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クリミア問題で綱渡りを強いられるトルコ

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【イスタンブールIPS=ドリアン・ジョーンズ】

クリミア半島(自治共和国)をめぐるロシア・ウクライナ危機が、トルコに微妙な対応を強いている。トルコとしては、クリミアの少数派民族タタール人の擁護者として振る舞う必要がある一方、ロシアのウラジミール・プーチン大統領に対して強硬な態度に出ることで、トルコ‐ロシア間の経済関係を悪化させたくない思惑があるからだ。

トルコがクリミア情勢に関心を持つのには十分な理由がある。クリミアは1475年から1783年までオスマン・トルコ帝国を宗主国とする独立国(クリミア・ハン国)であった。またトルコ人は、クリミア人口の約15%を占めるクリミア・タタール人と文化的に強いつながりを持っている。

トルコ国内には現在数十万人のタタール人が少数民族として暮らしているが、そのほとんどが1783年にクリミア・ハン国がエカテリーナ2世治世期(1762年~96年)のロシア帝国に併合された際にトルコに移住してきたタタール人の末裔である。

こうした歴史的・文化的要因もさることながら、クリミア・タタール人問題に関するトルコ政府の姿勢を形作っている最大の要因は国内の政治情勢であろう。

トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相は、側近や家族に大規模な汚職疑惑が持ち上がって、このところ政治的立場が危うくなっている。現在エルドアン首相は、スキャンダル発覚後初となる統一地方選挙を3月30日に控えて、政権基盤の立て直しに躍起となっている。

エルドアン首相が率いる与党公正発展党は、草の根の国粋主義的勢力をひとつの支持基盤としているため、党内首脳陣は、ロシア軍占領下にあるクリミア半島(1954年以来ウクライナ領)のタタール人の利益を擁護するトルコの政府姿勢を喧伝している。

トルコのアフメット・ダーヴトオール外相は、3月3日にトルコ在住のタタール人協会の代表者らと会見し、「我が国の首相や大統領がクリミア半島や世界各地の兄弟(タタール人)に影響を及ぼす問題について、よもや無関心だなどとは決して思わないでください。」と明言した。

この外相のコメントが出された前日、クリミアのタタール人同胞に対してトルコ政府が十分な対応をしていないと批判する抗議集会が、数百人が参加した首都アンカラをはじめ、多くのタタール人が住む国内各地の都市で繰り広げられた。

CNNのトルコ語放送は、クリミアに本拠を置くクリミア・タタール国会のトルコ代表ザフェル・カラタイ氏が「私たちは今日クリミアで起こっている現実に戦慄を覚えています。」と語る様子を報じた。

昨年夏に勃発したゲジ公園(イスタンブール中心部のタクシムに唯一残った緑地)再開発に端を発した反政府デモの余波に加えて、新たに噴出した不正疑惑で窮地に追い詰められているエルドアン政権にとって、海外の同胞クリミア・タタール人問題で、国内で弱腰だと見られることは、政治的に致命的な打撃を被ることになりかねない。

カーネギー国際平和財団欧州センター(ブリュッセル)のシナン・ウルゲン客員研究員は、「彼ら(与党公正発展党の首脳陣)は、国内の国粋主義支持層から、(クリミア半島の)タタール人同胞を守れなかったと批判されたくないのです。中東で虐げられた人々の擁護者を自認してきたトルコ政府が、自らの同胞であるクリミア・タタール人の運命に無関心であったと見られる訳にはいかないのです。」と語った。

トルコ政府は3月上旬にダーヴトオール外相をウクライナに派遣し、クリミア・タタールコミュニティーの代表と会見するなど、タタール人コミュニティを支援する意思を強く打ち出しているが、一方で国内では、国粋的な熱気を抑え込むことに躍起となっている。

その理由は、近年深化を遂げてきたロシアとの経済関係である。トルコは天然ガスの半分以上をロシアに依存している。またロシアは、トルコからの輸出先としては世界第6位(2013年の統計で72億ドル)であり、トルコ経済省の統計によれば、2012年末現在でトルコの対ロシア直接投資額は90億ドルとなっている。

トルコとロシアの外交関係はシリア政策を巡る相違から既に緊張状態にあり、トルコ政府としては、今回のクリミア問題でロシアに対して強硬な態度をとることはなるべく控えたいようだ。トルコ大統領府の公式声明によると、3月5日にプーチン大統領と電話会談を行ったエルドアン首相は、「今日のクリミア危機を招いた『最大の』責任は、ウクライナの現政権にある。」と指摘したうえで、「(ウクライナの)政情不安は、地域全体に悪影響を及ぼすでしょう。」と語ったという。

3月6日、国営放送のテレビ番組に登場したタネル・ユルドゥズ・エネルギー天然資源大臣は、ロシアからの天然ガス供給が滞るのではないかとする国内の不安を懸命に打ち消すとともに、「アゼルバイジャン等他国から新たに天然ガスの供給を得る方策を探る必要はありません。」と明言した。

しかし、こうした外交上のバランス政策をこなしていくことは、今後数週間から数か月、エルドアン政権にとって、ますます困難になっていくだろう。先述のウルゲン客員研究員はこの点について、「クリミアで最近実施された住民投票の結果が、ロシアへの編入を支持するものであったことから、エルドアン政権は難しいジレンマに直面することになるだろう。」と指摘している。

さらにウルゲン氏は、「トルコ政府は、これまでウクライナの領土保全とソ連・ロシア支配下のクリミア・タタール人に対する迫害を問題視する主張を展開してきた経緯から、もしクリミア半島がウクライナからロシアに割譲される事態になれば、トルコ政府はロシアに対してこれまでよりも遥かに厳しい態度を取らざるを得なくなるだろう。」と語った。

クリミアの首都シンフェロポリで6日に記者会見したタタール民族運動の指導者ムスタファ・ジェミリエフ氏は、トルコのダーヴトオール外相が、もしクリミアのタタール人が危険にさらされたらトルコは「直ちに関与する」と約束した、と述べた。

もしクリミア半島でタタール人とロシア系住民の間に衝突が生じれば、トルコ国内で愛国主義が再燃し、トルコ政府に対して、タタール人救済になんらかの行動をおこすよう求める圧力が強まるだろう。

イスタンブール工科大学のトルコ民族とトルコナショナリズムの専門家ウムト・ウゼル氏は、「(トルコ国内には)率先して現地(クリミア半島)に出向いて戦う用意ができている国粋主義者がいます。」と語った。

しかし、これ以上ロシアへの対決姿勢を強めれば、国内の保守勢力を満足させられたとしても、ロシアとの貿易関係が決定的になるリスクを避けられないことから、エルドアン政権としては、慎重にならざるを得ないだろう。

「とりわけエルドアン首相はプーチン大統領との間に良好な関係を構築してきたと思われることから、トルコ政府としては、ロシアとの二国間関係を危機に晒したくないというのが本音です。従って、エルドアン首相が今以上の対決的な姿勢をロシアに対してとることは極めて難しいと考えられます。」とウルゲン氏は語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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【アブダビWAM】

飢饉が発生し人道危機に陥っているパキスタン最大の砂漠地帯であるシンド州タルパールカル地区に対して、アラブ首長国連邦(UAE)政府は大統領の指示に基づいて緊急の食糧・医療支援を含む多次元に亘る支援を実施している。

「UAEは中東地域有数の人道支援提供国であるとともに、昨年台風第30号(ハイエン)で甚大な被害を被ったフィリピンに10億ドル規模の支援を行った例にも明らかなように、伝統的に世界中の支援を必要としている人々を人道主義の観点から援助する方針を堅持している。とりわけ大洪水・地震・飢饉などの大規模災害に頻繁に襲われているパキスタンに対して、一貫して多方面に亘る支援の手を差し伸べている。」とUAEの英字日刊紙「カリージ・タイムス」は3月14日付の論説の中で報じた。

また同紙は、「今回の飢饉に対してUAEパキスタン支援プログラム(UAE PAP)を通じて動員した基本食料品は1500トンにのぼり、1月に実施した食糧援助の規模(1600トン)に迫りつつある。UAEは1月にも洪水と対テロ掃討作戦で国内難民化した人々が寒波で飢餓に喘いでいる事態を緩和するため大規模な援助を実施した。」と報じた。

「またUAE PAPは、災害時の緊急支援とは別に、2011年からパキスタンの民衆の生活向上を目的とした開発援助(道路・橋梁建設、教育・保健支援・水供給向上支援等)を行っている。」

また同紙は、「UAEのパキスタンに対する援助については、少し前に、パキスタンがUAEではなく、他の2020年万博開催候補国を推していたとして非難する『全く不必要な』議論が取り沙汰された(パキスタン政府はそれはUAEのドバイが立候補する以前の約束だったと説明)。」点を指摘したうえで、「UAE政府の現実の行動が示している通り、UAEはパキスタンを兄弟国・友好国と見なしており、かかる噂や議論でUAE指導者層の寛大な人道支援の方針が影響をうけることは全くない。」と結論付けた。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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【ベルリンIDN=ジュリオ・ゴドイ】

米国政府は、(ロシア政府が)2段式の地上発射巡航ミサイル「RS-26」の発射実験を行ったことは1987年の中距離核戦力(INF)全廃条約違反だとして、非公式にロシアを非難している。

INF条約は両国に対して、弾道および巡航ミサイル、地上発射の中距離(1000~5500km)および短距離(500~1000km)ミサイルの生産・実験・配備を禁止しているが、米国はロシアのINF条約違反疑惑について、これまでのところ公式には言及していない。しかし、米国政府高官らは、(ウクライナ情勢を背景に)ロシアとの関係がとりわけ緊張感を増すさなか、米メディアに対するリークを始めている。

1987年、数年間の協議を経て、北大西洋条約機構(NATO)と当時のソ連は、米国の「パーシングIb」や「パーシングII」、「BGM-109Gグリフォン」など、すべてのミサイルや関連兵器を破壊し生産停止することに合意した。この際ソ連側は、1987年時点で核弾頭を搭載した最新型地上発射巡航ミサイル「SSC-X-4」を含むすべてのSSシリーズのミサイルを廃棄した。

中距離核戦力全廃条約/Wikimedia Commons
中距離核戦力全廃条約/Wikimedia Commons

『ニューヨーク・タイムズ』紙によると、「INF条約による制限の結果としてロシアのミサイル能力に残されたギャップ」を埋めるために、地上発射巡航ミサイル「RS-26」(ロシアはこれを「ミサイル防衛キラー」と形容している:IPSJ)の実験が行われたという。また同記事は、米国のローズ・ゴットモーラー国務次官補代理が1月中旬にNATOに対して米国のデータを提供したとしている。

アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)のダン・ブルーメンタール氏やマーク・ストークス氏などの軍事専門家によれば、ロシアにとってのINF条約最大の問題は、同条約に縛られない中国が自前の中距離核戦力を整備しつづけている点にあるという。両氏は『ワシントン・ポスト』への寄稿の中で、「ロシアは、もし中国が同条約に署名しないなら条約から脱退するとすでに脅しをかけている」と述べている。

もしこの米国での報道が真実なら、ロシアの実験は、NATO・ロシアが軍縮協議を継続している裏で、既に新たな核軍拡競争を始めているではないかという、数多くの平和・反核活動家の警告を証明するものとなるだろう。

というのも、NATOも、とりわけ西欧諸国に配備している「B61」核弾頭を「近代化」する計画を保持しつづけることで、(ロシアと同じく)核能力の「ギャップを埋め」ようとしているからだ。

さらに、インドやイスラエル、北朝鮮、パキスタンを含めた実質上のすべての核兵器国が、このところ少なくとも1度は中距離ロケットや核兵器の能力を向上させている。

欧州に配備されている恐るべきB61は冷戦の遺物である。この大量破壊兵器が実際にどれだけ配備されているかは軍の極秘事項であるが、約20発がドイツ南西部の村ブエッヘル近くにある軍事基地、さらに、数は不明だが最大200発のB61が、NATO加盟国のベルギーイタリアオランダトルコに配備されている。

B61核爆弾/Wikimedia Commons
B61核爆弾/Wikimedia Commons

NATO、というよりもむしろ米国政府によると、B61はその旧式な性格を考えると近代化のための改修は必要なことだという。米上院での公聴会によると、これらは「無能兵器」(dumb weapons)あるいは「重力」爆弾と呼ばれており、目標地帯に対して軍用機から投下され、レーダーによって誘導される仕組みだが、このレーダーはそもそも「耐用年数5年」を想定して1960年代に作られたものであることが明らかになっている。

こうした「無能核兵器」を航空機から投下することは、それが想定どおり爆発した場合、広大な地域が地表から消し去られてしまうことを意味する。

さらなる危険

古い核爆弾B61には、とりわけNATO軍や欧州市民にとってさらなる危険な面もある。2005年に行われた米空軍のある調査では、欧州の核兵器維持に係る手続きはリスクを抱えており、雷の落下によって核爆発を起こす危険性があると判明している。

FAS
FAS

また2008年に行われた別の米空軍調査では、欧州における「ほとんどの」核兵器配備地は、米国の安全指針を満たしておらず、これを標準並みに引き上げるためには「相当の追加資源を必要とする」と結論づけている。

これらすべてのリスクが昨年末に米議会が開いた公聴会の場で確認されており、この公聴会で米軍関係者は、B61について予定される近代化改修の内容について説明している。

マデリン・R・クリードン国防次官補(グローバル戦略問題担当)が米下院小委員会で昨年10月に述べたように、米政府は公的にはこの近代化改修を「全面的耐用年数延長プログラム」(LEP)と称している。

この審議においてクリードン次官補は、B61は「米国の核備蓄の中で最も古い弾頭の設計であり、その部品の一部は1960年代にまで遡ります。」と指摘したうえで、その近代化改修は「軍事的な要請に合致し、より手頃なメンテナンス費用で耐用年数の延長を可能にするものです。また、米核安全保障局(NNSA)が、安全・確実で効果的な核備蓄を提供するために不可欠としている更新要件も満たしています。」と証言した。

同じ公聴会で証言に立った米戦略軍のC・R・ケーラー司令官は、多くの平和活動家らが長年指摘してきたにも関わらずNATOが最近まで一貫して否定してきた内容について語った。ケーラー司令官は、「平均的なB61は、配備開始から25年ほど経過しているため旧式の技術を含んでおり、性能を維持するには頻繁に手を入れねばなりません。」と指摘したうえで、「この陳腐化しつつある兵器を、もともと想定されていた耐用年数をはるかに超えて、安全・確実、かつ効果的な状態に保つには、非常措置をとる以外に方法はありません。」と証言した。

Gen. C. Robert Kehler
Gen. C. Robert Kehler

もし近代化のスケジュールが守られるとすれば、新型の「B61-12」は2020年までに運用可能となる。NNSAの現在の推計ではこれには少なくとも80億ドルの費用が掛かる。

しかし、ワシントンに本拠を置く「軍備管理不拡散センター」は、国防総省の第三者評価では実際のコストが100億ドルを超えることもありうるとされたことを指摘している。この費用だと、LEPは爆弾1発ごとに2500万ドルを要することになる。また同センターは、「プラウシェア財団」がこの価格では改修されたB61は同じ重さの金よりも高価になると批判していることを紹介した。

LEPに批判的な人びとによれば、近代化はたんに「耐用年数延長」だけを意味するのではなく、兵器の能力を格段に向上させる意味合いもあるという。

米科学者連盟」核情報プロジェクトの責任者で核兵器に関するもっとも著名な民間専門家のひとりであるハンス・M・クリステンセン氏は、LEPは「新しい軍事的任務を支援したり、新しい軍事能力を付与したりするものではない」という米政府当局の当初の誓約内容と、この兵器の新しい特徴とは矛盾している、と指摘している。

Hans Kristensen/ FAS
Hans Kristensen/ FAS

LEPに関する新情報は[米政府の主張とは]まったく逆の状況を示している。

クリステンセン氏は、「誘導尾翼を取り付けたことで、B61-12の命中精度が他の兵器と比較して向上し、新たな戦闘能力が付与されることになります。」「米軍当局は、50キロトンのB61-12が(再利用されたB61-4弾頭とセットで)360キロトンのB61-7弾頭と同じ標的をたたく能力を得るには、誘導尾翼が必要だと説明しています。しかしB61-7が配備されたことがない欧州では、誘導尾翼が付くことで(B61-12の)軍事能力が格段に向上することになるのです。これは核兵器の役割を低減させるという公約には見合わない改善措置と言わざるを得ません。」と語った。

比較のために言えば、米国が1945年8月6日に日本の広島市を破壊するために投下した原爆「リトル・ボーイ」の爆発力は13~18キロトン、その3日後に長崎市を破壊した「ファット・マン」の爆発力は22キロトンだった。

昨年10月に米下院が開いた公聴会で、B61-12は、1997年に導入された旧型で400キロトン規模の地中貫通型核兵器「B61-11」と、最大1200キロトンで様々な爆発力を持つ戦略核弾頭「B83-1」の代替となることが明らかになった。

クリステンセン氏は、「これによってB61-12の軍事能力は、B61-4(0.3キロトン)からB83-1(1200キロトン)に至る、重力爆弾の軍事的標的任務の全範囲と、B61-11の地中貫通能力までカバーするものとなります。」「つまり、そのような破壊能力の更新がなされれば、新戦力は『重力爆弾のあらゆる任務を包含した、共通の能力を持つ全対応型の核爆弾』となるでしょう。」と語った。

もっとも問題なのは

B61の大量破壊能力を極度に向上させる計画には多くの問題が内包している。なぜなら、欧州各国政府、とりわけドイツが、少なくとも2009年以降、この兵器の解体を希望する旨を明確にしてきているからだ。

世界中に拡散する核兵器を「冷戦の最も危険な遺産」だとした、2009年4月のバラク・オバマ大統領の歴史的なプラハ演説に対して、当時のドイツ政府は、国内に配備されている旧型のB61を解体するよう主張したのであった。

社会民主党出身の当時のフランク・ウォルター・シュタインマイヤー外相は、自ら「前例がない」と称する声明において、ドイツ領に配備されている米核兵器の撤去を要求した。2009年4月、オバマ大統領のプラハ演説からわずか数日後、シュタインマイヤー外相は独『シュピーゲル』誌に対して、「(B61核)兵器は今日軍事的に陳腐化している」と述べ、依然として配備されている米核兵器を「ドイツから撤去させる」ための措置をとると約束した。

それから2年、次の保守政権のギド・ヴェスターヴェレ外相も、B61解体の主張を続けた。キリスト教民主同盟・自由民主党連立政権のヴェスターヴェレ外相は、前任のシュタインマイヤー氏と同じく、反核活動家と同じような主張を行い、こうした核戦力は多くの意味において陳腐化していると訴えている。具体的にはその論拠として、B61はすでに使用されていない他の軍備とセットで使用することが想定されており、さらに、現在は存在しない旧ソ連圏という敵をターゲットとしている点を指摘している。

2010年3月、ドイツ連邦議会ブンデスターク)では圧倒的多数の支持で、「米国の核兵器をドイツ領土から」撤去するよう明確に要求する決議が採択された。

しかし、シュタインマイヤー氏もヴェスターヴェレ氏もNATO全体、そしてとりわけ米国を説得することに失敗している。それどころか、ワシントンで決定された既成事実、すなわち、B61が近代化改修されて(ハンス・クリステンセン氏の巧みな表現を再び用いれば)「共通の能力を持つ全対応型の核爆弾」となるにまかせざるを得なくなっている。

その後シュタインマイヤー氏は再び外相に就任したが、核撤去問題を公に論じることをとうに止めてしまっている。クリステンセン氏がヴェスターヴェレ前外相についてコメントしたように、シュタインマイヤー氏も「NATOにおける古い核の番人らからの猛烈な巻き返しに身を固くして」いるのかもしれない。

しかしシュタインマイヤー氏は、すべての政党が参加して米国の核兵器をドイツから撤去すべきと主張した「ドイツ国会議員宣言」に、少なくとも2年も経たない以前に署名しているのである。当時(野党の)社会民主党議員団のリーダーであったシュタインマイヤー氏らはこの宣言において、当時の与党保守連立政権(キリスト教民主同盟・自由民主党)がこの同じ目標を達成できないでいることについて「残念なことに、我が国の政府は、すでにこの目標に別れを告げてしまったかのようだ。」と痛烈に非難していた。

この同じ非難を、再度外相となったシュタインマイヤー氏に対して投げかけることができるだろう。彼は、NATOの核兵器を欧州領土から撤去すべきだという自身の信念に従っていない。ウクライナ動乱によって引き起こされた新たなNATO・ロシア危機は、シュタインマイヤー氏が自身の心変わりに疑問を付すような機会を確実に提供することだろう。(原文へ

※ジュリオ・ゴドイは、調査ジャーナリストでIDNの副編集長。共著の『殺人の実行―戦争というビジネス』『水を売り歩く者たち―水の民営化』に関して、ヘルマン・ハメット人権賞、米職業ジャーナリスト協会による「オンライン調査報道シグマ・デルタ・キー賞」、オンラインニュース協会および南カリフォルニア大学アネンバーグ・コミュニケーション学部による「起業的ジャーナリズムのためのオンラインジャーナリズム賞」等によって、国際的な評価を得ている。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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|UAE|アースアワーに向けてドバイ空港の一部消灯キャンペーン始まる

【ドバイWAM】

アラブ首長国連邦(UAE)ドバイの国際空港では、3月29日のアースアワー(世界約150か国の人々が、同じ日の同じ時間に電気を消すアクションを通じて、「地球の環境を守りたい!」という思いをわかちあう国際的なイベント)に向けて、空港施設内の不必要なライトを毎日1時間消灯するキャンペーンを、通常よりも早く開始した。

キャンペーンはアースアワーの24日前に当たる3月6日午後7時に開始されたが、一部消灯措置による空港の安全な運営への影響はない。

ドバイ国際空港最高経営責任者のポール・グリフィス氏は、「当施設は2009年以来、1時間一部の電灯を消すことで毎年アースアワーに参画してきましたが、この活動を通じて、環境問題への意識を新たにするとともに、国際社会に対して、良い先例を率先して示すことができる機会だと考えています。またこの経験から、アースアワーの当日に限らず、この慣行を前倒しに行うことで、更なる波及効果を期待できるのではないかと思うようになりました。」と語った。

さらにグリフィス氏は、「ドバイ国際空港は毎月世界125ヵ国以上の国々から600万人近い搭乗客を迎える施設ですから、このキャンペーンを通じて、この環境保護メッセージを利用客に幅広くアピールするには理想的な舞台です。」と付け加えた。

24時間時間の消灯(1日1時間×24日)で節約できる電力量は約30万キロワット時で、二酸化炭素排出量に換算すると129トン、ガソリン換算で23,729ガロン、或いは5,427本分の樹齢10年の木を植樹したのに相当する。

3月6日から28日までの毎日午後7時から8時の間、そしてアースアワー当日3月29日の午後8時半から9時半の間、ドバイ国際空港の第1~第3ターミナル、及びアール・マクトゥーム国際空港の乗客ターミナルにおいて、全ての装飾的な照明のスイッチが切られる予定である。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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【国連IPS=カニャ・ダルメイダ】

戦地からの映像といえば、戦場と兵営だけを映していた時代がかつてあった。その後20世紀に入ると、戦闘地帯となった都市の中心部や農村ゲリラの前哨基地などの映像も含まれるようになった。

そして今では、公共の広場が、政治不安に陥った国の民衆がデモをおこしたり暴力的な衝突が発生する舞台として頻繁に映し出されるほか、負傷者の治療に当たる病院が格好の標的と見なされるようになってきている。

しかし、現代の戦争でもっとも憂慮すべき現象は、おそらく教育機関に対する攻撃が拡大してきていることだろう。

 「教育を攻撃から守る世界連合」(GCPEA)が、この問題を扱った調査報告書としてはそれまでで最も精緻な『攻撃にさらされる教育2014』(全250頁)を2月27日に発表した。この報告書には、学校、大学、教師、学生、学者らが政府当局及び非国家主体双方から攻撃されている実態が詳述されている。

GCPEA
GCPEA

2009年から2012年をカバーしたこの報告書は、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)報告書(2007年から2010年を分析)に続くもので、教育活動に関わる人々に対して行われた威嚇や、意図的に使われた暴力について記録している。

最新報告書が示す状況は、決して明るいものではない。この5年の間に、世界中で多くの子どもたちが殺害されたり、怪我を負わされたり、或いは誘拐されたり強制的に兵士や性奴隷にさせられたりしている。2012年にパキスタンでタリバンからの襲撃を生き延びた15才のマララ・ユサフザイさんのケースは非常に有名だ。

多数の教師が襲われ殺害されたほか、数千棟の校舎や教育機関の建物が爆破されるか、或いは、軍関係者用の臨時宿舎として徴発されたりした。

また専門家らは、「教育機関へのテロが相次いだ結果、教育を受ける権利を奪われた学生の数は、数十万人に及んでいる。」と指摘している。

人権擁護団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」で子どもの人権問題を担当するザマ・コーセン・ネフ氏は、IPSの取材に対して、「一つの襲撃事件が及ぼす影響が、対象となった学校の150名から200名の子どもたちにとどまらず、周辺地域の全ての子どもに及んでいることを考えれば、教育機関への攻撃の問題は、これまであまり注目されてこなかった現象だと言わざるを得ません。」「私たちはこの問題がもたらす波及効果について、ようやく理解し始めているところです。」と語った。

またネフ氏は、「国連や人権擁護団体の報告書から各国内の調査研究報告書まで幅広い情報源を基に作成されたこの報告書は、教育機関に対する攻撃の背後にある様々な動機を明らかにしました。つまり、当該地域の統治機構の信用失墜を狙ったものや、女子教育の妨害を目論んだもの、自身のグループの影響力拡大を意図したもの、特定の言語教育の阻止を狙ったもの、さらには、教員の組合活動や学問の自由を抑圧しようとしたものなど、様々です。」と語った。

2013年7月、ナイジェリアの反政府勢力「ボコ・ハラム」の指導者アブバカル・シェカウは、AP通信が報じたビデオメッセージの中で、「西洋式教育をやっている教師たちよ! 我々はお前らを殺す! 我々はお前らを殺す!」と語っている。「ボコ・ハラム」は、現地のハウサ語で「西洋式教育は罪深い」という意味である。

またそれより数か月前、ミャンマー中部のメイッティーラでは、約200人の仏教系国粋主義者らがイスラム教徒の学校に放火し、教員や生徒に襲いかかった。そして騒ぎが収まったあとには、32人の生徒と4人の教師の無残な死体が校庭に残された。中には、首を切り落とされたものもいた。

報告書にある70か国中30か国で、教育機関に対する意図的かつ体系的な攻撃が見られた。なかでも調査対象期間(2009年から2012年)における、アフガニスタン、パキスタン、コロンビア、ソマリア、スーダン、シリアの状況は最悪を記録した。

とりわけコロンビアは、教師にとって世界で最も危険な国の一つとなっている。過去4年間で140人の教師が殺害され、1086人が殺害の脅しを受けていた。

Source: Global Coalition to Protect Education from Attack
Source: Global Coalition to Protect Education from Attack

同時期、パキスタンでは838の学校が武装勢力によって破壊され、教師20人と30人の学生が殺害されている。

一方、内戦が続くシリアではユニセフが「少なくとも国内の20%の学校が教育機関として機能していない」と報告するなど、学校教育活動が寸断される中、約300万人の子どもが影響を受けている。

この報告書では、コートジボワール、コンゴ民主共和国、イラク、イスラエル/パレスチナ、リビア、メキシコ、イエメンが、調査期間中の攻撃時件数が500件から999件にのぼる「深刻な影響を受けた国」に分類されている。

高等教育機関で最大の犠牲者を出しているのはイエメンで、2011年には73人の生徒が殺害され、さらに139人が負傷している。

報告書はまた、こうした攻撃に対して、(1)モニタリング、襲撃事件の評価と報告、防犯体制の強化や(2)暴力と破壊行為に対するコミュニティーを挙げての対策、など対抗策や予防策についても紹介している。

「後者の対策は、時としてコミュニティーメンバーを、テロリストによる報復攻撃に晒すリスクを伴うが、コミュニティーの強い意志を示すことでテログループとの交渉による解決へと持ち込んだ事例もあります。」とGCPEAのディヤ・ニジョ代表は語った。

ニジョ代表は、「ネパールでは、学校の運営委員会が、ネパール共産党統一毛沢東主義派(マオイスト)武装勢力と交渉して、学校を和平地帯とする協定を結んでいます。また中央アフリカ共和国では、聖職者が政府軍と反政府勢力の間に入り、交渉の結果、反政府勢力の兵士たちを帰郷させることに成功しています。」と語った。

こうした努力は、より永続的な解決策に向けた小さなステップに過ぎないかもしれないが、同時に、教育を再び人類社会の神聖な位置に戻すという、従来とは異なる波及効果を生み出す可能性を持っている。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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【ニューヨークIPS=ピーター・ワイス】

もし精神病というものが現実との接点を失うことだとしたら、核軍縮の現状はまさに精神病と言えるだろう。

一方で核問題は、数十年にわたる休眠状態から表舞台へと徐々に現れつつある。他方で「核兵器なき世界」への核兵器国のコミットメントは、遵守というよりも違反としてとらえられている。

まずは、核軍縮に関する前進点と後退点を挙げることから始めてみよう。

Peter Weiss, President Emeritus of the Lawyers Committee on Nuclear Policy.
Peter Weiss, President Emeritus of the Lawyers Committee on Nuclear Policy.

前進点では、核軍縮問題の中心である米国において、(徐々にトーンが落ちてきてはいるが)この問題に繰り返し言及している大統領がいる。2008年6月16日にパデュー大学で行った講演でバラク・オバマ上院議員(当時は民主党大統領候補)は、「世界に対して、米国は核兵器なき世界を目指すとの明確なメッセージを送る時が来ました。…私たちは、核兵器廃絶という目標を核政策の中心的要素としたい。」と語った。

ただしオバマ氏は、その目標を達成するためにどれほど時間を要するかについては言及していない。その1年後、大統領に就任したオバマ氏
は2009年5月6日のプラハでの有名な演説で、「私は明白に、信念とともに、米国が核兵器のない平和で安全な世界を追求すると約束します。」と語った。しかし彼は「ゴールはすぐには到達できないでしょう。…恐らく私が生きている間には(難しいでしょう)。」と付け加えたのである。

オバマ氏は当時48才だった。その4年後、2013年6月19日、オバマ大統領はベルリンで行った演説の中で、「正義のある平和とは、その夢がたとえどんなに遠く見えようとも、核兵器なき世界の安全を追求することに他なりません。」と語った。

公正を期して言えば、プラハで発表された核廃絶への道のりが実行されたにせよ阻止されたにせよ、それは大統領の落ち度によるものではない。どういうことか。一方では、核兵器の大幅な削減がロシアと交渉され、米国の安全保障戦略における核兵器の役割は低減された。

いずれもオバマ政権が推奨していた、包括的核実験禁止条約の批准と核分裂性物質生産禁止(カットオフ)条約の交渉は、ひとつには米国上院によって、もうひとつには他国によって棚上げにされた。

しかし、削減は廃絶ではなく、米国国防総省もエネルギー省も、核軍縮には明確に反する政策を追求しつづけている。すなわち―

国防総省が2013年6月19日に出した「米国核兵器運用指針」は、核兵器は極限状況でのみ使用されるとしつつ、厳密に抑止にのみ使用目的を制限するのは時期尚早だとしている。

国防科学委員会が今年1月に発表した「核監視・検証技術評価」は、核時代が始まって以来初めて、米国が、水平拡散(核兵器を保有しない国への拡散)だけではなく垂直拡散(核兵器国内における核兵器保有量の増加)にも留意する必要性を認めた。

しかし、100ページに及ぶこの報告書は、核兵器のない世界における監視および検証の要件についてまったく言及していない。

2月6日、米国は、B-61核爆弾の衝撃実験(爆発を伴わない)に成功したと発表した。これは核不拡散条約の条文には反していないが少なくともその精神には明白に違反したものである。ドナルド・コック米国防次官補は、新型爆弾の検討が始まっており、「2020年代中ごろか末には」旧式モデルとの交代が可能になると語った。

こうした、核軍縮に関する米国の政策は、せいぜい玉石混淆といったところだろう。もちろん他の8つの核兵器国(ロシア、英国、フランス、中国、イスラエル、インド、パキスタン、北朝鮮)の政策が米国よりましというわけでもない。

次に良い面はどうだろうか。昨年には、非核兵器国による好ましい方針がそれ以前よりも多く打ち出された。

・2月には、北大西洋条約機構(NATO)加盟国であるドイツの外務省が、「中堅国家構想」(MPI)の招集したフォーラム「核兵器なき世界の条件を創り枠組みを築く」を主催した。

・3月には、別のNATO加盟国であるノルウェーの外務省が、「核兵器の非人道的影響に関する国際会議」を主催した。会議には128か国の政府と多くの市民団体が参加した。

・10月21日、ノルウェーのデル・ヒギー国連大使が、その多くがオスロ会議に参加していた125か国による声明を国連総会第一委員会(国際平和を主要議題とし、軍縮と国際安全保障問題を主に取り扱う:IPSJ)で発表した。この声明は、核兵器が二度と使われないように保証する唯一の道はその完全廃棄である、と宣言している。

・核軍縮に関する「オープン参加国作業グループ」が5月にジュネーブで初めての会合を持ち、8月に国連総会に報告書を提出した。報告書は、国際法の役割に関する部分など、核軍縮を達成するさまざまなアプローチについて記述している。

・9月26日には、国連総会が史上初の「核軍縮に関するハイレベル会合」を開催し、参加各国の大統領や外相、その他政府高官らが次々と、核兵器なき世界に向けた迅速かつ効果的な進展を図るよう呼び掛けた。

・最後に、そして最も重要なことに、2月13日と14日にメキシコのナヤリットで開かれたオスロのフォローアップ会議(「第2回核兵器の非人道的影響に関する国際会議」(非人道性会議))において、オーストリアのセバスチャン・クルツ外相が、「国際的な核軍縮の取り組みには緊急のパラダイム転換が必要だ」との理由を述べて、今年末にウィーンで(第3回)会議を招集することを発表した。

ウィーン会議は、筆舌に尽くしがたい核兵器の恐怖をたんに三度聞く場とはならず、重大な作業に取り組む場となるだろう。国連の潘基文事務総長が示唆したように、核兵器の使用および保有を禁止する条約の起草開始さえあるかもしれない。

しかし問題もある。核保有国はオスロ会議もナヤリット会議もボイコットした。もしウィーンもボイコットしたらどうなるだろうか? それが問題だ。またこのことは、官民双方に広がりつつある反核勢力が向き合わねばならない課題でもある。そこで(核兵器国が認識しているであろう)「後ろめたさ」は、外交の重要なカードにもなり得るだろう。

核兵器国がリップサービスをしてきた核不拡散条約(NPT)では、核兵器なき世界を達成するために全ての加盟国に誠実な努力を行うよう求めている。今こそ、核兵器国に、とりわけ五大核保有国に、この重要な義務すべてを思い起こさせるべき時だろう。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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【ニューヨークIDN=ジャムシェッド・バルーア】

国連「文明の同盟」(UNAOC)上級代表のナシル・アブドゥルアジズ・アルナセル大使が、「核兵器の使用がもたらす破滅的な人道的帰結と、それが国際の平和と安全に及ぼす脅威」について深い懸念を表明している。ニューヨークの国連本部で開催された、新刊『平和のためのフォーラム―池田大作 国連提言選集』(I・B・トーリス社)の出版を記念するシンポジウム「世界市民と国連の未来」を開始するにあたって、アルナセル大使は、平和の文化の重要性についても強調した。

この書籍には、創価学会インタナショナル(SGI、本部:東京)の池田大作会長が国連に対して30年以上にわたって提言してきた内容が含まれている。議論されたテーマは、核兵器廃絶の必要性、世界市民教育、人間と環境とのつながりなどである。このイベントはUNAOCの支援を得て、SGIと国際通信社インタープレスサービス(IPS)、戸田記念国際平和研究所(東京、ホノルル)が共催して、2月20日に開催された。

Olivier Urbain/ By Kimiaki Kawai
Olivier Urbain/ By Kimiaki Kawai

書籍を編集した戸田研究所のオリビエ・ウルバン所長は、池田会長の、民衆の力に対する深い確信と、連帯に備わる潜在的な力に対する信頼に感銘を受けたと語った。戦争のない世界の実現を目指す池田会長の活動は、現実の核弾頭の廃絶にとどまるものではなく、世界が依然としてこの大量破壊兵器を保有しているという現実の背後にある人間の考え方をも問題にしている、とウルバン所長は語った。

「他人の不幸の上に自分の幸福を築くことはできません。このことは国家に関しても言えることで、兵器の脅威に慄く他国の不幸と恐怖の上に真に永続的な国家安全保障を築くことはできないのです。」とウルバン氏は語った。

世界には依然として様々な紛争や脅威があるが、この本を読んで「大いに希望が湧いてきました」と言うウルバン氏は、「私たちの心の中に創造性と連帯の空間があるかぎり、人類に乗り越えられないものはありません。」と付け加えた。従って国連は、民衆の声が活動に反映されるチャンネルやメカニズムを作り出し、それによって民衆が国連を支援する体制を構築する必要がある。

Daisaku Ikeda/ Photo Credit: Seikyo Shimbun
Daisaku Ikeda/ Photo Credit: Seikyo Shimbun

シンポジウムの議長を務めた元国連事務次長のアンワルル・K・チョウドリ博士は、「これは私たちみなが読むべき書籍です。」と語った。チョウドリ博士はまた、「世界の歴史の中で、国連の活動について、池田会長ほど一貫かつ実質的な形で書いてきた人物はいません。」と指摘したうえで、平和を創り出すうえでの女性や若者のエンパワーメント(社会的地位の向上、権限付与)など、池田会長がこれまで行ってきた提言の多くが、国連の運営の中に反映されています、と語った。

チョウドリ博士は、対話と非暴力を通じて平和を推進する池田会長の「平和の文化」に関する考え方は、将来世代のために世界を安全な場所にするうえで不可欠なものです、と指摘した。

アルナセル上級代表は、平和と対話は国連「文明の同盟」の使命でもあると指摘したうえで、「民衆と国家が平和と繁栄のもとに共存できるようにすることは、国連の任務の礎となる部分です。私たちは国際社会として、文化や言語、宗教の違いに関わらず、人間性の基礎となる根本的に共通した価値観や原則があるとの信念で、結び付けられています。」と語った。

「私たちは国連ファミリーとして、多様性を重視し、寛容を推奨し、『他者』への恐怖を打ち破ることを通じて、より平和な世界を構築していくとの共通認識で、結び付けられています。また私たちは、世界的な解決策を必要とする共通の問題を世界の市民が共有していることを理解している点で、結び付けられています。ここにおいて、『核兵器の廃絶』と世界市民教育が役割を果たすようになるのです。」とアルナセル上級代表は付け加えた。

またアルナセル上級代表は、「国際社会は、文化の違いに関わらず、核兵器の使用がもたらす壊滅的な人道的帰結と、それが国際の平和と安全に及ぼす脅威について、深い懸念をしばしば表明してきました。」と、会場を埋めた外交官やジャーナリスト、学者、非政府組織の代表らに語りかけた。

Photo: A test of a U.S. thermonuclear weapon (hydrogen bomb) at Enewetak atoll in the Marshall Islands, November 1, 1952. U.S. Air Force
Photo: A test of a U.S. thermonuclear weapon (hydrogen bomb) at Enewetak atoll in the Marshall Islands, November 1, 1952. U.S. Air Force

国連加盟国は、これまでに生産された中で最も破壊的な兵器の大量かつ競争的な集積によって起こる未曾有の自己破滅の脅威に人類が直面している、と『軍縮機関の成果』において明言してきた。アルナセル上級代表は、「原子力の非平和的利用が人類に重大な脅威を及ぼし、これらの兵器の拡散によって状況がさらに悪化してきたことは言うまでもありません。」と付け加えた。

こうした背景の下に、国連加盟国の多数は「核兵器の完全廃絶こそが、核兵器の使用あるいはその威嚇に対する唯一の保証となる」と何度も再確認してきた。これらの国々は、「すべての非核兵器国に対して安全を保証する普遍的で無条件かつ法的拘束力がある取り決め」がこれに続かねばならない、との見解を持っている。

アルナセル上級代表は、1996年7月8日に出された核兵器使用の威嚇あるいは使用の合法性に関する国際司法裁判所(ICJ)勧告的意見を想起した。ICJは、核兵器使用の威嚇あるいは使用を特別に認めた慣習法はなく、核兵器使用の威嚇あるいは使用は、武力紛争に適用される国際法の規則に一般的に違反し、とりわけ人道法の原則と規則に反すると判断した。

「核軍縮は、国際社会にとって最も高いプライオリティー(優先事項)の一つと信じます。」とアルナセル上級代表は語った。

世界市民教育

アルナセル上級代表は、平和の文化とつながりがある「世界市民教育」(GCE)の話題に移って、「もし平和の文化を私たちの中に、そして私たちの間に深く根付かせようとするならば、成長過程にある若い人たちの心に効果的に働きかけて、私たちの世界における平和という、人々を結びつける価値観を育み、それに関して教育しなければなりません。」と説明した。

Forum for Peace/ SGI
Forum for Peace/ SGI

またアルナセル上級代表は、「私たちは平和教育に大きな価値を置かなければなりません。今日の若い世代にはこれまでとまったく違った教育を受ける権利があります。つまり戦争を賛美するのではなく、平和を教えるような教育です。そうしたものとして、国連の潘基文事務総長は、2年前に立ち上げた運動『グローバル・エデュケーション・ファースト』の中で、『地球市民の育成』を3つの柱の一つに掲げています。」と付け加えた。

このイニシアチブは、この概念を、共通の価値観に息吹をもたらす変革的な教育と説明したうえで、人々がより平和で、寛容で、包括的な社会を構築するのを支援するうえで中心的な役割を果たすような教育を呼び掛けている。

アルナセル上級代表は、「国連『文明の同盟』は、私たちの中に、私たちの家族に、そして私たちの社会と国家の間に平和を作り始めることができる理想的なフォーラムなのです。」と語った。

Betty Williams/ Wikimedia Commons
Betty Williams/ Wikimedia Commons

ノーベル賞受賞者のベティ・ウィリアムズ氏は、「世界をよりよくしていくために、私たちには国連しかないのです。」と指摘したうえで、「(国連も)ある特定の領域においてはもっと多くを改善する余地があることを承知しています。しかしはたして、円滑に運営されている組織というものが世界にあるでしょうか? これまで国連がなかったら、私たちは何をなし得たでしょう?どれほど世界の情勢は悪化したでしょう?」と問いかけた。

平和な社会を推進したとして1976年にノーベル平和賞を受賞したウィリアムズ氏は、個々人が、世界市民として、世界に平和をもたらす役割を担っていると考えている。「私たちは、『私がやる必要はない。誰かがやればいい』などと言うことはできません。世界で子どもたちが、栄養不良や病気、戦争によって亡くなっていることに対して、私たちにはみな責任があるのです。人間の一員として、私たちにはみな責任があるのです。」とウィリアムズ氏は語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between Inter Press Service and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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│ウクライナ│不況と抑圧が民衆の怒りの火に油を注いた

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【キエフIPS=パボル・ストラカンスキー】

ウクライナの首都キエフがソ連崩壊後の独立時代(1991年~)最悪の暴動を経験する中、一部の抗議参加者は、現在の危機を招いたヴィクトル・ヤヌコヴィチ政権に対する募る不満は、今回の難局を打開する方策が見出されたとしても消えることはないだろうと警告している。

11月に反政府デモが始まった時、その表向きの理由は、ヤヌコヴィチ大統領が欧州連合(EU)加盟に向けた第一歩となるはずだった連合協定の署名を突然棚上げし、ロシアとの関係を強化する道を選択したというものであった。

しかし抗議デモの様相はまもなくして、大統領による特定の政治判断に対する抗議から、ヤヌコビッチ政権そのものに対する嫌悪と不満を爆発させるものへと変質していった。

「反政府デモはEUとの連合協定を突然棚上げした大統領の決定に抗議する活動として始まりましたが、本当の理由はそれだけではありませんでした。誰もがヤヌコビッチ体制にうんざりしていたのです。」とデモに参加していたヴァレリー・ドロレンコ氏(45歳)はIPSの取材に対して語った。

ウクライナ内外の人権擁護団体によると、2010年にヤヌコヴィチ氏が大統領に就任以来、治安や内政の主要ポストを側近が占め、市民の自由は侵害され、反体制派は厳しい弾圧に直面し、法執行機関の独立と信頼性はほとんど失われたという。汚職監視組織「トランスペアレンシー・インターナショナル(TI)」の最新調査書「腐敗認識指数(Corruption Perceptions Index)」によると、ウクライナの腐敗度ランキングは、調査対象の世界177カ国・地域の中で144位に落ち込んでいた。

このあいだ、ウクライナ国民の間では、政権内部に汚職や縁故主義が蔓延ったとの認識が広がった。批評家は、ヤヌコビッチ氏が自らの手に権力を集中するとともに、自らの周辺に親族や側近をとりたて「ファミリー(家族)」と呼ばれる裕福な利権集団を作った、と指摘している。

一方でウクライナの経済は、2008年の金融危機以来、深刻な苦境の中にあり、国民は貧困に喘いできた。通貨フリブナは崩壊寸前、貿易・財政赤字は急拡大し、18カ月連続の不況となった。

キエフ在住で現在は失業中の経済学者マーシャ・コーシン氏(34歳)は、IPSの取材に対して、「民衆はヤヌコビッチ体制にうんざりしているのです。抗議デモへと民衆を突き動かしているものは、ヤヌコビッチ氏が招いた政治腐敗と経済不振に対する怒りなのです。もし経済状況が改善していれば、抗議デモの様相もより穏やかなものになっていたでしょう。しかし現状からはさらなる混乱と怒りしか生まれない状況にあります。」と語った。

切迫した経済状況に加えて、外国投資の誘致に失敗したことから、ウクライナ経済、とりわけ重工業の大半が集中する東部地域の経済は、ますますロシアとの貿易に依存するようになった。さらに、ウクライナの6分の1を占めるロシア系市民(ウクライナ東部・南部に多い)の存在は、ロシアがウクライナに対する影響力を強める手段となった。

しかし専門家によると、このことから、伝統的に親欧傾向が強いウクライナ中部・西部の市民たちを中心に、ヤヌコビッチ大統領離れの傾向が徐々に強まっていったのである。

昨年11月にEUとの連合協定署名を突然棚上げし、親露路線へと舵を切ったヤヌコビッチ氏の動きは、ウクライナがロシア型国家資本主義と信奉し、政治・社会が抑圧されるロシアの傀儡国家になるのではないかと恐れる民衆にとっては、許容の限界点を超えるものだった。

ここ数カ月におよぶ暴力と殺戮、とりわけ2月20日前後の恐るべき流血の惨事は、ヤニコビッチ政権に対する民衆の怒りを深めただけであった。(ヤヌコビッチ大統領は22日にキエフを脱出してロシアに亡命、ウクライナ議会は大統領解任を決議したが、ヤヌコビッチ氏はクーデターであるとして辞任に同意していない:IPSJ)

抗議活動参加者の多くは、反体制派がヤヌコヴィチ体制に取って代ったところでそれへの信頼はほとんど生まれてこないだろうと語る。主要な野党である全ウクライナ連合「祖国」も、現政治体制の腐敗した部分に過ぎないとの見方もある。

ドロテンコ氏はIPSの取材に対して、「当局は生来犯罪的な存在です。つまり野党も(ヤヌコビッチ政権と)同じコインの表と裏の関係に過ぎないのです。」と語った。

ドロテンコ氏は、「野党議員らは、与党議員と同じく新興財閥(オリガルヒ)のカネを受取り、『傀儡』或いは『お飾り』野党という快適な役割を演じつつ、ヤヌコビッチ大統領と同じように民衆の声を無視してきたのです。」と指摘したうえで、「民衆の反政府デモに交じってキエフの街頭に出てきた野党議員らは、実際のところとても熱心な民衆支持者とは言えないのです。」と語った。

Map of Ukrine
Map of Ukrine

また反政府デモの主要勢力に極右過激派「スボボダ(全ウクライナ連合『自由』)」が含まれていることを問題視する指摘もある。

また抗議参加者の中には、野党指導者が言動において一貫性を欠き、昨年下旬の抗議活動の初期段階において事態の収拾に動かず状況を悪化させた責任を指摘する声もでてきている。

「事態を悪化させた責任は、もちろん愚かで違法行為を犯したヤヌコビッチ氏にあるが、抗議活動が始まった初期段階に早急かつ断固とした対応をとらなかった野党勢力にも責任の一端があります。」とドロレンコ氏は語った。

治安部隊とデモ隊の衝突が恐ろしい流血の事態に発展したのを受けて、EU・米国・ロシアが活発な外交交渉に乗り出し、2月21日にはヤヌコビィチ政権、野党、ロシア、EU間で危機打開のための合意がなされた。早期の総選挙実施がこの合意における主要要件となっている。

しかし、このような外交的な取り組みがやっと今になってなされていることには失望の声も聞かれ、根本にある緊張はなかなか解けそうにもない。

キエフで教師をしているオルガ・コヴァチャック氏(37歳)はIPSの取材に対して、「おそらく今回の混乱が流血の惨事に発展する以前の純粋な政治闘争の段階であれば、EU或いはロシアからの何らかの働きかけで事態の収拾を期待できたかもしれません。しかし事態がここに至ってはそれも期待できません。EUとロシアは機会を逸したのです。」と語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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【アブダビWAM】

「イスラエルは、米国が仲介している中東和平交渉を隠れ蓑にして、とりわけ占領下のエルサレム及びその周辺地域において、違法なユダヤ人入植地建設を継続しており、ジョン・ケリー国務長官による和平努力を意図的に妨害している。」とアラブ首長国連邦(UAE)の英字日刊紙が報じた。

従って、「多くのパレスチナ人が、ケリー長官がマフムード・アッバスパレスチナ自治政府大統領に提示した和平交渉の指針を盛り込んだ「枠組み合意」案を、イスラエルとの最終合意の基礎にはなりえないと感じているのは驚くに値しない。なぜならこの枠組み合意案には、パレスチナ人の持つ正当な権利について十分な考慮がなされていなからだ。」とガルフ・ニュース紙は2月22日付の論説の中で報じた。

米国務省は、ケリー・アッバス会談を「建設的なものであった」と評したうえで、「両者は今後数週間に亘って連絡を取り合っていく」と発表した。昨年2月に国務長官に就任したケリー氏は、イスラエルとヨルダン川西岸地区(ウエストバンク)に頻繁に足を運び、昨年7月にはそれまで3年間に亘って途絶していたイスラエルとパレスチナ間の和平交渉の再開(ただし交渉期限は今年4月までの9カ月)に漕ぎつけた。この1年間における中東訪問は実に11回に及ぶ。

またガルフ・ニュース紙は、パレスチナ人は、イスラエル当局により、財産の破壊、強制退去などいくつかの方法で、不当な扱いを受けてきた、と付け加えた。国連人道問題調整事務所(UNOCHA)によると、2013年にはウエストバンク(C地区と東エルサレム)でパレスチナ人所有の家屋が破壊され新たに1100人のパレスチナ人が強制退去を余儀なくされるなど、強制退去の被害者は前年比で25%増加した。さらにこれらの地域では2014年になってからも、パレスチナ人所有の100の建物が破壊され、100人の子どもを含む180人以上のパレスチナ人が強制退去させられている。

こうしたなか、アイルランドでは138人の学術関係者が、イスラエルが国際法を順守するようになるまで、学術分野でのイスラエルとの交流を拒否(ボイコット)する内容の誓約書に署名した。2月20日に発表された同誓約書には、「私たちは、パレスチナの市民団体からの呼びかけに応え、イスラエルが国際法と人権の普遍的原理を順守するようになるまで、イスラエルの学術関係者、研究機関、政府組織、及び関連機関と職業上関わらないことを誓います。」と記されている。しかしイスラエルはこの呼びかけに注意を払うことを拒否している。

「たとえ平和的な解決策についてイスラエル・パレスチナ間の合意が可能だとしても、それは国連決議並びにパレスチナ指導部とアラブ連盟の立場を基礎にしたものでなければならない。つまり和平合意には、①東エルサレムを首都とし、1967年時点(第三次中東戦争前)の国境線に基づくパレスチナ独立国家の設立、②パレスチナ難民問題の公正な解決(帰還権を認めること)、③ユダヤ人入植地建設の即時停止、が含まれるべきである。」とガルフ・ニュース紙は報じた。

また「米国政府は、イスラエルに対して、強引に圧力を加えたり意図的に妨害しても和平プロセスを進展させることは出来ないと告げることに躊躇すべきではない。」とガルフ・ニュース紙は結論付けた。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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【国連IPS=ミン・リ】

このところカンボジアの衣料産業は頻繁なストライキや抗議活動に見舞われている。しかし首都プノンペン郊外のカナディア工業団地で1月3日に発生した数千人規模の抗議集会では、治安部隊が集会参加者に発砲して5人が死亡、十数人の負傷者が出るなど、それまでの抗議活動からは突然様相が変わってきた。

依然として収束の兆しが見えない中、権利擁護団体は、カンボジアに進出している衣料ブランド各社に対して、現地縫製工場からの製品買い上げ慣行を見直すとともに、流血の惨事を招いた縫製工場労働者のストの原因である低賃金問題の解決に向けた行動を起こすよう強く求めている。

The majority of Cambodia’s exports to the European Union (EU), over 89 percent, are textiles such as garments and shoes. Credit: Michelle Tolson/IPS
The majority of Cambodia’s exports to the European Union (EU), over 89 percent, are textiles such as garments and shoes. Credit: Michelle Tolson/IPS

「ストライキの背景には縫製工場の労働者らの激しい憤りがあります。発火点は至る所にあるのです。彼らは低い賃金水準で困窮を強いられる現状をこれ以上受け入れたくないのです。」と、ニューデリーに本拠を置く労働団体「アジア最低賃金連合(Asia Floor Wage Alliance:AFWA)」のアナンヤ・バッタチャヤ氏はIPSの取材に対して語った。

政府が設定する法定最低賃金は労働者の要求からはかけ離れていることが少なくない。カンボジアの場合、縫製工場の最低賃金は現行月80ドルで、100ドル前後のベトナムなど周辺国と比べて低い。政府はこの最低賃金を段階的に引き上げる方針(今年4月に100ドル、5年後に160ドル)を提示したが、労働者側は即時160ドル(約1万6700円)への引き上げを主張し、昨年末から大規模なストに入っている。

アジアの衣料産業における最低賃金の底上げを求めているAFWAは、法定最低賃金が(労働者の生活を保障できないほど)不十分な場合、当該国で事業を展開している多国籍企業である衣料ブランドが、問題の解決に向けて関与すべきだと考えている。

「縫製工場の労働者らが製造している製品が世界の衣料産業を支えているのですから、衣料品工場を世界的に展開する多国籍企業が、最低賃金と生活賃金の差額を支払うべきです。」「これは不公平な要求ではありませんが、衣料ブランド各社は依然として差額の支払いに同意していません。」とバッタチャヤ氏は語った。

公正を期するために言えば、カンボジア治安部隊による弾圧が行われた後、現地に工場を展開する大手衣料ブランドが沈黙を守っていたわけではない。既に「アメリカン・イーグル・アウトフィッターズ」「ギャップ」「リーバイ・ストラウス」などの企業が、最近の暴力沙汰について遺憾の意を表明する公開書簡をカンボジア政府に送り、政労使が定期的な賃金見直しを行うメカニズムを創設することを主張している。

「リーバイ・ストラウス」社はIPSに寄せた声明の中で、「当社は今後もカンボジアでの現地生産を継続していく方針」であり、現在の政情不安が平和的に解決されるよう強く要望する、としている。また「ギャップ」社の広報官は、同社はいかなる暴力にも強く反対するものであり、全ての利害関係者が論争の平和的な解決にむけて話し合うよう呼びかけている、としている。

ワシントンに本拠を置く労働団体「国際労働権利フォーラム」は、こうした大手衣料ブランドの動きについて、「各社がカンボジアで起こった人権侵害に対して積極的に声を上げたのは称賛すべきだが、より一層踏み込んだ行動を起こさなければならない。」との声明を出した。

同フォーラムのリアナ・フォックスボグ広報部長は、「全ての衣料ブランドと小売業者は、カンボジアで縫製された製品に対して自発的に買い取り額を引き上げることに同意し、その分を現地労働者の賃金引き上げに反映するよう縫製工場に要求すべきた。」と語った。

Ms. Liana Foxvog
Ms. Liana Foxvog

フォックスボグ氏によると、こうした大手衣料ブランドは過去20年に亘って、生産拠点となる途上国において労働者に最低賃金レベルを競わせながら、世界各地にサプライチェーンの拡大を図ってきたという。

「私たちは、これまでに縫製工場の労働者が置かれてきた過酷な労働環境をはじめ、低賃金、労働者の集会の自由に対する弾圧など様々な問題事例を目の当たりにしてきました。」「これまでは衣料ブランドや小売業者が各地の縫製工場を廻り、製造価格を買いたたきながら買付を行ってきました。例えばシャツを2ドルで製作できるか問い、ある工場が難色を示せば、その金額でも仕事を引き受ける別の工場を探して発注を乗り換えてきました。その結果、2014年の今も、こうした労働搾取的な経済が罷り通っているのです。今後は、こうした旧態依然としたビジネスモデルとは異なるシステムが構築されなければなりません。」とフォックスボグ氏は語った。

フォックスボグ氏は、この問題を解決するためには、すべての衣料ブランドと小売業者が供給業者と長期的な関係を結び、労働条件をコントロールしやすくすべきだと訴えている。

「私たちは、縫製労働者が飢餓と集団失神に直面しなくてもすむように、公正な生活賃金を保障する必要があります。そしてそのために必要な追加費用を衣料ブランド各社が払えることを私たちは知っているのです。」とフォックスボグ氏は語った。

見通しは不透明なまま

治安部隊の発砲による縫製労働者殺害事件から1か月以上が経過したが、依然として危機的状況が打開される見通しはない。

人権擁護団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は2月3日、緊急声明を発表し、その中でカンボジア政府に対して、縫製工場側が、組合を組織したり権利を主張する労働者に対して威嚇したり脅迫したりしないよう保証するよう求めている。

Human Wrights Watch
Human Wrights Watch

国際労働機関(ILO)は1月下旬、カンボジアで続く暴力について「深く憂慮している」と指摘したうえで、改めてカンボジア政府に対して、スト参加者に対する弾圧事件について独立した調査委員会を設置するよう呼びかけた。

カンボジアでは1990年代後半から外資系の輸出向け縫製工場が多数つくられ、衣料産業は今では約50万人を雇用する製造業の主要部門となっている。ILOによると、カンボジアからの衣料の輸出高は、2013年に史上初めて50億ドルを突破した(前年同期比22%増の51億ドル弱)。

衣料産業はまた、縫製工場の労働者の大半を占める女性の貴重な収入源であるとともに彼女たちが家族へ送る仕送りの資金源として重要な位置を占めている。

プノンペンを拠点にした国内の衣料産業をモニタリングするILOプロジェクト「ベター・ファクトリー・カンボジア」の責任者ジル・タッカー氏によれば、全ての縫製工場が労働搾取工場とは言えないまでも、2010年以来、カンボジア衣料産業の労働条件は悪化しつづけているという。

Jill Tucker/Better Factories Cambodia
Jill Tucker/Better Factories Cambodia

タッカー氏はIPSの取材に対して、「途上国は国際市場における競争力を得るために裁縫労働者の賃金を長期に亘り『人工的に低く』抑えてきており、その結果、労働者の生活水準が国内物価の上昇に追いつけなくなってきているのです。また縫製工場が大都市に集中していない他の衣料生産国と異なり、カンボジアの場合、衣料の生産拠点が首都プノンペンに一極集中しています。このため、労働者は縫製工場の近くに住むために高い生活費の出費を余儀なくされているのです。」と指摘したうえで、「もしカンボジア人労働者が仕事に満足し賃金や労働条件が十分だと感じていれば、おそらくこれほどの労働争議を目の当たりにすることはなかったでしょう。」と語った。

さらにタッカー氏は、「消費者が使い捨ての安価な衣服を大量に所有する現在のシステムは、経済的にも環境的にも持続可能なものではありません。おそらくこのような安価な衣服を大量生産する体制は今後10年もすれば限界をきたすでしょう。」と語った。

消費者の罪

テキサス工科大学自由市場研究所のベンジャミン・パウエル教授は、IPSの取材に対して、消費者は途上国製の安価な製品を購入した際に、罪悪感を覚える必要はないと語った。

Benjamin Powell/ TTU
Benjamin Powell/ TTU

「労働搾取工場(スウェットショップ)」という言葉には、それが時には現地の労働者にとって、この後の経済発展や、最終的には賃金引上げと労働環境の改善につながる可能性がある最善の選択肢であるにも関わらず、否定的な響きがあるのです。」とパウエル教授は主張した。

カンボジアは国内貧困率を2007年の50%から今日の20%にまで削減することに成功したが、世界銀行の統計では、依然として「低所得経済」に分類されている。同統計によると、人口710万人のカンボジアの一人あたりの国民所得は880ドルで、香港の36,560ドルには遥かに及ばない。

前出のADWAのバッタチャヤ氏は、「バングラデシュやカンボジアのような途上国は次の経済レベルに向けてまもなく前進を遂げるでしょう。しかし、そのためには低賃金の問題が解決されなくてはなりません。」と指摘したうえで、「衣料産業は、賃金面で競争するのではなく、物流や原料調達の面において競争すべきです。」と語った。

更に、昨年7月の総選挙で不正が行われたとして選挙のやり直しとフン・セン首相の退陣を求めている野党救国党をはじめ様々な勢力が抗議運動に参画してきていることから、縫製工場労働者の賃上げ要求デモは徐々に政治的な色彩を帯びたものとなってきている。ちなみに、救国党は先の総選挙で縫製工場労働者の最低賃金を150ドルに引き上げることを公約して、与党カンボジア人民党が大きく議席を減らす(90議席→68議席)中で、大きく議席を伸ばした(29議席→55席)。

しかしバッタチャヤ氏は、「抗議の声を上げている縫製工場労働者の本当の動機については、疑念を持ったことがありません。」と指摘したうえで、「ストに参加した労働者たちの要求には、民主的な社会の実現や基本的人権の保障といった政治的なものも含まれているかもしれません。しかし、抗議の声の根底にあるものは『明らかに経済的な要求』に他なりません。つまり、労働者達は賃金の引き上げを求めているのであり、抗議行動の発端はこの点にあるのです。」と語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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