクの味となっていくことを期待したいものである。(原文へ

INPS Japan

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著名な仏教指導者が「コロナ禍と気候変動の影響を乗り越えることが必須」と訴え

【ベルリン/東京IDN=ラメシュ・ジャウラ】

2022年、国連が持続可能な開発目標(SDGs)と呼ばれる互いに連関したグローバルな17項目の目標を掲げてから7年を迎える。これは、2030年までに「すべての人にとってより良く、より持続可能な未来を実現するための青写真」とすべく策定されたものだ。

仏教哲学者、教育者として世界の平和構築を一貫して訴え続けてきた創価学会インタナショナル(SGI)の池田大作会長は、これまでの達成を詳細に検討しつつ、「SDGsの取り組みはコロナ危機で停滞してきた」と述べている。

SDGs logo
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その進歩を「力強く加速させる」ためには、「SDGsを貫く『誰も置き去りにしない』との理念を肉付けする形で、『皆で生きる喜びを分かち合える社会』の建設というビジョンを重ね合わせていくことが、望ましい」と池田会長は考えている。

「グローバル目標」とも呼ばれているSDGsは、40回目となる、「人類史の転換へ 平和と尊厳の大光」(英文関連ページ)と題された池田会長の最新の平和提言(1月26日発表)の重要な部分を構成している。

池田会長は、コロナ危機をはじめ、世界を取り巻く多くの課題を乗り越え、人類の歴史の新章節を切り開くための要諦について、3つの角度から論じている。

第1の柱は、コロナ危機が露わにした課題に正面から向き合い21世紀の基盤とすべき「社会のあり方」を紡ぎ直すことである。いかなる試練も共に乗り越え、「その心の底からの安堵と喜びにも似た、『生きていて本当に良かった』との実感を、皆で分かち合える社会の建設こそ、私たちが目指すべき道であると訴えたいのです。」と池田会長は述べている。

第2の柱は、地球大に開かれた「連帯意識」を確立することである。池田会長は、「パンデミックの対応で焦点とすべきは、国家単位での危機の脱出ではなく、脅威を共に乗り越えることにあるはず」と指摘したうえで、「G7の国々は(昨年6月のG7サミットで採択した)この首脳宣言に基づいて、『パンデミック条約』の制定をリードし、その基盤となる協力体制についても率先して整備を進めるべきではないでしょうか。」と述べている。

第3の柱は経済に関するもので、池田会長は、「若い世代が希望を育み、女性が尊厳を輝かせることのできる経済」を創出することを呼びかけている。

Antonio Gutierrez, Director General of UN/ Public Domain
Antonio Gutierrez, Director General of UN/ Public Domain

池田会長はさらに、パンデミックの「打撃の格差」と「回復の格差」を解消する方途を探る必要があると呼びかけ、それに関連して、国連のアントニオ・グテーレス事務総長が、世界保健機関(WHO)によるパンデミック宣言の4カ月後の2020年7月に行った講演に言及している。

人権と社会正義のために生涯を捧げた、南アフリカ共和国のネルソン・マンデラ大統領(1918~2013)の生誕日にあたってその功績を偲ぶ記念講演の中で、グテーレス事務総長は、「新型コロナウィルスには、貧困層や高齢者、障害者、持病がある人をはじめ、社会的に最も弱い人々に最も大きなリスクを突き付けている」と指摘し、パンデミックの「脅威」ではなくて、「打撃を受けた人々」に焦点を当てながら警鐘を鳴らした。また、新型コロナの危機は、「私たちが構築した社会の脆い骨格に生じた亀裂を映し出すX線のような存在になった」と指摘し、「新時代のための新しい社会契約」を提唱している。

Nelson Mandela – First President of South Africa and anti-apartheid activist (1918–2013)/ By © copyright John Mathew Smith 2001, CC BY-SA 2.0,
Nelson Mandela – First President of South Africa and anti-apartheid activist (1918–2013)/ By © copyright John Mathew Smith 2001, CC BY-SA 2.0,

さらにグテーレス事務総長は、そのビジョンの手がかりになるものとして、マンデラ大統領がかつて南アフリカの人々に呼びかけた次のような言葉を紹介した。「他者の存在があるゆえに、その他者を通じて、この世界で生かされているのだという、人間としての連帯感を改めて植え付けることが、私たちの時代の課題のひとつだ。」

池田会長は、年々「異常気象の被害が拡大の一途をたどって」いると述べ、気候変動の重要性も強調している。また、COP26でアメリカと中国が気候変動問題での協力を約束したことに言及したうえで、日本と中国に対しても同様の合意を結ぶよう呼びかけている。

さらに、国連と市民社会の連携を強化するための制度づくりを呼びかけ、「グローバル・コモンズ(地球規模で人類が共有するもの)」を総合的に守るための討議の場を国連に設けて、青年たちを中心に市民社会が運営に関わる体制を整えることを提唱している。そしてそうした役割を担う青年主体の組織として改めて「国連ユース理事会」の創設を訴えている。

環境問題に関して池田会長は、国連気候変動枠組み条約、生物多様性条約、砂漠化対処条約の履行における対策の連動をさらに力強く進めるよう呼びかけ、気候変動、生物多様性、砂漠化の問題が「深く結びついているからこそ、解決策も相互に連携させることで、困難の壁を打ち破る新しい力が生まれていく」と述べている。

また、(紛争や災害などの異常事態が)教育に及ぼす影響を懸念している池田会長は、9月に予定されている「国連教育変革サミット」が、「緊急時の教育」や「インクルーシブ教育」、「世界市民教育」に焦点を当てるよう呼びかけている。

The Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons, signed 20 September 2017 by 50 United Nations member states. Credit: UN Photo / Paulo Filgueiras
The Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons, signed 20 September 2017 by 50 United Nations member states. Credit: UN Photo / Paulo Filgueiras

池田会長は、核兵器の廃絶が持続可能な世界の将来の鍵を握ると確信しており、「まずは核依存の安全保障に対する『解毒』を図ることが、何よりも急務となると思えてなりません。」と述べている。

池田会長の核問題に関する2つ目の提案は核兵器禁止条約に関連したもので、日本を含めた核依存国や核保有国に対して、第1回締約国会合にオブザーバー参加することを強く求めている。

日本は2023年にG7サミットを主催する。池田会長は、その時期に合わせる形で広島で「核兵器の役割低減に関する首脳級会合」を行い、G7以外の国々からの参加も求めてはどうかと提唱している。(原文へ

INPS Japan

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太平洋の青い海を放射能汚染から守れ

【シドニーIDN=ニーナ・バンダリ

太平洋地域の主要な地域協力機関である「太平洋諸島フォーラム」(PIF)が、核問題に関する専門家パネルを立ち上げた。福島第一原発からの放射性廃水を太平洋に排出するという計画について日本と協議している太平洋諸国に科学技術面の助言を与えることを目的としている。

太平洋島嶼諸国はかつて、かつて米国・英国・フランスによる核実験の犠牲となった国々である。このため地域でのあらゆる核関連活動には断固として反対している。地域の漁村や沿岸地帯の人々は「汚染されている」と見なされる廃水の排出が、彼らの生活と生計の中心である海洋に与える影響を懸念している。

PIFのヘンリー・ピューナ事務局長は報道発表で、「私たちの究極の目標は、青い太平洋、すなわち、私たちの海、環境、そして民衆をこれ以上の核の汚染から守ることです。これこそが、私たちが子どもたちに残すべき遺産なのです。」と語った。

昨年7月に開催された第9回「太平洋諸島指導者会合」に集ったPIFの首脳らは、「日本の発表に関して、国際協議、国際法、独立かつ検証可能な科学的評価を行うこと」を優先すると強調した。

Workers at TEPCO's Fukushima Daiichi Nuclear Power Station work among underground water storage pools on 17 April 2013. Two types of above-ground storage tanks rise in the background. An IAEA expert team visited the site on 17 April 2013 as part of a mission to review Japan's plans to decommission the facility. Photo Credit: Greg Webb / IAEA
Workers at TEPCO’s Fukushima Daiichi Nuclear Power Station work among underground water storage pools on 17 April 2013. Two types of above-ground storage tanks rise in the background. An IAEA expert team visited the site on 17 April 2013 as part of a mission to review Japan’s plans to decommission the facility. Photo Credit: Greg Webb / IAEA

日本は安全だとして、2023年から50年代半ばまで、いわゆるALPS(多核種除去装置と呼ばれている先進液体処理システムで)処理した汚染水128万トンを太平洋に放出開始する方針を2021年4月に表明していた。

水中の放射性元素を処理し、安全なレベルまで希釈して放出するという日本の主張は、国際原子力機関(IAEA)と米国によって支持されている。

制御しつつ海洋に処理水を放出することは、安全・環境影響評価を基盤とした特定の規制当局の監視の下で世界各地の原子力発電所において普通に行われていることだとIAEAのラファエル・マリアーノ・グロッシ事務局長は述べている。

3月28日、日本はIAEAに対して、2月中の福島第一原発における処理水放出と海水モニタリングの記録を報告した。IAEAのメディアリリースによると、IAEAタスクフォースの審査の第三の側面は、技術的、規制的側面に加えて、タンクに貯蔵された処理水と海洋環境の両方について、東京電力のデータを裏づけるために処理水の独立したサンプリングと分析が行われることである。

2011年3月の東日本大震災により3基の原子炉がメルトダウンし、1986年のチェルノブイリ事故後最悪の原発事故が発生して以来、冷却水や浸透した雨水・地下水など、放射性物質を含んだ汚染水が原発敷地内に蓄積し続けている。

汚染水は、大規模な揚水・濾過システムであるALPSによって処理され、放射性同位体のほとんどが除去される。東京電力ホールディングスは、125万トンの処理水を敷地内の1000基以上のタンクに貯蔵している。

日本政府は、今年後半には敷地内のタンクが満杯になり、廃炉への道を開くために処理水の長期管理が必要であるとして、処理水を放出する必要があると説明している。

しかし、この提案には強い反対意見が寄せられている。1946年から96年にかけて米国、英国、フランスが太平洋で行った約300回の核実験による放射性降下物の影響を受けてきた太平洋島嶼諸国のコミュニティーは、長期的な健康障害と先天性の異常を経験している。

太平洋島嶼諸国の人々の自己決定権を推進する地域NGOである「グローバル化に関する太平洋ネットワーク(PANG)」のコーディネーター、モーリーン・ペンジュエリ氏は、「太平洋全域、特にマーシャル諸島、フランス領ポリネシア、キリバスなどにおける核実験の負の遺産は、これまで効果的に是正されたり、対処されたりしたことはありません。太平洋の人々は、20世紀の軍事化した植民地宗主国の破壊的な計画によって大きな被害を受け、21世紀に入っても続いています」と語った。

「広島・長崎の原爆よりもはるかに大きな破壊力を持つ数百個の核爆弾を爆発させた結果は、今日もなお、島嶼部先住民に影響を及ぼしておりとりわけ健康状態の悪化や世代間の不和に表れています。この負の遺産は、太平洋諸島の島民や太平洋だけでなく、地球上のすべての海洋とそれに依存する人々の健康と福祉を脅かし続けているのです。」とペンジュエリ氏はIDNの取材に対して語った。

ペンジュエリ氏は、マーシャル諸島エニウェトク環礁にある「ルニット・ドーム(核の棺)」に貯蔵されている放射性物質が周辺の海洋や地下水に漏出している例を挙げた。

Runit Dome (or Cactus Dome), Runit Island, Enewetak Atoll. Aerial view. In 1977-1980 the crater created by the Cactus shot of Operation Hardtack I was used as a burial pit to inter 84,000 cubic meters of radioactive soil scraped from the various contaminated Enewetak Atoll islands. The Runit Dome was built to cover the material./ By US Defense Special Weapons Agency, Public Domain
Runit Dome (or Cactus Dome), Runit Island, Enewetak Atoll. Aerial view. In 1977-1980 the crater created by the Cactus shot of Operation Hardtack I was used as a burial pit to inter 84,000 cubic meters of radioactive soil scraped from the various contaminated Enewetak Atoll islands. The Runit Dome was built to cover the material./ By US Defense Special Weapons Agency, Public Domain

ルニット・ドームは、111,000立方メートルの放射性廃棄物を厚さ45センチのコンクリートで格納した米軍による場当たりの的な試みでした。プルトニウムの半減期は2万4千年だが、コンクリートの耐用年数は長くて100年であり、安全で恒久的な構造物に置き換えられることがなかったため、現在亀裂が入り、周囲の地域を汚染しています。このように明らかに不適切な措置を続けているために、核実験の負の遺産に対処し、海洋を持続可能なものにするという目標実現に向けた取り組みに黄信号が灯っています。」

「戦争防止医師会議豪州支部」は、アジア太平洋地域において、日本政府に対し、放射性廃液の海洋排出計画を中止するよう要請している数多くの市民団体の一つである。

「私たちは、太平洋島嶼国の海域や陸地がこれ以上放射性物質で汚染されるのを防ぐための努力を全面的に支持します。」「冷戦期に太平洋で実施された数百回の核実験によって、放射性物質に起因する健康問題や、安全の保証に対する不信が生じてしまいました。古い諺にあるように、『もしそれが安全だというのなら、東京に棄てればいい。私たちの太平洋に核物質を投棄しないでほしい。』」と同支部のスー・ウェアラム代表は語った。

日本政府は年間22兆ベクレルのトリチウムを海洋に放出する予定だ。原発事故以前に福島第一原発から海洋に放出されていたトリチウムは年間1.5~2兆ベクレル程度であった。つまり、その約10倍のトリチウムを数十年かけて海に放出することになると、「FoE Japan」が2021年4月に発表した声明は述べている。

「FoE Japan」事務局長で「原子力市民委員会」座長代理の満田夏花氏は、汚染水放出に反対する多くの理由の中で「主な理由は、環境中に放射性物質を拡散させてはならないということです。処理された汚染水には860兆ベクレルのトリチウムが含まれているとされています。加えて、セシウムやストロンチウム、ヨウ素といった放射性物質がその水には含まれているのです。」と語った。

「日本政府と東京電力は、関係者の了解が得られなければいかなる行動にも移らないとしていますが、多くの反対がありながら処理済の汚染水を海洋放出しようとしています。これは約束違反ではないでしょうか。」

「原子力市民委員会は、大型の堅固なタンクへの貯留やモルタルの固定化などの代替案を提示していますが、まともに検討されていません。」と満田氏は付け加えた。

グリーンピースは、2020年に発表した報告書で、「唯一の受け入れ可能な解決策」は、日本が汚染水を長期的に貯留し処理することだと述べている。

オーストラリア自然保護財団(ACF)もまた、汚染水管理オプションの独立かつ国際的な検討が済むまでは、福島第一原発に由来するすべての廃棄物を陸上で貯蔵・管理することを求めている。

「津波と原発のメルトダウン時に福島原発で使用されていたのがオーストラリア産のウランであることに鑑みて、私たちは、会員及びサポーターに対して、オーストラリアのマリーズ・ペイン外相にこの件で手紙を送るよう呼びかけていいます。」とACFの核・ウラン問題担当デイブ・スウィーニー氏は語った。

「海は産業のゴミ捨て場ではなく、私たちが依存している貴重な命のシステムです。放射性排水を太平洋に放出することで、海洋環境や海の食物連鎖の中で放射性物質が生物濃縮されることを懸念している。それは文化的な意味でも大きな影響をもたらすだろう。」とスウィーニー氏はIDNの取材に対して語った。

SDGs Goal No. 14
SDGs Goal No. 14

太平洋地域の市民団体のネットワークである「核問題に関する太平洋グループ」は2021年12月に日本政府に意見書を提出した。放射性排水を海洋放出することに強く反対し、太平洋は核のゴミ捨て場ではないし、そうすべきではないと強調するものであった。

意見書は日本政府と東電に対して「安全な封じ込め及び貯留、それに、放射性排水を含めた放射性物質を安全に処理する技術の確立」を求めた。

同グループは日本政府と東電に対して廃炉計画全体の包括的再評価を求めた。それほど大量の放射性排水を海洋放出する前に、海洋全体にわたる環境影響評価と放射性影響評価を行うことを訴えた。

日本の隣国、とりわけ韓国でも、汚染水の放出に反対する声が強い。

汚染水放出の提案は、南太平洋非核兵器地帯条約(ラロトンガ条約、1985年)などの非核太平洋を求めるさまざまな国際法とも矛盾する。同条約は、核爆発装置の実験・使用や、放射性廃棄物の海洋投棄を禁じており、オーストラリア・ニュージーランド・太平洋諸国が加盟している。(原文へ

INPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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【ルンドIDN=ジョナサン・パワー】

2017年、国際刑事裁判所(ICC)の検察官事務所は、拷問や 強姦を行ったとされる戦争犯罪の容疑者として、現場の米軍兵士や 秘密刑務所の米中央情報局(CIA)工作員を初めて名指しした報告書を発表した。米兵はICC加盟国であるアフガニスタンに駐留していたため、ICCは理論上アフガニスタン国内の戦闘員による犯罪に対して幅広い管轄権を有している。

これに対する米政府の反応は迅速かつ怒りに満ちたものだった。米国は米軍に対する調査を打ち切るようICCに圧力をかけた。そこでICCは、欧州各地のCIA秘密施設で行われていた拷問を起訴することに目を向けた。しかし、米上院情報特別委員会が、CIAの「拘束・尋問プログラム」に関する報告書サマリーを公開し、国際法に明らかに違反する拷問の数々が明らかにされたにもかかわらず、ICCは何も得られなかった。バラク・オバマ大統領は、大統領就任早々、このような意見が分かれる問題に対処する必要がないとの理由で、訴追を開始することを拒否した。

International Criminal Court (ICC) logo
International Criminal Court (ICC) logo

ウクライナの残虐事件が起こるまで、米国のあらゆる党派がICCに強く反対していた。彼らは、既に124カ国がICCに加盟しており、米国に最も近い欧州の同盟諸国がICCの大きな支持者であることを見落としていたようだ。実際、英国は、イラクでの殺人、拷問、強姦の罪で多くの英国兵が起訴されたとき、当初はICCに協力的だった。

英国は、原則的には、ICCがその使命を遂行しなければならないことを認識しているが、実際には、ICCのイラクやアフガニスタンでの取り組みに対して消極的で、捜査を行き詰らせようとした。最終的には、英国は自国領土で犯罪の疑いを誠実に調査し起訴する意思があるとして、ICCを説得し調査を打ち切らせた。しかし、有罪判決が下されたのは1件のみで、殺人罪で有罪判決を受けた兵士は、僅か3年しか服役しなかった。

ICCへの嫌悪を公言していたジョージ・W・ブッシュ大統領は、この裁判所に協力するものは米国から重い罰則を受けると各国を脅した。しかし、ブッシュ大統領はその後大きく方針を転換している。私は英語圏のジャーナリストとして初めて、2期目のブッシュ政権が、ダルフール、スーダン、コンゴでの大量虐殺の指導者や、かつてリベリアを支配した独裁者チャールズ・テイラーの捜索のために、密かにICCを支援していた事実を明らかにした。

バラク・オバマ大統領は、寄付を含めICCへの支援をさらに強化した。私の知る限り、オバマ大統領はアフガニスタンでのICCの活動に対して公然と不満を表明することはなかった。しかし、実際に米兵が起訴されても黙っていたかというと、それには議論の余地がある。一方、ドナルド・トランプ大統領は、「もしICCが米国人を訴追するならば、米国はICCの判事や検察官の米国への入国を禁止し、経済的制裁を課すだろう。」と述べ、ICCに対する怒りと憤りを露にした。

John R. Bolton, 27th United States National Security Advisor/ By White House , Public Domain

トランプ政権のジョン・ボルトン補佐官(国家安全保障問題担当)は、ICCは米国を束縛したい国々に支持された「責任を負わない」「明らかに危険な組織だ」とまで言い切った。そして、米国は米国人を対象としたICCの調査を支援するいかなる企業や国家に対して行動を起こし、ICCの判事や検察官を起訴すると述べた。

ボルトン補佐官はまた、ICCが調査に15億ドルという巨額の資金を浪費していると非難した。ニューヨーク・タイムズ紙は、「ボルトン補佐官が、『このようなひどい実績では、(ICCは)独裁者らに対する抑止力にはなりえない。歴史上の残忍な独裁者らは、国際法という幻想に惑わされることはない…。悪や残虐行為に対する唯一の抑止力は、かつてフランクリン・ルーズベルト大統領が米国とその同盟国の『正義の力』と呼んだものであることは、歴史が証明している、と語った。」と報じた。

(米軍が軍事介入した)韓国、ベトナム、カンボジア、ドミニカ共和国、グラナダ、ニカラグア、エルサルバドル、グアテマラ、そしてアフガニスタン、イラクにどんな「正義の力」があったのだろうか。

ボルトン補佐官はさらに、驚くべき発言をした。つまり、「もしICCが米国やイスラエルなどの捜査に乗り出せば、米国は『黙ってはいないだろう。』「非合法な裁判所」から自国民を守るために政権は行動する。」と述べた。

今、米国は再び方針を大きく転換しようとしているように見える。議会の共和党幹部は、ICCを改めて検討し、プーチン大統領を含むロシアの戦争指導者らを戦争犯罪で逮捕させるのに、これ以上の組織はないと結論付けている。より多くの資金支援や司法支援、そして情報機関の分析結果をICCに伝えることが、今まさに行われようとしている。民主党の議員の多くも、ホワイトハウスと同じような考えを持っている。

しかし、米国がICCへの加盟を求めない限り、できることは限られている。しかしそうすれば、将来、自国の軍や諜報機関のメンバーが訴追される可能性がある。そのため国防総省はICC加盟に反対であることを明らかにしている。現在ホワイトハウスはこの問題を熟考しているようだ。ジョー・バイデン大統領がもしそのような一歩を踏み出せば、人権にとって素晴らしい日になるだろう。ウクライナ戦争が続いている現在の状況では、議会はバイデン大統領を支持するかもしれない。

Image: Destruction in Ukraine caused by the Russian invasion. Source: The Daily Star.
Image: Destruction in Ukraine caused by the Russian invasion. Source: The Daily Star.

何が起ころうとも、それは転換点である。もし米国のICCへの加盟が実現すれば、米国がある日突然、再び方針を大転換してICCを誹謗中傷し、弱体化させることができるかどうかは極めて疑問である。米国は、ICCと折り合いをつけなければならないのだ。ウクライナでのロシアの戦争犯罪を追及する米国の姿勢が大いに偽善的なものであることは、多くの人々が正しくも主張するだろうが、加盟が実現すれば、それは進歩である。(原文へ

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国連事務総長、ルワンダ人と共に「意図的、組織的」なジェノサイドを非難

【ニューヨークIDN=リサ・ヴィヴェス】

 アントニオ・グテーレス国連事務総長は、1994年のルワンダ大虐殺(ジェノサイド)を考える記念日(4月7日)に寄せたビデオメッセージの中で、国際社会に対し、憎しみでなく人間性、残酷さでなく思いやり、自己満足でなく勇気、怒りでなく和解を選択するよう促した。

グテーレス事務総長は、3ヶ月足らずの間に100万人(ツチ人とジェノサイドに反対したフツ人やその他の人々)のルワンダ人が虐殺された恐怖を、現在ウクライナで進行している「忌まわしい暴力」を静かに結びつけていた。「殺害された人々を悼み、国際社会として当時の失敗を反省しなければなりません。」とグテーレス事務総長は語った。

Photographs of Genocide Victims - Genocide Memorial Centre - Kigali – Rwanda/ By Adam Jones, Ph.D. - Own work, CC BY-SA 3.0
Photographs of Genocide Victims – Genocide Memorial Centre – Kigali – Rwanda/ By Adam Jones, Ph.D. – Own work, CC BY-SA 3.0

ルワンダのポール・カガメ大統領も4月7日、首都キガリの虐殺記念館で行われたルワンダ大虐殺の年次の追悼式典に出席し、花輪を捧げた。この式典は、厳粛な追悼行事が続く1週間の始まりとなった。

カガメ大統領は、「想像してみてください。人々が、昼も夜も自分が特定の民族に属しているという理由で追い回されている様子を。また、私たちが武器を持っていたら、そして、同胞を無差別に殺戮しる人たちを追いかけることを許していたらと。まず、そうすることが正しいでしょう。しかし、私たちはそうせず、赦すことにしました。赦された人々の中には、今も自分の家や村で暮らしている者もいますし、政府や企業に勤めている者もいます。」と語った。

グテーレス事務総長は、「保護する責任」の原則と、人権を組織の中心に据えた「行動への呼びかけ」に注意を促した。「私は、再発防止という課題を国連の活動の中心に据えてきました。」と語った。

一方でルワンダ大虐殺を振り返り、「もっと多くのことができたはずであり、そうであるべきでした。事件から1世代が経過しても、恥の汚点は消えません。私たちは当時の教訓を確実に心に留めなければなりません。」と付け加えた。

また、グテーレス事務総長は、「今日のルワンダは、人間の精神が最も深い傷を癒し、より強い社会を再構築するために最も暗い深みから立ち上がる能力の強力な証として立っています。筆舌に尽くしがたいジェンダーに基づく暴力や差別に苦しんだルワンダの女性たちは、今や議会において60パーセント以上の議席を占めており、同国は世界をリードするに至っています。」と語った。

ルワンダは、国連平和維持活動の第4位の貢献国だ。グテーレス事務総長は、「彼ら自身が知っている痛みを他の人々が経験しないですむように貢献しています。」と語った。

Map of Ruwanda
Map of Ruwanda

一方、ウクライナは炎上し、中東やアフリカなどでは新旧の紛争が悪化している。その一方で、安全保障理事会は「ほとんど同意しない」ことに同意している。

グテーレス事務総長は、自責の念をもって振り返る一方で、「決意を持って」前を向き、「常に警戒し」、決して過去を忘れないよう、すべての人に呼びかけた。

「尊厳と寛容、そしてすべての人のための人権の未来を築くことで、亡くなったルワンダの人々を追悼しようではありませんか。」「私たちには常に選択肢があり、加害者はもはや免罪符を手にすることはできないのです。」と、グテーレス事務総長は締めくくった。(原文へ

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【ニューヨークIDN=セルジオ・ドゥアルテ

フランシス・フクヤマの論文『歴史の終わり?』が出版されてからおよそ30年が経つ。タイトルに疑問符「?」が付いていることから、社会科学者・哲学者であるフクヤマが、国家間の矛盾や対立の終結を宣言したのではないことがよくわかる。フクヤマが主に問うていたことは、西洋の自由民主主義が人類の社会文化的進化の最終段階であり、永続する統治の最終形態であると考えることができるかどうか、ということであった。

19世紀にヘーゲルマルクスが論じた「歴史の終わり」という概念は、社会、統治システム、経済などに大きな変化がなく、人類の存在が未来に向かって無限に続いていく状態を前提としていた。

Russian President Vladimir Putin addresses participants of the Russia-Uzbekistan Interregional Cooperation Forum in Moscow, Russia/ By Kremlin.ru, CC BY 4.0
Russian President Vladimir Putin addresses participants of the Russia-Uzbekistan Interregional Cooperation Forum in Moscow, Russia/ By Kremlin.ru, CC BY 4.0

フクヤマが30年前に提示した主な問いは、ソ連崩壊後のロシアが、第二次世界大戦後の西欧の軌跡をなぞるのか、それとも「自らの独自性を自覚し、歴史の中に閉じこもる」のか、どう進化していくのかという点であった。フクヤマは論文の最後で、「歴史が存在した時代へのノスタルジア」は競争と紛争を煽り続けるだろうと指摘した。まさに、プーチン政権下のロシアがフクヤマの問いに答えを出しているかに見える。

ロシアによるウクライナ軍事侵攻後の現状を巡る多くの分析が、ロシアの行動を駆り立てたものは、帝政ロシア時代とソ連時代の50年間に存在したと言われている大ロシア再編への願望であるという点で一致している。つまり、フクヤマの言葉を借りれば、ロシアは「歴史の中に閉じこもる」ことを決意したのだ。もちろん、現在の北大西洋条約機構(NATO)とロシアの敵対状態の根源や原因はもっと複雑で、彼の論文の範囲には収まらないだろう。

フクヤマ論文が発表された時、米国とソ連との間の相互確証破壊がゆっくりと自己満足に陥りつつあったことを明確にしておこう。その頃までには、世界のほとんどの国々が、安全保障のために核兵器に依存することはあまりに危険であり逆効果だと判断していたのだ。

核兵器は暫く存在しつづけるであろうという核不拡散条約(NPT)の想定にも関わらず、世界の圧倒的多数の国々は、第6条の約束(=核軍縮義務)がいつかは実現するだろうという淡い期待を抱きつつ、NPTに埋め込まれた差別を黙認し、自らは核兵器開発を放棄した。核兵器国と、その安全を核兵器国の与える積極的安全保障に委ねている非核兵器国にとってのNPTとは、合法的な核保有者として条約が認めている5カ国が核兵器を強化し続けるためのライセンスとみなされるようになったのである。

今日まで確かに、2つの超大国(米国、ロシア)はより破壊的な兵器の開発競争を続けており、中国もかなりの距離を置いてそれに追従している。次の2つの核兵器国(英国、フランス)は、潜在的な敵方を抑止することを目的としたより小規模な核戦力を維持することで当面は満足しているようである。一方、1970年以降に登場した核保有国(インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮)は、条約に拘束されないため、先行した国々が辿った道を遠慮なく追従している。

2009年、米国のバラク・オバマ大統領とロシアのディミトリ・メドベージェフ大統領は新戦略兵器削減条約(新START)を締結して両国の核戦力を削減し、近い将来さらなる削減がもたさられるのではないかと期待をもたらした。しかし、その希望はすぐに裏切られた。耐用年数を過ぎるか、維持にあまりにコストがかかるようになった核兵器は確かに解体されたが、その後すぐに両国は、廃棄された兵器よりはるかに鋭く速い新しい破壊手段の技術改良と製造に多額の資金を投入した。また両国は、こうした削減を完全廃絶の目標に明確に結びつけることもしなかった。削減は、旧式の兵器に代わる新兵器のように、経済的、技術的な理由から行われたようであり、この削減が核兵器の脅威を廃絶するという真の意志を体現しているわけではない。

Photo: US President Joe Biden and Russian President Vladimir Putin shake hands at the Villa la Grange on June 16 in Geneva, Switzerland. Credit: Visual China Group (VCG)
Photo: US President Joe Biden and Russian President Vladimir Putin shake hands at the Villa la Grange on June 16 in Geneva, Switzerland. Credit: Visual China Group (VCG)

わずか9か月前の2021年6月、米ロの現首脳であるジョー・バイデンとウラジーミル・プーチンはウィーンで会談し、「核戦争に勝者はなく戦われてはならない」というミハイル・ゴルバチョフとロナルド・レーガンの1985年の宣言を共同で再確認し、将来的な軍備管理とリスク軽減措置に向けた下準備をするため「戦略的安定」対話を行うことを約束して、世界中の市民社会の後押しを受けたのであった。

これまでのところ、これらの提案に対するフォローアップは行われていない。新STARTは当初の期限から5年間延長されたが、米露関係の状況を考えると、短期的にも中期的にも、新たな軍備削減や二国間安定のための交渉が進展することは疑わしい。

すべての核保有国は、表現としてはさまざまであるが、必要あるいは正当化されるときには核兵器を使うと宣言している。中国はこの強力な武器を先制使用する予定はないと宣言している唯一の国であり、市民社会の中には他国も同様の方針を採るべきだとの声もある。

しかし、核兵器の先制不使用は、この破壊的な兵器を維持することを結局のところ認めるものであり、核保有国が、先制不使用を正当化するために、より殺傷力の高い戦争手段の開発を続けることが許されると感じる状況を助長することになる。無邪気さと二重基準を描いた啓蒙思想家ヴォルテールの物語に登場するカンディ―ドは、こう問いかけるだろう。「あなた自身がそれを使う知恵を疑っているなら、なぜそんなに固執するのですか?」

核兵器を保有している9カ国は形こそ違えど、「核兵器が存在し続ける限り」、人類文明を消滅させることのできるこの力を維持する権利があるとの自己満足的な考え方を共通して持っている。核兵器が戦争で使われて以来、国際社会は多国間軍縮交渉や軍縮措置を採用する努力を怠ってきた。

1946年、第1回国連総会は「原子兵器および大量破壊に応用できるその他すべての主要兵器を各国の軍備から廃絶するための特定の提案を成す」任務を与えられた委員会を立ち上げた。予想通り、米ソ超大国間の不信と敵意によってその方向での進展は見られなかった。

時が経つにつれ、その他の国々も核兵器を保有するようになり、まるで、核兵器そのものの存在ではなく、それを保有する国の数が主な問題であるかのように、軍縮から拡散防止へと徐々に重点が移された。今日までに、別の国々がこの排他的な「核クラブ」への加盟を求めないようにするための厳しいルールの確立以上のものは、既存の多国間条約では打ち出せていない。

Photo: Thousands of Ukrainians seek safety in neighbouring Poland. © WFP/Marco Frattini
Photo: Thousands of Ukrainians seek safety in neighbouring Poland. © WFP/Marco Frattini

NATOの東方拡大に対するロシアのウクライナへの軍事侵攻が引き起こした国際関係の急激な変化は、全世界を震撼させ、自己満足から恐怖や不安へと移行させた。突然、核兵器の使用が、敵対関係にある国々だけでなく、全世界にとって現実的な危険であるかのように思われた。戦場で比較的低出力の戦術核爆弾を使用することさえ、戦闘員や市民を完全に抹殺するまでに至る、より強力な爆発が避けられない連鎖を引き起こすという恐怖がもたらされたのである。

Ambassador Sergio Duarte is President of Pugwash Conferences on Science and World Affairs, and a former UN High Representative for Disarmament Affairs. He was president of the 2005 Nonproliferation Treaty Review Conference.
Ambassador Sergio Duarte is President of Pugwash Conferences on Science and World Affairs, and a former UN High Representative for Disarmament Affairs. He was president of the 2005 Nonproliferation Treaty Review Conference.

研究者らは、先の9カ国が合計1万3000発超(そのうち95%をロシア・米国)の核兵器を保有していると推定している。その一部でも使用されることがあれば、音速の数倍の速さで飛来する核攻撃によって実際の破壊を被った国々は、放射性物質を含んだ雲で覆われ、その結果として生じる「核の冬」によって農業を行うことが難しくなり、飢餓が広範に発生することになろう。わずか数百発の核爆発でも爆発すれば、環境は人間の生活には適さなくなり、文明は消滅する。

これはヘーゲル的な意味での人類の歴史の終わりを意味するのではなく、地球という惑星における人類の歴史の終わりを意味する。なぜなら、地球は太陽の周りを回り続け、不毛で放射能に満ちた冷たい岩と水の塊となり、少数の原始的だがたくましい種だけが生き残ることができるかもしれないからである。人類の文明が進化し、立派な成果をあげるには、数千年を要した。わずか数秒の爆発によってそれを消し去ってよいはずがない。(原文へ

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平等

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