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|アフガニスタン|米国がもたらした戦争、腐敗、貧困に終止符をうたなければならない

【ニューヨークIDN=メディア・ベンジャミン】

タリバンの復権を受け、アフガニスタンでは深刻な人道危機への懸念が高まっている。そうした中、米国はアフガニスタン中央銀行の外貨準備を凍結し、国際通貨基金(IMF)も資金供与を停止した。西側諸国はこれを対タリバン圧力として正当化しているが、その代償を払わされるのは、飢餓、干ばつ、新型コロナ禍に直面するアフガニスタンの市民である。問われているのは、20年に及ぶ戦争の後、米国と同盟国がなお経済的威圧によってアフガニスタンを追い詰めるのか、それとも復興と生存を支える責任を果たすのかである。

米国では、タリバンの復権から逃れようと、何千人ものアフガニスタン人が命がけで国外脱出を試みる映像に衝撃が広がった。さらにその直後には、イスラム国による自爆攻撃と、それに続く米軍の攻撃によって、少なくとも170人が命を落とし、その中には13人の米兵も含まれていたことが大きな衝撃を与えた。

国連機関がアフガニスタンで差し迫った人道危機に警鐘を鳴らす中、米財務省はアフガニスタン中央銀行が保有する94億ドルの外貨準備のほぼ全額を凍結した。これは、新政権が今後数カ月にわたり国民に食料を届け、基礎的な公共サービスを維持するうえで不可欠な資金を断つ措置にほかならない。

米国とその同盟国は、戦争に敗れた後の対応として、タリバンのみならずアフガニスタン国民に対しても、いわば「第二の戦争」としての経済戦争を仕掛けつつある。

バイデン政権の圧力を受け、IMFは新型コロナウイルス対策としてアフガニスタンに送られる予定だった4億5000万ドルの資金供与を見送った。米国と西側諸国はまた、アフガニスタンへの人道支援も停止している。8月24日のG7アフガニスタン首脳会合後、英国のボリス・ジョンソン首相は、支援と承認を差し控えることで、タリバンに対し「非常に大きな経済的、外交的、政治的影響力」を持てると語った。

西側諸国の政治指導者は、この「影響力」を人権擁護の文脈で説明する。だが実際には、タリバン復権後の政権内に自らのアフガン側同盟者の一定の地位を残し、西側の影響力と利益を維持しようとする意図が透けて見える。この圧力はドル、ポンド、ユーロで行使されるが、その代償を支払うのはアフガニスタンの市民である。

西側の論調を見れば、米国と同盟国による20年戦争は、アフガニスタンを近代化し、女性を解放し、保健医療、教育、雇用をもたらす善意の事業であったかのように描かれる。そして、それがタリバンへの「屈服」によって失われたと説明される。

しかし、現実は大きく異なる。米国はアフガニスタン戦争に2兆2600億ドルを費やした。この規模の資金が本当に人々の生活のために使われていれば、多くの人々を貧困から救えたはずである。ところが、その大半に当たる約1兆5000億ドルは、米軍占領の維持、8万発を超える爆弾とミサイルの投下、民間軍事請負業者への支払い、そして兵員や武器、軍事装備の長年にわたる輸送に費やされた。

しかも、この戦争は借金で賄われたため、利払いだけでもすでに5000億ドルに達し、その負担は今後も続く。アフガニスタンで負傷した米兵に対する医療費や障害給付も1750億ドルを超えており、今後さらに膨らむ見通しだ。イラク戦争とアフガニスタン戦争を合わせた医療費と障害給付は、最終的に1兆ドルを超える可能性もある。

では、「アフガニスタン再建」は何をもたらしたのか。米議会は2001年以降、アフガニスタン再建のために1440億ドルを計上したが、そのうち880億ドルは、すでに崩壊したアフガン治安部隊の募集、武装、訓練、給与支払いに充てられた。さらに、2008年から2017年に支出された155億ドルは、アフガニスタン復興特別監察官(SIGAR)によって「浪費、不正、乱用」と記録されている。

その結果、経済開発、医療、教育、インフラ、人道支援といった分野に実際に回った資金は、米国のアフガニスタン向け総支出の2%にも満たない約400億ドルにすぎなかった。

しかも、イラクと同様、米国が後押ししたアフガニスタン政府は深刻な腐敗体質を抱えていた。トランスペアレンシー・インターナショナル(TI)は、米国占領下のアフガニスタンを、長年にわたり世界でも最も腐敗した国の一つに位置づけてきた。しかもTIによれば、2001年以降の腐敗の規模は、それ以前を上回る水準にまで拡大した。経済協力開発機構(OECD)も2009年、「腐敗は過去のどの政権にも見られなかった水準に達した」と警告していた。

2010年、レーガン政権下で国防総省高官を務めたアンソニー・H・コーデスマンは、『アメリカはいかにアフガニスタンを腐敗させたか』と題する報告書で、米政府がほとんど説明責任を果たさぬまま巨額の資金を流し込んだ実態を厳しく批判した。『ニューヨーク・タイムズ』も2013年、CIAが10年にわたり毎月、現金をスーツケースやバックパック、さらにはビニール袋に詰めてアフガニスタン大統領に届け、軍閥や政治家の買収資金にしていたと報じている。

腐敗は、教育や医療といった、西側諸国が占領の成果として掲げてきた分野すら蝕んだ。教育制度には、書類上しか存在しない学校、教師、生徒があふれ、薬局には偽造薬や期限切れ、あるいは質の低い医薬品が並んだ。多くは隣国パキスタンから密輸されたものだった。さらに、教師のような公務員は、外国のNGOや請負業者で働く一部のアフガニスタン人の10分の1程度の賃金しか得られず、こうした格差が腐敗の土壌となった。

腐敗の根絶や生活改善は、そもそも米国の最優先課題ではなかった。重視されたのは、タリバンとの戦闘継続と、米国が支える政権の支配維持である。TIが指摘したように、米国は協力や情報提供を確保するため、武装集団や公務員に意図的に資金を流し、どれほど腐敗していても地方権力者と手を組んできた。その結果、腐敗はアフガン政府への不信を深め、反乱勢力への支援を招き、米国の任務そのものを損なった。

終わりの見えない占領の暴力と、米国支援政権の腐敗は、とりわけ人口の4分の3が暮らす農村部で、タリバンへの支持を押し上げた。さらに、富裕国による占領下にありながら極度の貧困が放置された現実は、人々に深い幻滅をもたらした。

実際、今回の危機以前から、現在の収入では暮らしていけないと答えるアフガニスタン人の割合は、2008年の60%から2018年には90%へと急増していた。2018年のギャラップ調査では、アフガニスタン人の自己申告による幸福度は、世界で記録された中でも最低水準となった。人々は極度の苦しみだけでなく、将来への深い絶望も抱えていた。

女子教育には一定の進展もあったものの、2019年時点で初等教育を受けていた少女は3分の1にとどまり、10代少女の識字率は37%だった。さらに、6歳から14歳までの200万人を超える子どもが、貧困に苦しむ家族を支えるために働かざるを得ない状況に置かれていた。

それにもかかわらず、西側諸国の指導者たちは、自らの責任を顧みるどころか、アフガニスタンの公共部門の4分の3を支え、GDPの40%を占めていた経済・人道支援を断ち切ろうとしている。

この構図は明白である。新たなアフガニスタン政府が西側の要求に従わなければ、米国と同盟国は国民を飢えさせ、その後に生じる飢饉や人道危機の責任をタリバンに転嫁する。これは、キューバやイランなど、他の米国の経済制裁対象国に対しても繰り返されてきた構図と重なる。

いま米国に求められているのは、祖国を離れなかった4000万人のアフガニスタン人を支えることである。彼らは、戦争が残した深い傷と心の痛みに苦しむだけでなく、今年40%の作物を失わせた大干ばつと、深刻な新型コロナウイルス感染第3波にも直面している。

そのためには、米国内で凍結されている94億ドルのアフガニスタン資金を解放すべきである。また、すでに消滅したアフガン軍向けに割り当てられていた60億ドルを、別の軍事支出に流用するのではなく、人道支援へ振り向けるべきである。さらに欧州の同盟国やIMFにも、資金供与停止を見直すよう促す必要がある。むしろ、国連の2021年緊急支援要請13億ドルを全額拠出で満たすべきであり、8月下旬時点でその充足率は40%未満にとどまっていた。

かつて米国は、英国やソ連とともにドイツと日本を打ち破り、その後、両国の再建を支援した。人種差別、広島・長崎への加害、新植民地主義的な対外関係という重大な問題を抱えながらも、かつての米国には、多くの国々が追随しようと考えるだけの繁栄の構想があった。

しかし、いま米国が他国に示せるものが、アフガニスタンにもたらした戦争、腐敗、貧困だけであるなら、世界が別のモデルを模索するのは当然である。そこには、民衆的・社会的民主主義の新たな試み、国家主権と国際法の再重視、軍事力に依存しない紛争解決、そして新型コロナや気候危機といった地球規模課題に対処する、より公正な国際協力の枠組みが含まれる。

米国はいま、軍国主義と威圧によって世界を支配しようとする実りなき路線を引きずるのか、それともこの機会に自らの立ち位置を根本から見直すのか、重大な岐路に立っている。もはや支配はできなくとも、ともに築くべき未来にどう協力し、意味ある貢献を果たすかが問われている。(原文へ

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著名アスリートらがより良い社会を作るためのスポーツの役割を強調

【ニューヨークIDN=J・ナストラニス】

国連は、多様性・寛容・尊厳といった価値を促進し、女性や若者、個人、地域をエンパワーし、保健や教育、社会的包摂といった目的に貢献する力がスポーツにはあると信じている。日本の国連広報センターは、「スポーツがつなぐ世界 SDGsを前へ」をテーマとした「SDG Zone at Tokyo」というキャンペーンを立ち上げた。

最初の3つのセッションである「開発と平和のためのスポーツ」「持続可能性・気候行動のためのスポーツ」「ジェンダーとスポーツから考える多様性」は、7月28日から30日にかけて行われた。「パラアスリートが語る『スポーツと可能性』」「スポーツの『進化』を通じた社会デザイン」「次世代に残るレガシー、2020からその先の社会のために」は8月25日から27日にかけて行われる。

「SDG ZONE」セッションは朝日新聞との共催で行われた。国連はこの趣旨を次のように説明している。「各国レベルの国連広報センターが主催する『SDGメディアゾーン』の初めての試みとして、今回はアスリートを招き、幅広い地域の市民社会や産業界、学界、各国政府・自治体、国連システムからのインフルエンサーやイノベーターを交えて、スポーツの力がいかにしてグローバルな課題の解決につながるかを論じるものだ。」

7月23日から8月8日まで開催された東京オリンピックに合わせて行われた今回の国連のオンラインイベントでは、有名なアスリートやインフルエンサー、イノベーターが、すべての人々にとってのより良い世界を作るためにスポーツが果たせる役割について議論を交わした。

2016年のリオ・オリンピックで初めて結成された難民チームの一員となり、現在は国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の親善大使を務めるピュール・ビエル氏は「スポーツは、難民キャンプで生活している難民の人生を変え得るものだ」と語った。

8月8日まで行われる今回のオンライントーク「SDG Zone at Tokyo」に加わったビエル氏は、自身の故郷である南スーダンでのトラウマに満ちた体験の生きていく上で、いかにスポーツが役立ったかを説明した。

アスリートとしてのビエル氏の経験に対しては、多くのスピーカーが賛同し、スポーツには世界を変える積極的な力があり、難民に希望をもたらし、気候関連の行動を促し、すべての人がその背景に関わらず輝ける社会をつくることができる、という共通のメッセージを伝えた。

元サッカー日本代表の北澤豪氏は、「世界が『ワンチーム』としてプレーしているからこそ、ゲームの中で感じるあらゆることが可能となる。」と述べ、懸け橋となるスポーツの役割を強調した。国連事務次長で軍縮問題上級代表の中満泉氏は、「相互の尊重やチームワーク、平等、フェアプレイといったスポーツが促進する価値は、開発と平和を多国間で推進する要素と非常に似ている。」と指摘した。

セーリングの五輪代表であり、使い捨てプラスチックの使用停止を求める運動「ビッグ・プラスチック・プレッジ」の創設者であるハンナ・ミルズ氏は、アスリートは、そのスポンサーとなっている企業やブランドに対する影響力があると指摘した。

ミルズ氏に続いて、5月に宇宙飛行から戻った日本の宇宙飛行士・野口聡一氏、「気候変動に関する国連事務総長ユース諮問グループ」のメンバー、アルチャナ・ソレン氏が発言し、両者ともに、時として異なる利害関係をもつ異なった集団の間の協力が地球を救うために必要だと語った。

近代五種の選手としてエジプトを代表して五輪に出場したアヤ・メダニー氏と、順天堂大学女性スポーツ研究センター長の小笠原悦子氏は、アスリートを支援する立場、とりわけコーチとなっている女性がいかに少ないかについて語った。

東京のLGBTコミュニティに賛辞を贈るイベントである「東京レインボープライド」の共同代表理事である杉山文野氏は、アスリートとしての活動を続けつつも、トランスジェンダーとしての自分のアイデンティティを明らかにすることがいかに困難であったかについて語った。また、「もしスポーツの世界が、あらゆる人々が不安なく参加できる方向に進めば、『誰も置き去りにされない』社会づくりに貢献することになるだろう。」と語った。

東京の国連広報センターの根本かおる所長は、「スポーツは喜びとインスピレーションをもたらすものであり、人間の人生に近い。」と指摘したうえで、「スポーツは、このコロナ禍という困難な時を生きぬくにあたって従来よりも必要と考えられる勇気と決意を与えてくれるものだ。こうした対話を通じて、持続可能な開発目標を前進させ、すべての人にとって、より環境にやさしく、平等で、包摂的で、持続可能な社会の実現を可能にするものとしてスポーツが役に立つさまざまな方法に光が当たることを期待している。」と語った。(原文へ

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東京オリンピックに合わせ、若者向け映像「核のゲーム」発表

SDGs達成の手段としてのスポーツ

|核実験に反対する国際デー|核兵器禁止へのコミットメントを再確認する、と国連事務総長

【ニューヨークIDN=UNニュース】

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、包括的核実験禁止条約(CTBT)をまだ批准していない国々に対して、一刻も早く批准するよう改めて強く呼びかけた。

この呼びかけは、8月29日の核実験に反対する国際デーに寄せてなされたものだ。

今日は、カザフスタンにあった旧ソ連最大の核実験場、セミパラチンスク核実験場が閉鎖されてから30年目にあたる。ここでは40年間に450回を超える核実験が行われた。

United Nations Secretary-General, António Guterres UN Photo/Mark Garten

グテーレス事務総長は、「核実験は甚大な人的被害と環境破壊をもたらした。」と指摘したうえで、「被害を受けた地域の住民の健康に恐ろしい影響を及ぼしました。多くの人々が代々受け継がれてきた土地を離れざるを得なくなり、生活や生計が混乱しました。手つかずの環境や生態系が、修復には数世紀とは言わないまでも数十年はかかるほど、破壊されました。」と語った。

「この実験場の閉鎖により、無制限な核実験の時代が終わりを告げました。その後程なく、CTBTの交渉を開始しました。CTBTは、いかなる国による、いかなる場所での核兵器のすべての実験的爆発も禁止しており、核軍拡競争に歯止めをかけ、新たな核兵器開発に対する強力な防壁となります。」と事務総長は語った。

CTBTは1996年に採択され、これまでに185カ国が署名、170カ国が批准している。しかし、この条約が発効するには核技術を有する44カ国すべてが署名・批准しなければならない。

「セミパラチンスク核実験場の閉鎖から30年の間に、核実験に反対する規範が徐々に形成されてきました。しかしながら、CTBTはほぼすべての国で採択されているにもかかわらず発効されていないために、その可能性を完全には発揮できていません。」と事務総長は嘆いた。

グテーレス事務総長は、「私は、この条約をまだ批准していない国々に対して、一刻も早く批准するよう改めて強く呼びかけます。その批准が条約発効に必要な8カ国(米国、中国、エジプト、イラン、イスラエル、北朝鮮、インド、パキスタン)は、特別な責任を負っています。それと同時に、あらゆる国々が核爆発のモラトリアムを維持または実施すべきです。」と指摘したうえで、「『核実験に反対する国際デー』は、いかなる者がいかなる場所で行うものであっても、すべての核実験を禁止するという私たちの約束を再確認する機会です。この目標の達成を遅らせる理由は存在しません。」と語った。

核兵器が国際社会に及ぼしている脅威は「今も厳然として変わりません。」とマグジャン・イリヤソフ国連大使は、国際デーを前にUNニュースの取材に応じて語った。(インタビュー内容はこちらへ

「私たちカザフ人にとって8月29日は単なるカレンダーの日付ではありません。核実験によってカザフスタンだけでも150万人の人々が今も苦しんでおり、残念ながら将来の世代にわたって、被爆に起因する遺伝性疾患、癌、白血病等に苦しむことになります。セミパラチンスク核実験場で行われた核爆発のインパクトは、第二次世界大戦中に広島に投下された原爆の1200倍に相当します。」

Semipalatinsk Former Nuclear Weapon Test site/ Katsuhiro Asagiri
Semipalatinsk Former Nuclear Weapon Test site/ Katsuhiro Asagiri

「セミパラチンスク核実験場はイスラエルの国土に相当します。これだけの広大な地域が、数十年に亘って、農業など生産的な活動に全く活用できないのです。これを考えれば、今は閉鎖された世界各地の核実験場がもたらした被害の規模が想像できるでしょう。」とイリヤソフ大使は語った。(原文へ

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核兵器廃絶展を通じて絆を深める日本とカザフスタン

|核実験禁止国際デー|プロメテウスの核の炎を消す

|日本|核兵器禁止条約加盟を求める圧力が高まる

旧ソ連構成国のユーラシア軍事同盟がセミパラチンスク核実験場閉鎖30周年を記念する

【ニューヨークIDN=ラドワン・ジャキ―ム】

6カ国の加盟国で構成される集団安全保障条約機構(CSTO)は共同声明の中で、1991年8月29日にセミパラチンスク核実験場の閉鎖を命じたヌルスルタン・ナザルバエフ・カザフスタン初代大統領の役割を強調した。

この声明は、今年、セミパラチンスク核実験場閉鎖30周年にあたる「核実験に反対する国際デー」を前にした8月26日、カザフスタン外務省報道局によって公表された。

CSTO加盟国であるアルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、ロシア、タジキスタンの各国外相はまた、「平和と安全の維持に対するコミットメントを確認するとともに、核兵器保有を放棄したカザフスタンが、核不拡散体制の強化、国際的な安全保障と安定の維持に果たした貢献」を強調した。

声明は、同実験場の活動停止が、核実験の全面禁止という理念を推進するうえで重要な節目となったと指摘している。セミパラチンスク実験場の閉鎖は、世界的な核実験モラトリアムの確立に向けた国際的努力を後押しし、2006年の中央アジア非核兵器地帯の創設にもつながった。

カザフスタンは、自国領土および周辺地域の環境修復、放射線安全の確保、環境再生に向けて重要な取り組みを進めてきた。各国外相はまた、2004年以降、ロシア、米国、カザフスタンが進めてきた拡散の脅威除去と物理的安全保障強化のための共同事業の重要性を強調した。

CSTO加盟国は、2020年12月に国連総会で採択された「カザフスタン・セミパラチンスク地域の人的・生態学的再生および経済発展のための国際協力と調整」に関する決議を支持している。

各国外相はまた、軍事目的であれ平和目的であれ、地球上のあらゆる核爆発を禁じる包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効にもコミットしている。この条約は1996年9月10日に国連総会で採択されたが、特定の8カ国が批准していないため、いまだ発効していない。

1949年から1989年にかけて、旧ソ連はカザフスタン東部にあるセミパラチンスク核実験場(セメイ・ポリゴンとしても知られる)で、地上および地下合わせて468回の核実験を実施した。カザフスタンにおけるこれら核爆発の総合的な影響は、広島原爆の威力をはるかに上回るものであった。

1963年までは、すべての核実験が地上で行われ、巨大な放射能雲が周辺の村々を覆い、がんやその他の疾病の発生率を著しく高めた。1963年以降は、核実験は地下で実施された。

CSTOは、旧ソ連構成国の一部によって形成されたユーラシアの政府間軍事同盟である。この条約の起源はソ連軍にさかのぼり、その後、独立国家共同体(CIS)統一軍へと徐々に置き換えられていった。しかし、1992年5月15日、CISに属する旧ソ連6カ国――ロシア、アルメニア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン――が集団安全保障条約(タシケント協定、またはタシケント条約とも呼ばれる)に署名した。

翌年には、さらに3つの旧ソ連諸国――アゼルバイジャン、ベラルーシ、ジョージア――が署名し、この条約は1994年に発効した。さらに5年後、9カ国のうちアゼルバイジャン、ジョージア、ウズベキスタンを除く6カ国が条約の5年間延長に合意し、2002年にはこの6カ国が軍事同盟として集団安全保障条約機構(CSTO)を創設することに合意した。

CSTO憲章は、参加各国が武力の行使または威嚇を慎む意思を再確認した。署名国は他の軍事同盟や国家グループに参加することはできず、加盟国の一国に対する侵略は、全加盟国に対する侵略と見なされる。

このため、CSTOは毎年、加盟国間の組織的協力を向上させる機会として合同軍事演習を実施している。2008年には、アルメニアで「ルベジ2008」と呼ばれるCSTO軍事演習が実施され、加盟7カ国から計4000人の部隊が参加し、CSTOの集団安全保障機能の効率向上を重視した作戦・戦略・戦術訓練が行われた。

こうした演習の中で最大規模だったのは2011年に南ロシアと中央アジアで実施されたもので、1万人を超える兵員と70機の戦闘機が参加した。

CSTO加盟国の領域内に第三国の軍事基地を配備するには、全加盟国の公式同意を得る必要がある。また、CSTOでは、議長国が毎年交代する「輪番制議長国制度」も採用されている。(原文へ

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アフガン政府軍があっけなく崩壊した真相を探る

【アブールIDN=マニッシュ・ラジ】

6カ国で構成される集団安全保障条約機構(CSTO)は共同声明を発表し、1991年8月29日にセミパラチンスク核実験場の閉鎖を命じたヌルスルタン・ナザルバエフ・カザフスタン初代大統領の歴史的役割を強調した。

この声明は、セミパラチンスク核実験場閉鎖30周年にあたる今年の「核実験に反対する国際デー」を前に、8月26日付でカザフスタン外務省報道局により公表された。

CSTO加盟国であるアルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、ロシア、タジキスタンの各国外相は声明の中で、「平和と安全の維持に対するコミットメントを再確認するとともに、核兵器保有を放棄したカザフスタンが、核不拡散体制の強化、国際的な安全保障と安定の維持に果たした貢献」を強調した。

声明はまた、セミパラチンスク核実験場の閉鎖が、核実験全面禁止という理念を推進するうえで重要な歴史的節目となったと指摘している。同実験場の閉鎖は、世界規模での核実験モラトリアムの確立に向けた国際的な取り組みを前進させ、2006年の中央アジア非核兵器地帯創設にもつながった。

さらに声明は、カザフスタンが自国領土および周辺地域の環境修復、放射線安全の確保、環境再生において重要な役割を果たしてきたと評価している。各国外相はまた、2004年以降、ロシア、米国、カザフスタンが進めてきた、核拡散の脅威除去と物理的安全保障強化のための共同事業の重要性も強調した。

CSTO加盟国は、2020年12月に国連総会で採択された「カザフスタン・セミパラチンスク地域の人的・生態学的再生および経済発展のための国際協力と調整」に関する決議を支持している。

また各国外相は、軍事目的であれ平和目的であれ、地球上でのあらゆる核爆発を禁止する包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効への支持も表明した。同条約は1996年9月10日に国連総会で採択されたが、特定の8カ国が批准していないため、いまだ発効していない。

セミパラチンスク核実験場は、カザフスタン東部に位置し、「セメイ・ポリゴン」とも呼ばれる。旧ソ連は1949年から1989年にかけて、この地で地上・地下合わせて468回の核実験を実施した。カザフスタンで行われたこれら核爆発の総合的な影響は、広島原爆の威力をはるかに上回るものだったとされる。

1963年まではすべての核実験が地上で実施され、巨大な放射能雲が周辺の村々を覆った。その結果、周辺地域ではがんやその他の疾病が極めて高い割合で発生した。1963年以降、核実験は地下で行われるようになった。

CSTOは、旧ソ連諸国の一部で構成されるユーラシアの政府間軍事同盟である。その起源は旧ソ連軍にさかのぼり、その後、独立国家共同体(CIS)統一軍へと段階的に移行していった。1992年5月15日、CISに属する旧ソ連6カ国――ロシア、アルメニア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン――が集団安全保障条約(タシケント協定、またはタシケント条約)に署名した。

翌年にはアゼルバイジャン、ベラルーシ、ジョージアの3カ国も加わり、同条約は1994年に発効した。その後、9カ国のうちアゼルバイジャン、ジョージア、ウズベキスタンを除く6カ国が条約延長に合意し、2002年にはこの6カ国が軍事同盟として集団安全保障条約機構(CSTO)を創設した。

CSTO憲章は、参加各国が武力の行使または威嚇を慎む意思を再確認している。加盟国は他の軍事同盟や国家グループに加わることができず、1カ国に対する侵略は全加盟国に対する侵略とみなされる。

こうした原則のもと、CSTOは加盟国間の連携強化を目的として毎年合同軍事演習を実施している。2008年にはアルメニアで「ルベジ2008」と呼ばれる演習が行われ、加盟7カ国から計4000人の部隊が参加し、集団安全保障の実効性向上を重視した作戦・戦略・戦術訓練が実施された。

これまでで最大規模の演習は、2011年に南ロシアと中央アジアで実施されたもので、1万人を超える兵員と70機の戦闘機が参加した。

なお、CSTO加盟国の領域内に第三国の軍事基地を配備するには、全加盟国の正式な同意が必要とされる。また、CSTOでは議長国が毎年交代する「輪番制議長国制度」も採用されている。(原文へ

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|国連|混乱が深まる中、カブールに取り残されたスタッフの国外退避を図る

「世界と議会」2021年春夏号(第587号)

特集:咢堂塾-学びと実践

◇「新型コロナ以降の地方再生をどう構想するか」/谷藤悦史
◇「頻発する大規模災害への対応に向けた予備自衛官制度に関する提言」
  /久我和也
◇「私の経験から思う、若者の政治への関心について」/木村圭花

■歴史資料から見た尾崎行雄
 第5回「尾崎記念会館記録(中)-尾崎行雄の銅像」」/高島笙

■連載『尾崎行雄伝』
 第十七章 政権たらい回し

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 SDGs意識を高めるための学界・大学の役割

■「咢堂ブックオブザイヤー2020」選考結果

1961年創刊の「世界と議会では、国の内外を問わず、政治、経済、社会、教育などの問題を取り上げ、特に議会政治の在り方や、
日本と世界の将来像に鋭く迫ります。また、海外からの意見や有権者・政治家の声なども掲載しています。
最新号およびバックナンバーのお求めについては財団事務局までお問い合わせください。

|国連|混乱が深まる中、カブールに取り残されたスタッフの国外退避を図る

【ニューヨークIDN=タリフ・ディーン】

米国が、外交官や大使館職員に加え、数千人にのぼる現地雇用のアフガニスタン人職員を混乱する首都カブールから空輸退避させる中、国連もこれに続き、アフガニスタンで平和維持や人道支援任務に当たっていた300人以上の国際職員と3400人の国内職員の一部を国外へ移した。

国連のステファン・デュジャリック報道官は8月18日、これらの職員の一部がカブールからカザフスタンのアルマトイに移動し、同地から遠隔で業務を継続すると明らかにした。

同報道官は、「アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)の臨時遠隔事務所の受け入れを申し出たカザフスタン政府に感謝する」と述べたが、移動した職員の正確な人数は明らかにしなかった。

さらに、「人数の詳細には立ち入らないが、明らかに不安定な国内情勢を踏まえ、同僚たちの正確な人数や所在地については議論しない。だが先に述べた通り、移転先では最大約100人の職員がアルマトイから業務を行えるようにする見通しだ。アルマトイ事務所には比較的少数の国際職員が配置される。国内職員、国際職員を問わず、すべての職員の安全と福祉は国連にとって最重要事項である」と語った。

デュジャリック報道官は、この遠隔拠点が、アフガニスタン国内で継続する国連ファミリーの活動を緊密に支えることになると説明した。

「これは、国連職員への危険を減らす一方で、アフガニスタンの人々への支援を可能な限り中断せずに続けるための一時的措置である。」

国連のアフガニスタン駐留体制は、治安情勢に応じて調整される。デュジャリック報道官によれば、カブールおよび国内各地の治安上その他の制約を踏まえ、一部職員を国外へ移すことが決定された。状況が許せば、職員はアフガニスタンに戻るという。

アントニオ・グテーレス国連事務総長は8月16日、安全保障理事会に対し、国連は苦境にあるアフガニスタン国民を支援するため、現地にとどまり任務を遂行することに引き続き取り組むと表明した。

また事務総長は、人道支援要員の大半は引き続きアフガニスタン国内に残り、最も支援を必要とする何百万人もの人々に不可欠な援助を提供し続けると述べた。

「これは、国連職員への危険を軽減しつつ、アフガニスタンの人々への支援を可能な限り中断せずに継続するための一時的措置である」とも強調した。

一方、12万人超の職員を代表する職員組合連合は、8月15日付と17日付の2通の書簡をグテーレス事務総長に送り、即時対応を求めた。

書簡の中で、国際職員組合・協会調整委員会(CCISUA)、職員協会・組合連盟(FICSA)、国連国際公務員連盟(UNISERV)は、退避を希望するすべての国内職員の避難を求めた。

また、退避を望む国内職員とその家族に査証が与えられるよう、なおカブールに残る外国公館に対して事務総長が仲介努力を行うよう要請した。

書簡は、「われわれは政治的に極めて複雑な事情があること、また私たちの要請が不可能に見えるかもしれないことも承知している。しかし、多くの私たちと同じように国連の旗の下で働くことを受け入れたというだけで、命や家族の命を危険にさらしている国内職員を、ただ黙って見過ごすことはできないことをご理解いただけると確信している」と訴えている。

CCISUAのプリスカ・シャウイ会長はIDNに対し、「国連が現地での活動継続を必要としていることは理解しており、アフガニスタンで任務に当たる国際職員、国内職員すべての献身と責任感を高く評価している」と語った。

その一方で、「状況はきわめて不安定であり、情勢が落ち着くまで、国際職員だけでなく国内職員についても退避を実施してほしい」と指摘した。

さらに、「国内職員は、自らが仕えてきた組織から見捨てられたと感じている。彼らには、国連が職員に対して負うべき保護義務が及ぶべきだ」と述べた。

また、「組織にとって大きな課題であることは承知している。しかし職員連合として、国連が同僚たちの安全と福祉を確保するためにできる限りの措置を講じているかどうかを確認する責任がある」と強調した。

シャウイ会長は、国連規則上、国内職員の避難は例外的状況において想定されており、その決定を下せるのは事務総長だけだと指摘した。

「私たちにとって、今の状況は例外的どころではない」と彼女は語った。

カブールでは、家々を一軒ずつ調べる捜索が行われているとの報告も複数出ている。タリバンは政府職員、兵士、警察、治安要員、さらに外国政府や国際機関と働いてきたアフガニスタン人を探しているとみられている。

ニューヨークに届いている報告によれば、国内職員は自分自身や家族への報復を恐れ、応答を避けるために身を隠そうとしている。

米国の大手テレビ局も、リンダ・トーマス=グリーンフィールド国連大使へのインタビューで、「恐怖におびえる」女性記者や、「国際機関で働いたことのあるすべての人」がタリバンに殺されるのではないかと恐れている問題を取り上げた。

その中で、「彼らの命を救うために、米国――とりわけバイデン政権は今、これ以上何ができるのか」との問いが投げかけられた。

これに対し同大使は、「アフガニスタンを離れたいと望む脆弱な立場のアフガニスタン人を国外へ退避させるため、われわれは昼夜を問わず取り組んでいる。空港は確保されており、航空機は24時間体制で出発している。過去3日間で3000人以上を移送した。作業が終わるまで、脆弱な立場にある人々を可能な限り迅速に退避させ続ける」と述べた。この発言は8月17日に放映されたインタビューでなされた。

一方、国連職員組合連合の書簡はまず、「国際職員の退避を確保し、アフガニスタンに残る職員――国内職員を含む――の安全と保安を守るために講じられたあらゆる措置に対し、あなたとあなたのチームに感謝する」と記している。

しかし、そのうえで、現地情勢に関する最新報告は、特に国内職員との関係で極めて憂慮すべきものだとしている。

「国内職員は大きな苦境にあり、自分自身と家族に対する報復を恐れるのは当然である。何とかして国外脱出を図ろうとしている者もいれば、職員に対する保護義務の一環として国連が支援してくれることを期待して待っている者もいる。」

書簡はさらに、「現時点では、今後の情勢がどう展開するか誰にも予測できない。何が起ころうとも、国内職員が見捨てられてはならないこと、そして国連は職員の区分にかかわらず、すべての職員に対して保護義務を果たさなければならないと、私たちは信じているし、事務総長も同意されると確信している」と訴えている。

また、「国際職員の退避が実施され、カブールには必要不可欠な30人のみが残ると承知し安堵している。しかし、国内職員とその家族が報復の危険にさらされ、その命が脅かされる可能性について、私たちは非常に強い懸念を抱いている」とした。

そのうえで、「残る国際職員、国内職員、そしてその家族が、いかなる報復の危険からも守られるよう、直ちに必要な措置を講じることを求める」と要請した。

さらに書簡は、「現地情勢が極めて複雑であることは承知している。しかし、国際職員であれ国内職員であれ、すべての職員に対して国連がその保護義務を果たすことを期待している」と結んでいる。

この書簡には、プリスカ・シャウイCCISUA会長、タニヤ・クイン=マグワイアFICSA会長、スティーブ・トウラーUNISERV会長が署名した。(原文へ

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核軍縮における市民の役割と科学・外交の相互作用

【ニューヨークIDN=J・ナストラニス】

2021年は、旧セミパラチンスク核実験場の閉鎖から30年、国連創設と広島・長崎への原爆投下、史上初の核(トリニティ)実験から76年、核不拡散条約(NPT)発効から51年、未発効の包括的核実験禁止条約(CTBT)採択から25年にあたり、中距離核戦力(INF)全廃条約が失効し、新戦略兵器削減条約(新START)が2026年2月まで延長された。

平和と安全保障問題に関する国連軍縮局/OSCEの学者であるマルジャン・ヌルジャンは、こうした年にあたり、『アトミック・リポーター』誌に「核軍縮における主要な市民社会アクターの役割―マルチトラック外交枠組みにおける認識共同体」と題する全2回の文章を寄せた。ヌルジャンはこの中で、市民と科学・外交の相互作用を通じたトラック2外交の事例を示した。

「消極的な平和への含意を保つなかでグローバルな核軍縮の追求を続け、市民社会のエンパワーメントや軍縮教育、平和構築活動、マルチトラック外交のチャンネルによる調停を通じた核軍備と国際安全保障のトピックにさらに関与していく必要性を強化する上で、今年は様々なことを想い起こさせてくれるだろう。」とヌルジャンは語った。

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ヌルジャンは、KAIST核不拡散教育研究センターの研究員であり、2019年から20年までは、包括的核実験禁止条約機構(CTBTO)青年グループの教育・アウトリーチコーディネーターを務めた。2017年には、国連総会議長によって、その年に開催された「核軍縮に関する国連ハイレベル会合」でスピーチする若者代表に選出されている。

「科学の二重性に対する社会的責任の原則に導かれて議論に参加していく科学者の役割と行動が、『市民科学者』という言葉の基礎にある。」とヌルジャンは語った。

市民科学者の行動の最も顕著な例の一つが、アルベルト・アインシュタインとバートランド・ラッセルが1955年に発した宣言である。両者は宣言で、核軍備の危険性を強調し、冷戦によって引き起こされた国際紛争の平和的解決を訴えた。

宣言は、マンハッタン計画の下で初めての原爆開発に携わった核物理学者ジョセフ・ロートブラットのイニシアチブによって作られた。科学と研究は平和目的でなくてはならないという強い信念のもと、ロートブラットは、「科学と世界問題に関するパグウォッシュ会議」の枠組みに東西両方のブロックから科学者たちを集めた。同会議は、軍縮とグローバルな安全保障の問題について対話の枠組みを提供するためにロートブラットが立ち上げたものだ。

彼は、市民科学者として認識される一方、「核兵器が国際政治において果たす役割を低減し、長期的には、核兵器を廃絶する取り組み」によって、パグウォッシュ会議とともに1995年のノーベル平和賞を受賞した。

Los Alamos wartime badge photo: Josef Rotblat.

米国の認識共同体が国際的に共通の知と核兵器規制のシステムの基礎をってきたが、核戦争を回避し戦略的安定性を保つためのソ連との協力が、敵対する勢力間の安全保障レジームを強化してきた、とヌルジャンは続ける。認識共同体の関与を基盤とした国際協議のアジェンダが打ち立てられたことによって、政策的提言が考慮に入れられ、様々な方法で実施されてきた。

トラック2外交は科学者の間で実践されただけではなく、平和を促進し人類を核紛争の惨禍から守る「市民外交官」を普通の市民の間に作り上げてきた。そのひとつの例が、米国の少女サマンサ・スミスだ。彼女は1982年、当時のソ連の指導者ユーリ・アンドロポフに手紙を書いて、2つの超大国間の核戦争の可能性を心配していると伝えたのである。彼女はソ連に招待されて、市民外交の成長をさらに促す米国との文化交流プログラムの設立につながる平和構築のイニシアチブとなった。

市民外交のもう一つの例は、1987年に開催された、レニングラードからモスクワへの5週間に及ぶ旅を通じた米ソ平和行進である。230人の米国民と200人のソ連国民が集って、両者の相互作用のあり方に影響を与え、2つの大国の人々の間の理解を促進した。

こうした市民外交のイニシアチブの中で、米国とソ連の医師たちが1980年に「核戦争防止国際医師会議」(IPPNW)と呼ばれる組織を立ち上げ、1985年にはノーベル平和賞を与えられた。イデオロギーの分断があったにもかかわらず、IPPNWは、人類を核戦争から救うという共通の利益があることを示した。彼らは、世界の核実験を停止し、核兵器使用が健康や人間、環境に及ぼす影響に関する市民の意識を高めるために、反核抗議運動を組織した。

もう一つ市民外交の例としては、世界を核紛争から救ったソ連の軍人スタニスラフ・ペトロフが挙げられる。彼の任務は外部からのミサイル攻撃を記録することであった。1983年のある日、ソ連の早期警戒システムが核攻撃を探知した。それは本来通報されるべきものであったが、誤報であると考えたペトロフが通報しないことを選択したのである。

科学外交やトラック2外交に並んで、市民外交行動のこれらの事例すべてが、市民社会のもつ情報の豊かさにつながり、国際的な議論に参加し核軍縮を要求する非政府組織の興隆につながった、とヌルジャンは指摘する。例えば、NPT再検討会議とその準備委員会会合は、1994年以来、市民社会のアクターやNGOが参加する主要なフォーラムとなっており、彼らが公の会議に参加し、スピーチや声明を発し、サイドイベントを組織する集まりとなっている。

条約の無期限延長が決められた1995年のNPT再検討会議では、195のNGOがオブザーバーとして参加した。核軍縮をし、核兵器を廃絶するという点で一致したNGOの代表らは、核兵器禁止条約を求める11項目の共同声明を発した。軍縮の検証という側面や、核兵器の使用及び使用の威嚇の違法性、真に包括的な核実験禁止条約の完成、時限を区切った核兵器廃絶のための条約交渉の開始という側面を考慮に入れたものであった。

「それ以来、市民社会のアクターは国連で行われるすべてのNPT会合に積極的に参加し、決められた時間の中で代表に語り掛け、公的会議で発言をし、外交官にブリーフィングをし、政府代表との対話に参加し、自らが問題だと考えることを指摘する機会を持ってきた」とヌルジャンは語った。

しかし、軍備管理協議やNPTプロセスが機密を伴いながら進められるという性格ゆえに、安全保障上の懸念が出され、締約国間の会合は非公開のものとなって、NGOの参加には一定の制約が課されてきた。

しかし、軍縮・不拡散教育に関する国連の研究(2002年)での勧告に従って、ほとんどの場合において、市民社会のアクターや科学者・政治研究者、議員をアドバイザーとして政府代表団に参加させて交渉の場で政策協議に影響を与えることが、近年では行われている。

こうして、長年をかけて、各分野における市民社会の活動が、活動家・抗議者のそれから、認識共同体の代表としてのプロフェッショナルな活動へと変容し、多国間協議における彼らの役割が、圧力をかけ影響力を及ぼす上で重要になった。これは、1996年のCTBTや、1996年に国際司法裁判所(ICJ)が発した核兵器の使用及び使用の威嚇の合法性に関する勧告的意見など、いくつかの合意の採択にあたって、キャンペーン活動やアドボカシー、ロビー活動などがなされることによって行われたのである。

Applause for adoption of the UN Treaty Prohibiting Nuclear Weapons on July 7, 2017 in New York. Credit: ICAN
Applause for adoption of the UN Treaty Prohibiting Nuclear Weapons on July 7, 2017 in New York. Credit: ICAN

NPTでの政治的行き詰まりや、NPT締約国による条約第6条の義務履行の進展の不在という状況の中、「核兵器のどのような使用も人間に与える壊滅的な帰結」という認識が現れ、多国間核軍縮協議を前進させた2016年の国連公開作業部会という多国間フォーラムで、軍縮の認識共同体が効果的かつ民主的な参加を果たした。その結果、2017年に核兵器禁止条約が採択され、2021年1月の発効に至るのである。(原文へ) 

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|べラルーシ|非暴力抗議運動の方が暴力活動より成功する可能性が高い

【ルンドIDN=ジョナサン・パワー】

独裁的な体制を敷くルカシェンコ大統領の6選に抗議する大規模な平和的デモ行進がベラルーシ各地に広がっている情勢を分析したジョナサン・パワー(INPSコラムニスト)による視点。投降したナチスドイツの将校の尋問にあたったバジル・リデル=ハートへの自身の取材経験やマハトマ・ガンジー、マーチン・ルーサー・キング・ジュニア牧師が率いた非暴力・不服従運動の系譜を引用しながら、今日ベラルーシで広がっている変化を求める民衆の波も、もし非暴力運動を貫徹できれば、独裁政権の退陣を導けると予測している。著者はまた、同様の新たな兆しを、ロシアのハバロフスクで起こっている大規模平和デモにも見出している。(原文へ

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持続可能なエネルギー利用:カギを握る、安価でクリーンな調理方法

【シドニーIDN=カリンガ・セレヴィラトネ】

世界人口の約6割を擁するアジア太平洋地域では、約16億人が、日々の調理のために、焚火をするか、灯油、石炭、木材・こやし・農作物の残りかすなど生物由来のものを燃やしている。しかしそれは、気候変動を引き起こし、健康に悪影響を及ぼしている。

国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)のエネルギー利用コンサルタントであるオリビア・バルディ氏は、「このようにエネルギー効率が悪い調理コンロで燃やされた生物由来のものが、地球温暖化や森林破壊に繋がっていますし、煙を吸った人の健康を害しています。2016年には、屋内でこうした調理由来の汚れた空気のためにアジア太平洋地域で推定220万人が早死にしたと見られています。」と語った。

新型コロナウィルスによる経済状態の悪化から地域が回復する中で、クリーン(=空気を汚染しない)で安価な調理用燃料を低収入世帯に提供することは、エネルギー利用における重大な課題となっている。そしてこのことは、持続可能な開発目標の第7目標を達成する上で、重要な意義を持つ。

SDGs Goal No. 7
SDGs Goal No. 7

農村の住民や都市の貧困層にとってますます電気が利用可能となり、太陽光発電技術で調理用のエネルギーが提供されるようになっている中で課題となっているのは、政府や非営利部門が、貧困層が調理用燃料のコストとCO2排出を減らすための資金援助をできるかどうかという点だ。

よりクリーンな調理方法は、社会・経済・環境に様々な利益をもたらす潜在能力を秘めるが、クリーン調理部門は著しい資金不足に悩まされている。

「気候政策イニシアチブ」(CPI)による報告書『エネルギー金融現況2020』は、コロナ禍は、安価で信頼でき持続可能で近代的なエネルギーを2030年までにすべての人にもたらすというSDGsの第7目標実現に向けた取り組みを加速する一つの警告とみなされるべきだと論じた。

「コロナ禍は、信頼できるエネルギー源の欠如が、医療システム、水や衛生、クリーンな調理コンロの普及、通信・ITサービスに及ぼす深刻な影響に光を当てた。」と報告書は述べ、この10年で大幅な技術進歩があったにも関わらず、アジア太平洋地域の7億8900万人が依然としてクリーンな調理用コンロや電気を利用できていないと指摘した。

CPI報告書は、バングラデシュを除くと、クリーンな調理技術を貧困層に提供するための投資がアジア太平洋地域では全体として不足していると指摘し、グリーンリカバリーが持続可能な経済回復モデルを発展させるうえで重要だと論じた。

国別のCO2市場に関する「パリ協定」の下での交渉が今後予定されているが、これが、太陽光などのグリーン電力を利用したクリーンな調理技術を貧困層に提供する資金源となるかもしれない。CPI報告書によると、2018年、この枠組みの下ではわずか2100万ドルの投資しかなされていない。

COP21 Logo
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「世界未来評議会」と「ヒボス」が2019年に出した報告書によれば、小規模の電力網と家庭の太陽光システムに接続された農村家庭にとっては、電気で調理するコストは他の調理方法のコスト競争性の幅に収まっている。電気調理機器のコストが下がっていることに加え、電化とクリーンな調理のシナジー効果が重要になってきている。ただし、その方向性は完全に追求されているわけではない、と報告書は述べる。しかし例えば、ネパールのエネルギー・水資源・灌漑省は昨年、分配ネットワークの強化を通じた「すべての家庭に電熱器を」という目標を達成するとの政府計画を発表し、電気調理を優先した電気料金体系に変えていく可能性を示唆した。

バングラデシュは液化プロパンガス需要の約6割を輸入に頼り、ガス容器と燃料にかなりの補助金を与えている。CPIの報告書は、農村人口のおよそ74%が、ワラや穀物殻、フスマ、麻、木、竹などの生物由来の燃料を調理に用いていると指摘している。また、人口全体の95%以上と、農村人口の8割以上が電気を利用しており、ほとんどの遠隔地において電気を中心とした効率的な調理のための供給網を構築するために利用しうる。

2013年から17年にかけて、世界銀行からの資金を得て、バングラデシュ政府は100万の貧困世帯に改良された炊飯用ストーブ(ICS)を提供した。2021年末までに500万世帯への供給をめざしている。CPIは、もしバングラデシュが生物由来の燃料使用を2030年までにゼロにしようとするのならば、既存の政策や金融の枠組みを着実に再編成する必要があると考えている。

インドの「スーリヤプロジェクト」は、インドの農村で利用されている大気汚染を引き起こす調理器を、カーボン・オフセット事業からの資金を利用してクリーンエネルギーを利用した調理器に取り換えていくことを目指している。同プロジェクトではまず、ヒマラヤとヒンドゥスターン平野、南アジアのアーンドラ地域という3つの農村地帯を選び、それぞれの地域の5000地帯に対して、太陽光調理器やその他の効率的な加熱技術のようなクリーン燃焼技術へと変更していく。

Solar cooker or solar barbecue Alsol 1.4 made in Spain, Public Domain

一般には「SK14」と呼ばれている、直径1.4メートル、価格約100ドルのパラボラ型太陽光調理器が導入されつつある。約30分で家族10人分の米が炊けると宣伝されているものだ。また、CO2削減量と健康上の影響についての数値を携帯電話で確認することもできる。

米カリフォルニア大学ロサンゼルス校の「組み込みネットワークセンシングセンター」、米国の「ネックスリーフ・アナリシス」と協力して、気候科学者や疫学者、コンピューター科学の専門家、エネルギー技術者、経済学者、地域経済開発の専門家を集めて、アジアが今日直面している3つの緊急の課題、すなわち、気候変動・公衆衛生・経済開発の解決策を見つけようとしている。

UNESCAPのバルディ氏は月刊ニュースレターの中で、「より効率的な技術は多くの場合において調理のコストを引き下げるが、消費者は、クリーンではあるがたいがいは値段の高い代替手段に切り替えるための投資をできない。コロナ禍で多くの世帯が貧困に陥っている中では、価格の問題はますます重要になっている。」「つまり、資金面の支援がなければ、低収入世帯ではクリーンな調理は行えないということだ。」と記している。(原文へ

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This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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