【ニューヨークIDN=リサ・ヴィヴェス】
アフリカ南部のナミビア・ボツワナでカナダ企業が行っている石油・天然ガスの試掘作業が、下流の「オカバンゴ・デルタ」(世界最大の内陸デルタで世界最大の象の群れを含む野生動物の宝庫)の環境を汚染し、流域に暮らすサン族の生活を脅かす懸念があるとして、環境保全団体が掘削の中止を求めて抗議活動を展開している。(原文へ)
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【ニューヨークIDN=タリフ・ディーン】
北朝鮮は、長らく「隠者の王国」と呼ばれてきたが、依然として政治的にも、経済的にも、地理的にも、世界から孤立し続けている。
厳格な制裁措置や国際的な孤立化政策をもってしても、また、深刻な食料不足が発生しているにもかかわらず、この国(正式名称を「朝鮮民主主義人民共和国」)が、米国・英国・フランス・ロシア・中国・インド・パキスタン・イスラエルと並ぶ世界9カ国目の核保有国として、核開発を推進させることを妨げなかった。
『ニューヨーク・タイムズ』は、韓国の首都ソウルからの報道で、北朝鮮が10月11日、国防発展展覧会を開催し、弾道ミサイルを含む最新の軍備装備品を展示した、と報じた。
「今回の軍備装備品の展示は、北朝鮮が近年行ってきたものとしては最大級だ。」と同紙は評している。
会場に掲げられた巨大な横断幕には「我々は独立独歩の核保有国だ」、「我々は偉大なるミサイル保有国だ」等の愛国心に満ちたメッセージが記されていた。
ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)核軍縮・軍備管理・不拡散プログラムのマット・コルダ研究員はIDNの取材に対して、「北朝鮮の交渉担当への接触が何度か試みられたものの、米国のジョー・バイデン政権は、自身の対朝鮮半島政策が前任者のものとは異なっているというメッセージを、金正恩総書記に納得させることに失敗している。米国側からアプローチを変えない限り交渉のテーブルには復帰しないと金総書記が言明しているだけに、このことは深刻な問題だ。もしバイデン政権がこれを断れば、今後数年で北朝鮮は軍備を拡大することになろう。」と語った。
コルダ氏はまた、「核兵器を搭載した弾道ミサイルは1950年代の技術であり、北朝鮮が核開発の初期においてそうであったように、他国からの支援があれば、この概念を実行することはそれほど難しいことではない。」と指摘したうえで、「現時点では、北朝鮮の科学者や技術者は自国設計のシステムを開発することが可能になっており、北朝鮮核計画の動機となっている安全保障問題がすぐに解決されない限り、道路を移動できる固形燃料型大陸間弾道ミサイルなどの新しい能力を北朝鮮が入手することは時間の問題だと私は見ている。」と語った。
「平和・軍縮・共通の安全保障キャンペーン」のジョセフ・ガーソン代表はIDNの取材に対して、北朝鮮が、核兵器や、ますます進化し危険の度合いを強める運搬手段を開発しているのは、これまでに認識してきた(外国からの)攻撃の脅威に対する論理的/非論理的な対応であると語った。
「北朝鮮の核計画は、度重なる米国による核の威嚇や、米日韓同盟による軍事的威嚇への対応としては合理的なものだろう。誰かが自分に銃を向けていれば、自分の銃を相手に向ける。我々の核戦力を無力化するかもしれないミサイル防衛を誰かが開発していれば、我々としてはそのシステムを出し抜く核兵器を作ることになるだろう。」
「まともな米中政策を求める委員会」の共同創設者であり、『帝国と核兵器:世界を支配するためにいかにして米国は核兵器を使うか』の著者であるガーソン氏は、これは典型的な核軍拡競争のスパイラルであり、中国の「最小限抑止力」の開発に関しても事情は同様だと語った。中国の核戦力は強化され、「中規模抑止力」にアップグレードされつつあるようだ、とガーソン氏はみている。
米国や他の核保有国が核戦争に備えているように、北朝鮮もまた、C・ライト・ミルズが「狂気の現実主義」と呼んだものを実行しつつある。もしその核兵器が最小限であっても発射されることになれば数千万人が大虐殺の巻き添えを食うことになる。
「さらに悪いことに、それによって地球を滅ぼしかねない核戦争が起きる可能性がある。『核の冬』が引き起こされ、人類文明は終焉を迎え、私たちが知るあらゆる命がほぼ絶滅するだろう。」とガーソン氏は警告した。
CNNは10月13日、「北朝鮮の指導者は、一連のミサイル実験を念頭に、「敵対的」な米国から国を守るためには兵器が必要だと語った。」と報じた。
「米国は最近、わが国家に敵対的でないというシグナルを頻繁に発信しているが、敵対的ではないと信じられる行動的根拠は一つもない」と金総書記は語ったとされる。
国営メディア「朝鮮中央通信」が発表した展覧会の写真には、世界で最大の弾道ミサイルのひとつ「火星16号」が写っていると識者らはみている。
さらには、理論上音速の20倍で飛翔し、高い機動性故にミサイル防衛システムによる撃墜がほぼ不可能といわれる超音速滑空弾も写っているという。
CNNによれば、金総書記はこれらのミサイルについて「我々の貴重な(兵器)」と語り、どの国も平時にあっても強力な軍事力を維持しておくべきだと語ったという。
国際原子力機関(IAEA、本部ウィーン)は、8月30日に発表された声明で、朝鮮民主主義人民共和国が寧辺核施設の原子炉を再稼働したとみられることを「深く憂慮している」と述べた。
IAEAは、寧辺核施設の5メガワット原子炉は核兵器用のプルトニウムを生産し、北朝鮮の核計画の中心に位置しているとみられるとの見解を示した。
国連のステファン・ドゥジャリク報道官は会見で、「アントニオ・グテーレス国連事務総長はこれらの報道について認識しており、最新の情勢について憂慮している。」と指摘したうえで、「事務総長は北朝鮮に対して、核兵器に関連した活動をやめ、他の関連諸国との協議を再開するよう求めている。外交的関与こそが、引き続き朝鮮半島の持続的平和と完全かつ検証可能な非核化への唯一の道だ。」と語った。
北朝鮮との関係の現状について問われた米国務省のネッド・プライス報道官は10月15日、記者団に対して、「ご存じのように北朝鮮に関する我が国の戦略は、究極の目標である朝鮮半島の完全非核化に向けて同盟国やパートナー国と緊密に連携し足並みをそろえていくことだ。同盟国である日本や韓国との協議を特に重視しているのはそのためだ。」と語った。
プライス報道官は、アントニー・ブリンケン米国務長官が就任後初の外遊は日本と韓国の歴訪だったと指摘した。国防長官もこの外遊に同行しており、日本と韓国で「2+2」の枠組みで各々の外務大臣、防衛大臣と会談をもった。
「米国政府は、日米韓三カ国関係にもコミットしている。それがどれほど重要か認識しているからだ。例えば、ブリンケン国務長官は、9月にニューヨークで国連総会が開催された機会や先般の外遊の機会を利用して、この三カ国の枠組みで日本や韓国の関係者と会談を重ねてきた。北朝鮮核交渉の実務を総括するソン・キム北朝鮮特別代表も、同じく日本や韓国の関係者と会談を重ねている。」
また、「現段階で発表できる会談はないが、この究極の政策目標を前進させるために、二国間だけではなく、三国間でも緊密に協力し続けると言えば十分であろう。」と、プライス報道官は語った。
特別の提案はあるのかと問われたプライス報道官は、全体的な政策目標に向かって前進すべく、条件を付けずに北朝鮮と会談する用意があると語った。
「我々はメッセージを伝えているし、北朝鮮との討議について特定の提案も行っている。」
さらに、「そうしたメッセージや提案についてここで詳細に語るわけにはいかないが、以前も申し上げたように、インド太平洋地域や日本、韓国の同盟国を含めた、世界中の同盟国・パートナー国との関与を続けながら、北朝鮮との前向きな外交に関与し続ける用意や意志があるということだけは明確だ。」と語った。(原文へ)
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This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.
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この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。
【Global Outlook=イリア・プヨサ】
カブールに向かって進攻している時、タリバンは、WhatsAppのボイスノート、TwitterやFacebookへの投稿を通して、自分たちの軍事的勝利を予想していた。タリバン反乱軍は、アフガン政府軍の兵士たちが大して戦いもせず投降しているというストーリーを、複数のメディアを駆使して作り上げた。カブール制圧の前日、タリバンが勝利に向かって前進する光景を携帯電話やドローンで撮影した映像が世界に配信された。タリバンによる電光石火のアフガニスタン制圧には、いくつかの政治的要因と軍事的要因があった。その中でも、ソーシャルメディアを使った戦争プロパガンダコンテンツが、アフガニスタン政権崩壊に役割を果たした。タリバンのソーシャルメディアを駆使したコミュニケーション戦略は、米国の「大国」イメージに楯突くタリバンの優位さという新たな物語を助長する手段となった。(原文へ 日・英)
タリバンは早くから、ソーシャルメディアを導入していた。彼らは、2009年にYouTubeチャンネルを立ち上げた。2011年からはFacebookとTwitter、2015年からはWhatsAppとTelegramを始めている。近頃では、Clubhouseのチャットルームを運営し、Twitterスペースを開催している。彼らのデジタルコミュニケーションは多言語で、英語、アラビア語、パシュトー語、ダリー語、ウルドゥー語に及び、公式アカウントと非公式アカウントのネットワークによって拡散を図っている。
ソーシャルメディアの武器化については近年多くのことがいわれており、政敵を犯罪者呼ばわりする、間接的に物理的な攻撃につながる嫌がらせをするといったことが指摘されている。しかし、本稿の関心は、武力作戦の展開を支援するためのソーシャルメディア利用を指摘することである。タリバンが2021年8月第1週にソーシャルメディアチャンネルを駆使して組織的に行ったことは、軍事情報支援作戦に近いものだった。軍事戦略学専門家ベンジャミン・ジェンセンが最近書いたように、8万人のタリバン兵は、AK47よりソーシャルメディアを使いこなすスキルのほうがはるかに高い。確かに、タリバンは地方を占領している間に作戦能力を構築し、アフガン政府軍の兵士は政権が弱いことを知っていた。それでも、今回のケースでは情報戦の能力を過小評価することはできない。
タリバンは、兵士の個人アカウントから発信された動画、音声、ソーシャルメディアの投稿を共有し武器にすることによって、それらが、準備不足の政府軍に直接影響を及ぼし、戦闘任務を放棄させた可能性がある。タリバンのメッセージ発信は、アフガン政府軍の戦闘意欲を効果的に低下させたのである。前哨基地の政府軍兵士たちは、タリバンが襲来する前からすでに恐怖に打ち負かされ、戦闘意欲を失っていたのである。彼らは、勝利を収めながらカブールを目指して進攻するタリバンに制圧された人々の姿を目にしたため、戦闘する前に投降したり、逃亡したりした。
よく知られている通り、タリバンは危険な組織に指定された後、Facebookから追放された。YouTubeの暴力犯罪組織に関するポリシーは、暴力犯罪組織が制作したコンテンツ、または暴力犯罪組織を称賛、正当化、勧誘することを目的としたコンテンツを禁止している。しかし、これらのプラットフォームから公式に追放するだけでは、タリバンがソーシャルメディアやWhatsAppでコンテンツを拡散するのを止めるには不十分であることが分かった。米国の外国資産管理局は、グローバルテロ制裁規則においてタリバンとつながりのある15の組織をリストアップしている。しかし、タリバンに参加している個人はリストに含まれておらず、したがって、テロの推定に基づいて自動的にソーシャルメディアプラットフォームから追放することはできない。そもそも、ソーシャルメディアプラットフォームは、アフガニスタンを発信元とするコンテンツをシェアした人全員を追放するべきではない。そのような広範囲にわたる措置を講じれば、自らの市民的・政治的権利を守るために団結する人々を含め、インターネット上で合法的なビジネスを行おうとしている人々全体に害を及ぼすことになる。
追放やコンテンツの調整だけでは、情報戦争を阻止するには不十分かもしれない。Twitterは、タリバンのソーシャルメディア作戦への対策として、暴力の美化およびプラットフォームの操作とスパムを禁止する規則に違反する可能性のあるコンテンツを積極的にチェックしていると表明した。にもかかわらず、Twitterはタリバン報道官のアカウントを凍結しておらず、アカウントのフォロワーは現時点で50万2千人に達している。
2021年8月、Facebookはアフガニスタンのタリバンの作戦に関連するコンテンツを綿密に監視するための特別オペレーションセンター(SOC)を設置した。Facebookは2021年前半にイスラエルとパレスチナの間で一連の衝突が起こった際にも、同様のSOCを設置したことがある。このような特別オペレーションセンターは、紛争地域における情報戦争に対処する有望な方向性かもしれない。しかし、SOCがその真価を発揮するためには、監視とコンテンツの調整以上のことをする必要がある。それは、被害を防ぐだけではなく、良い行いをするという倫理観に基づいた詳細な紛争分析もおこなうことである。
「テロリズムに対抗するためのグローバル・インターネット・フォーラム」(GIFCT)は、ソーシャルメディアプラットフォームが協働し、過激派またはテロリストと特定されたコンテンツを共有するデータベースを提供している。この種の技術的対策は、有害コンテンツのさらなる拡散とバイラル化を防ぐために役立つだろう。しかし、このようなアプローチは、企業による検閲や公共の問題に関する情報へのアクセス制限に関連する問題ももたらす。
タリバンの軍事行動に伴うソーシャルメディア戦争の利用は、新たな憂慮すべき傾向を示している。われわれはすでに、より小規模な紛争とはいえ、他にも武装主体が軍事作戦に伴ってソーシャルメディア戦争を利用するのを目撃してきた。今こそ、保護する責任に関する国連憲章の条項が適用されうる武力紛争や脆弱な国家という文脈で、ソーシャルメディア戦争に対抗する方法について議論を始めるべき時である。この問題に対処するには、ソーシャルメディアや情報戦争、武力紛争、平和構築、グローバルガバナンスなど、さまざまな分野の専門家の協働が必要である。国際機関、市民社会組織、ソーシャルメディア企業は、連携して危機対応タスクフォースを結成してもよいだろう。ソーシャルメディア戦争に対抗するには、複雑な紛争の体系的分析を実施し、影響を評価し、トレードオフを検討し、持続可能な安定と平和促進に寄与する方法を構想する必要があるだろう。
イリア・プヨサは、情報戦争および政治紛争分野を専門とする政治コミュニケーション学者であり、戸田記念国際平和研究所で「ソーシャルメディア、テクノロジーと平和構築」に関する国際研究諮問委員(TIRAC)を務めるほか、ベネズエラ中央大学のコミュニケーション研究所(ININCO)でアソシエートリサーチャーを務めている。コロンビア、エクアドル、ベネズエラ、米国の大学での勤務経験がある。ミシガン大学で博士号を取得。現在の研究テーマは、ネットワーク化された社会運動、権威主義体制下での市民抵抗、情報戦争、民主主義の崩壊である。近著は、Asymmetrical Information Warfare in the Venezuelan Contested Media Spaces。
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フィジー共和国のジョサイア・ボレンゲ・バイニマラマ首相は現在、太平洋諸島フォーラム(18カ国)の議長を務めている。オンラインで開催された国連総会で9月25日に演説した同首相は、国際社会に対して、人類のために、より良く、よりグリーン(環境にやさしく)で、よりブルー(海の保全と開発の両立)な、そしてより安全な未来をというフィジーのビジョンを共有するように求めた。
【スバIDN=ジョサイア・V・バイニマラマ】
今年の国連総会で発表された国連報告書は『我々の多国間の挑戦:国連2.0』である。つまり、より良く、よりグリーン(環境にやさしく)で、より安全な未来に向けた青写真を示したものだが、私はここに「よりブルー(海の保全と開発の両立)な(未来)」を付け加えたい。
私たちはフィジーのためのこのような未来を望んでいる。つまり、自然に抗うのではなく共生する市民たちが住む島々、そして、クリーンエネルギーによって気候変動の影響から守られた、持続可能な経済成長を望んでいる。
私たちは、強固で強靭な医療制度や、グリーン(環境にやさしい)でブルー(海の保全と開発が両立できる)経済によって支えられた働き甲斐のある仕事と収入を望んでいる。成功するためには、こうした私たちのビジョンが人類のビジョンとならねばならない。なぜなら、私たちの運命は世界の運命だからだ。
世界がたどっている現在のコースは、私たちが望む将来に全く近づくものではない。恐るべき病原体が人々の間で燎原の火のごとく広がり、不平等が事態を悪化させている。今年だけでも、気候変動を原因とする洪水や熱波、火事、サイクロンによって数多くの人々が亡くなり、持続不可能な経済的損害を与えた。私たち人間はこれらの原因であるにも関わらず、解決策を導くことを拒否している。
「私たちの共通の課題」における国連事務総長の勧告がここで注目される。新しい組織、新しい資源、国連が奉仕する人々との新しい信頼の紐帯、こうした新しい国連でもって、この時代に立ち向かわねばならない。
新しい国連は、社会の周縁にいる人々、とりわけ女性や女児に対するエンパワーメントを推進し、そうした人々をグローバルな意思決定の中心に据える。
昨年、私たちは新型コロナウィルス感染症がもたらした2つのパンデミック(1つはワクチン接種により裕福な国でのみ収まりつつあるもの、もう一つは途上国世界のほとんどにおいて一層悪化しつつある経済危機)に対峙していることが明確になった。こうした広がりつつある亀裂は、失われた命の数と、失われた経済的進歩の年数によって測ることができるであろう。
「南」の国々においては、かつて「持続可能な開発」と世界が呼んだものが私たちの目前で崩壊しつつある。数多くの雇用が失われ、数多くの人々が適切な食料を入手できなくなり、ある世代全体が教育を受けられなくなった。この危機がもたらした傷は、放置すれば、長年にわたって私たちを苦しめることになるだろう。
フィジーの経験は、平等な復興をいかにして始めることができるかを示している。まずは早期にワクチン接種を実施することから始まる。新型コロナウィルス感染症の発症事例がフィジーで見られなくなって丸一年経過した後、突然デルタ株が国内に入り込み、恐るべき第二波が起こった。ワクチン確保を急ぐ中、当初はややもたついたが、私たちはこの戦いに勝利しつつある。
フィジーの110の有人島全体で、成人の98%がワクチン接種の1回目を済ませ、67%以上が2回目まで済ませている。必要なワクチン確保に尽力してくれたインド・オーストラリア・ニュージーランド・米国に感謝したい。
現在の私たちの任務は、コロナ禍によって失われた10万以上の雇用を回復し、半減した政府の歳入を取り戻すことである。フィジーは間もなく、世界各地から観光客やビジネス客の入国を再開することになろう。経済を近代化し復興させる、デジタル化強化のような投資のトレンドを加速させることを目指している。
しかし、新型コロナウィルスに対するフィジーの勝利は、国際社会がワクチン投与を加速しなければ短命に終わるであろう。富裕国が市民への3回目のワクチン投与(ブースター接種)を検討している一方で、最前線の医療従事者も含め、途上国では依然として数多くの人々がワクチン接種を受けられないでいる。世界的に見れば、コロナによって毎日数千人の命が失われている。途上国にワクチンを供与できなかった私たち全ての責任だと言えよう。
ワクチンナショナリズムを終わらせるべきだ。G7、G20、そして多国間金融機関もこれを止めることに失敗してきた。国連だけがこのリーダーシップの不在を埋めることができる。私は、他の指導者らに加わって、途上国へのワクチン完全供与に向けた、期日目標をもち、費用が提供される詳細な計画について合意するための緊急特別会合を招集するよう国連に求めた。
ワクチンの不平等は、より大きな不公正の徴候であり、今の国際経済システムが本質的に抱える問題である。この不公正とは、復興を加速させることができる資金(あるいは資金へのアクセス)が不平等に分配されている、ということだ。
富裕国が、ほぼゼロ金利の中で多額のお金を刷りばら撒くことで経済を復活させようとしているのに対して、途上国、とりわけ小国は、ただ命を永らえさせ、食料を与え、健康を保つだけのために、懲罰的なレートでもって資金を借りねばならない。
コロナ禍を通じて、我が国の政府は史上最も多額の再分配を展開した。フィジーの成人人口の約3分の1に対する失業手当数億ドルを支給した。老齢年金や、障害者などの社会的弱者に対する金銭的給付などの社会的保護プログラムすら拡大した。
そうでなければ大規模な貧困が発生したはずだ。その選択肢はとても受け入れられるものではない。しかし、その財源としては、政府歳入が急速に減少していたために、起債に頼らざるを得なかった。
私たちには、小島嶼開発途上国(SIDS)独自のニーズを踏まえた開発金融の革新的な枠組みが必要だ。社会の強靭性強化の緊急性を踏まえ、20世紀の規範を打ち破るような債務の持続可能性を評価するより先進的な枠組みを採用しなくてはならない。
今回のコロナ禍は、単独行動が私たちを導いた方向、多国間機関がやりたくない方向について、痛みを伴う教訓を与えた。今後のパンデミックを回避し、あるいは最悪の気候変動を逃れるチャンスを得ようとするならば、協力の新たなフロンティアを見つけねばならない。小国が、よりグリーン(環境にやさしく)で、よりブルー(海の保全と開発の両立)で、より良い復興を目指すならば、私たちの将来を決める決定に対して、私たちが同等の発言権を持ち、同等の票を投じられるようにしなくてはならない。小国は、その利害について耳を傾けてもらい、理解してもらい、行動してもらう必要がある。
「地球を救え」ということがあちこちで言われているにも関わらず、世界全体で公約されたことは極めて少ない。それはあたかも、気候変動が引き起こした大嵐の風に向かって唾するようなものだ。
地球の気候は(産業革命前からの気温上昇)2.7度の気温上昇に向かいつつある。太平洋地域で海抜の低い国々や世界の海岸の大部分が失われることになるだろう。また、洪水・サイクロン・沿岸の浸食・山火事による災害が頻繁に起こるだろう。気候変動を原因とする紛争、大量移民、食料供給と生態系の崩壊を引き起こすだろう。これは想像を絶する恐るべきことだ。しかし、そこへと私たちは向かっている。
2020年3月以来、フィジーにはサイクロンが3回襲来した。そのうち2つは「強度5」であった。フィジー国民は忍耐強い。私たちは今後も耐えることになろう。しかし、人々の忍耐強さをいつまでも讃えているだけというわけにはいかない。本当の強さは国民の勇敢さだけではなく、金融資源に私たちがどれだけアクセスできるかによっても決まるだろう。
今日、小島嶼開発途上国には、気候変動関連の財源の2%以下しか割り当てられていない。真に強靭なフィジーを作るには、迅速に提供される補助金、供与条件を緩和した長期金融、官民協働・パートナーシップを通じて確立された金融ツールへのアクセスを必要とする。
フィジー経済は豊かな海に依存しており、現在の衰退を反転させる大胆な策を採りつつある。2030年までに、100%持続可能な排他的経済水域と、30%を海洋保護区域と指定することを目指している。持続可能な養殖、海草栽培、高価値の加工魚への投資を拡大している。
しかし、これをフィジー単独で行うことはできない。違法・無届け・無規制の漁業を止めるために、私たちはグローバルな仕組みに目を向けている。国家の管轄権を超えた水域における海洋を守るための新たな条約に合意するよう、国連加盟国に求めている。
1カ月後、極めて影響力の大きいCOPのために私たちはスコットランドに集う。グラスゴーにおける太平洋諸国の任務は明確だ。「1.5度目標」を保つということである。
そのためには、2050年までの排出ゼロへの道に大部分の国を乗せる、2030年までの大幅削減を私たちは求めている。
こうした公約と政策パッケージにCOP26の場で同意する用意のない指導者たちは、グラスゴーへの航空便を予約すべきではない。その代わり、彼ら、そして彼らが代表している利己的な利益は、彼らが地球に向けて解き放っているものの厳しさに見合うだけの結果に直面することになるだろう。
私たちは国家間の戦争を容認しない。とすれば、地球や、地球が支えている命、将来世代に対する戦争をなぜ容認できようか? それこそが、太平洋諸国がグラスゴーで譲れない一線だ。排出ゼロ、言い訳ゼロを私たちは要求する。
COP26では、「北」の先進国は、気候関連資金として年間1000億ドル提供するという目標を履行し、2025年以降は少なくとも7500億ドルまで増額する公約に合意すべきだ。
ミサイルやドローン、潜水艦に多額のお金をかけることができるのならば、気候アクションへの資金も出せるはずだ。脆弱な立場にある太平洋小島嶼開発途上国は、自分たちが原因を作り出したのではないにも関わらず、生存を脅かす危機から自らを守るために気候関連金融を利用しようとしても、僅か0.05%しか利用できないというのは犯罪的な現実だ。
それが、私たちが直面している難題であり、それに正面から立ち向かう勇気を持たねばならない。それを避けることの帰結は、考えもつかないことだ。(原文へ)
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【ニューヨークIDN=フランク・クウォヌ】
国連小型武器行動計画第7回隔年会合(7/26~30)の議長を務めたキマニ・ケニア国連常駐代表のインタビュー記事(INPSの提携メディアAfrica Renewal)今次会合では、採択から20年の節目を迎えた国連小型武器行動計画について、これまでの成果を振り返ると共に、小型武器の非合法取引や流用により引き続き深刻な被害が起きている現状や、新技術を駆使して製造される小型武器に関する取組の必要性が確認され、国際社会が、世界、地域、国家の各レベルにおいてこれらの課題に取り組んでいくとのコミットメントを含む成果文書が採択された。(原文へ)
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【Global Outlook=ハルバート・ウルフ】
バイデン政権による最近の外交・安全保障政策上の孤独な決定は、EUにとって何を意味するのか? パリでは当惑と苛立ち。ブリュッセルは狼狽し、ベルリンでは、山積みの疑問があり答えがない。
バイデン政権が数週間の間に一方的に下した外交・安全保障政策上の二つの決定に、欧州諸国は途方に暮れている。ドナルド・トランプが米大統領の座から退いて以来、欧米関係のトーンのみが変化し、「アメリカ・ファースト」政策の本質は変わっていないのだろうか?(原文へ 日・英)
バイデン米大統領は、突然のアフガニスタンからの米軍撤退に際し連合同盟国、特にNATOに対して既成事実を示した。「戦争を終わらせるべき時だった」と述べるのみで、ジョー・バイデンは同盟国と協議もせず、トランプとタリバンの取り決めを実行したのである。カブールに駐留していたフランス、英国、ドイツ、および他の多くの国は、この劇的かつ無計画な本国送還作戦によって、選択の余地なく急いで準備を行い、自国の兵士やその他の人員、数千人のアフガニスタン人従業員を本国に送ったが、決して全員というわけにはいかなかった。ポケットの中でこぶしを握りしめながら、欧州諸国は米国の政策を受け入れ、それに従うしかなかった。
2021年9月半ば、次の孤独な決定が下された。米国は、太平洋地域におけるオーストラリアおよび英国との新たな同盟(AUKUS、3カ国の名称の頭文字)を発表し、同時に、原子力潜水艦8隻をオーストラリアに輸出することも発表した。この大規模な武器輸出取引が、どれほどの驚きと怒りを引き起こしたことか。すでに5年前、フランスはディーゼル式の潜水艦12隻をオーストラリアに供給する契約上の合意を結んでいた。660億米ドルの確かな契約に基づいてすでに開始されていた生産プロセスは、いまや水泡に帰した。このAUKUS締結と武器の提供は、世界的な武器移転をめぐる激しい競争の表れであり、同時に中国に対し、インド太平洋地域で好き勝手にはさせないという明確なシグナルである。しかし、恐らく近いうちに中国の反応は見られるだろう。
フランスは、米国とオーストラリアの行動を「同盟国やパートナーの間では受け入れられない」と非難した。米国の決定に抗議して、フランス政府は協議のためワシントンとキャンベラから大使をパリに召還した。1778年から続く米国とフランスの同盟関係の歴史において、大使の召還は初めてのことであった。通常の外交慣行を無視し、パリは、米国の決定は「野蛮」であり、オーストラリアの行動は「背後から刺すようなもの」だと評した。フランスの大手日刊紙『ル・モンド』は、社説で「この点について、バイデン政権がトランプ政権と何ら変わらないことをまだ疑っている人へ。戦略であれ、経済であれ、財政であれ、衛生分野であれ、米国が最優先なのだ。『アメリカ・ファースト』が、ホワイトハウスの外交政策のガイドラインなのである」と論じた。
ブリュッセルでも警報ベルが鳴っている。EUのジョセップ・ボレル外務・安全保障政策上級代表は、フランスの苛立ちに理解を示し、「他国と同様に、われわれも自国の存続を重視しなければならない」と述べた。潜水艦の取り引きも、アフガニスタンからの急な撤退も、エマニュエル・マクロン仏大統領の米国への不信感という物語を増幅させている。マクロンは長年、欧州の戦略的自律を訴えているのだ。
事前にAUKUSについて知らされていなかったEUは、9月16日、米国がフランスとEUを冒涜したのとほぼ同時に、「インド太平洋戦略」を発表した。このEUの戦略は、太平洋地域の国々に対して、EUがこの地域における経済的および政治的利益を重要視していることを示すものである。また、中国と米国に対しては、EUは米国のような強硬な反中路線に追随するものではないが、かといって等距離路線を取りたいわけでもないということを示している。欧米関係は、依然として優先事項である。安全保障と防衛は、太平洋地域におけるEUの7つの優先事項の一つである。
EUとその加盟国は、米国の一方的な決定を受けて、また、欧州諸国の意見や利益をワシントンが明確に軽視するのを受けて、どのように対応するべきだろうか?
選択肢は三つある。第1は、フランスの立場である。欧州は「ハードパワー」への投資を強化し、軍事的にも安全保障政策においても自分の足で立つべきである。それには、多額の財務資源が必要になる。現行の防衛予算の水準でも、NATOの目標であるGDPの2%の防衛費でも、米国、ロシア、中国に対して欧州が戦略的自律を実際に達成するには不十分である。全ての欧州諸国の政府が防衛費を大幅に引き上げる用意があるかについては疑問がある。さらに、政治的にも多くのハードルを乗り越えなければならない。全てのEU加盟国、特に東欧諸国が欧州の戦略的自律を確信しているわけではない。彼らは依然として、米国が中心にいるNATOが何よりも自国の安全保障を守っていると考えている。
第2の選択肢は、過去と同じやり方を続けていく現状維持の道である。それは、フランスの論調を大幅にトーンダウンしたものといえる。何十年も前から、欧州軍によって安全保障を欧州化する必要性が叫ばれてきた。しかし、これまでのところ、個別の軍備計画や大袈裟な政治声明といった極めてわずかな進捗しか見られていない。また、それは不十分でもある。アフガニスタンでの大失態の後、EUの外交責任者ジョセップ・ボレルは、EUの即応部隊の設立を訴えた。これは、いわゆる「戦闘群」という形でかなり前からあることはあるが、EU内に政治的コンセンサスがないため、展開されたことはない。今後も恐らく、意思決定はこれまでの長々とした妥協のプロセスに沿ったものとなるだろう。つまり、フランスによる圧力やそれに呼応するEU委員会の野心にもかかわらず、一進一退を繰り返しながら軍事政策強化を目指す、骨の折れる道筋ということである。
第3の選択肢は、平和プロジェクトとしてのEUへの回帰である。2012年、EUは、欧州の平和維持における重要な要素であるという理由で、ノーベル平和賞を授与された。EUは、世界の他の紛争地域に対する啓発的な手本になろうとした。この気概は、今日もはや感じられない。むしろ、EUは地政学の復興、特に米中の競争に何とかついていこうとしているが、これまでのところうまくいっていない。例えば、近頃の事例として、ドイツのフリゲート艦をインド太平洋地域に派遣することに何の意味があるだろうか? 中国に対する武力の誇示として、旗の掲揚は完全に的外れである。中国政府は、確かに、それを友好の証とも協調の意志とも考えないだろう。
EUは、「ハードパワー」による軍事中心の地政学的競争を断念し、代わりに、その文民的特性、「ソフトパワー」を頼みとするほうが理にかなっているだろう。平和的な紛争解決を明確に志向した政策によって、EUは、冷戦を思い起こさせる現在の再軍備計画に代わる存在になり得るだろう。
ハルバート・ウルフは、国際関係学教授でボン国際軍民転換センター(BICC)元所長。2002年から2007年まで国連開発計画(UNDP)平壌事務所の軍縮問題担当チーフ・テクニカル・アドバイザーを務め、数回にわたり北朝鮮を訪問した。現在は、BICCのシニアフェロー、ドイツのデュースブルグ・エッセン大学の開発平和研究所(INEF:Institut für Entwicklung und Frieden)非常勤上級研究員、ニュージーランドのオタゴ大学・国立平和紛争研究所(NCPACS)研究員を兼務している。SIPRIの科学評議会およびドイツ・マールブルク大学の紛争研究センターでも勤務している。
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【ニューデリーIDN=M.B.ジェイン】
アフガニスタンの支配権を再び掌握したタリバンへの支援を通じて、米軍撤退後の「力の空白」を埋めようとする中国の地政学的狙いと動向・課題を分析したB.Mジェインによる視点。国際社会から孤立し、政府資産凍結、援助資金停止で財政危機に直面しているタリバン政権は、国連やG20を通じてアフガン支援を訴え、自らも援助・投資・インフラ開発支援に乗り出す構えの中国を「最重要のパートナー」「最も信頼できる友人」と称賛。中国にとって安定したアフガニスタンは、①イスラム原理主義の中国(新疆ウイグル自治区)への浸透阻止、②アフガニスタンの鉱物資源開発、③一帯一路(中パ経済回廊)の安定・拡大にとって不可欠だが、同時にこの地政学的要地に利害関係を持つロシア、イラン、インド等の国々との慎重な調整が課題となる。(原文へ)
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この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。
【Global Outlook=サビラ・コエーリョ/クリストファー・イー】
2021年6月、太平洋気候変動移住と人間の安全保障(Pacific Climate Change Migration and Human Security: PCCMHS)プログラムは、気候関連の移住に関する地域市民社会協議会を開催した。このオンライン協議会は、国際移住機関(IOM)が計画したもので、太平洋全域の市民社会の代表者が気候変動に関連した移住、立ち退き、計画移転が人間の安全保障にもたらす影響を検討し、コミュニティーに及ぼす影響について経験を共有し、地域に根差した解決策の策定に向けて話し合う機会を提供した。(原文へ 日・英)
太平洋地域の8カ国から40名以上の出席者が、連帯感を持ってバーチャルで集い、気候関連の移住への対策を支援するプロセスについて議論した。協議会には、太平洋各地の地域団体、学識者、宗教組織、若き気候活動家、LGBTIQアドヴォケイト(擁護者)などが参加した。
PCCMHSプログラムの主要目標は、国主導の地域対策を策定する際に市民社会の視点を取り入れることであり、また、市民社会協議会は、太平洋地域における気候関連の移住傾向に対する共通の理解と、共通のアプローチを醸成することも目指している。
ソロモン・カンタIOMフィジー事務所長は、この協議会は「太平洋における気候関連の移住の傾向について詳しく検証し、法律や政策の主なギャップがどこにあるかを理解し、政策立案者と政府が何を考慮するべきかを話し合い、気候変動の影響により移住を余儀なくされる全ての太平洋諸島民の権利を守るために、地域レベルの今後の適切な保護の道筋を模索する機会」になるだろうと述べた。
協議会の1日目は、気候関連の移住の影響を受けているコミュニティーが共通して経験していることを取り上げた。太平洋の視点から明らかになったことは、移転したコミュニティーの社会的・文化的な基礎構造を守る必要があること、それとともに、今後移住を余儀なくされる家族のために先祖代々の土地、言語、権利を守る必要があることである。この点が改めて非常に強調され、多くの参加者が気候関連の移住という状況で生じる計り知れない「非経済的損失」について語った。
市民社会活動家のなかでも強力な太平洋的なリーダーシップを発揮したPacificWinのペフィ・キンギは、「安全な道筋を作り、人権を擁護し、将来世代のために文化的アイデンティティーの保全に重点を置く地域的枠組み」を策定する必要があることを、感情をあらわにして訴えた。
第2セッションでは、参加者は、気候関連の移住をめぐる状況において、どこに法律や政策の主なギャップがあるかの全体像を提示されたうえで、人権に基づく解決策について検討を行った。
最後に、2日目の協議では、市民社会のメンバーが政府職員や政策立案者に向けた主な提言やメッセージを策定する時間を設けた。その後、太平洋地域における気候関連の移住の問題を強く訴えるために用い得るさまざまな道筋を模索するうえで、市民社会組織(CSO)が果たす役割について議論を行った。
気候変動と戦う太平洋諸島の学生たち(Pacific Island Students Fighting Climate Change: PISFCC)で活動するソロモン・イェオとアティナ・シュッツは、政策策定に若者が関与する必要があることを力強く訴えた。なぜなら、現在、太平洋地域人口の大多数は若者であり、気候関連の移住に対応する共同の努力に付加価値をもたらす大きな可能性を持っているからである。
今回の協議で明らかになったことは、どのコミュニティーも置き去りにしないために、気候関連の移住に対する地域の連帯が必要だという点である。参加者が口々に訴えたもう一つのメッセージは、移住以外の選択肢がないコミュニティーに安全な移住経路を確保し、コミュニティーの人権を擁護し、文化的アイデンティティーを守り尊重することによって太平洋地域における気候関連の移住の問題に取り組むためには、地域的な枠組みが必要だということである。
また、PCCMHSプログラムは、ナウル、フィジー、トンガ、ツバル、バヌアツにおいて各国の協議も開催しており、気候関連の移住をめぐるもっかの力強い動きは続いている。これらの協議会には、主要な政府高官、市民社会の代表者、コミュニティーリーダー、利害関係者が出席した。
プログラムの重要な要素は、太平洋諸国の政府が気候変動により立ち退きや移住のリスクにさらされたり移転したりするコミュニティーに対する保護の欠落に対処するため、必要な地域的対応策を明らかにできるよう支援することである。したがって、今回の協議と13の太平洋諸国で開催された国家協議の成果は、気候関連の移住に対する国主導の地域対策の策定に有益となるだろう。
サビラ・コエーリョは現在、IOMフィジー事務所のプログラムマネージャーとして3年間にわたる共同プログラム「太平洋気候変動移住と人間の安全保障プログラム」に従事している。それ以前は、IOMアジア太平洋地域事務所の地域移民・環境・気候変動担当オフィサー(Regional Migration Environment and Climate Change Officer)を6年間務めた。その間に、モンゴル、バングラデシュ、ネパール、モルジブ、カンボジア、ベトナム、太平洋地域におけるIOMミッションに技術的な支援を提供した。
クリストファー・イーは現在、「太平洋気候変動移住と人間の安全保障プログラム」のプログラムスペシャリストを務めている。
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【アルマトイIDN= アカス・タズトフ 】
中央アジアのカザフスタンが、アフガニスタンへの国連人道支援拠点をアルマトイに提供しているほか、タリバンによる政権奪取後も引き続き同国への安定と経済復興に積極的に関与している背景を分析したアカス・タズトフ氏(政治アナリスト)による視点。アフガン情勢の安定と復興に重大な関心が向けられる理由には、難民・麻薬・イスラム過激派の中央アジアへの流入を抑えたいという利害関係のほかに、以下の要因がある。①アフガニスタンがカザフ産穀物の最大輸出先(全体の50%に当たる300~350万トン)であること。②ウズベキスタンをアフガニスタン経由でパキスタンに繋ぐ鉄道網建設計画。これにより、中央アジアと南アジア市場が連結するほか、アラビア海経由でカザフ製品を世界に輸出することが可能となる③トルクメニスタンからアフガニスタン経由でインドまで繋ぐ天然ガスパイプライン建設計画。(原文へ)
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【バンコクIDN=パッタマ・ビライラート】
タイの有名な観光産業は、伝統的なマッサージ店と治療センターのイメージと結びついている。しかし、新型コロナウィルス感染症の蔓延に伴う都市封鎖(ロックダウン)措置により、観光産業は深刻な打撃を受け、海外資本に乗っ取られるリスクが浮上している。長引くロックダウン措置で、スパやマッサージ業界は厳しい影響を受けている。
「タイ・スパ協会」のクロッド・ロジャナスチャン会長は、現地紙『マネージャー』の取材に答えて、観光がほとんど止まってしまった昨年のコロナ第一波以来、80%以上のスパやタイ古式マッサージ店がロックダウン措置に伴って閉店し、20万人以上の職が失われたとしている。
ラチャニーさんは2人の娘を持つシングルマザーだ。バンコク中心部のプラトゥーナム地区にあるスパの店長である。コロナ禍以前は、固定月給1000ドルに加えて、外国人観光客需要にマッサージ師が足らないときは自らもマッサージを提供して収入を得ていた。
ラチャニーさんはIDNの取材に対して、「店舗が閉鎖してしまい、人生がひっくり返ってしまいました。2020年初めから閉店状態が続いています。2波目の末期には地元住民相手のマッサージやスパ営業が許可されましたが、生活は好転しませんでした。」と語った。
彼女のスパの主な顧客は、マレーシア・シンガポール・インドからの観光客である。タイに海外からの観光客が来なくなって、彼女のスパは閉店になったままだ。彼女は自分のキャリアを変更し、大好きだった仕事を離れざるを得なくなった。バンコクの郊外に借りているアパート近くの歩道に設置した屋台で焼豚を売る生活を強いられている。政府の景気刺激による手当受給を待っているが、まだ受け取れていない。
タイ古式マッサージは世界各地で人気を集めている。タイでは2500~7000年もマッサージが行われてきたと考えられている。タイ古式マッサージはヨガとタイ伝統医療を組み合わせるという独自のもので、人間の体内におけるエネルギーの流れに作用する。タイ古式マッサージのもう一つの特徴は、マッサージの間に、客は診療台の上ではなく床に寝そべり、服を完全に着た状態で行う点だ。
タイ古式マッサージ(ヌアッド・タイ)は、タイの伝統的な医療の技芸・科学・文化の一部だと考えられており、2019年にはユネスコの「無形文化遺産」のリストに掲載された。
2019年、タイ観光業の収入は620億ドルに上った。そのうち、スパ・マッサージ業界は9億ドルを稼ぎ出し、年の成長率は8%を記録している。「グローバルウェルネス研究所」は、タイの保健・健康ツーリズムは毎年1250万人の観光客を招き寄せていると推計する。タイ政府は同国を「アジアのスパ首都」として推す政策を採っている。現在、タイ全土にスパ・マッサージ店が8600軒以上あるが、このうちどれだけがコロナ禍を生き延びることができるかが大きな課題になっている。
最初のロックダウンの間、一部のタイ国籍の小店主らに対して、3カ月間で5000バーツ(約150ドル)の補助金を支給された。しかし、タイのスパの多くは外国人経営だ。
スパ・マッサージ業界へのコロナ禍の影響を見るには、いつもは観光客でごった返しているバンコクの有名なショッピング街に隣接したプラトゥーナム地区に行ってみるとよい。2020年の第一四半期にタイを襲ったコロナ第一波によって、ほとんどの店がシャッターを閉めてしまった。
状況をまとめると次のような具合になる。
小規模店や地元民が経営するマッサージ店は、出張マッサージを行ったり、一時的に別業種に移って急場を凌いできた。長引くロックダウンにしびれを切らした一部のマッサージ・スパ店主らは、今年8月にタイ政府を提訴し、2億バーツ(590万ドル)の賠償を要求している。政府は業界の生き残りについて無策であったから、というのが彼らの訴えだ。
ロジャナスチャン会長は最近の『ビズニュース』誌のインタビューで、ほとんどの地元民の店主は現在の危機を生き延びることはできず、巨大な資本を抱えた中国人経営者にスパの経営を乗っ取られてしまうだろうと答えている。すでに、中国人がタイ式マッサージを習い始めている事例があるという。
スパ業界の生き残りをかけて、政府は9月1日からの営業再開を許可したが、顧客はタイ国民に限られている。プラトゥーナム近くのマッカサンでマッサージ師を務めるスカイさんは、自分の主要な顧客は、プラトゥーナム地区にインド・マレーシア・シンガポールから買い物に来る外国人観光客だと話す。「私は12年もマッサージ師をしていて、コロナの前には月500ドル稼いでいました。」
外国人観光客を途絶えたコロナ感染の第3波の間、彼女はタイ北東部の故郷に戻ることも、別の仕事に移ることもしなかった。タイ人経営者が住居と食事をスタッフに提供してくれていたため、店にとどまったのだ。コロナのために仕事を失った人々に支給される政府からの手当に依存してきた。時には、金融業者からお金を借りる必要もあった。「今月からマッサージができるようになったが、一日当たりの客数は少ない。タイ国民自身がコロナ禍で収入が減っているのだから、需要は低下している。故郷の村に戻らないといけないかもしれない。」と彼女は悲しげに語った。
ウェスダさんは、バンコクの主要なショッピング地区にあるインドラホテルの向かいに小さなマッサージ店を構えている。主な顧客は、韓国・日本・オーストラリア・シンガポール・マレーシア・ベトナム・インドからの観光客だ。コロナ禍以前、月収は約3000ドルだった。3度のロックダウンの間、初めは、プラトゥーナム地区に住むベトナム人のためのタイ語通訳をして凌いだ。しかし、2度目、3度目の時には、顧客のベトナム人たちは帰郷してしまっていた。
「私の店には以前、常勤7人、パート10人、計17人のマッサージ師がいましたが、コロナが発生してからは、ほとんどが故郷に帰ってしまいました。今はパートが3人しかいません。ビジネスはひどい影響をうけたが、家賃を月に2万5000バーツ(740ドル)も毎月支払わなくてはなりません。これでも、大家さんからは電気代・水道代とともに、家賃を5割減額してもらっているのですよ。」
ロックダウンが実施されてから、タイ政府は、経営者やタイ国民に金銭的支援を行うための景気刺激策を実行した。スパ・マッサージ店は、真っ先に閉店を命じられた業種のひとつである。残念ながら、彼らは政府から手当を受け取ることはなかった。ただ、社会保障法119号第39条・40条の下で登録されている労働者だけが、5000バーツ(150ドル)を受け取ることができた。
ウェスダさんは、生活費に貯蓄を使い果たし、高利貸しからも借りざるを得ないストレスから自暴自棄になりかけていた。幸運なことに、6月のある日、バンコクから70キロ離れたナコンパトム州に夫が車で連れて行ってくれた。そこで彼女は、トンネルの出口を見出したのだ。ナコンパトムでココナッツを買い入れて、マッサージ店の外で売り始めたのである。1日の利益は340バーツ(10ドル)だが、それでも「何もないよりはいい」と彼女は話す。
9月1日に営業再開してからは、地元の人々に足マッサージを提供することができるようになった。「これで生活費を賄えるだけの利益を得られるわけではありません。タイが再び外国人観光客に国境を開いて初めて、私たちは救われるのです。」と、ウェスダさんは期待を込めて語った。(原文へ)
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This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.
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|視点|新型コロナウィルスで悪化する東南アジアの人権状況(チャンパ・パテル王立国際問題研究所アジア太平洋プログラム代表)