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「世界と議会」2020年春夏号(第585号)

特集:議会政治の父・尾崎行雄生65年の集い

◇記念講演「議会政治の未来」/大島理森
◇記念スピーチ「咢堂精神の普及活動、25年を振り返って」/土井孝子

■特別寄稿「考憲」のススメ/中村一夫

■歴史資料から見た尾崎行雄
 第3回「尾崎行雄と武藤山治-尾崎行雄宛武藤山治書簡」/高島笙

■INPS JAPAN
 国連事務総長、誤った議論や嘘を正すべきと熱心に訴える

■連載『尾崎行雄伝』
 第十五章 桂と西園寺

「咢堂ブックオブザイヤー2019」選考結果

1961年創刊の「世界と議会では、国の内外を問わず、政治、経済、社会、教育などの問題を取り上げ、特に議会政治の在り方や、
日本と世界の将来像に鋭く迫ります。また、海外からの意見や有権者・政治家の声なども掲載しています。
最新号およびバックナンバーのお求めについては財団事務局までお問い合わせください。

|カメルーン|中央アフリカで最後の手つかずの熱帯雨林の保護を決める

【ニューヨークIDN=リサ・ヴィヴェス】

カメルーンから、地域の先住民や自然保護団体、科学者らの運動により政府による伐採計画が撤回され、エボ森林(何百種もの希少な動植物の宝庫で、中央アフリカで最後の手つかずの熱帯雨林)の生物多様性が守られたことを報じた記事。(原文へ

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|カメルーン|SMSで母子の命を救う

|創立100周年|カズインフォルムは歴史の証人

【ヌルスルタンKAZINFORM=ラメシュ・ジャウラ】

中央アジア最大の国際通信社でインデプスニュースのパートナーメディアである「カズインフォルムが8月13日に創立100周年を迎え、カザフスタン政府をはじめ、ロシアのタス通信、中国の新華社通信、日本の共同通信、イタリアのアンサ通信等、世界各国の提携メディアからメッセージが寄せられた。カズインフォルムが掲載した当通信社編集長ラメシュ・ジャウラからのメッセージの日本語翻訳版を配信します。

「国際通信社カズインフォルムのご友人・パートナーの皆様!(新型コロナウィルス感染拡大の影響で)オンライン形式のご挨拶となりましたが、皆さんとカズインフォルムの創立100周年を共に祝えることを大変嬉しく思っています。貴通信社にとりまして、次の100年も一層実りあるものとなりますよう心よりお祈り申し上げます。」

「100年という月日は、人の一生としても、また組織の活動の歴史としても実に長い時間軸です。カズインフォルムは、本拠地があるカザフスタン同様、第一次世界大戦後に顕在化してきた歴史の生き証人であり続けてきました。カザフスタンは1920年にソビエト連邦の構成下で自治共和国となり、16年後の1936年に正式にソ連構成国カザフ・ソビエト社会主義共和国に昇格しました。」

「第二次世界大戦後の1949年には、カザフスタン東部のセミパラチンスク核実験場でソ連による初の核実験が行われました。1961年にはカザフスタン南部のバイコヌール宇宙基地からソ連発の有人宇宙船が打ち上げられました。そして1991年8月には、ヌルスルタン・ナザルバエフ初代大統領が大胆かつ歴史的な行動を起こし、セミパラチンスク核実験場の閉鎖を命じる大統領令に署名しました。以来、カザフスタンとカズインフォルムは、「核兵器を含む大量破壊兵器なき世界」の構築に向けて貢献するなど、世界平和と安全保障を推進するリーダーであり続けています。こうしたカザフスタンの貢献については、当通信社が近年カザフスタンでの取材を重ねる中で確信するに至りました。私はこうしたカザフスタン訪問の中で、アスカール・ウマロフ理事長をはじめカズインフォルムのご同僚の方々とお会いする機会がありました。」

「今日、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大や核軍拡競争の再燃が、世界平和と人間の安全保障にとって脅威となっています。私たちメディア関係者は、距離の制約を克服しながら信頼できる情報提供に努め、20世紀の世界が大きな犠牲を払った壊滅的な状況の再来を防ぐために、あらゆる努力を傾倒していかなくてはなりません。」(原文へ)(カザフ語版

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国連ハイレベル会合、CTBT早期発効を訴え

|視点|トランプ大統領とコットン上院議員は核実験に踏み出せば想定外の難題に直面するだろう(ロバート・ケリー元ロスアラモス国立研究所核兵器アナリスト・IAEA査察官)

米国が近い将来の核実験の実施を検討していると囁かれている。米上院に提出された法案を見れば、それが単なる口先だけの脅しでないことが見て取れる。最近の修正案の文言には「必要ならば核実験の実施に要する時間を短縮することに関連した事業を行う」となっている。こうした脅しは、この種の動きが政治的、技術的に引き起こす困難について、まったく理解を欠いているとしか言いようがない。

核実験が必要と見なされる可能性があるとすれば、備蓄核兵器に解決すべき問題があるか、新システムの開発を迫られている場合だろう。そうでなければ、敵を脅し、核拡散を勧奨し、軍備競争を再び煽る政治的な威嚇になってしまう。

包括的核実験禁止条約(CTBT)は未だに発効していない。米国は署名したが未批准のままだ。他にも批准を済ませていない国々があり、CTBTは長らく無視された状態にある。しかし、1990年代中盤以来、核兵器5大国は自発的に核実験停止を続けている。CTBTを実際に発効させるよりは、この状況を無期限に続けることが望ましいと考えているかのようだ。

他の4核保有国(英国・フランス・ロシア・中国)は、緩い意味で非公式の核実験停止を守っている。ただ、世界で唯一、北朝鮮だけは21世紀に入ってから6回の核実験を行っている。

実際の核実験は、単なる「テスト」ではない。それは、極めて複雑な核の実験なのだ。単に大爆発を起こして優越性を主張するための政治的なショーでないのであれば、準備に数年の期間と数百万ドルの費用がかかる。核実験とは、科学の名においてなされるものだ。

科学的実験を嫌悪しているトランプ政権の姿勢を考慮すると、同政権が核実験に関心を示していることは皮肉と言えよう。核実験を実施すればするほど問題が起きることは歴史が証明している。複雑な核実験を行うには、数百人の熟練労働者と技術者、それに、安全保障や広報いった部門からの支援が必要だ。

もし米国がそうした措置を取ることを決めるならば、まずは、何の実験をするかを決めなくてはならない。米国には、2つの優秀な核兵器研究所がある。それぞれが、米国の核備蓄の半分ずつを担当しており、実験をするとすれば、いずれかの研究所にある「永続的貯蔵弾頭」から核爆発装置を造ることになるだろう。

備蓄核兵器に何か問題があるとは報告されていない。だとすれば、核実験の再開は、2つの研究所と米政府との間で競合する利害関心の問題を解決し、理由をこじつけるものとなるだろう。米エネルギー省が、実験の遂行も含め備蓄核兵器の維持に完全な責任を負っている事実は、見過ごされやすい。

ICAN
ICAN

国防総省は軍務遂行のために核兵器の管理責任を負っているに過ぎない。2つの省庁と米議会は、実験をするとすればそれは何の実験なのかを明確にする必要が出てくる。エネルギー省ではなく国防総省に1000万ドルの予算を追加するという上院の動きは、この基本的な組織構造に関する無知をさらけだしている。

永続的貯蔵弾頭の大半の爆発力は150キロトンを超える。これは新たな問題を引き起こす。米国は、地下核実験における最大核出力を150キロトンに制限する地下核実験制限条約(TTBT)を締結しているからだ。

米国の備蓄核兵器の大多数は、もし100%の爆発力で実験しようとするならば、150キロトンを超えてしまう。非公式の合意から離脱するのとは異なり、これは批准した条約に実際に違反してしまうことを意味する。

核実験の再開に備えることが、すでに米国の優先事項になっている。エネルギー省は、1993年の大統領決定指令(PPD)15号によって核実験を実施する能力を維持することが義務づけられている。毎年数千万ドルが、かつてネバダ核実験場と呼ばれた「ネバダ国家安全保障施設」を運用する業者に支払われている。

私は1990年代末、この核実験場を運営する管理チームの一員であり、24~36ヶ月以内に核実験を行う能力を維持することが任務であった。例えば、物理的な準備として、砂漠における実験用坑道の設置、核装置を地下で接続する機器とケーブルの設置、国立研究所が核装置を設置し爆発させるのを支援するための考えうる限りあらゆる作業が挙げられる。

Nevada Test Site, Area 6. Control Point./ Public Domain

当時最も重大なステップの1つは、厳密に封印された実験用坑道深くに核装置を据えることで、放射能漏れを防ぐようにすることであった。この点に関する技術については相当の経験があるにもかかわらず、国立研究所は放射能漏れゼロの達成に常に成功してきたわけではない。この問題点は、冷戦期の思考であれば、必要なコストとして容認されただろうが、2020年代には認められないであろう。

1970年の地下核実験「ベインベリー」は実験用坑道を吹き飛ばし、放射性物質を含んだ大量の塵を噴出させた。ネバダ核実験場から発生したこの放射能雲は、共和党の地盤である東方の地域に流れていった。風下に住む有権者らが、1960年代や1970年代と同じように、2020年代においても放射性降下物を引き受けるモルモットの地位に甘んじるだろうか。

トランプ政権は、数億ドル規模の巨大プロジェクトを決まった予算とスケジュールの範囲に収めることができないという、米エネルギー省のこれまでの経歴を考慮に入れていない。

核実験を行う日が発表されたその日から、遅延とコスト増は始まる。もしエネルギー省が期限を守ろうとして手順を飛ばすなら、大惨事が起きかねない。でなければ、新政権が2024年に誕生するまでに実験が再開されることはありそうもない。

1997年当時、経験豊かな科学者・技術者・地質学者のチームをもってしても、24~36ヶ月の準備期間で核実験を実施することは楽観的過ぎると感じていた。ましてや当時と異なり、21世紀の今なら核実験に対する市民(とりわけ、核実験が1963年に地下に移行する以前にネバダ実験場で行われた地上実験で多くの犠牲者を出したユタ州の「風下住民」達)から起こるであろう抗議も考慮に入れなければならない。

ネバダ実験場の入口には隔離された2つの留置所がある。反核実験デモを防ぐ目的で1990年代に設置されたものだ。21世紀の今、これらの施設は大幅に拡張し、警備員も増やす必要があるだろう。

実験は多国間協力も促進しうる。米国は、英国がオーストラリアの核実験場を失ってから、同国のための実験も行ってきた。フランスとの緊密な協力もある。イスラエルの科学者に、同国の装置を実験させるか、あるいは米国の実験への参加を認める可能性もあるが、これは今日の米国の外交政策とも整合している。

思慮を欠いたトランプ政権には別の方策もある。同政権は1963年の部分的核実験禁止条約に意図的に違反するかもしれない。同条約は、大気圏内・宇宙空間及び水中における核爆発を禁じている。

地下核実験制限条約やCTBTの非公式な遵守に違反することを厭わない米政権にとって、大気圏内核実験を行うという選択も些細な無分別に過ぎない。もし核実験を実施する目的が純粋に政治的なものならば、カメラの前で分かりやすく爆発を起こして見せることはプラスになるだろう。飛行機から核爆弾を投下するか、太平洋の真ん中でミサイル実験か爆発実験を行えば、非常に目立つ。環境への被害は機密扱いされるだろうが、こうした核実験は世界のマスコミに取り上げられるだろう。

実験がどのような形で行われたとしても、それは他国に攻撃力を印象付けて威嚇するように仕組まれた政治的な発言に他ならない。もし実験内容が、本当の意味で、兵器が抱える深刻な問題を検証したり新兵器を開発したりするためのものならば、政治家らは、科学者らが既に知っていることを知らなくてはならない。

Radioactive materials were accidentally released from the 1970 Baneberry shot in Area 8./ Public Domain

実験と試験は時として、予期した結果を生まない場合がある。仮に実際の核実験を手掛けたことがないアマチュアによる実験をオブザーバーに観察させて、何も起こらなかったらどうなるか。あるいは、爆発力が予想を超えたために、隣接する州やより広範な地域に放射性降下物が拡散する事態になったらどのような反応が起こるか想像してほしい。

トランプ大統領には他にも決まりの悪い難題が待ち受けている。核実験を実施すると大統領が発表した途端に、実際にそれを実行するまでには数年かかることに気づくことになるのだ。しかもこの決定は同時に、ロシアや中国に対しても、同じように核実験を行う自由を与えることになる。民主主義や環境という制約に縛られない両国の場合、科学者に対して予定を繰り上げて実験を行うよう要求できるだろう。プーチン大統領や習国家主席がこうした核実験競争でトランプ大統領を打ち負かす事態を想像してほしい。

トランプ政権は、その任期を通じて、軍備管理協定を積極的に破棄してきた。中距離核戦力(INF)全廃条約新戦略兵器削減条約(新START)、領空開放(オープンスカイ)条約からの脱退には一つの共通点がある。短期的には、見た目に何の変化もないということだ。査察や委員会の会合、協力的なやり取りの終了が、戦争のリスクの拡大と予算の縮小とあいまっても、一般市民の目には見えない。市民が気づくような形で近い将来に何かが変わるということはない。

しかし、自発的な核実験停止から離脱するとなると、そうはいかない。事態は大きく展開することになるだろう。実際に核実験を行うには、数億ドルの予算を確保し、支出しなくてはならない。また、多くの科学者や技術者を新たに雇い、28年間も実行されてこなかった複雑な実験を行うことになる。

一方、政治的な効果を持たせるには、実験について広く宣伝がなされねばならない。そうでなければ意味がない。しかし核実験を強行すれば、大規模な抗議活動やデモ、活動家による核実験場への侵入、逮捕を誘発する反対運動が目に見えて高まるだろう。この場合、市民の目から遠く離れたところで、旧来の義務からそっと離脱するのとはわけが違う。核実験の実施は、極めて高くつき、大きな注目を浴びる一方で世論の分断を招くこととなる。

核実験の実行は極めて複雑なプロセスであり、実行までには紆余曲折がある。この力技を唱える政治家らは、自分たちがどんな世界に足を踏み込もうとしているのかを理解していない。外交の世界と包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)準備委員会では、核実験に反対する議論が多く起こされることになるだろう。

ICAN
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レーガン政権とブッシュ政権が英知と抑制を見せて以来、世界をより安全にしてきた軍備管理協定を毀損するという点から、核実験には反対論が噴出することだろう。トランプ政権は、科学的な利点が実質ゼロであるにも関わらず、はっきりと目に見える失敗の可能性が表面下に潜んでいるような下り坂を滑り落ちようとしている。

もちろん、核実験の再開は、とりわけ5つの核兵器国の思慮深く経験豊富な外交官たちが30年近くにわたって瓶の中に封じ込めてきた「魔神」を解き放つことになる。核実験の再開は、非常に高くつく行為であり、「核の平和」を維持する観点からは不毛な試みであり、使用可能な核兵器が戦場に戻ってきたことを明確に示すものとなる。軍備管理にとっての悲しい日がまたやってくることになる。(原文へ) 

※著者のロバート・ケリーは、米エネルギー省勤務時代、国際原子力機関(IAEA)に派遣され、1992年と2001年の2度にわたってイラクの核査察を陣頭指揮した。現在はウィーン在住。20カ国以上で任務を果たしてきた。

INPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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国連事務総長、誤った議論や嘘を正すべきと熱心に訴える

【ニューヨークIDN=ジャヤ・ラマチャンドラン】

国連のアントニオ・グテーレス事務総長が、とりわけ世界の貧しい人々に対して投げかけられている「誤った議論や嘘」を厳しく批判する異例の行動に出た。新型コロナウィルス感染症の拡大は、あらゆる嘘を白日の下に晒している。例えば、自由市場が全ての人に医療を提供できるという嘘、 無給の介護はうまくいかないという虚構、私たちは人種差別が解消された後の世界に住んでいるという妄想、だれもが同じ船に乗っているという神話である。

グテーレス事務総長は、これらの誤った神話を明らかにして、「私たちは同じ海の上を漂流していますが、明らかに、高性能ヨットに乗っている人もいれば、浮遊する残骸にしがみついている人もいます。」と語った。

From Wash D.C. Longworth building October 4, 1994. Mandela’s first trip to the United States./ By © copyright John Mathew Smith 2001, CC BY-SA 2.0

この激しい発言は、新型コロナ感染症の拡大により初めてオンラインで開催された「2020年ネルソン・マンデラ年次レクチャー」においてなされた。このイベントは、アフリカの象徴であり、南アフリカで史上初の民主的選挙で大統領となったネルソン・マンデラ氏の誕生記念日に「ネルソン・マンデラ財団」が毎年開いているレクチャー・シリーズで、著名人を招いて主要な国際問題を討議することで、対話を促進することを目指している。

グテーレス事務総長は、「パンデミックは、私たちが数十年間にわたって無視してきた世界的なリスク、すなわち不十分な医療制度、社会保障の格差、構造的な不平等、環境の劣化、気候危機を露呈しました。」と語った。なかでも最も犠牲になるのが、貧困層や高齢者、障害者、既存の疾患がある人々といった社会的弱者である。

グテーレス事務総長は、「不平等は多くの形をとります。」と指摘したうえで、「収入の格差はあまりにも大きい。世界のお金持ち26人が世界の人口の半分と同じぐらいの富を持っています。一方で、人生で得ることができるチャンスも、性別、家族や民族の出自、人種、障害の有無などによって決まってしまう。」と語った。

だれもがこうしたことの影響を受けている。なぜなら、高レベルの格差は、「経済的不安定、汚職、金融危機、犯罪の増加、貧弱な心身の健康」と結びついているからだ。

Caricature of Cecil John Rhodes, after he announced plans for a telegraph line and railroad from Cape Town to Cairo./ public Domain

グテーレス事務総長は、次に植民地主義に言及して、「今日の反人種主義運動は、不平等の源泉である植民地主義に向けられています。グローバルノース、とりわけ私の出身地である欧州大陸は、暴力と威圧によって何世紀にもわたってグローバル・サウスの多くに植民地支配を押し付けました。」「植民地主義は、大西洋奴隷貿易や南アフリカのアパルトヘイト政権という害悪を含め、国内外に大きな格差を生み出しました。私たちはこれを、経済的・社会的不正、ヘイトクライムや外国人嫌悪の増加、制度化された人種差別と白人覇権の持続の中に見出せます。」と語った。

また、人種差別と植民地主義の遺産について、「ジョージ・フロイド氏の殺害を受けて米国から世界に広がった反人種差別運動は、人々が肌の色にもとづいて犯罪者扱いされるという格差と差別、および人々の基本的人権を否定する構造的な人種主義や制度的不正義にうんざりしているというもう一つの現れです。」と指摘した。

また、「アフリカは二重の犠牲になってきた。」と強調し、その理由として、「第一に、植民地主義的プロジェクトの標的となった。そして第二に、アフリカ諸国は第二次世界大戦後、つまりほとんどのアフリカ諸国が独立を勝ち取る前に設立された国際機関で過小評価されてきた。」と語った。

さらに、グローバル・ガバナンスにおける格差について、「70年以上前にトップに君臨してきた国々は、国際機関の力関係を変えるために必要な改革を検討することを拒否してきました。国連安全保障理事会ブレトンウッズ体制の理事会の構成と議決権はその典型です。不平等はトップにおいて、すなわち国際機関において始まっています。不平等にとりくむことは国際機関を改革することから始めなければなりません。」と語った。

UN Secretariat Building/ Katsuhiro Asagiri
UN Secretariat Building/ Katsuhiro Asagiri

また、不平等のもう一つの大きな源泉である家父長制について、「私たちは、男性支配文化をともなう男性支配世界に生きています。いたるところで、女性は単に女性であるという理由で男性よりも困窮した状況にあります。不平等と差別が常態化しているのです。女性に対する暴力は、女性殺し(フェミサイド)を含めて、エピデミックの段階にあります。」と語った。

「誇りあるフェミニスト」を自称するグテーレス事務総長は、自身はジェンダー平等の実現にコミットしており、「国連の幹部レベルでは既にジェンダー平等を実現しました。」と語った。また、南アフリカ・ラグビーチームのキャプテンであるシヤ・コリシ氏を、女性・女児に対する暴力との闘いに男性を巻き込むためのキャンペーン「スポットライト・イニシアチブ」の大使として任命したことを発表した。

「男性が牛耳るテクノロジー業界は世界の専門知識と展望の半分を見逃しているだけではありません。性差と人種差別をさらに定着させる可能性のあるアルゴリズムを使用しています。」

グテーレス事務総長は、格差との闘いの最前線にいる人々を称賛し、気候変動を予防する行動だけではなく「気候正義」が必要だと呼びかけた。政治指導者らに対しては目標を高く掲げること、経済界に対しては視野を広く持つこと、そして一般の人々に対しては意見を表明することを求め、「それが、私たちがとるべきより望ましい道筋だ。」と語った。

また、社会の中で、若者が尊厳をもって生き、女性が男性と同じ展望と機会を持ち、病人や社会的弱者が守られるような「新しい社会契約」を提唱するとともに、人類の未来を開き平等をもたらす二大要因として、教育とデジタル技術の必要性を訴えた。

グテーレス事務総長は、こうしたことを背景に、国際レベルで権力や富、機会がもっと広範かつ公正に共有されるようにするための「新しい世界的取り決め(グローバル・ディール)」を呼びかけた。そして、「グローバル・ガバナンスの新しいモデルは、国際機関における完全かつ包摂的、平等な参加を基礎としなくてはならない。」と指摘したうえで、「グローバルな意思決定において途上国の声がより強力なものにならなくてはならない。」と高らかに呼びかけた。

次に現代の不平等の問題に目を転じて、「貿易の拡大や技術の進歩が『収入分配のこれまでにない変化』につながってきた。」と指摘し、「未熟練労働者がその犠牲になっており、新技術や自動化、生産のオフショア化、労働組合の劣化といった『攻撃』に晒されています。」と警告した。

グテーレス事務総長はさらに、「一方で、税制上の特権や税金逃れ、脱税の広まりに加え、法人税率の引き下げで、不平等を是正するうえで重要な役割を担える社会保障や教育、医療予算が減っている。」と指摘したうえで、「一部の国々は、富裕層や広い人脈を持つ人々が租税制度から利益を得られるようにしているが、だれもが公平に負担すべきです。各国政府は、社会的規範と法の支配を弱める汚職の『悪循環』に対処し、気候危機に対応すべく、税の支払い負担を労働者からCO2へと移さねばなりません。」と語った。(原文へ

UN Photo
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森林破壊と闘うギアナとトーゴの先住民コミュニティー

【ポート・オブ・スペインIDN=P.I.ゴメス】

南米ギニアで先住民女性グループが幅広い役割を果たしている熱帯雨林管理・再生プロジェクトについて紹介したパトリック・I・ゴメス アフリカ、カリブ、太平洋諸国機構(OACPS:旧名称ACP)前事務局長によるコラム。ゴメス氏はIDNが先般報じた西アフリカのトーゴで開始される農村地域で女性グループに所得機会を提供する森林再生プロジェクト(創価学会とITTO共同プロジェクト)にも注目し、SDGsを推進する観点から情報交換や交流など南南協力の可能性についても言及している。(原文へ

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国連開発計画、新型コロナウィルス感染症の影響から最貧層を保護するため臨時ベーシック・インカム(最低所得保障)の導入を訴える

【ニューヨークIDN=キャロライン・ムワング】

国連開発計画(UNDP)は7月23日に発表した報告書のなかで、世界の最貧層を対象に臨時ベーシック・インカムを直ちに導入すれば、約30億人が自宅に留まれようになり、現状の新型コロナウィルス感染症(COVID-19)患者の急増を抑えられる可能性があると訴えている。

報告者『臨時ベーシック・インカム:開発途上国の貧困・弱者層を守るために』は、1カ月当たり1990億ドルあれば、132の開発途上国で貧困ライン以下か、そのわずか上で生活する27億人に一時的にベーシック・インカムを保証できると試算している。

Temporary Basic Income, Protecting Poor and Vulnerable People in Developing Countries/ UNDP

その結論によると、新型コロナの新規感染者が1週間に150万人を超えるペースで増加する中で、この措置は実行可能であると同時に、緊急に必要とされている。とりわけ開発途上国では、労働者の10人に7人がインフォーマルセクターで生計を立てているため、自宅に留まっていては収入が得られない状態にある。

社会保険制度の対象とされていない夥しい数の人々の中には、インフォーマル労働者や低賃金所得者、女性と若者、難民や移住者、さらには障害者が多く含まれており、今回のコロナ危機で最も深刻な打撃を受けている。

UNDPはここ数か月の間に60カ国以上で、新型コロナによる社会経済的影響の評価を行ってきたが、その結果を見ても、社会保障の対象となっていない労働者が所得なしに家に留まれないことは明らかである。

臨時ベーシック・インカムを導入すれば、こうした人々に食料を買い、医療費や教育費を賄うための収入を提供できるだろう。しかもこれは財政的に可能な選択肢である。例えば、6か月間、臨時ベーシック・インカムを配布するのに必要となるのは、2020年中に予測される新型コロナ対策費の12%にあたり、これは、開発途上国が2020年に支払うことになっている対外債務の3分の1にすぎない。

アヒム・シュタイナーUNDP総裁は、「前例のない時代には、前例のない社会的・経済的措置が必要です。その一つの選択肢として浮上してきたのが、世界の最貧層を対象とする臨時ベーシック・インカムの導入です。ほんの数か月前には、不可能と見られていた措置かもしれません。」と語った。

Achim Steiner/ UNDP
Achim Steiner/ UNDP

シュタイナー総裁はさらに、「救済措置や復興計画の対象を大きな市場や企業のみに絞ることはできません。臨時ベーシック・インカムにより、政府はロックダウン(都市封鎖)下にある人々に命綱となる資金を提供し、資金を地域経済に還流させて中小企業の存続を支援するとともに、新型コロナの破壊的な蔓延のペースを落とせるかもしれません。」と語った。

しかし、臨時ベーシック・インカムは、今回のパンデミックがもたらした経済的苦境の特効薬的解決策にはならない。各国が導入できる措置としては、雇用を守ること、零細・中小企業への支援を拡大すること、デジタル・ソリューションを用いて社会的に排除された人々を特定し、手を差し伸べることが挙げられる。

今年の債務返済に充てられる予定だった資金の使途を変更し、臨時ベーシック・インカムに充てることも、各国が必要な資金を賄う方法の一つである。正式なデータによると、開発途上国と新興経済国は今年、債務返済に3.1兆ドルを費やすことになっている。

「国連事務総長の呼びかけに応じ、すべての開発途上国を対象に包括的な債務返済凍結を認めれば、各国はその分の資金を一時的に、新型コロナ危機の影響に対処する緊急措置に振り向けることができるだろう。」と報告書は指摘している。

SDGs Goal No. 1
SDGs Goal No.1

すでに、臨時ベーシック・インカムの導入に向けて舵を切った国もいくつかある。例えば、西アフリカのトーゴ政府は、インフォーマルセクターで働く女性をはじめとする人口の12%を越える人々を対象に、現金給付プログラムを通じ毎月1,950万ドルを超える資金援助を提供しています。

スペイン政府も最近になって、弱者層の家族85万世帯230万人の個人を対象に、月額2億5,000万ユーロの予算で、最低基準額まで所得補填を行うことを承認した。

新型コロナは既存の世界的、国内的不平等をさらに悪化させただけでなく、最弱者層に最も大きな影響を及ぼし新たな格差も作り出している。2020年には、最大でさらに1億人が極度の貧困に陥り、14億人の子どもが学校閉鎖の影響を受け、失業や生計手段の損失も記録的水準に上ると見られる中で、UNDPは全世界の人間開発が今年、その理念の導入以降初めて後退を強いられると予測している。(原文へ

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【ベルリンIDN=フランジスカ・コーン】

ドイツで法制化に向けた議論が進んでいる、人権・環境デューデリジェンス(組織が人権・環境及ぼすマイナスの影響を回避・緩和することを目的として、事前に認識・防止・対処するために取引先などを精査するプロセス)を巡る議論を分析した記事。今年欧州連合(EU)理事会議長国を務めるドイツ政府は、2020年政策目標のなかで、国内企業による自主対応が不十分だと判明した場合、国内法を制定し、EU全体の規制を推進する方針を打ち出しており、実現すれば今後欧州規模で、グローバルサプライチェーンにおける人権・環境侵害に一層厳しい目が注がれていくことになる。(原文へ

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【ニューヨークIDN=サントー・D・バネルジー】

国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)の推定によれば、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の拡大によって、165カ国で15億人以上の学生が学校に通えなくなっている。こうした中、世界各地の学術コミュニティーは、遠隔教育・オンライン教育など、新しい形の教育・学習の道を模索することを余儀なくされている。

教員と学生はいずれも、新型コロナ感染症がもたらす感情的、身体的、経済的困難に対処しなくてはならない一方で、ウィルスの感染拡大を抑えるための役割も果たさねばならず、大変困難な状況に直面している、と国連アカデミック・インパクト(UNAI)は指摘している。

UNAIは、高等教育機関と国連とが連携して知的な社会的責任という共通の文化の中で国連が定めた普遍的な10原則(国連憲章の原則を推進・実現、人権の擁護・促進、高等教育における能力の強化、持続可能性の促進、平和と紛争解決の向上等)を実践するためのイニシアチブである。

「全ての人々にとって、とりわけ、感染拡大が世界経済を混乱に陥れる中で、今年卒業が予定されている数多くの学生にとって、将来は不確実なものとなっている。」とUNAIは警告した。

UNAIは、「新型コロナ感染症と高等教育」と題した一連の取組みのなかで、世界各地の学生や教員、研究者に聞き取り調査を行い、彼らがいかにパンデミックの影響を受け、変化に対応しようとしているのかを探った。

Interview with Bowen Xu/ UNAI

上海外国語大学通訳翻訳大学院で中英翻訳を学ぶ学生ボウエン・シーさんは、この夏に大学院を修了する予定だ。

シーさんはこの1月に国連本部でのインターンシップのために中国からニューヨークに移動してきた。その後数週間で新型コロナウィルス感染症が広がり、中国全土で今年の春節の祝いができなくなった。

シーさんのインターンシップも終わりに近づき、中国の状況は改善してきたが、帰りのフライトはキャンセルになった。さらにニューヨークが新型コロナウィルス感染拡大の新たな中心地となる中で、チケットを予約することも困難になった。

シーさんはインタビューの中で、帰国できなくなった状況や、新型コロナウィルス感染症が彼の人生にいかに影響を及ぼしたかについて語っている。また、通常と同じ形で大学院卒業を祝ったり、級友や指導教官にお別れをしたりといったことができなくなって大学院生が喪失感を感じていること、この経済不況の中でこれから社会人になっていかねばならない不安についても語ってくれた。

こうした困難に直面しても、シーさんは前向きだ。この時間を有効活用して、これまで忙しくてできなかったことに挑戦して新しいスキルを身に着けようとしている。

UNAIが聞き取り調査をした別の学生は、現在ブラジル北東部にあるペルナンブコ連邦大学の修士課程で国際契約関係を専攻しているタリタ・ディアスさんだ。

ディアスさんの新学期は3月に始まる予定だったが、新型コロナウィルス感染症の影響で延期された。今年の予定が思わぬ形で変わったため、彼女は急きょ「プランB」を練らざるを得なくなった。彼女は、職業研修のためのオンライン講座を受講する一方で、英語のオンライン講師を始めた。また、料理のような新しいスキルの獲得にもチャレンジしている。こうして始まった新しい日常は、将来が不確実ななか、ディアスさんが忍耐力と前向きな気持ちを保つのに役立っている。

他国と同様、ブラジルでも、感染拡大の影響は深刻で、ディアスさんは、急増する新型コロナ患者に対処する医療システムの能力について懸念をもっている。ブラジルの多くの学校や大学が遠隔授業への切り替えに苦戦しており、新しいオンライン学習環境に適応するのに時間を取られている。他方、一部のブラジル人学生は、オンライン教育の質に疑問を持っている。

Photo credit: Physicians Committee for Responsible Medicine
Photo credit: Physicians Committee for Responsible Medicine

ディアスさんは、こうした困難はあるものの、この試練の時は、いつか過ぎ去ると同時に、大事な人と過ごした時間や、他者に対する共感や連帯といった重要な教訓をもたらしてくれるだろうとも考えている。

Interview with Hana Ibrahim/ UNAI

UNAIはまた、パリ大学の医学生ハナ・イブラヒムさんにも話を聞いた。彼女は、新型コロナウィルス感染症が爆発的に拡大するなか、パリのラリボワジェール病院の集中治療室でボランティアとして活動してきた。

イブラヒムさんは21歳で、まだ研修医として訓練を受けている最中だが、感染拡大が始まると、彼女が通っていた内分泌学・糖尿病学部を含めた多くの学部が閉鎖になり、大学の資源は新型コロナ感染症患者の治療に振り向けられるようになった。

集中治療や感染症対策関連の学部が次々と運び込まれる膨大な数の感染症患者の対応に日々奮闘している様子を目の当たりにしたイブラヒムさんは、自身の学業が大変であるにも関わらず、集中治療室の支援をしようと決意した。

イブラヒムさんはUNAIの取材に対して、精神的・肉体的に大きなプレッシャーがかかる医療現場の状況や市民の多くが依然として感染症が引き起こす重大さを理解していない現状への不安など、世界的な医療危機の中で、医学生兼ボランティアとして見聞きした実体験を語った。イブラヒムさんは今回の経験を通じて、自分の専門を変えようと考え始めている。

Interview with Madalitso Kamenia/ UNAI

また、プレトリア大学(南アフリカ共和国)で農業経済の修士号を専攻しているマダリツォ・カメニャさんは、「新型コロナウィルス感染症拡大に伴うロックダウン(都市封鎖)によって大きな問題が生じました。」と語った。

カメニャさんは、大学の寮から出られない環境にあって、規則的に運動し、故郷のマラウィにいる家族や友達と話し、宿題をこなすという日課を守ろうと努めている。彼にとって、一人で過ごし孤独を強いられることがコロナ時代の最も難しい側面だが、通信インフラのお陰で、他の人たちと繋がりを保てていることがせめてもの救いだと考えている。

カメニャさんは前向きだ。ポストコロナの時代には世界は以前より良くなっていると信じている。しかし、これが最後のパンデミックになるとは考えていない。カメニャさんは、今の困難な状況はこれまでのやり方を改める絶好の機会を与えてくれているのであり、大学は次のパンデミックに備えて新たなやり方で教育ができるよう方策を模索すべきだと考えている。(カメニャさんのインタビューはこちらへ

Interview with Marina Romanova/ UNAI

マリーナ・ロマノワさんは、ロモノソフ・モスクワ州立大学(ロシア)で国際関係学を専攻する学生だ。交換留学でスイスに滞在しているときに新型コロナウィルス感染症が拡大し、状況が見通せないために、スイスを離れてロシアに帰国せざるを得なかった。

パンデミックがもたらすストレスにも関わらず、ロマノワさんは、両親が健康でいて、リモートで学業を継続するためのツールが与えられていることに感謝している。モスクワ州立大学には、新型コロナウィルス感染症の拡大に伴うロックダウン以前にオンライン学習の体制が整っていなかったため、ロシアの級友たちはもっと困難な時を過ごしていた。しかし、今は学生のための新しい仕組みができつつあり、状況は改善してきている。(ロマノワさんのインタビューはこちらへ

UNAIによる他の学生たちとのインタビューは以下より聴取可能。

ヘバ・ヘイニー(ヘルワン大学、エジプト)

パブロ・デカストロ(チリ大学、チリ)

ミヒャエル・クリューガー(ルートヴィッヒスブルク教育大学、ドイツ)

マイケル・ムーア(アデルフィ大学、米国)

バシュラ・ナイーム(バロチスタン情報技術・工学・経営科学大学、パキスタン)

SDGs for All Logo
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ロマノワさんは来年卒業予定だが、パンデミックによりインターンシップや修士号取得のための海外渡航が難しくなっており、将来は見通せない。それでも彼女は、コロナ禍にプラスの側面を見出そうとしている。ロマノワさんはこの点について、「隔離生活を続ける中で、自身の勉強のやり方を見直すようになり、世界が互いにつながっていることや市民にとってよい保健制度が必要であることを深く理解できるようになった。」と語った。(原文へPDF 

INPS Japan

国連アカデミックインパクトのラム・ダモダラン最高責任者がIDN-InDepthNewsが創価学会インタナショナルと推進しているSDGs for Allメディアプロジェクトの昨年の報告書に寄せたメッセージはこちらへ。

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【ベルリン/東京IDN=ラメシュ・ジャウラ

西アフリカのトーゴ共和国で、コミュニティーを基盤とする世界的な仏教団体である創価学会と、国際熱帯木材機関(ITTO)による画期的なプロジェクトが開始される。両団体は、トーゴの2つの農村地域で女性グループに所得機会を提供する森林再生プロジェクトを立ち上げる覚書を締結した。

覚書は、プロジェクトの最初の1年に1000万円(9万3300ドル)を供与することを約束したもので、東京の創価学会本部で7月1日に署名された。プロジェクトは9月1日に開始される予定だ。

プロジェクトは、森林が急速に失われ貧困が増しているトーゴにおいて、気候変動や貧困、ジェンダーといった問題に対処するものだ。トーゴでは新型コロナウイルスの感染拡大によって人々が農村に回帰するようになり、森林資源を圧迫している。

Map of Togo

創価学会は、生命の尊重や持続可能な開発目標(SDGs)を中心とした平和や文化、教育を促進している。例えば、アマゾン創価研究所などのプロジェクトや機関を通じた自然環境保護活動や、インデプスニュース(IDN)とのメディアプロジェクトを通じたSDG達成の差し迫った必要性に対する問題意識を高める活動に焦点をあてている。創価学会は世界に1200万人の会員を擁し、人間主義を掲げる日蓮仏法を基調として人類社会の向上に貢献することを目的としている。

ITTOは、熱帯林資源の保全と持続可能な経営、利用、そして持続的かつ合法的に管理された熱帯木材資源の貿易拡大と多角化を促進している政府間組織である。

今回の創価学会・ITTO共同プロジェクトは、トーゴの国家気候対応計画(NAP)と、2015年のパリ協定の下での国別目標に沿ったものだ。SDGの第1目標(貧困をなくそう)、第5目(ジェンダー平等を実現しよう)、第13目標(気候変動に具体的な対策を)、第15目標陸の豊かさも守ろう)に貢献するものとなる。

トーゴでは、人口の増加、農業の拡大、乱開発、異常気象現象、持続可能な森林経営を行う地元の人々の能力不足が森林を圧迫し急速な減少を引き起こしており、食料安全保障、木材の供給や生計に負の影響をもたらしている。

環境・森林資源省は2018年、同国の森林の破壊速度は世界で最も深刻なレベルにあることを明らかにした。

農村コミュニティーの女性は、性別による不平等によって最も大きな影響を受けている。今回の共同プロジェクトは、苗床作りと維持、木材燃料のためのエンリッチメント・プランティング(郷土樹種を中心とした選択的な植林)、アグロフォレストリー、食料の作付け、地元市場での販売のための木材・非木材林産物の生産における組織面、経営面、技術面のスキル強化を支援するものだ。

ITTOのゲァハート・ディタレ事務局長は「しばしば人々が森林保護について語るとき、そこに暮らす人々の生活について気にかけないことが少なくありません。このプロジェクトは、女性の権利を守り、地域経済と食料安全保障を加速し、劣化した森林を回復させるものです。」「これはまさに、農村地域の女性の生活に変化をもたらし、現地の森林を守ることができる革新的な草の根イニシアチブです。」と語った。

ITTO Executive Director Dr. Gerhard Dieterle and Soka Gakkai President Minoru Harada at the memorandum signing ceremony/ photo: Seikyo Shimbun

創価学会の原田稔会長は、「創価学会が農村地域の女性とその家族に実体ある恩恵をもたらすであろうこのプロジェクトを支援できることを嬉しく思います。」と語った。

創価学会は、今回の共同プロジェクトの来歴を振り返って、アフリカにおけるSDGsの推進(とりわけ、貧困の撲滅、ジェンダー平等の達成と女性の能力強化、気候変動とその影響に立ち向かうための緊急対策の促進、陸の生態系の持続可能な利用の回復と促進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対策、土地劣化の防止と反転、生物多様性の喪失の防止)を支援していきたいと語った。

創価学会は、このことを念頭に、上記のSDGsの4つの目標(第1目標、第5目標、第13目標、第15目標)を実現する方法について数年間にわたって検討を重ねてきた。そうしたなか、横浜に本部を置くITTOと様々な意見交換をする中で、森林再生を通して女性のエンパワーメントと貧困削減を目指す同機関の取組みに関心を持つに至った。

SDGs Goal 1, Goal , Goal 13, and Goal 15

創価学会はまた、非政府組織でITTOの地元パートナーである「コミュニティー森林管理のためのアフリカ女性ネットワーク(REFACOF)」について知った。REFACOFは、既にコートジボワールやガーナ等で事業の成功を収めており、信頼を置ける活動を展開していると判断した。

創価学会は、REFACOFがトーゴにおいても新たな取り組みを準備中であるとの情報を得て、共同プロジェクトとして支援することを申し出た。創価学会とITTOの覚書によると、REFACOFは、トーゴの最貧県であるブリタ、ラックス両県で女性グループを支援する。

ブリタ県のパガラガール村ではが森林再生とエンリッチメント・プランティングが行われ、ラックス県では、薪採取のための共同利用森林がアゴエパン村の首長によって提供された土地に作られる。どちらの村でも、アグロフォレストリーの樹木が各世帯の土地に植樹される。(文へ

INPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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