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|平和首長会議|核戦争は現実に起こりうるものでありその危険性は増している

【広島IDN】

来年1月のニューヨークでのNPT(核兵器不拡散条約)再検討会議の開催に先立ち、国際的NGOであり8,059の加盟都市から構成される平和首長会議を代表し、ここに見解を表明します。

この会議に臨む全ての参加者に対し、まずはこの条約の背景にある史実を改めて重く受け止めるよう要請します。広島・長崎への核兵器の使用は、壊滅的な人道上の結末をもたらしました。

このような第二次世界大戦を国際連盟が回避できなかったという反省から、時の為政者たちは国際の平和及び安全を維持することを目的として国際連合を設立しました。国連総会の第1号決議は核兵器廃絶を国連のゴールと定め、その目標が1970年のNPTの発効により締約国に課される法的義務となりました。

私たちは、近年の情勢がこの条約が掲げる重要な軍縮目標、特に条約第6条が定める目標の達成を著しく阻害していることに対し、以下のとおり深い懸念を表明します。

  • 新たな核兵器の軍拡競争が繰り広げられ、核保有国間の緊張はこの数十年間で最も高まっています。こうした状況にあっては、偶発的に、又は事故により、あるいは意図的にせよ、核戦争は現実に起こり得るものとなっており、その危険性は増しています。このような緊迫した状況は、冷戦以降、最も高いレベルにあります。
  • この条約が締約国に対して誠実に核軍縮交渉を行うことを義務付けているにもかかわらず、条約発効から51年もの年月が経過しても未だにNPTが定義する5つの核兵器国は核兵器廃絶に向けた交渉を共に始める計画すら立てていないことに落胆しています。
  • 世界がパンデミックによる甚大な被害と世界規模の経済混乱に直面する中、人類の基本的なニーズや都市が抱えている課題への対応が蔑ろにされる状態が続いている一方で、巨額の軍事費は増加し続けていることに、深く失望しています。

このような懸念を受けて、私たちは原点に立ち返り、人類が理想とする核兵器のない平和な世界を追求するために、連帯責任を負っていることを再確認しなければなりません。今こそ行動を起こすべき時であり、最も必要とされることをここに示します。

UN Secretariat Building/ Katsuhiro Asagiri
UN Secretariat Building/ Katsuhiro Asagiri
  • 締約国に対し、壊滅的な人道上の被害をもたらす核兵器の本質を捉え、再検討会議においてそうした核兵器の定義を議題とすること、また、そのような非人道性について啓発活動を通じて市民に周知することを緊急の優先課題とするよう強く推奨します。
  • 条約(第6条・前文)や、1995年の再検討・延長会議及び2000年・2010年の再検討会 議において全会一致(コンセンサス)で採択された最終文書に盛り込まれた軍縮に関する全ての合意事項を再確認することを求めます。さらに、締約国に対し、期限を定めた上でこれらの合意事項を履行するための具体的措置を講じることを共同で誓約するよう求めます。
  • 締約国に対し、危険かつ道徳に反する核抑止論の推進が、この条約の今後の展開、特に条約第1条 及び第6条の規定の運用に対し与える影響について、精査するよう要請します。技術革新により、 核兵器と核抑止論は人類にとって更に大きな脅威となっており、核兵器と関連する政策について包括的な議論を行うことは、再検討会議で長年実施できていない責務であると考えます。
  • 核兵器のリスク低減措置は、それが具体的な軍縮の進展につながって初めて正当なものとなると考えます。本年12月2-3日にパリで開催されたP5会合での共同声明に言及されている、核兵器国による核兵器使用のリスク低減に向けた取組が実質的かつ具体的に進められることを求めます。
  • 締約国に対し、条約第6条が課す核軍縮の誠実交渉義務の完全な履行には核兵器禁止条約の禁止規範が必要不可欠であること、また、両条約は完全に互換性があり、相互に補完し合うものであると認識するよう要請します。

平和首長会議は、締約国が今回の再検討会議においては、最終文書の合意に至ることができると期待しています。私たちは、今後もNPTに対するたゆまぬ確固たる支持を表明し、人類の未来を明るく照らすためにも、締約国が旧態依然としたしがらみから抜け出し、来る再検討会議が成功裏に終わるよう、祈念します。(原文へ

*平和首長会議が発表した公開書簡のテキストである。

INPS Japan

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【カトマンドゥIDN=プラハド・ガイラピリ、シモーネ・がリンベルティ】

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【ニューヨークIDN=J・ナストラニス、タリク・ラウフ】

海軍が保有する核燃料を検証し、高濃縮ウランを低濃縮ウランに転換することについて、法律・技術・政策の側面から多くの専門家が真摯な検討を重ねてきているが、残念なことに現実は、高濃縮ウランを使うどの海軍も、それを低濃縮ウランへと転換したり、国際原子力機関(IAEA)を初めとした査察官を1スカンジナビアマイル(10キロメートルに相当)に近づけることにすら関心を持っていない。

米海軍は、ノーチラス級の原子力推進攻撃潜水艦(SSN)に始まって、高濃縮ウランを使った燃料と原子力船推進用原子炉の先陣を切ってきた。1955年1月17日、ユージン・ウィルキンソン指揮の下、米潜水艦「ノーチラス」(SSN-571)が原子力艦船として初就航した。ウェスティンハウス社製70MWthの加圧水型原子炉(S2W)を推進力としていた。ウィルキンソンは大西洋潜水艦隊司令官に「原子力にて航行中」という歴史的なメッセージを打電した。以来、艦船推進と海軍技術におけるこの革新は、今日まで続いている。

「ノーチラス」就航後の海軍原子力推進の歴史を見ると、1958年6月4日にソ連海軍のSSN「K-3」、英国海軍の弾道ミサイル潜水艦(SSBN)「ドレッドノート」が1963年1月10日、中国人民解放軍の海軍SSN「漢」が1971年8月23日、仏海軍のSSBN「ル・ルドゥタブル」が1971年12月1日にそれぞれ就航。1988年、ソ連がSSNをインド海軍に貸与、2014年12月14日、インド海軍のSSBN「アリハント」が就航(ソ連型をモデルに原子力推進部分を製作)している。

Tariq Rauf
Tariq Rauf

残念なことに、原子力推進かつ核兵器を搭載した潜水艦の拡散は既に起こっている。核巡航ミサイル潜水艦(チャーリー級)を1986年に初めてインドに「貸与」を決定したのはソ連であった。さらに2004年2月、ロシアはアクラ級攻撃型原潜をインドに「貸与」、2019年にも、また別のアクラ級攻撃型原潜を2025年までに「貸与」することを決めている。

伝えられるところでは、インドはアクラ級SSNの設計情報をコピーし自らの原潜を建造した。ちなみにその原子炉はロシア起源の設計でロシアからの相当の支援があったという。インドで稼働中もしくは建設中の22基の加圧重水型原子炉はすべて、カナダが提供した加圧重水型原子炉「CANDU」の無許可コピー、あるいはその派生型であることが想起される。

インドは核不拡散条約(NPT)の加盟国ではないため、IAEAとの包括的保障措置協定(INFCIRC/153)を結んでいない。インドが結んでいるのは「個別」の「INFCIRC/66/Rev.2」型の保障措置協定であり、インドには、保障措置を受けている民間の原子力活動と、明らかに保障措置の外にある核兵器活動が並行して存在していることになる。

民生部門では、ソ連/ロシアが提供した原子力砕氷船と新型の海上浮揚式原子炉に加えて、原子力艦船が4隻ある。1958年7月21日、米国の原子力推進旅客・貨物運搬船「サバンナ」が就航し、原子力によって初めて航行したのは1962年のことであった。

サバンナ号は、1962年から運行が停止される1970年の間に、およそ50万海里を航行した。計74キログラムのウラン235(濃縮度4%)を燃料とする74MWthの加圧水型原子炉を動力としていた。原子炉と燃料のコストは2830万米ドルだった。

ドイツは1969年10月11日に「オットーハーン」号を、日本は同年「むつ」号を、ソ連は1986年2月20日に「セブモルプーチ」号をそれぞれ就航させている。セブモルプーチは、2016年の改修を経て、今日でも現役で活動している。動力は、出力135MWthの加圧水型原子炉「KLT-40」(砕氷船用)であり、その中心には150キログラムの高濃縮ウランが装填されている。その変異型である150MWthの「KLT-40S」は現在、ロシアの海上浮揚式原子力発電所「アカデミック・ロモノソフ」で使用されている。小規模の「KLT-40S」は14%濃縮の低濃縮ウランを3年毎のサイクルで使用する。

バイデン政権の国家安全保障補佐官(ジェイク・サリバン)が率い、秘密裏に設置された小規模のチームが、米海軍に事前に相談することなしに、オーストラリア海軍に対して巡航ミサイル搭載原子力潜水艦(SSGN)を供与すると発表したという未確認の報道がある。

オーストラリアであれ他の非核保有国であれ、INFCIRC/153(修正)型の保障措置協定をIAEAと結んでいる国が、協定の存在に関わらず、海軍の核燃料を保障措置の対象外としている問題にIAEAは直面している。協定第14条には免除の定義あるいは解釈が存在せず、何が「非平和的」「非違法」軍事活動にあたるのかの合意もない。まして、第14条の状況を履行するにあたっての諒解や手続きも定まっていない。

インド太平洋地域に関する豪英米三国間協定(AUKUS)が2021年9月15日に発表されたが、この中で、IAEA事務局が関わるか関わらないかに関係なく、第14条の解釈・定義を行うとされているが、IAEAの関係国や専門家との適切な協議なしに信頼を得ることは不可能だろう。

第14条に由来した保障措置の免除の履行は、IAEAのすべての加盟国との協議の上で共通の理解に到達し、理事会に提示して判断と承認を得なければならない。オーストラリアあるいはAUKUSだけが問題なのではない。問題はそれよりも大きなものであり、IAEAの全加盟国と事務局が関わっているものだ。

IAEA保障措置の内外に2つの並行した核計画をある国が運用するような、「NPT以前」あるいは「非NPT的」協定の新システムをNPT/IAEA体制の内部に作り上げることによって、オーストラリアはこの構造の統一性と、NPT上の非核保有国におけるIAEA包括的保障措置の履行を弱めることになるだろう。NPT加盟国でないインドがその核活動の一部を保証措置の下に置き、一部をその外部に置いているやり方をまねたものだ。

オーストラリアが、海軍で使う兵器級高濃縮ウランを保障措置の下に置かなくてよいのであれば、例えば、アルゼンチンやブラジル、カナダ、イラン、日本、韓国はどうなるのだろうか。

長年にわたって、ブラジルは、原子力推進の研究開発だという理由で、IAEAとの追加議定書の締結を回避してきた。ブラジル・イラン両国は、ウラン濃縮活動の一つの要件は、原潜を取得する可能性にあると主張してきた。

伝えられるところによると、AUKUSを構成する三国は、IAEA理事長にSSGNを豪海軍に提供する意図を伝えたという。つまり、近い将来、オーストラリアがNPT保障措置協定の14条を発動して、海軍の核燃料用の高濃縮ウランの相当量(1.6~2.0トン以上の兵器級高濃縮ウラン)を協定の対象から外すよう求めるかもしれないということである。

AUKUS協定によってオーストラリアがSSGNを取得することで、パンドラの函が開かれるかもしれない。アルゼンチン・ブラジル・カナダ・イラン・日本・サウジアラビア・韓国などといった非核兵器国、さらには台湾が、原子力艦船や潜水艦を開発あるいは取得し、核燃料(低濃縮及び高濃縮ウラン)をIAEAの保障措置協定の外部に置こうと試みる可能性があるからだ。

AUKUSの三国は明らかに、IAEA保障措置協定の「グレーゾーン」や「抜け道」を利用して兵器級高濃縮ウランを保障措置の対象外にしようと、IAEAとの不透明で秘密裏の協議を開始している。この「グレーゾーン」の解釈と履行の技術的・政策的態様の理解と解釈については、明確な合意が存在しない。

IAEA
IAEA

中国とロシア連邦は、オーストラリアに原子力潜水艦を供与するAUKUS計画を批判する外交的攻勢をIAEA理事会の内部ですでに繰り広げている。AUKUS同盟の圧力を受けその影響下にあって威嚇されている多くの西側諸国は、一歩下がって、AUKUS当事国とIAEAとの間で成される協定がどのような色合いのものになるのかを注視している。

こうして、オーストラリアはとりあえず信用を獲得し、中国と対決する米国には共感が寄せられることになる。非同盟諸国はまだ旗幟を鮮明にしていないが、その多くが、中国の反感を買いたくないし、他方で米国やアジア太平洋地域におけるその同盟国とも関係を悪化させたくないという八方ふさがりの状況に陥っている。

いまこそ、IAEA保障措置システムの効果を強化し、その効率性を向上させる時だ。保障措置を弱め、それを通じて原子力潜水艦を容認するようなことではない。(原文へ)

INPS Japan

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【ソウルIDN=エミ・ハヤカワ】

韓国京畿道広州市の天眞庵(チョンジンアム)は、同国カトリック信仰の発祥地として、殉教した聖祖たちの墓や聖母礼拝堂、博物館等が整備され、チョンジンアム大聖堂の建設(2079年完成予定)も進行している。しかし、宗教の違いを超えて彼らをこの地で庇護したことが当時の李氏朝鮮政府に咎められ、反逆罪でキリスト教徒とともに処刑された僧侶らやその際破却されたこの地の仏教寺院に関する情報は消されている。歴史的な文献や考古学的な研究を元に、この埋もれた歴史に光を当てた記事。(原文へ

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世界伝統宗教指導者会議

新型コロナウイルス感染症の世界的流行により世界の保健サービスが混乱

【ジュネーブIDN=ジャヤ・ラマチャンドラン】

世界保健機関(WHO)と世界銀行がまとめた相互に補完する2巻の報告書によると、新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)達成に向けた20年来の歩みが中断される可能性が高いことが指摘されている。UHCデー(12月12日)に発表された同報告書はまた、今回の危機により、医療費負担のために極度の貧困または一層深刻な貧困に陥った人は5億人を上回っていると述べている。

WHOと世銀による今回の新報告書はまた、貧困の悪化、所得の減少、財政状況の悪化に伴い、経済的困窮は一段と深刻化する可能性が高いと警告している。

SDGs Goal No. 3
SDGs Goal No. 3

「新型コロナウイルス感染症危機の前でさえ、家計の10%以上を医療費に費やす人は10億人近くに上っていました。特に最貧困層が最も深刻な打撃を受ける中で、こうしたことはあってはなりません。財政的制約がある中、政府は保健予算を確保し、増やすために難しい選択を迫られることになります。」と、フアン・パブロ・ウリベGFFディレクター兼世界銀行保健・栄養・人口グローバル・プラクティス・ディレクターは語った。

2つの報告書は、今回の感染症危機の結果、保健医療サービスを受けることやその代金を負担することが極めて困難になっていると強調している。 2020年、感染症の世界的流行により保健サービスが混乱に陥り、各国が新型コロナウイルス感染症の影響への対応に苦戦する中で、保健システムは限界を超えるに至った。その結果、例えば予防注射の接種率は10年ぶりに低下に転じ、結核とマラリアによる死者が増加した。

報告書によると、新型コロナウイルス感染症の世界的流行はまた、1930年代以降で最悪の経済危機を引き起こし、医療費の自己負担を一段と難しくしている。今回の危機以前にも、医療費負担のために極度の貧困または一層深刻な貧困に陥った人は5億人に上っていた。報告書は、その数が大幅に増えたとみている。

「一刻の猶予も残されていません。」と、WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長は語った。「全ての国の政府がただちに、国民の誰もが経済的負担を感じることなく保健サービスにアクセスできるようにする取組みを再開・加速しなければなりません。そのためには、保健・社会的支援への公共支出拡大に加え、近所で基本的な保健医療が受けられるようプライマリ・ヘルスケア・システムの強化が求められます。」

「新型コロナウイルス感染症危機の前には、多くの国で進歩が見られたものの、十分とは言えませんでした。今こそ、次なる感染症の世界的流行などのショックにも持ちこたえ、UHCの達成に向け邁進できるだけの強力な保健システムを構築しなければなりません。」とテドロス事務局長はつけ加えた。

Tedros Adhanom Ghebreyesus, Directr General, WHO at the AI for Good Global Summit 2018/ by ITU Pictures from Geneva, Switzerland, CC BY 2.0

今世紀の最初の20年間、多くの政府が保健サービスの対象拡大を進めた。今回の危機が始まる前の2019年には、産前・産後ケアや性と生殖に関する健康サービス、予防注射、HIVや結核、マラリアなどの病気の治療、がんや心臓病、糖尿病など非感染性疾患の診断や治療といった基礎的保健サービスを受けている人は、世界人口の68%に上った。

ところが、安価な医療費の確保という意味ではそのような進歩は見られなかった。そのため、最貧困層や農村部住民は保健サービスを最も受けにくく、医療費の家計への影響に最も対応が難しかった。医療費の自己負担が原因で貧困に陥った世帯の最大90%が既に貧困ライン上にあるか同ラインを下回っているため、貧困層の医療費免除や、そうした措置を現場で適正な医療が実施できるような保健財政政策で支える必要性が高まっている。

貧困・脆弱層を対象とするサービスを優先し、的を絞った公共支出や、人々を経済的苦境から守る政策と組み合わせるほか、サービスへのアクセス、対象範囲、医療費自己負担、総支出に関するデータの収集、即時性、分析もまた重要となる。保健システムの実態を正確に把握して初めて、国は全国民のニーズに応えるための改善に向け効果的に的を絞った措置を講じることができる。

新型コロナウイルス感染症危機が始まって以降、世銀グループでは、過去に例を見ない迅速かつ大規模な危機対応として、1570億ドル以上を提供し、感染症による保健、経済、社会面への影響と戦ってきた。世界銀行グループの資金は、100ヶ国以上において、感染症予防の強化、貧困層の保護と雇用の維持、気候変動に配慮した回復の活性化に充てられている。世界銀行はまた、60か所以上の低・中所得国(半数以上がアフリカ諸国)による新型コロナウイルス感染症ワクチンの調達・配布を支援しており、2022年末までにこのための資金200億ドルを提供する用意がある。(原文へ

INPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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終戦宣言への懐疑論を受けて

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

【Global Outlook=チャンイン・ムーン】

われわれがいまだ選んだことのない道について、恐怖のために何も行動を起こさないならば、何も変わらない。

文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領が2021年9月21日の国連総会演説で、朝鮮戦争の正式な終戦宣言を実現するために国際社会の協力を求めて以来、この問題は、文大統領の任期終了が近づく中で政府の外交努力の最前線にある。(原文へ 

2021年11月26日、金富謙(キム・ブギョム)首相はアジア欧州会合(ASEM)参加国に支援を呼びかけ、「終戦宣言は、朝鮮半島に暮らす全ての人が願う平和のために、決して放棄できない目標である」と強調した。また、李仁栄(イ・イニョン)統一部長官は近頃、終戦宣言は「韓国、北朝鮮、米国が相互の敵意と対立を棚上げし、対話を開始し、平和を目指して信頼を確立するために有益な手段である」と述べた。

しかし、韓国にも国際社会にも、終戦宣言を追求することへの大きな懐疑論と不支持が存在する。終戦宣言は単なる紙切れであり、何も変えられないと皮肉を込めて主張する者もいる。朝鮮半島の和平プロセスが終了するまで、つまり北朝鮮の非核化が完了し、真の平和が根付き始めるまでは、終戦宣言を控えるべきだと言う者もいる。

また、終戦宣言は現状を変更し、朝鮮半島の安全保障を危機にさらす恐れがあるという懸念も存在する。評論家は、終戦宣言によって国連司令部の解体、米軍の撤退、米韓合同軍事演習の停止につながる恐れがあると言う。

より実務的なレベルでは、文政権はこの問題について関係国と十分な協議を行うことなく、あまりにも強引に正式な終戦を目指していると考える者もいる。関係国の見解を考えると、これは特に問題であると彼らは言う。北朝鮮は、対話の場に戻る前に米国と韓国が“ダブルスタンダード”と“敵対政策”を撤回しなければならないと主張する。米国は、名目上は終戦宣言を支持しているものの、実際には懐疑的である。中国は傍観している。日本は、正式な終戦は時期尚早だと主張している。

もう一つの論点はタイミングである。文大統領の任期満了まで残り5カ月、大統領選まで残り3カ月しかないことから、文は、正式な終戦という重大な一歩を踏み出すことによって次期政権に重荷を負わせるべきではないと言う者もいる。

このような見解や批判には見るべきものがないわけではないが、誇張していると思われる点がいくつもある。

第1は、終戦宣言の性質についてである。文政権が提案していることは、戦争の終了を確認するというより、70年以上にわたって続いている戦争を終わらせなければならないと断言することである。

そのような仕事が1枚の紙切れで終わることはない。終戦宣言は、現在の行き詰まりを終わらせ、信頼を醸成し、非核化に向けた突破口を見つける努力を象徴するものといえる。それは、当事者の誰もが最初に行動を起こそうとしない膠着状態において、終戦宣言が出発点になり得るという考え方に信憑性を与える。

次に、現状を変更することへの懸念について考えてみよう。確かに終戦宣言は、半戦争状態のような現状を終わらせ、恒久的平和に移行しようとすることにより、現状を変更しようとする試みといえる。しかし、文がすでに表明した通り、終戦宣言は国連司令部の解体、米軍の撤退、あるいは米韓合同軍事演習の停止をもたらすものではない。

これらの事項は全て、韓国が主権国家として下す決定であって、それらは北朝鮮が長年要求してきたことではあるが、終戦を宣言したからといって、ただちにそのような構造的変化をもたらすわけではない。

韓国政府は、米国との同盟と安全保障体制を維持しつつ、敵対関係を改善し、北朝鮮の非核化を促進する足掛かりとして終戦宣言を考えている。それは、和平プロセスの長い旅の暫定的な第一歩でしかない。それは、交渉がいかに難しいものとなるかを示しているが、かといって安全保障上の脅威が増大すると結論づけるのも行き過ぎと思われる。

同じことが、環境の分析にもいえる。北朝鮮が主張している前提条件は、いつも同じである。しかし、北朝鮮の指導者である金正恩(キム・ジョンウン)の近頃の前向きな発言を見ると、北朝鮮政府も終戦宣言がこれらの要求を実現するマスターキーではないことを分かっているようだ。

米国が“永遠の戦争”を望んではいないと仮定すると、終戦宣言は間違いなく米国にとって検討に値する選択肢である。中国も、朝鮮戦争の交戦国という立場を考えると、終戦宣言には自国も加わることを前提としており、反対する理由は何もない。もちろん日本については十分な検討が必要であろうが、日本は終戦宣言の当事者ではないため、主要変数ではない。

懐疑的な人々は、今が適切なタイミングなのかと問う。しかし私は、終戦宣言が早すぎるということはなく、それどころかあまりにも遅すぎたと考えている。この戦争は、冷戦が終焉した30年前とはいわないまでも、遅くとも2018年には終結しているべきだった。

文にとって、任期が残り少ないというだけの理由で、朝鮮半島に平和をもたらす外交努力をやめるなどということは、憲法上の任務をあからさまに放棄することであろう。文は大きな政治判断的な行動は次期政権に委ねるべきだという主張については、私はそれを政治的スピンだと考える。平和と安全保障を国内政治のエサにしようとする言い分である。

終戦宣言は平和への道をいっそう複雑にするという懸念がある。しかし、われわれがいまだ選んだことのない道について、恐怖のために何も行動を起こさないならば、何も変わらない。

70年間引きずってきた戦争を終わらせるべき時が来たと宣言することは、分別があり、心ある行いである。そして、われわれは、能力の面でも制度の面でも、それに対処する十分な用意がある。核兵器と永遠の戦争が、朝鮮半島において若い世代に残すレガシーでないことは間違いない。

この話題に関するより詳しい議論については、ストックホルム国際平和研究所のダン・スミス所長と本論考の筆者である世宗研究所の文正仁(チャンイン・ムーン)理事長が出演したこちらの動画(Special Roundtable: Ending the Korean War)を視聴されたい。

チャンイン・ムーン(文正仁)世宗研究所理事長。戸田記念国際平和研究所の国際研究諮問委員会メンバーでもある。

この記事は、2021年12月6日に「ハンギョレ」に初出掲載されたものです。

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世界で最も地球温暖化ガス排出量が少ない地域にも関わらず地球温暖化の悪影響に最も晒されている(2020年だけで400万ヘクタールの森林が喪失)アフリカ大陸では、この傾向を逆転させるべく、域内32ヶ国政府が加盟する森林回復イニシアチブ「アフリカ森林景観復興イニシアチブ(AFR100)」が始動している。来年のCOP27までに、20億米ドル(約2,200億円)の資金動員を目標とし、故ワンガリ・マータイ女史が実践したような地元コミュニティー主導の草の根活動の支援を通じて、2030年までに1億ヘクタールの土地回復を目指している。(原文へ

INPS Japan

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ドイツからTPNWに重要なシグナル――しかし、それ以上ではない

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

【Global Outlook=ハルバート・ウルフ】

ドイツの連立新政権は、ドイツの外交・安全保障政策の基盤を揺るがすつもりはない。新政権は、EUとNATOにおける信頼できるパートナーであり続けることを望んでいる。しかし、軍縮と軍備管理努力については重要なシグナルを送っている。177ページに及ぶ連立合意文書には、核兵器禁止条約(TPNW)に関する次のような一節がある。「核不拡散条約(NPT)再検討会議の結果に照らして、また、同盟国と密接に協議したうえで、われわれは、核兵器禁止条約締約国会議へオブザーバーとして(締約国ではなく)参加し、条約の意図に建設的に寄り添っていく」。これは、新しい、重要な考え方である。新政権樹立の前でさえ、米国、フランス、NATOは、彼らがTPNWになびいていると批判していた。NATO全般にいえることだが、ドイツのこれまでの安全保障政策の立場は、NPTのほうが重要度が高く、TPNWは蛇足であり、NPTに関する審議に混乱をもたらすというものだった。TPNWに反対する根拠は、ハイコ・マース前外相によると、ドイツは、「この世界における核弾頭の数を減らすことを目指して努力する」ために、NATOにおいて、また米国の同盟国として自国の影響力を行使することを望んでいるというものだった。(原文へ 

ベルリンの連立政権パートナーは、NATO、EU、そして安全保障専門家の間でTPNWがいかに微妙な問題であるかを分かっている。それが、TPNW会議でオブザーバーの地位しか求めない理由、また、NATOの核の概念において引き続き役割を果たしたいと連立合意文書に明記した理由の一つである。ドイツの立場を明確にするために、連立合意文書には、「欧米の同盟関係は中心的要素であり、NATOはドイツの安全保障の不可欠な部分である」とも記載されている。しかし、TPNWにおけるオブザーバーという立場は決して中立的とはいえない。なぜなら、2022年3月に初めて開催される会議の費用は、オブザーバーも負担しなければならないからである。

今までのところ、全ての核兵器保有国はTPNWを拒絶しており、条約締約国会議へのオブザーバーの地位を受け入れることも拒否している。NATOは自らを核同盟と呼んでおり、同盟の究極的な目標は核兵器のない世界であるものの、NATOの核抑止力は「最大限の抑止力」であると述べている。また、米仏の大統領が2021年10月にローマで会談した際に調印した共同声明では、各国の集団防衛における中心的要素として抑止力をさらに強化するという目標が繰り返し述べられた。

TPNWに関して欧州の意見は分かれている。欧州の4カ国、具体的にはオーストリア、アイルランド、マルタ、サンマリノは条約を批准している。ノルウェーはこれまでのところ、オブザーバーとして参加することを約束した唯一のNATO加盟国である。したがって、TPNWが受け入れられるためには、もう1カ国のNATO加盟国がオブザーバーの地位獲得を望むことが重要である。しかし、NATOに加盟するフランスと英国は核兵器を保有しており、EUに加盟する4カ国(ベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ)とトルコは、NATOの核共有制度のもとで領土内に米国の核兵器を受け入れている。これは当然ながら、「いかなる状況においても、核兵器またはその他の核爆発装置を開発、実験、生産、製造、その他の方法で取得、保有、または保管しない」ことを締約国に求めるTPNWとは両立し得ない。

そのため、ドイツの核抑止力に関する他の二つの問題、すなわちドイツの核共有制度とドイツ領内に配備された米国の核兵器という問題は、TPNWにおけるドイツの立場と密接に関連している。ドイツのビューヒェル空軍基地には、約15発の米国製B-61 戦術核が配備されている。それらは、近代化される予定である。核共有制度では、緊急事態の場合、米空軍ではなくドイツ空軍がこれらの核爆弾を標的に落とすことを想定している。新政権の主要な代表者(緑の党出身のアンナレーナ・ベアボック新外相、社会民主党(SPD)のロルフ・ミュッツェニヒ院内総務)は、選挙運動中から、近い将来これらの核兵器を撤去することを求めている。

できないことを、どうやるというのか? 軍備管理と米国の核兵器の撤去については明確なシグナルを送りながら、核抑止力と完全かつ絶対的なNATO加盟国としての地位を固守するとは。それに加えて新政権は、「欧州の戦略的主権の拡大」を望んでいる。これは、エマニュエル・マクロン仏大統領が繰り返し使っている言葉である。マクロンは、欧州の独立性の強化とNATOへの軍事依存度の低下を訴えている。ドイツの新政権がドイツの核関与に関する決定を先延ばしにする余地はほとんどない。ドイツ連邦軍の核ミッションに使用されるトーネード戦闘機は老朽化している。トーネード85機のうち実際に運用可能なのは4分の1に満たない。核共有制度を継続するなら(政権がNATO加盟国という立場を疑問視したくないなら、継続は必須と思われる)、新たな戦闘機が至急に必要である。ドイツの前政権は、この任務のために米国製戦闘機を購入することを発表し、意思決定プロセスを進めていた。しかし、連立与党三つのうち二つ(SPD、緑の党)に強い反発が見られ、両党とも、ドイツ領内における米国の核兵器受け入れと、新たな核搭載可能戦闘機を調達する莫大な費用に反対している。しかし同時に、いささか理解しがたいが、新政権は「同盟内の公平な分担」を訴えている。簡単に言えば、GNPの2%という約束した目標を達成するための軍事費増額である。興味深い余談として、政府はこの具体的比率の軍事費にコミットすることを控え、代わりに外交、開発援助、防衛を合わせた支出を3%とする目標を掲げることを決定した。このような姿勢は、安全保障が軍事活動のみに依存するのではないというシグナルである。

ドイツがTPNWにオブザーバーとして参加する希望を発表したことで、核兵器の有用性に対する明確な疑念が表明された。しかし同時に、NATOとEUの重要な同盟国を疎外するわけにはいかない。もちろん、連立合意文書は確定事項ではなく、現実において成果を示さなければならない。しかし、安全保障政策の概念は完全に一貫しているとはいえない。なぜなら、そこには核政策に対する賛成派と反対派が入り交じっているからである。新政権は、統治のリアルポリティークだけでなく、緑の党の平和主義的伝統や社会民主党の反射的な軍批判を反映し、さまざまな方向に引っ張られているようである。その結果最も起こり得ることは、軍備管理や軍縮の重点化(願わくばイニシアチブをとり)、それと同時に(全ての選択肢を使えるようにするために)核兵器ミッションに対応できる戦闘機の調達である。また、特に米国やNATOからの(さらには、ロシアの軍隊とその意図を特に懸念しているポーランドやバルト三国といった東側諸国からの)批判を避けるために、軍事費の増額は起こり得る。

TPNW会議への参加意向を発表したことは、核政策への批判と疑問を表す明確なシグナルであり、それは他の国々にTPNWへの同意表明を促すことになるかもしれない。それは、パリ、ワシントン、ブリュッセルに警鐘を鳴らすシグナルでもある。近い将来、それが重要なシグナル以上のものとなるかどうかが分かるだろう。いずれにせよ、このドイツのイニシアチブについてはさらなる議論が交わされ、恐らくNATO内には混乱と動揺も生じると予想される。

ハルバート・ウルフは、国際関係学教授でボン国際軍民転換センター(BICC)元所長。現在は、BICCのシニアフェロー、ドイツのデュースブルグ・エッセン大学の開発平和研究所(INEF:Institut für Entwicklung und Frieden)非常勤上級研究員、ニュージーランドのオタゴ大学・国立平和紛争研究所(NCPACS)研究員を兼務している。SIPRIの科学評議会およびドイツ・マールブルク大学の紛争研究センターでも勤務している。

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