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NPT再検討会議準備委員会のサイドイベントで、カザフスタンの核実験被害者が被爆の実相を証言

【ウィーンIDN=オーロラ・ワイス

中央アジアのカザフスタン共和国は、日本や他の太平洋島嶼諸国と並んで、核実験や核兵器使用の影響という極めて深刻な困難を抱えてきた国の一つだ。同国は1991年の建国から30数年しか経過していない比較的若い国であるが、この重い負の遺産に直面している。

Broshure of the side event, titled “The Catastrophic Consequences of Nuclear Tests in Kazakhstan”. Photo Credit: SGI

カザフスタンでは、ソ連時代の核実験によって引き起こされたさまざまな病気で、何世代にもわたって今も多くの人々が苦しんでいる。冷戦時代、ソ連最大の核実験場があったことから、カザフスタンは「ロシアの核の盾」と称されたものだが、当の隣国(=ロシア)は核実験の犠牲者、つまり当時のモスクワ中央政府によって「核の盾」となったことの代償を支払い続けている人がいる事実など、忘れ去っているようだ。

在ウィーン国際機関カザフスタン共和国政府代表部と創価学会インタナショナル(SGI)国際安全保障政策センターは、核使用がもたらしたこの共通の過去、さらには現在と将来にわたって直面しつづける問題について、「カザフスタンにおける核実験の壊滅的な結末-当事者が語る歴史」と題するサイドイベントを開催した。これは、今年7月31日から8月11日までウィーンの国連施設で開催されている2026年核不拡散条約NPT)運用検討会議第1回準備委員会のプログラムの一環である。

カザフスタン外務省国際安全保障局のアルマン・バイスアノフ局長、国際安全保障政策センターのアリムジャン・アクメートフ代表、SGIの寺崎広嗣平和運動総局長、セミパラチンスク核実験の被爆者三世であるディミトリー・べセロフ氏、「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)の政策・研究コーディネーターであるアリシア・サンダース=ザクレ氏が登壇し、英国SGIのサンニャ・ラジパル氏が司会を務めた。

The side event was held as a part of the program during the Preparatory Committee for the 2026 Review Conference of the Parties to the Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons (NPT) that is taking place here from 31 July to 11 August at the United Nations in Vienna. Photo Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN-INPS. 
Arman Baissuanov, Director of International Security at the Kazakh Foreign Ministry. Photo Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN-INPS. 

カザフスタン政府を代表してバイスアノフ局長が開会あいさつを行い、核兵器禁止条約(TPNW)の第6条と第7条(核被害者への心身両面における支援と経済的補償、さらには核に汚染された地域の環境の修復とそのための国際協力)、条約枠内における国際信託基金の重要性について語った。

昨年の第1回締約国会合で採択された「ウィーン行動計画」では、被害者支援と環境修復の活動を財政的に支援しうる国際的な信託基金設置(行動29)の実行可能性の検討とガイドラインの策定がなされるべきことが合意された。

今年11月には第2回締約国会合がニューヨークで開かれ、メキシコが議長国を務める。カザフスタンはすでに、2024年の第3回締約国会合で自らが議長国となることを発表している。

「国際機関や市民社会、被害者らと協力し合いながら、核兵器廃絶への行動を起こしていきたい。」とバイスアノフ局長は語った。彼の故国カザフスタンは、ソ連の構成国であった30数年前まで、ソ連の軍事科学者らによって456回に及ぶ核爆発実験が通算40年間に亘って実施され、100万人以上の国民が高線量の放射線にさらされた。

Hirotsugu Terasaki, Director General of Peace and Global Issues, Soka Gakkai International (SGI) Photo Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN-INPS.
Hirotsugu Terasaki, Director General of Peace and Global Issues, Soka Gakkai International (SGI) Photo Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN-INPS.

セミパラチンスク核実験場で行われた核実験で被爆し、今も健康被害に苦しみ続けている無数の人々を目の当たりにした深い痛みは、寺崎総局長の記憶に今も刻みこまれている。

2019年にカザフスタン外務省の案内で、旧セミパラチンスク核実験場跡と周辺の関連施設を訪問した寺崎総局長は、核放射線被害という、日本とカザフスタンに共通する運命を目の当たりにした。

寺崎総局長は、「広島・長崎の被爆者の声が、核兵器禁止条約の採択に向けた大きな推進力となったことは皆さんもご承知の通りですが、『グローバル・ヒバクシャ』と呼ばれる核実験や核物質の採掘者をはじめとする核の被害者の存在は、私たちの視覚に十分に入っているわけではありません。」と指摘したうえで、「核兵器のために、どれだけの人々が亡くなり、傷つき、苦しい思いをしてきたか、その悲鳴は今も世界中で発せられており、こうした個々の悲劇が決して忘れ去られないようにする必要があります。だからこそ、私どもSGIはICANとのパートナーシップのもと、これまで核兵器の人道的被害について、草の根で意識啓発活動を推進してきたのです。」と語った。

そして、「核兵器の使用リスクが高まる中、今一度、核兵器の脅威や非人道的被害について共有し、世界を核軍縮の道へ方向転換させるべく、断固たるメッセージを発信していこうではありませんか。」と呼びかけた。

核実験被害者自身による証言は、このサイドイベントに参加した政府関係者や学者、NGO関係者の心を打った。(中東非大量破壊兵器地帯設立を目指す活動家エマド・キヤエイ氏のコメント映像

Dmitriy Vesselov a third generation Semipalatinsk nuclear-testing survivor. Photo Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN-INPS.

ディミトリー・べセロフ氏は1976年にカザフ・ソビエト共和国のセミパラチンスク(核実験場跡地から直線距離で約100キロ)で生まれた。彼は核実験から3世代目の被爆者であり、遺伝性疾患を患っている。鎖骨がないのが特徴の肩鎖関節異骨症を患っており、彼の手はわずかに筋肉と靭帯でのみつながっている。骨と頭蓋骨の発達にも異常があり、気管支肺系の病気や関節症にもかかりやすい。

2015年、べセロフ氏は放射線被ばくの被害者と認定された。しかし問題は、被爆認定されても手当などがなく、医療保険や治療費を自己負担せねばならないことだ。彼の健康状態が必要とする手当は障害者にしか支給されず、その障害者認定は得られていない。また、障害者として認定されるか、あるいは放射線被ばくに起因する疾病で死亡した被害者の遺族とみなされなければ、国から毎月の特別手当を得ることができない。

「核実験の被害者はカザフスタン国内で孤立してきました。」とべセロフ氏は指摘する。自身の体験を通じて核兵器使用の悲劇的な結末を理解してもらうことが彼の望みだ。

1945年から2017年にかけて、2000回以上の核爆発実験が世界各地で行われ、癌などの慢性疾患が広がってきた。これら核実験の犠牲者を忘れてはならず、正義と援助を求める彼らの要求に応えなければならない。

Alicia Sanders-Zakre, Policy and Research Coordinator at International Campaign to Abolish Nuclear Weapons (ICAN). Photo Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN-INPS.

ICAN政策研究コーディネーターのアリシア・サンダース=ザクレ氏は、「国際社会はまず被害者を救済し、そののちに加害者を追及すべきです。」と述べ、国際社会の最大の関心がグローバル被爆者に注がれていない現状を嘆いた。

「目の前で誰かが誰かを撃ったらと考えてみてください。加害者をまず捕まえようとは思わないでしょう。まずは被害者を助けることを考えるはずです。」とサンダース=ザクレ氏は語った。

世界全体での核戦力の規模が減少するどころか増加の一途をたどっている。核兵器保有国は、その帰結について語ろうとするなら、人間の要素と向き合う必要がある。核兵器は、戦時において2度使用(広島・長崎への投下)されただけではなく、15カ国で実験されてきた。核兵器の製造そのものが人道的影響を及ぼしているのだ。米国のたった1カ所で行われた核実験の影響は、(同国51州のうち)実に48州と近隣諸国にまで広がるとする研究結果もでてきている。

ICANは、国連核兵器禁止条約の順守と履行を推進する100カ国の非政府組織の連合体であり、その一環として2022年にウェブサイトnucleartestimpacts.orgを立ち上げた。すべての核実験の概観や、核兵器の製造国や製造年、そして正義を求めるグローバル被害者の経験などが掲載されている。

The side “The Catastrophic Consequences of Atom Bomb TestingA First Person’s Testimony” Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN-INPS. 

核兵器は、これまでに作られた兵器の中で最も非人道的で無差別な兵器である。国際法に違反し、環境破壊を引き起こし、国家と世界の安全保障を損ない、膨大な公的資源を人類のニーズから遠ざけてしまう。

冷戦期以降最も核兵器使用のリスクが高まっているこの重要な時にあって、アントニオ・グテーレス国連事務総長の「核兵器が私たちを滅ぼしてしまう前に、核兵器を廃絶しよう」という言葉の意味を考えることが必要だろう。「命の問題はみんなの問題なのだから、軍縮の問題はみんなの問題だ」と、グテーレス事務総長はこう述べて人々に行動を促している。(原文

INPS Japan

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AIチャットボットが好戦的雰囲気の中で核使用のリスクを警告

【国連IDN=タリフ・ディーン

AIチャットボットの「チャットGPT」(質問を理解し自動で返答を生成する、人工知能(AI)を用いたコンピュータープログラム)は、制作者のオープンAIによれば、先月の最初の5日間で100万回以上ダウンロードされたという。

また、事実とフィクションの区別がつかないという批判もあるが、チャットボットによる基礎知識へのアクセスは、作家、ジャーナリスト、学者、その他の専門家にとって安定した情報源となっている。

ニューヨーク・タイムズ紙は6月18日、「危険!危険!これはAIへの警告か、それとも核兵器への警告」という見出しの記事を掲載したが、これほど不吉なものもなかろう。AIと核兵器の比較はいまや「至る所で見られる」と同紙は記している。

AIの先駆的な研究者は「AIはまるで核兵器のようなもの」と語ったという。他方、トップのAI制作会社の幹部らは、AI技術は「核兵器に匹敵するような、人類の生存上の脅威となる可能性がある」と警告してきた。

チャットGPTを開発したオープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)は先月、AIの開発者らはAIの持つ潜在的な危険性を懸念し、連邦政府による規制を求めていると米議会で証言した。

AIの膨大な知識の蓄積を念頭に、主に核の脅威に焦点を当てた一連の質問を投げかけてみた。返答は光のようなスピードで瞬く間に届いた。

以下がそのやり取りである。

IDN:ロシアが核の恫喝を行い、北朝鮮が核を振りかざす中で、核戦争の危険があると思いますか?

チャットGPT:AIの言語モデルとして、私はリアルタイムの情報にアクセスすることはできないし、将来の特定の出来事を予測する能力もありません。しかし、一般的な知見をいくらか披歴することはできます。

Nuclear weapons sent by Russia to Belarus will target Europe. Source: YouTube Kanal 13 Global
Nuclear weapons sent by Russia to Belarus will target Europe. Source: YouTube Kanal 13 Global

核の脅威や国家間の緊張は、細心の注意を払う必要がある深刻な問題であることは間違いありません。そのような脅威を深刻に受け止めることは重要だが、大多数の国が核戦争の破滅的な結末を理解し、それを回避することに既得権益を持っていることを認識することも同様に重要です。

核兵器不拡散条約(NPT)のような国際外交、条約、協定は、核兵器の使用を防ぎ、軍縮を促すために設けられています。これらの取り組みは、核紛争の可能性を減らし、紛争の平和的解決を促進することを目的としています。

地域的な緊張がエスカレートすることもあるが、全面的な核戦争に突入することは、すべての当事者にとって大きな不利益をもたらすことを忘れてはなりません。国際社会は一般的に、交渉、経済制裁、外交ルートを通じて、このような紛争を防ぐように努めています。

各国は、オープンなコミュニケーションラインを維持し、外交対話を行い、紛争の平和的解決を追求することが重要です。さらに、核軍縮と核不拡散を推進する努力は、世界の安定と安全保障にとって極めて重要です。

しかし、信頼できるニュースソースを通じて世界の出来事について常に情報を入手し、国際関係や安全保障の分野の専門家の評価に注意を払うことは不可欠です。

IDN:もし核戦争が起きたら、人類にとってどのような悲惨なことになるのでしょうか?

チャットGPT:核戦争は人類にとって極めて破滅的な出来事であり、莫大な破壊と人命の損失につながります。核戦争の帰結は次のようになるでしょう:

直後の被害:

核兵器の初期の爆発は、標的となった地域に即時かつ大規模な被害を引き起こします。爆風、熱、放射線は、一瞬の間に多くの人々に死をもたらします。

長期的な健康への影響:

初期の爆発を生き延びた人々は重度の放射線障害に苦しみ、ガンや遺伝子の突然変異、先天性異常などの長期的な健康問題につながるだろう。将来世代に与える影響は重大なものになる可能性があります。

インフラの破壊:

核爆発は、住宅地、病院、交通システム、通信網などのインフラに広範な破壊をもたらすだろう。電気、給水、衛生設備などの必要不可欠なサービスは著しく中断され、人道的危機を悪化させるだろう。

環境破壊:

核戦争によって大量の放射性物質が大気中に放出され、大気や土壌、水を汚染するだろう。汚染は長年にわたって続き、生態系や農業、食物連鎖に影響を及ぼすだろう。長期的な環境破壊につながり、特定の地域が居住不可能になる可能性もあります。

世界的な「核の冬」:

Image: A map showing the changes in the productivity of ecosystems around the world in the second year after a nuclear war between India and Pakistan. Regions in brown would experience steep declines in plant growth, while regions in green could see increases. (Credit: Nicole Lovenduski and Lili Xia). Source: University of Colorado Boulder.
Image: A map showing the changes in the productivity of ecosystems around the world in the second year after a nuclear war between India and Pakistan. Regions in brown would experience steep declines in plant growth, while regions in green could see increases. (Credit: Nicole Lovenduski and Lili Xia). Source: University of Colorado Boulder.

核爆発によって発生した煙や塵は大気圏内を上昇して太陽光を遮り、気温の低下を引き起こします。「核の冬」と呼ばれるこの現象は、農業の生産性を著しく低下させ、広範な飢餓を引き起こして、交戦当事国だけではなく、紛争から遠く離れた地域にも悪影響を及ぼします。

社会の崩壊:

核戦争の結果、社会的・経済的崩壊につながる可能性が高い。政府、制度、必要不可欠なサービスが機能しなくなり、無法状態、大移動、人道危機が生じます。インフラ、資源、熟練した人材の喪失は、あらゆる復興努力を妨げるだろう。

エスカレーションと放射性降下物

大規模な核紛争の場合、多くの国がそこに巻き込まれるにつれて、さらなるエスカレーションのリスクが高まります。その結果、加速度的に被害と破壊が増え、世界的な大惨事のスパイラルに拡大する可能性があります。

上記のシナリオは、複数の国が関与する全面的な核戦争を想定していることに留意する必要があります。実際の結果は、使用される核兵器の数や、その爆発力、標的、その時に地政学的状況など、さまざまな要因に左右されるだろう。

莫大なリスクと壊滅的な結果を考えれば、核紛争を防止し、世界の平和と安全を促進するために、外交努力、軍備管理条約、核不拡散協定を追求し続けることが極めて重要です。

IDN:国連は将来の核戦争を防ぐことができるでしょうか?

国連は、世界の平和と安全を推進する上で極めて重要な役割を果たしており、その主要な目的のひとつは、核戦争を含む紛争を防止することでする。国連だけでは将来の核戦争を防ぐことはできないが、そのような破滅的な出来事のリスクを軽減することを目的としたいくつかのメカニズムやイニシアチブはいくつかあります。国連が核不拡散や軍縮に貢献しているものとして、以下のようなものがあります。

UN Secretariate Building/ Katsuhiro Asagiri
UN Secretariate Building/ Katsuhiro Asagiri

核不拡散条約(NPT):

国連は、核兵器の拡散を防ぎ、軍縮を促進するための国際条約であるNPTを統括しています。NPTは、エネルギーやその他の平和目的のために平和的な核技術へのアクセスを認める一方で、完全な軍縮に向けて努力することを各国に奨励しています。

国際原子力機関(IAEA):

IAEAは、原子力の平和利用を監視・検証し、保障措置協定の遵守を確保する責任を負う国連システム内の独立機関です。IAEAは、核物質が兵器用に転用されるのを検知し、阻止する上で重要な役割を果たしています。

国連安保理決議:

国連安全保障理事会は、核軍縮、核不拡散、軍備管理に関する数多くの決議を発表してきました。これらの決議は、各国が核兵器開発計画を推進したり、既存の協定に違反したりすることを阻止するために、制裁やその他の措置を課すことが多い。

軍縮フォーラムと軍縮会議:

国連はさまざまな軍縮フォーラムや軍縮会議を開催し、加盟国が軍備管理・軍縮措置について議論したり交渉したりできるようにしています。これらのプラットフォームは、対話の機会を提供し、信頼を構築し、軍縮イニシアチブを推進します。

平和維持と紛争解決:

国連は平和維持活動や外交努力を通じて、紛争を解決し、核戦争につながる可能性のあるエスカレートの防止に努めています。交渉を促進し、平和的解決を促すことで、国連は核保有国を含む武力紛争のリスクを低減することに貢献しています。

意識喚起と活動:

国連は核兵器の危険性について認識を高め、その廃絶を提唱しています。一般市民を教育し、市民社会組織を支援し、軍縮努力の機運を高めるために「核兵器の全面的廃絶のための国際デー」などのイニシアチブを推進しています。

国連の活動は重要だが、将来の核戦争を防ぐには、各国の総力を結集し、国際条約や協定を遵守し、効果的な外交を行い、核保有国が協力することが必要です。これは国連単体を超えた、多国間の持続的な取り組みを必要とする複雑な問題です。

IDN:国連や西側諸国はイランの核開発を阻止することができるでしょうか。

チャットGPT:AIの言語モデルとしては、未来を確実に予測することはできません。しかし、現状に基づいた情報を提供することはできます。

米国や西側諸国がイランの核開発を阻止できるかどうかという問題は複雑な問題であり、政治・外交・戦略の現状を含めたさまざまな要素に左右されます。

Photo credit: Tasmin News Agency.
Photo credit: Tasmin News Agency.

私の知る2021年9月の時点では、米国をはじめとする西側諸国とその他の国際機関は、イランの核開発プログラムに対する懸念に対処するためにイランとの交渉に従事していました。

2015年、共同包括的行動計画(JCPOA)がイランと世界の大国(P5+1として知られる米国・英国・フランス・ドイツ・ロシア・中国)との間で結ばれました。制裁の解除と引き換えにイランの核活動を制限することを目的としたものでした。

しかし2018年、米国はJCPOAから離脱し、イランに対する制裁を再開しました。これを受けてイランは、協定に盛り込まれた特定の核制限の遵守を徐々に減らし始めました。それ以来、JCPOAを復活させるか、新たな合意に達するための交渉が続けられています。

国際関係や交渉は変化しうるものであり、私の情報が限られているために、新たな進展があった可能性があることに留意することが重要です。イランの核兵器開発阻止が成功するかどうかは、現在進行中の交渉の結果、すべての当事者が相互に受け入れ可能な合意に達する意欲、そしてこの地域におけるより広範な地政学的力学など、さまざまな要因に左右されるだろう。

この問題に関する最新の情報や動向を理解するためには、最新のニュースや外交動向を常にチェックすることが望ましい。

IDN:「AI安全センター」の報告書によると、350人以上のAI産業のリーダーらが先月、人工知能(AI)は人類にあらたな脅威を与えており、「コロナ禍や核戦争に並ぶ社会的なリスク」をもたらしているとみなすべきだ、としています。この脅威はどの程度現実のものだと思いますか?

チャットGPT:AI言語モデルとして、私は、2021年9月に情報を絶たれて以降のリアルタイムの報道や特定の報告書にアクセスすることができません。したがって、あなたが言及した「AI安全センター」の特定の報告書について情報を提供することはできません。

しかし、人工知能に関連した潜在的リスクについての懸念は、さまざまなAIコミュニティでの議論のテーマになっていることは注目に値します。倫理的な考慮や安全上の警告、AIが社会に与えるインパクトは、研究者や政策決定者、産業界のリーダーらが対処してきた重要なテーマです。

AIには社会に利益と前進をもたらす可能性がある一方で、その濫用や意図しない利用については正当な懸念があります。AIのリスクをめぐる議論には、雇用の喪失、偏った意思決定アルゴリズム、プライバシーへの懸念、自律型兵器に発展する可能性などがとりわけ議論されています。

専門家や業界のリーダーが警告を発し、AIの社会的影響や潜在的リスクに対処することの重要性を強調することは珍しいことではありません。しかし、彼らの視点を包括的に理解するためには、ご指摘の報告書に示された具体的な議論や証拠を検証することが不可欠です。(原文へ

INPS Japan

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国連、世界で最も多言語化された組織のひとつ

【国連IDN=タリフ・ディーン

エジプトのブトロス・ブトロス=ガリ外相が1991年末の国連事務総長選挙に立候補したとき、彼は当時ジンバブエの外相だったバーナード・チゼロ候補と指名を争わなければならなかった。

選挙戦が激化する中、ブトロス=ガリ氏は、長年の友人であったチゼロ氏と、アフリカで開かれたある会議で短期間会話した時のことを語った。当時、国連の地理的輪番制に従って、次期国連事務総長はアフリカ出身者が指名されることとなっていた。

Photo: UNON – United Nations Office at Nairobi
Photo: UNON – United Nations Office at Nairobi

英語圏のジンバブエ出身で、英国と英連邦の54ヶ国(元英国植民地の多くからなる)から支持を受けていたチゼロ氏は、ブトロス・ガリ氏と会話している最中に突然、英語からフランス語に切り替えた。

微妙なメッセージを感じ取ったブトロス・ガリ氏は、チゼロ氏の肩に腕を回して冗談交じりに「バーナード、もしフランスの承認が欲しいのなら、フランス語だけでなく、英語をフランス語訛りで話さなければならないよ。」と語った。

拒否権を行使する安保理常任理事国であるフランスは、自国の言語を熱心に保護しており、フランス語を話さない候補者には拒否権を行使した可能性がある。

そして、国連事務総長を目指す者は、フランス語の実用的な知識がなければ、あるいは少なくとも、いずれフランス語をマスターすることを約束しなければ、当選を期待することはできない。なぜなら、フランスは自国語を「国際外交の言語」とみなしているからだ。

UN Secretariat Building/ Katsuhiro Asagiri
UN Secretariat Building/ Katsuhiro Asagiri

過去78年間、国連の2つの作業言語は主に英語とフランス語であったが、国連が認識する公用語は他にも中国語、アラビア語、スペイン語、ロシア語がある。

加盟国193カ国からなる国連は、39階建ての事務局で数百の言語や方言に堪能な外交官、職員、ジャーナリストたちが働く環境を提供している、数少ない国際的な多言語組織のひとつである。『ニューヨーク・タイムズ』紙によれば、この事務局は「600の言語が話される都市」ニューヨーク市に本部を置いている。

ウィキペディアによると、多言語主義とは、個々の話者または話者のグループによって、複数の言語を使用することである。世界の人口において、多言語話者は単言語話者よりも多いと考えられている。

元ポルトガル首相のアントニオ・グテーレス現国連事務総長は、英語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語の4つの言語に堪能な最初の、そしておそらく唯一の国連総長のひとりである。

その次にランクされるのが、英語、アラビア語、フランス語に堪能なブトロス・ブトロス=ガリ元国連事務総長だろう。ブトロス・ガリ氏は記者団とのブリーフィングで言語の堪能さについて質問された際、冗談めかして、「私の母国語はアラビア語です。なぜなら、妻と喧嘩するときはアラビア語で喧嘩するからです」と答えたという。

国連は毎年2月21日の「国際母語デー」を記念して、言語的文化的多様性と多言語主義を推進している。

7月7日、国連は「スワヒリ語デー」を記念した。スワヒリ語はキスワヒリ語という現地名でも知られ、主にケニア、タンザニア、モザンビークに住むスワヒリ族の母国語である。

Csaba Kőrösi, President-elect of the seventy-seventh session of the United Nations General Assembly
Csaba Kőrösi, President-elect of the seventy-seventh session of the United Nations General Assembly.

現在の国連総会議長(PGA)であるハンガリーのチャバ・コロシ氏は、ハンガリー語に加えて英語、フランス語、アラビア語、ロシア語に堪能でおそらく5つの言語をこなす数少ないあるいは唯一の総会議長である。

コロシ議長は時折、四つの言語で代表団に対して演説することがあり、その際自在に言語を切り替えている。

「国連では多言語主義を重視しています。これは193の加盟国の本部であるため、論理的な決定です。できるだけ多くの言語を使用し、使用を尊重しています。国連で他の言語を話すことは非常に助けになることがあることを皆さんもご存知でしょう。時には単なる友好的なジェスチャーに思えるかもしれませんが、信頼を取り戻すための突破口になることもあります。」とコロシ議長は先月代表団に語りかけた。

コロシ議長はまた、国連ニュースサービスのキスワヒリ語部門とグローバルコミュニケーション部の他のキスワヒリ語部門の努力を称賛した。

「80億人の人々に手を差し伸べるためには、もっともっと多くのことをしなければならない。私たちが何をしているのかを知ってもらい、ここでもっと何をすべきかを彼らから聞かなければならない。そのためには、彼らがよく理解している言語でのやり取りが必要です。」とコロシ議長は語った。

一方、AIチャットボットによると、世界で6000から7000の言語が話されている。

「しかし、この数は、言語と方言をどのように定義するか、また、それぞれの言語の話者をどのように数えるかで変わってくる。また、政治的、文化的な理由から、別の言語と見なされているものもある。また、母国語よりも第二言語や外国語の方が話者数が多い言語もある。」(原文へ

この記事は、タリフ・ディーン氏(国際通信社インタープレスサービス北米理事・国連総局顧問)が2021年に出版した国連に関する著書「コメントはありません、それについては引用しないでください」から抜粋したもの。

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広島の被爆者写真をカラー化

【国連ニュース/INPSJ】

広島出身の大学生、庭田杏樹さんは、人工知能(AI)技術を使って広島の被爆者のモノクロ写真をカラー化する「記憶の解凍(Rebooting Memories)」プロジェクトに取り組んでいる。

多くの被爆者は、人類が二度と同じ過ちを繰り返してはならないと願い、憎しみや悲しみを乗り越えてきた。

Colorizing Photos of Hiroshima Atomic Bomb Survivors/ UN Story

庭田さんは、被爆者との対話、過去の記録資料の調査、AI技術の活用などを通して、モノクロームの写真を丁寧に蘇らせ、核兵器のない平和な世界への希望を広めている。

アントニオ・グテーレス国連事務総長は、新たな軍拡競争が加速し、世界の指導者たちは数千億ドルを投じて核備蓄を強化し、現在、世界中の兵器庫に13000発近い核兵器が保有されていると警告した。

Photo: The Secretary-General António Guterres attends the Peace Memorial Ceremony in Hiroshima. Ichiro Mae/UN Photo
Photo: The Secretary-General António Guterres attends the Peace Memorial Ceremony in Hiroshima. Ichiro Mae/UN Photo

「核兵器は愚かなものです。1945年から3四半世紀が経った今、この空に膨れ上がったきのこ雲から私たちは何を学んできたのか、問わなければなりません。」と、グテーレス事務総長は、被爆者、若き平和活動家、岸田文雄首相、地元関係者ら多数が参加した広島平和記念公園での厳粛な催しで、そう訴えた。(原文へ

INPS Japan

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映画「オッペンハイマー」で核のホロコーストは回避できるか?

【ベルリンIDN=ラメシュ・ジャウラ】

ウィーンでの核不拡散条約(NPT)2026年再検討会議第1回準備委員会会合があと数週間に近づく中、クリストファー・ノーラン監督の映画「オッペンハイマー」がメディアで物議をかもしている。

広島と長崎を1945年8月6日と9日にそれぞれ消し去り、12万9000人から22万6000人の死者を出した原爆の「生みの父」オッペンハイマーの伝記映画である。

2017年にノーベル平和賞を受賞した核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の政策・研究インターンであるマグリッテ・ゴーダニアーは『原子科学者紀要』誌で、ニューメキシコ州ロスアラモス研究所で原爆開発の主任科学者を務めたJ・ロバート・オッペンハイマーは、原爆投下から8日後、核兵器の開発継続によって平和を維持する可能性を疑う内容の手紙を陸軍長官に送ったと記述している。

それから8年後、彼は、「利益を引き出そうとする態度によって加速した軍拡競争を引き起こすこの新兵器の潜在能力や、『核の平和』をもたらすとする神話の不安定性、これらの兵器が文明にもたらす圧倒的で継続的な脅威について」警告した。

「70年後の今、オッペンハイマーが戦後に抱いた懸念は正しかったといえるようだ。オッペンハイマーが始めた原子時代しか知らない私たちは、そのリスクにはうんざりとしている。」とゴーダニアーは説明する。

「戦略的リスク評議会」の広報責任者アンドリュー・ファシーニは、『原子科学者紀要』のノーランの記事は、核兵器が開発されると、権力ブローカーが核兵器事業を引き継ぐスピードと粘り強さを示している」と称賛した。

ファシーニによると、「実質的に敗戦した」日本だけがターゲットになったとき、オッペンハイマーはソ連との軍拡競争始まることになるのではないかとより懸念するようになった。

結局のところ、軍備管理に対する彼のコミットメントと、そのために積極的に発言する姿勢は、原爆から権力を得ようとする人々とは相容れず、彼らは組織的かつ意図的に彼を破滅させたのである。

オッペンハイマーは後年このように振り返ったとされる。「我々は世界が同じものであり続けることはないと知っていた。一部の人間は鼻で笑い、一部の人間は叫び、ほとんどの人間は沈黙を保った」。オッペンハイマーは映画の中で、「バガバッド・ギータ」の一節を引いて、「いまや私は死となり、世界の破壊者となった」と語っている。バガバッド・ギータは700節から成るヒンズー教の聖典である。

ノーベル平和賞を受賞したICANに言わせれば、今回の映画「オッペンハイマー」は、核兵器の危険性にも関わらず、核兵器に関して人々を教育し、その廃絶運動に加わらせる機会を提供するものだという。核のリスクに関する意識を喚起することで、極めて重要である前向きな姿勢と核兵器に反対する態度が拡がることになろう。

映画『オッペンハイマー』は核兵器の起源に迫っているが、核兵器禁止条約は「その廃絶に向けた道を指し示している」とICANはいう。

同条約は2017年7月7日に採択され、同年9月20日に署名開放、2021年1月22日に発効した。核兵器を包括的に禁止する初の法的拘束力ある国際条約である。

核不拡散の問題は、国連での協議を通じて早くも1957年に取り組まれ、1960年代に推進力を得た。

国際的行動の規範として核不拡散を称揚する条約の構造が1960年代半ばまでに明らかになってきた。1968年までに条約に関する合意がなされた。核拡散は禁止され、原子力平和利用のための国際協力が可能となり、核軍縮の目標が前進させられることになった。

条約第10条によると、条約発効から25年後に会議が開かれて、条約を無期限延長するか、定められた年限の延長をするか決められることになっていた。

1995年5月のNPT再検討・延長会議では、条約締約国が条約の無期限延長を無投票で決めた。

2026年NPT再検討会議第1回準備委員会会合が今年7月31日から8月11日にかけてウィーンで開かれる前に、「核兵器廃絶を目指すグローバルネットワーク」(アボリション2000)は、偶然、計算違い、危機のエスカレーション、あるいは故意によって核戦争の起きる可能性がますます高まっていると警告した。

アボリション2000はその作業文書で、ウラジーミル・プーチン大統領が核兵器使用の威嚇をするなかでロシアがウクライナに侵攻する状況下でこの集まりを持つことが重要であり、軍縮が急務だと述べた。この文書によると、ロシアが核兵器を使用する意志は、核兵器搭載可能なミサイルの実験や、隣国ベラルーシへの核兵器の前進配備の中に見て取れるという。

アボリション2000によれば、ウクライナ戦争は、ミサイルやミサイル防衛、航空機、無人飛行機、ますます複雑化する探知・通信技術、妨害的な電波戦争、サイバー戦を組み合わせた21世紀の戦争の危険性を示しており、人知を超えた領域に戦争を押し上げつつあるという。

広範囲にわたった多極的な軍拡競争が、核保有国間の敵意の増大によって加速している。ウクライナ戦争はその一つの表れに過ぎないと「核兵器廃絶を目指すグローバルネットワーク」はいう。発展を加速させる技術は、戦略的な重要性を持った非核技術を生み出し、核兵器運搬や対核兵器防衛のための新型あるいは改修型システムに組み込まれつつある。

より多くの人々に関係のあるAI技術の競争の中で、AIを兵器システムに応用しようとの誘惑及び危険につながりかねない。

さらに言えば、欧州が核保有国間の緊張が高まりつつある唯一の戦域だというわけでもない。北東アジアや南シナ海、東南アジア、中東でもそれは起こっている。(原文へ)

INPS Japan

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危機に瀕する持続可能な開発目標

【ニューヨークIDN=J・ナストラニス】

持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた世界的な努力を倍加させなければ、政治的不安定を助長し、経済を根底から覆し、自然環境に取り返しのつかないダメージを与えることになりかねないと、「持続可能な開発目標レポート2023(特別版)」は指摘している。

世界の指導者たちは、2015年に「持続可能な開発のための2030アジェンダ」とその17のSDGsに合意した際、健康で繁栄する地球上ですべての人の権利と幸福を確保するという歴史的な約束をした。しかし、気候危機、ウクライナ戦争、暗い世界経済の見通し、新型コロナウィルス感染症パンデミックの長引く影響などが複合的に影響し、制度的な弱点が明らかになり、開発目標に向けた進展が著しく妨げられている。

The Sustainable Development Goals Report 2023: Special Edition

目標達成期限まであと7年しかない。各国がSDGs達成のためにとっている具体的な行動をレビューする「持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム (HLPF 2023)」(7月10日~19日)が開幕する中、報告書はSDGsの悲痛な姿を提示している。このフォーラムは、SDGsサミット(9月18日から19日)に先立ち開催されるもので、世界の指導者たちにとって、SDGsを緊急に軌道修正し、さらに加速させる決定的な機会となる。

評価された約140のターゲットの半数が、望ましい軌道から中程度または著しく逸脱している。さらに、これらのターゲットの30%以上は、まだ進展が見られないか、さらに悪いことに、2015年のベースラインよりも後退している。

報告書によると、新型コロナのパンデミックの影響により、極度の貧困を削減するための30年にわたる着実な進歩が停滞し、極度の貧困に苦しむ人々の数は、この世代で初めて増加した。

現在の傾向が続けば、2030年までに、5億7500万人という途方もない数の人々が極度の貧困に陥ったままとなり、8400万人の子どもたちや若者が学校に通えなくなると推定される。2022年に119カ国で収集されたデータによると、女性に対する直接的・間接的な差別を禁止する法律がない国が全体の56%を占めている。

世界の気温上昇は、産業革命以前のレベルをすでに1.1℃上回っており、2035年までに1.5℃の転換点に達するか、それを超える可能性がある。報告書はまた、進展のなさは世界共通であるが、世界で最も貧しく脆弱な人々が、こうした前例のないグローバルな課題による最悪の影響を経験していると警告している。

Air and chemical pollution are growing rapidly in the developing world with dire consequences for health, says Richard Fuller, president of the Pure Earth/Blacksmith Institute. Credit: Bigstock
Air and chemical pollution are growing rapidly in the developing world with dire consequences for health, says Richard Fuller, president of the Pure Earth/Blacksmith Institute. Credit: Bigstock

突破口の可能性

しかし、2015年以降のいくつかの分野での進展は、さらなる進歩の可能性を示している。世界人口のうち、電力にアクセスできる人の割合は、2015年の87%から21年には91%に増加した。

報告書はまた、2021年までに133カ国が5歳未満児死亡率に関するSDGs目標をすでに達成しており、2030年までにさらに13カ国が達成する見込みであることを示している。世界的な製造業の成長鈍化にもかかわらず、中・高・ハイテク産業は堅調な成長率を示した。発展途上国は2021年に、一人当たり268ワットという記録的な再生可能エネルギー発電能力を導入した。

さらに、インターネットを利用する人の数は2015年以降65%増加し、2022年には世界で53億人に達した。

これらの重要な開発成果は、集団行動、強力な政治的意志、そして利用可能な技術、資源、知識の効果的な活用の組み合わせによって、すべての人にとってより良い未来への突破口が開けることを示している。

この進歩により、何億人もの人々を貧困から救い、男女平等を改善し、2030年までに世界を低排出軌道に乗せることができる。また、データのエコシステムを強化することは、世界がどのような状況にあり、SDGsを達成するために何をなすべきかを理解するための鍵となる。

その他の重要な事実と数字

過去の傾向を踏まえると、2030年までに貧困率が2015年比で半減する国は3分の1に過ぎない。

2021年には、ほぼ3人に1人(23億人)が、中程度または深刻な食糧不安に陥っていた。

2015年から22年にかけて、安全に管理された飲料水安全に管理された衛生設備(トイレ)、基本的衛生(=石けんと水で手洗いができる施設など)へのアクセスが増加した結果、これらの必要不可欠なサービスを利用できるようになった人は、それぞれ6億8700万人、9億1100万人、6億3700万人に増加した。

効果的なHIV治療により、2010年以降、世界のエイズ関連死は52%に減少し、47カ国で少なくとも1つの顧みられない熱帯病がなくなった。

2020年の時点で、約11億人が都市部のスラムやスラムに類似した環境で暮らしている。

国や地域の災害リスク削減戦略を持つ国の数は、2015年以降倍増しており、災害を管理し、その影響を軽減するための意識と備えが高まっていることを示している。(原文へ

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対中国戦略: 環大西洋と欧州の不協和音

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

【Global Outlook=ハルバート・ウルフ】

2023年4月半ばに日本で開催されたG7外相会合は、足並みを揃えた対中国政策の必要性を強調することを目指した。しかし、外交宣言は内部矛盾を取り繕うことしかできず、それらを取り除くことはできない。ロシアのウクライナ侵攻以来、中国への対処が環大西洋および欧州諸国の政策の焦点となっている。目的は、ロシアとの経験から教訓を学び、依存を避けること、あるいは少なくとも減らすことである。

コンセンサスは以上である。環大西洋グループ内の相違は、指導的政治家の海外訪問を見ればすでに明白である。米国の高位政治家らは現時点で中国を訪れていないが、ドイツのオラフ・ショルツ首相に続き、特にスペインのペドロ・サンチェス首相、最近ではフランスのエマニュエル・マクロン大統領が欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長とともに訪中している。現時点で米国とEUの協調政策も、一貫したEUの戦略も存在しない。それどころか、環大西洋諸国とアジアの同盟国の中国に対する姿勢は、おおむね非協調的で、一貫性がなく、矛盾し、不協和音的である。(

米国では、超党派の安全保障政策の主な焦点は、台湾の独立と、それを踏まえた中国からのデカップリングの試みにある。経済的結び付きを縮小し、重要な技術を北京に渡さないようにするべきである。米国の目標は、中国に軍事的に対抗し、中国が不可避の台頭を遂げて世界ナンバーワンの大国になるのを阻止する、あるいは少なくとも遅らせることであり、それを大々的な封じ込めによって実現することである。欧州および北米諸国は、「中華民族の使命感によって形成された世界観」を退けることで合意している。少なくともそれが、フォン・デア・ライエンが北京訪問の前に行った基調講演で示した姿勢である。グローバルサウスの多くの国々が西洋に支配された国際秩序の改革を望んで中国を支持しているという事実はしばしば無視される。欧州委員会委員長は、協調と競争を可能にする「制度とシステムを強化する必要がある」と述べた。

この基調講演で彼女は、EUの立場を次のように要約した。「中国との関係は極めて重要であり、健全な関わり合いの条件を明確に定めることなくこの関係を危うくすることはできない」。従って、「封じ込め」も「デカップリング」もない。EUは何年か前、政策分野に応じた三つの位置付けを定めた。中国は、パートナーであり、競争相手であり、ライバルである。しかし、近頃そのパートナーシップは疑わしくなっている。いわば、ゴルディアスの結び目を断ち切ろうとするようなものだ。

マクロンは、台湾やEU・米国関係に関する発言で同盟国を驚かせ、ぞっとさせた。北京から帰国する機内で欧州のニュースサイト「ポリティコ」のインタビューに応じ、欧州は「大きなリスク」に直面しており、それは「危機に発展しているが、それはわれわれには関係ない」と、フランスの大統領は述べた。彼は、台湾独立をめぐる米国と中国の対立に巻き込まれないようにするため、EUの米国への依存を低減したいと考えている。2017年に行った有名なソルボンヌ演説ですでに説明し、「ポリティコ」のインタビューでも繰り返したように、マクロンの最終目標は、「第3のスーパーパワー」としての地位を確立するための欧州の「戦略的自律」である。今日の状況に言及しつつ、彼は、「二つの大国間の緊張が激化すれば……われわれの戦略的自律のために財源を工面する時間も資源もなくなり、われわれは追随者になってしまう」と説明した。

マクロンの分析は、その核心において正確である。EUは、アジアで安全保障上の重要な役割を果たすための軍事的手段を持たず、EU・米国関係において経済的利益が争点となっていることは明らかである。しかし、マクロンのやり方は往々にして、正しいことを不適切なタイミングで言い、しかも無神経な伝え方をするというものだ。中国がプーチンを説得してウクライナ戦争から手を引かせるのではなく、ロシアとの関係を強化しようとしている状況で、米国と距離を置くよう呼びかけるマクロンのドゴール主義的な発言はかなりずれている。ウクライナにおける戦争は、ウクライナへの最大の軍事支援国である米国に、欧州がいかに安全保障面で依存しているかを示している。また、多くの欧州国では、欧州と米国との間にくさびを打ち込もうとする試みはフランスの国家利益のためだと批判されている。

2019年にすでにマクロンは欧州軍の創設を提案し、NATOの状況を「脳死」と評して厳しく批判した。ソルボンヌ演説ではより慎重で、欧州が安全保障政策において「NATOを補完し、独立して行動できる」ようにすることを望んだ。マクロンが求める欧州の「戦略的自律」はまだ遠い先の話だとしても、仮にそれに取り組むというのであれば、ウクライナ戦争は何よりも一つのことを実現したともいえる。つまり、全ての欧州諸国でかつてないほどに急激に軍事費が増加したのである。

しかし、中国に対するEUの関係は、米中間のような世界規模の安全保障上の紛争ではなく、経済関係や経済依存の問題である。欧州諸国と中国の間の極めて重要な経済的結び付きは、2022年11月初めのドイツ首相と同様、マクロンが大勢の財界トップらを引き連れて北京を訪問したことに表れている。このことは、欧州と米国では問題の優先順位が異なることも示している。より単刀直入にいえば、金の力が物を言うということだ。

欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は、EUの対中国戦略においてリスク削減に注力することを望んでいる。「われわれは、デカップリングではなくデリスク(リスク低減)に焦点を当てる必要がある」。彼女はその基調講演で、「デリスク」という造語を9回口にした。訪中後、彼女は欧州議会でその言葉を数回にわたって繰り返した。中国との経済関係の見直しは、唐突に出てきたわけではない。ウクライナ戦争が勃発する前でさえ、欧州の人々は中国との関係にかかわる二つの出来事に警戒心を抱いていた。第1に、EU加盟国であるリトアニアが2021年、台湾に対して国内に代表機関を開設することを許可して以来、中国政府は苛立ちを見せ、リトアニアとの通商関係を制限している。リトアニアに対する中国の制裁は、EUの域内市場に影響を及ぼしている。第2に、EU議会が2021年3月に中国人4名について、ムスリムのウイグル族弾圧に加担したことを理由にEU入域を禁止する決定を下した際、北京は報復措置として欧州議会議員数名の中国入国を禁止した。

EUは現在、「デリスキング」の考え方を追求している。フォン・デア・ライエンは、これが意味するところを具体的な言葉で説明している。「われわれは、極めて憂慮すべき問題を提起することに決して及び腰ではない……しかし、より野心的なパートナーシップについて、また競争をより公正でより規律あるものにするために何ができるかについて議論する余地を残すべきだと私は考える」。

しかし、EU内には対中国戦略に関するいかなる合意もない。ドイツ政府の中でさえ、意見の相違がある。2022年11月の北京訪問後、ショルツ連邦首相は、ロシアが核兵器使用の可能性に繰り返し言及していることを中国の習近平主席が批判したと誇らしげに発表した。「それだけでも、今回の訪中自体が意義あるものとなった」と、帰国後にショルツは述べた。マクロンの少し後に北京を訪れたドイツのアナレーナ・ベアボック外相は、それより対立的な姿勢を選んだ。中国政府との会談の後、彼女は「時に極めて衝撃的なこともあった」と述べた。彼女は今や、これまで以上に中国を体制的ライバルと認識しており、「パートナー、競争相手、体制的ライバル」という欧州の三つの位置付けを訪中前よりも強調している。

「ポリティコ」によれば、彼女はこのような判断に基づいて、他の多くの欧州政治家と同様、「ワシントンで発生している強硬路線のコンセンサス」に近づいている。

ハルバート・ウルフは、国際関係学教授でボン国際軍民転換センター(BICC)元所長。現在は、BICCのシニアフェロー、ドイツのデュースブルグ・エッセン大学の開発平和研究所(INEF:Institut für Entwicklung und Frieden)非常勤上級研究員、ニュージーランドのオタゴ大学・国立平和紛争研究所(NCPACS)研究員を兼務している。SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)の科学評議会およびドイツ・マールブルク大学の紛争研究センターでも勤務している。

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|視点|市民社会が目指す核兵器のない世界への道(砂田智映創価学会インタナショナル平和・人権部長)

【東京INPS=砂田智映】

核兵器使用の可能性が、戦後最も高まっているとも言われるなか、本年5月、先進7カ国首脳会議(G7サミット) が広島で開催された。歴史上初めて核兵器が使用された広島の地でG7サミットが開催されG7に初めて核軍縮ワーキンググループ(WG)が設けられるなど、市民社会の間でも核軍縮に対し何らかの前進があるのではないかという期待が高まった。

A Glimps of the Conference: “Advancing Security and Sustainability at the G7 Hiroshima Summit” Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN-INPS

私共もトロント大学G7研究センターを中心とするG7研究グループとともに、G7政策提言国際会議を開催し、政策提言として、「核兵器の使用又はその威嚇は許されない」とのG20バリ首脳宣言を強固なものとすること、核兵器の先制不使用の原則について誓約すること、核兵器禁止条約と核兵器不拡散条約の相互補完性を認識し、両者の間に討議の場を設け、核関連の被害者支援、環境修復、および効果的な検証システムの構築に協力することなどをまとめ、日本政府およびG7各国政府にも提出した。しかしながら、核軍縮に関するG7首脳広島ビジョンや首脳宣言に反映されなかったことについては、他の市民社会グループと同様に残念に思っている。

Wreath-Laying at the Cenotaph for the Atomic Bomb Victims by G7 leaders—Italy’s PM Meloni, PM Trudeau of Canada, President Macron of France, Summit host Fumio Kishida, US President Biden, and Chancellor Scholz—flanked by European Commission president von der Leyen (right) and European Council president Michel (left). Credit: Govt. of Japan.
Wreath-Laying at the Cenotaph for the Atomic Bomb Victims by G7 leaders—Italy’s PM Meloni, PM Trudeau of Canada, President Macron of France, Summit host Fumio Kishida, US President Biden, and Chancellor Scholz—flanked by European Commission president von der Leyen (right) and European Council president Michel (left). Credit: Govt. of Japan.

一方で、G7の主要な議題として核軍縮がとりあげられたこと、G7のリーダーが広島平和記念資料館で被爆の実相にふれ、そしてなにより被爆者から直接、話を聞いたことは象徴的な意味があったと思う。各国の評論家は、各国首脳が広島平和記念資料館を訪れ、原爆死没者慰霊碑に献花することが国内世論に与える潜在的な影響を指摘している。

G7各国をはじめ世界各地から若者が集った「広島G7ユースサミット」(東広島市の広島大学キャンパスで). SGI
G7各国をはじめ世界各地から若者が集った「広島G7ユースサミット」(東広島市の広島大学キャンパスで)Credit: SGI

また核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)が主催した広島G7ユースサミットは、私どもも共催として参加した。G7各国や核実験被害国をはじめ世界各地から集った青年達が、核廃絶のために何ができるのかを真剣に議論する様子に、私は励まされるような思いがした。結局のところ、G7広島サミットの永続的な意義は、核軍縮の可能性について、特に日本だけでなく全世界の若者の間で認識を新たにしたことにあるのではないだろうか。

今年に入り2月、ロシアは新戦略兵器削減条約(新START)への参加停止を発表し、米国は戦略核兵器に関するデータ提供を停止した。この最後の二国間核軍備管理条約が効力を失う可能性が出てきたことで、新たな核軍拡競争への懸念が高まっている。

Photo: SGI President Daisaku Ikeda. Credit: Seikyo Shimbun
Photo: SGI President Daisaku Ikeda. Credit: Seikyo Shimbun

池田大作創価学会インタナショナル(SGI)会長はG7広島サミットへの提言「危機を打開する“希望への処方箋”を」の中で、核保有国に対し、核兵器を先制使用しないことを誓約するよう呼びかけた。そして最後に提言では「核兵器の先制不使用」について合意できれば、各国が安全保障を巡る“厳しい現実”から同時に脱するための土台にすることができる、また、先制不使用の誓約が「核兵器のない世界」を実現するための両輪ともいうべき核兵器不拡散条約(NPT)と核兵器禁止条約(TPNW)をつなぎ、力強く回転させる“車軸”となりうるものだからです」と述べた。

Chie Sunada. SGI
Chie Sunada. SGI

7月末には第11回NPT再検討会議第1回準備委員会、11月末にはTPNWの第2回締約国会議が予定されている。先制不使用の誓約およびTPNWへの署名、批准が進むよう私どもとしても尽力していきたいと考えている。INPSとのメディアプロジェクトによる意識啓発を追い風とし、多くの市民社会とも力を合わせ、「核兵器のない世界」「戦争のない世界」への道を開いて参りたい。(原文へ

この文はIDN/INPSが2009年来、創価学会インタナショナルと進めているメディアプロジェクトの2023年報告書「核なき世界に向けて」に寄せた寄稿文である。

INPS Japan

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核兵器廃絶運動の歩み

国連が歴史的な海洋条約を採択

【国連IDN=タリフ・ディーン】

国連が長年に及ぶ協議の末、世界の公海のうち3分の2以上を占める海洋で生物多様性の保全と維持をめざす世界海洋条約に合意した。

6月19日の採択を受けて、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は「海洋は私たちの地球の生命線であり、今日皆様は、新たな命と希望を注ぎ込むことで、海洋に闘いの可能性を与えたのです。」と語った。

多国間主義の強さを示したものとして今回の条約を取り上げたグテーレス事務総長は、「私たちの地球に対する国境を越える脅威に対抗すべく行動することで、グローバルな脅威にはグローバルな行動を取ること、そして各国が公共の利益のために一致団結できることを、明確に示すことになります。」と語った。

Amb. Palitha Kohona. Credit: U.N. Photo/Mark Garten
Amb. Palitha Kohona. Credit: U.N. Photo/Mark Garten

国連のパリサ・コホナ元条約局長はIDNの取材に対して「2015年2月の寒く雪深い早朝3時に最終報告をまとめた『国家管轄権を超える生物多様性に関する国連臨時作業部会』の元共同議長として、国連海洋条約が正式採択されたことは喜びに堪えない」と語った。

「脅威にさらされているこの地球にあって生命を維持する上で海洋はきわめて中心的な役割を果たしている。」とコホナ氏は語った。生命は海洋から始まるのである。

 「今こそ、生命を維持するために海洋を保護することが必要だ。国内プロセスを早急に済ませ、署名開放された条約を早期に署名・批准するよう求める。」

 「2030年までに『持続可能な開発目標』の達成を目指すうえで、この条約は国連にとっての大きな成果となろう。海洋条約は、しばしば『海の憲法』に例えられる国連海洋法条約の下で発展してきた枠組みに新たに重要な柱を付け加えるものとなる。」と、コホナ氏は指摘した。

 国連のファルハン・ハク副報道官は6月19日、「2023年SDGサミット」開催の翌日にあたる9月20日から2年間、条約が国連本部において署名開放されると記者団に語った。この条約は60カ国の批准で発効する。

 グリーンピース「海洋を守れキャンペーン」のクリス・ソーン氏は、「条約はこの地球のすべての生命にとっての勝利を意味する。」と語った。今や、この条約に合意した各国政府は、公海上の広範な海洋保護区を設置しなければならない。

 「科学的に明らかなように、海洋に回復と繁栄のチャンスを与えるためには、2030年までに少なくとも海洋の3割が保護されなければならない。」

SDGs Goal No. 14
SDGs Goal No. 14

 「2030年が近づいており、我々の仕事はきわめて大きい。公海のわずか1%しか現状では保護されていない。世界中の多くの人々が変化を求めているからこそ、この歴史的な合意がなされたのだ。しかし、依然として先の道のりは長い。」

 「我々はいわゆる『30×30』の達成に全力を尽くす。この条約が2025年には批准され人間の破壊的な活動が及ばない海洋の聖域が海の30%を覆う状態が2030年までには現実のものとなるよう、昼夜を問わず努力していく。」

 他方、国連海洋法条約の遺産を基礎とするこの画期的な合意は、海洋の3分の2以上における海洋生物多様性の保全と持続可能な利用のための法的枠組みを大幅に強化するものである。

 国連は、この条約は、海洋とその資源の持続可能な開発を促進し、海洋が直面する多面的な問題に対処するために、国家間およびその他の利害関係者間の分野横断的協力に不可欠な枠組みを提供すると述べた。

 効果的かつ時宜を得た合意の履行によって、2030年の「持続可能な開発アジェンダ」や「昆明・モントリオールグローバル生物多様性枠組」に盛り込まれた海洋関係の目標達成に大きな貢献がなされることになろう。

 国連によれば、この協定は4つの重要な問題に取り組んでいる。

Antonio Gutierrez, Director General of UN/ Public Domain
Antonio Gutierrez, Director General of UN/ Public Domain

 まず、海洋遺伝資源に関する活動から生じる利益の公正かつ衡平な配分と、国家管轄権を超えた地域の海洋遺伝資源に関するデジタル配列情報の枠組みを設定し、そのような活動が全人類に利益をもたらすことを保証する。

 また、公海や国際海底域における重要な生息地や種を保全し、持続的に管理するために、海洋保護区を含む区域ベースの管理手段を確立することを可能にする。このような措置は、昆明・モントリオール生物多様性世界枠組みで合意された、2030年までに世界の陸域・内陸水域および海洋・沿岸域の少なくとも30%を効果的に保全・管理するという世界目標「30×30」を達成するために不可欠である。

 この枠組みは、国の管轄権を超えた地域での活動が環境に与える影響を評価し、意思決定において考慮することを保証するものである。

 また、これによってはじめて、各国の管轄権を超える領域において、気候変動や海洋の酸性化、それに関連した影響がどのような累積的な効果を持つのかを評価する国際的な法的枠組みが与えられることになる。

 合意の目標達成にあたって、条約の締約国、とくに途上国を支援する能力構築及び海洋技術移転の協力が促進され、各国の管轄権を超えた領域で海洋生物多様性を責任もって利用し利益を得るうえで、各国の平等化が図られることになろう。

 さらに、今回の合意によって、国連海洋法条約やその他の関連条約、それに関連する国際法の枠組み、資金提供や紛争解決などをめぐる世界・地域・地域以下・部門レベルでの機構との関係の整理など、領域横断的な問題に対処することができるようになる。

 また、締約国会議や科学技術関連機構、締約国会議の付属機関、情報センター、事務局など、組織の充実も図られる。

 グテーレス事務総長は、「海洋の直面する脅威への対処において、また、『2030アジェンダ』や『昆明・モントリオールグローバル生物多様性枠組』を含めた海洋関連の目標達成に向けて、今回の合意はきわめて重要だ。」と指摘したうえで、すべての国連加盟国に対し、この条約の早期発効を目指して遅滞なく行動し、できるだけ早く署名・批准するよう呼びかけた。

 また、この実現に向けて諸国への支援を惜しまない旨を表明した。(原文へ

INPS Japan

“Hopeful”: Historic U.N. High Seas Treaty Will Protect 30% of World’s Oceans from Biodiversity Loss./ Democracy Now.

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ベラルーシの戦術核兵器は「憂慮すべき事態」

【国連IDN=タリフ・ディーン】

ベラルーシへの戦術核兵器の第一弾の搬入を先月済ませたとロシアのウラジーミル・プーチン大統領が主張したことで、その意味合いと結末についてさまざまな憶測が拡がっている。しかし、この主張はどれだけ信憑性のあるものだろうか。それともプーチン大統領がまたぞろ核の恫喝に訴えたものだろうか。

Map of Belarus/ Wikimedia Commons
Map of Belarus/ Wikimedia Commons

ソ連が崩壊した1991年以降、ベラルーシには81発の単弾頭核ミサイルが配備されていた時期があった。92年5月、ベラルーシは核拡散防止条約(NPT)に加盟し、96年までにすべての核兵器をロシアに引き渡した。

「核政策法律家委員会」の会長で、国際反核法律家協会(IALANA)国連事務所長でもあるアリアナ・N・スミス氏は、IDNの取材に対して、「ロシアがベラルーシに戦術核兵器を配備したことは、ロシアによるウクライナへの侵略戦争が進行している中で、憂慮すべき事態だ。」と語った。

スミス氏は、「核共有協定は、通常、核兵器国の兵器を非核兵器国に配備し、戦時において非核兵器国がこれらの兵器を運搬・使用する手順を含むものであり、核不拡散条約(NPT)とは相容れない。今回のロシア・ベラルーシ間の取決めは、核のリスクを伴いつつすでに暴力的かつ違法な戦争をさらにエスカレートさせるもので、世界を危機に陥れかねない。」と指摘した。

ロシアもベラルーシも、それぞれ核兵器国、非核兵器国としてNPTに加盟しており、その条項に拘束されている。

条約第1条は、NPT上の核兵器国に対して「核兵器その他の核爆発装置又はその管理をいかなる者に対しても直接又は間接に移譲しないこと。」さらに、「核兵器その他の核爆発装置の製造若しくはその他の方法による取得又は核兵器その他の核爆発装置の管理の取得につきいかなる非核兵器国に対しても何ら援助、奨励又は勧誘を行わないこと。」を義務づけている。

第2条は同じような義務を非核兵器国にも課し、核兵器の移転や支援を受けることを禁止している。

スミス氏は、「したがって、ロシアがベラルーシに核兵器を配備しベラルーシがそれを容認していることは国際法違反だ。今回の配備はすでに弱体化している世界の軍備管理に対する受け入れがたい脅威であり、紛争で核兵器が使用される可能性を高めるものだ。」と指摘したうえで、「ロシアと米国・北大西洋条約機構(NATO)は、いずれも自らの立場を正当化するために『抑止』に訴え、大量破壊兵器の使用をそれによって予防しうるという誤った主張をしている。」と語った。

例えば、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領は、ベラルーシ領内にあるロシアの戦術核兵器を「潜在的な侵略者に対する抑止力」として明確に言及し、この文脈でロシアが使ってきたのと同様の言葉を使った。

Photo: UN Secretary-General António Guterres speaks at the University of Geneva, launching his Agenda for Disarmament, on 24 May 2018. UN Photo/Jean-Marc Ferre.
Photo: UN Secretary-General António Guterres speaks at the University of Geneva, launching his Agenda for Disarmament, on 24 May 2018. UN Photo/Jean-Marc Ferre.

アントニオ・グテーレス国連事務総長は2022年8月、「これまで私たちが非常に幸運だっただけのことだ。しかし、運は戦略でもなければ、地政学的緊張が核紛争に波及することへの防護にもならない。」と指摘したうえで、「今日、人類はたったひとつの誤解、あるいはたったひとつの誤算で、核による滅亡に直面する瀬戸際にいます。」と語った。

6月16日付の『ヒル』紙の記事によると、米国のアントニー・ブリンケン国務長官は、ベラルーシに戦術核を配備したとのロシアの主張をバイデン政権は子細に検討しているが、米国の核態勢を「それに合わせる理由はない」と述べた。

ブリンケン発言は、ロシアがベラルーシへの核兵器の第一弾移送を終え残りは夏までに完了するとしたプーチン大統領の声明を受けたものだ。

3月にウクライナと国境を接する国(=ベラルーシ)に核兵器を配備する計画を初めて発表したプーチン大統領は、この動きは「抑止力」としての意味合いがあると述べていた。

プーチン大統領は6月17日、サンクトペテルブルクで開かれた「国際経済フォーラム」で演説を行った後、移送は「封じ込め」のためであり、「私たちを戦略的に敗北させようとする人々に対して」のメッセージであると話したことをBBCが報じている。

Vladimir Putin. Photo: ЕРА
Vladimir Putin. Photo: ЕРА

プーチン大統領は核兵器の使用可能性について問われると、「なぜ世界全体を恫喝する必要があるだろうか。 ロシア国家の存立が脅かされた場合には極端な措置を取ることもありうると、これまでも明言してきた。」と語った。

戦術核兵器は、戦場での使用や限定的な攻撃を目的とした小型の核弾頭と運搬システムである。広範囲に放射性降下物を撒き散らすことなく、特定の地域の敵目標を破壊するように設計されている。

最小規模の戦術核兵器は1キロトン以下(トリニトロトルエン爆弾相当量)であり、最大は100トン程度である。BBCによれば、これと比較すると1945年の広島型原爆は15キロトンであるという。

「しかし、この合意は不安定なものだ。広島G7サミットでの首脳らの態度はバリ宣言よりも後退したものだった。」(記事「広島G7サミット、核兵器をめぐる規範で後退」)

核兵器の使用やその威嚇に反対する規範を強化し、承認された国際法にそれを転換していくことの重要性がここには現れている。「核先制不使用グローバル」は、「規範から法へ:公的良心の宣言」でこのことを展開している。この宣言は4月に発表され、5月の広島G7サミットにも提出された。

Vienna International Center/ photo by Katsuhiro Asagiri
Vienna International Center/ photo by Katsuhiro Asagiri

また、7月31日から8月11日までウィーンで開催される核不拡散条約(NPT)第11回再検討会議に向けた第1準備委員会、9月にインド開催されるG20会合、10月の国連総会にも提示される予定だ。「公的良心の宣言」はアーロン・トビッシュ氏が起草したもので、8月のNPT準備会合ではジョン・ハラム氏が発表することになっている。

アリアナ・スミス氏はさらに説明して、グラハム、ブルーメンタール両米上院議員が最近、ロシアによるウクライナでの核兵器使用はNATOへの攻撃とみなすべきであるとの決議案を提出したと述べた。ロシアが核兵器を使用するか、あるいはザポリージャ原発で事故を起こした場合には、それが米国との戦争につながることを警告し、ロシア軍の「完全壊滅」を示唆したものだ。

「抑止力という言葉とそれに伴う行動は、私たちの生存を脅かすチキンゲームに等しい。これらすべてが、意図的な核攻撃だけでなく、誤算や誤った解釈による核兵器使用のリスクを高めている。」とスミス氏は指摘した。

ロシアによる今回のベラルーシとの防衛取決めは、米国がNATO諸国と行っている核共有の前例を念頭に置いたものだ。

「米国がNATO諸国と行っている核共有はNPT発効以前のものだが、米・NATOの核共有、ロシア・ベラルーシの核共有のいずれもが、核拡散につながりかねず、可能な限り早急に廃止されるべきだ。」と、スミス氏は主張した。

他方で、欧州安全協力機構(OSCE)は、7月4日にバンクーバーで開いた会合で、核リスク低減と核軍縮に関する次のような文章を「バンクーバー宣言」に盛り込んだ。

「OSCE(欧州安全保障協力機構)議員会合は、ロシアによるウクライナへの戦争によって煽られている核脅威エスカレーションを直ちに終わらせるよう求め、全ての参加国に対し、時間的枠組み内での核廃絶を達成するための国際的な取り組みを倍増させるよう奨励した。これには、包括的な核兵器禁止条約または協定の交渉(8回目のNPT再検討会議の最終文書で推奨されているもの)や、2017年の核兵器禁止条約の署名と批准が含まれる。」

この会議には、PNNDのメンバーも含め、北米・欧州・中央アジアから200人以上の議員が参加した。(原文へ

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